読み週記 7

 

第4週(7/26〜8/1)

 連日サッカーの試合が多くて大忙し。そのせいだけじゃないけど本屋に寄る時間が無くて、一時はもう少しで読む本が無くなる、という緊急事態になるところだった。未読の山が高くなるのは困りものだが、その逆よりはよっぽどいい、と痛感。

 佐藤賢一づいているのかはよくわからないが、書店で『二人のガスコン』(講談社文庫)の全三巻を発見したので早速買い込む。佐藤賢一は長い話の方が楽しいので大喜びで上中巻を読む。今回の主人公は日本でも名前だけは相当有名な、三銃士のダルタニャンと、巨鼻で有名なシラノ・ドゥ・ベルジュラック。佐藤賢一というとどうしても『双頭の鷲』(新潮文庫)のような壮大なストーリーを期待しちゃうんだけど、今回はむしろ三銃士の物語の後日談の風情もある冒険活劇。時の宰相マザランの密命を帯びた二人が、やがてフランスを揺るがすような巨大な秘密を探る冒険を始める物語だ。三銃士との冒険から年月が経ち、現実家たるダルタニャンと、理想派だのシラノ。相反する二人はガスコン(ガスコーニュ人)に共通する血の赴くまま、友情を結んで行く。

 いつでも、本屋に行くと嬉しくなる。ましてや今のように未読の本が心許ない時など、「さあ、どんどん読むぞ」と意気も上がってなおさら良い。世の中ではまだまだ読みたい本がたくさん生まれ、眠っている。

 

第3週(7/19〜7/25)

 先週は祝日につき更新をお休み。祝日に絡めて4連休を堪能した人が色んな所にいたとかいないとか。連休中、あんまり本読みませんでした。一杯寝たけど。

 知らぬ間にアーシュラ・K・ル・グウィン『ゲド戦記』(岩波書店)の外伝『ゲド戦記外伝』(岩波書店)が出ていたりするので全く気が抜けない。本国ではシリーズの5巻『アースシーの風』(岩波書店)の前に出版されたとのこと。ル・グウィンの前書きが痛快でかつ面白い。「痛快」と言ったのはル・グウィンが近年量産されているファンタジー小説について書いた部分なんだけど、痛快というよりも悲痛と言えるか。
 中身は短・中編で、ロークに魔術師の学院が作られる前夜の物語や、大賢人であったゲドが出てくる小さなエピソード、そして5巻『アースシーの風』へのブリッジになるような話がある。前書きでル・グィンが、自分がアースシーに帰ってきた喜びを語っているが、それは読者もとっても同様の感覚。外伝2、なんてのがでても嬉しいなぁ。

 

第1週(7/5〜7/11)

 本の収納というのは常に大問題だ。どうしても本を捨てたり売ってしまうのに抵抗があり、しかも図書館で借りて読むのもあんまり好きでないので、気が付くとどんどん本がたまっていく。当たり前の理屈なんだけど、ただ積み上げていくだけでも限界が近づいている。でも「あの本は何が書いてあったっけな」とか「もう一度読んでみたい」とか「誰かに紹介したい、貸したい」って時に「あ、あれは捨てたんだっけ」と思うのが悔しくてどうしても処分できないのだ。

 出先で読む本が無くなり、「そうだ佐藤賢一を読もう」と思ったのはいいのだが、そういうときに限って名前が思い出せない。著作から思い出そうと思ったのに、それもなぜか一冊も出てこない。こういうときすぐに本棚を当たれるといいのに、出先なのでそうも行かない。こういうときには本当に困ってしまう。
 やっとのことで思い出して購入したのが『カエサルを撃て』(中公文庫)だ。ガリア戦記、ローマの偉大な将軍としてガリア征討に赴いたカエサルと、ガリアを統一しローマの支配に抵抗するガリアの対象となったベルチンジェトリクス。二人の対比を中心に据えて進む物語だ。なんとも情けない男として描かれるカエサル像が後半に向けて意味を持ってくる。読み終えてみればなんとも魅力的なカエサル像であったことに驚く。ローマの政治にばかり目を向けているカエサルを痛烈に批判するマキシムスの絡みかたも面白い。是非続きを読みたい。

 前作『紙の迷宮』(ハヤカワ文庫)がおもしろかったデイヴィッド・リスの『珈琲相場師』(ハヤカワ文庫)は、新時代の商業が花開いた17世紀半ばのオランダが舞台。相場取引に失敗し、破産の憂き目にあったユダヤ人の相場師ミゲルが当時はまだ限られた人々にしか触れられていなかった飲み物、珈琲にまつわる取引を持ちかけられる。厳しい規律によってアムステルダムのユダヤ人を支配するマアマド、謎の未亡人、マアマドから破門された高利貸しなど、くせ者が次々登場し、誰が味方か、誰が敵なのかが全くわからないような状況で、主人公は自らの才覚を頼りに賭けに乗り出す。疑心暗鬼に飲み込まれそうな、隠された思惑の数々が織りなす展開に圧倒される。解説を読んで、この主人公が前作『紙の迷宮』の主人公の祖父であるということがわかってビックリ。そんな昔に読んだ本は覚えてないけど、引っ張り出そうにもどこに閉まってあるのか(積んであるのか)さっぱりわからない。いったい何のために本をとっておいているのか、と悩まされる一冊。ちなみに自作は『紙の迷宮』の続編であるらしく、ますます苦悩は深まるばかりだ。

 といったわけで、大量に蓄えられた本があまり生きていないことが実証されて激しく落ち込む。整理したいなぁ、って思いながらどんどん月日が過ぎていくんだけど、整理するとなると多少はこだわってやることになるだろうし、時間も手間も恐ろしくかかることを思うとうっかりとりかかれない。うーむ。困った物だ。