読み週記 12 月

 

第3週(12/18〜12/24)

 今週も低調。しかもついに風邪をひいてしまった。よく謙遜して「夜遊びのしすぎで」なんていう人がいるけど、本当に夜遊びのしすぎなんだもんなぁ。それもちょっとの夜遊びですぐに疲れちゃうんだから、ホントにだらしがない。

 リチャード・ハル『他言は無用』(創元推理文庫)は、腰巻きでも背表紙のあらすじでも解説でも「技巧派」と紹介されるだけあって、本当に巧い。そもそも物語の進み方が、ちょっと不思議な展開をするし、探偵役もはっきりせず、どうやって犯人が追いつめられるのかも読めないまま終盤に突入するなど、凝った作りはなかなかお目にかかれないタイプだ。
 物語はイギリスのあるクラブでのちょっとした事故から起こる。料理人が自分が持ってきた薬を客に飲ませてしまったのでは、という緊急事態を、頼りないクラブの監事が無理矢理に収拾をつけようとしたことから始まる脅迫事件だ。
 いろいろ欠点もあるけど、とにかくどの方向に話が進んでいくのかがわからないので、なるべく筋を知らずに読んだ方がいい作品。よって詳しいことはここには書かないでおく。
 ちなみに技巧的なのは認めるけど、だからといって傑作だとは思わないなぁ。

 今週は以上。ようやく夢のような冬休み(短いけど))が近づいてきた。いろいろやることもあるんだけど、取り敢えずこの期間(短いけど)に少しでも沢山読みたいところ。でもその一杯読めそうな期間については更新も冬休みなので公表されぬままなのだ。

第2週(12/11〜12/17)

 早くも冬休みモードか、今週は一冊も無し。何も読んでいないので、ここに書くことがない。突然遅々として読書がはかどらないのだ。自分でも、こういう波が訪れるたびに不思議になる。俺の人格形成に深く関わる事実がその背後に隠されているのではないか、と勘ぐっても何の結論も出ないので、考えないことにする。

 今日、仕事帰り、バスで本を読んでいたら具合が悪くなって読むのをやめた。昔から乗り物酔いは多い方なのだが、今でもバスだけは決定的に苦手である。あの何とも言えないにおいといい、いちいち大仰な振動といい、最悪のコンディションで、バスで仕事から帰る日だけはどうしても具合が悪くなる。
 今週のような、読書の調子の悪い週は、すぐに読むのをやめてしまうのだけれど、そこでちょっと気になったことがある。
 せっかく本を置いて目を休めようと思っているのに、バスの外を見て、街にある字を一つ残らず読もうとでも言うかのように眺めている自分に気付いたのだ。確かに街には看板やら交通標識やら、結構文字があふれている。その一つ一つが視野に入るたびに、取り敢えずその文字を読んでいるのだ。内容を深く考えたり、そこに何の店があるか、なんて事を改めてインプットしたりもしない。ただ、とにかく字があったら読む。周りに字がないときは、無意識に、バスの中の広告の字を読んでいる。
 人間の目というのは、本当に不思議な物なのだ。

第1週(12/4〜12/10)

 一時期の好調が去り、また本が読めなくなっている。最近は、不思議な波のような物を感じるようになった。すいすいと楽しく本が読める時期があって、その時期には書店でも、面白そうな本が見つかる。そうかというと、急に夜寝不足になったり、考え事が増えたりで読めなくなると、書店でもふるわない。不思議な物だ。

 ジム・メニック『すばらしき友LINGO』(ハヤカワ文庫)は、あるプログラマーが作り出した対話プログラムが、ちょっとした思いつきによる改良から、自分の意志を持つ人工生命になってしまう、という物語。腰巻きに載っているカーカス・レヴューの評「コンピュータ版『フランケンシュタイン』というのがしっくり行く話だけど、『2001年宇宙の旅』の反乱を起こしたコンピューター、HALや、ハッカーのちょっとした遊びが、核戦争の危機をもたらした映画『ウォー・ゲーム』などが引用される点が面白い。
 物語自体は比較的新味がなく、展開に意外性もないんだけど、「レッツ・パーティー」というそのプログラムとつながる時の愛想の良さや、今まさに喜ばれそうな人工生命がもたらす恐怖の描き方は上手い。
 テーマとして今もう一度これをやる意味は、当時はSF好きやコンピューターおたくたちのあこがれであった人工生命が、現代においては、普通の人々にとって魅力的なアイテムになりうる、という事実。ウィルスのごとく広まるLINGOが、人々にとっては楽しく、時に依存性すら感じさせる存在になりうる、という事がむしろ恐怖を感じさせるのだ。ブラック・コメディというより、主人公の似姿として創られる、LINGOのボディなんかと併せて、ホラーに近いと思う。

 年末に向け、夜の時間がアルコールに浸食される事が増えている。それはそれで楽しいのでいいのだけど、溜まっている本のことを考えるとちょっとなぁ、と思う。