読み週記 9月

 

第4週(9/21〜9/28)

 今週はまたもや一冊も読んでいない。先週ふぇるんさんが読み週記をエクセルデータにしてくれた話を書いたけど、後半に進むに従って休みがあったり、冊数が減っていて打ち込むのが楽だった、という話をしていた。最もな話で。これを始めた頃に比べたら圧倒的に忙しくなってるし。というか、始めた頃はどうしようもなくヒマ(やるべきことは今と変わらず山のようにあったわけだけど)だったし。

 そんなわけで、読書の方がちっとも進んでいないくせに、たまたま休みの日に都会へ向かうことがあったので、久しぶりに池袋の本屋巡りに行ってきた。西武書籍館にあるLIBROではベッキーのサイン会が開催れていた模様。準備が進むなか人々が列をなしているのを「おお、すごい」と眺めながら道路を渡ったジュンク堂へ。午前中の用事で疲れていたので、ほとんどの棚はただなめるように眺めるだけで終わっちゃったけど、上の階からなんとなく見て回った。売り場面積がべらぼうに大きいので、混んでるのか空いてるのかよくわからなかったけど、多分繁盛してるんでしょう。巨大店舗として生まれ変わってからもうしばらくたって、売り場面積を拡げているさなかに行ったときの、新しい棚の木の匂いもすっかり消えて、かなり落ち着いた感じでした。

 何冊かを購入して、ジュンク堂の方には置いてなかった本を求めて再びLIBROへ。サイン会すっかり終わってるし。いや、別にいいんですけど。テレビで見かけるくらいで、特別なんの興味もない人なのに、実物を見逃したと思うとちょっと悔しいのはなんでなんでしょうか。なんだかよくわからないが、やっぱり本屋はいい。このところ書店に行っても本が欲しい熱があんまりわき上がらないことが続いていたので、久しぶりに楽しく書店巡りができました、とさ。

 

第3週(9/15〜9/20)

 祝日を挟んだためにまたもや一週間予告無しでお休み。この2週間の間に一つ年を取った。毎年誕生日なんてものにはたいした感慨を持つこともないんだけど、悪い物ではない。「年なんかとりたくない」というわけでもないので、嫌な気はしない。誰かが祝ってくれるならそれはまた嬉しいものだ。年をとるごとに「この年で今こんな自分」と思って反省することもあるけど、それもまた毎年の決まり事。

 解説で井家上隆幸が伝奇小説の系譜について語っているとおり、佐藤賢一にはかつて隆慶一郎で熱くなった伝記物の実力者と言えるはずだ。
 正直に言うと、俺はどうも佐藤賢一の文庫にくっついている写真が好きになれない。なにかのクラスで一緒になったら、絶対に友達にはなれない奴だと思うんじゃないかと思う。お互い様なのはもちろんとしても。
 それであっても、佐藤賢一の著作にはいつも驚かされる。最初に読んだ『ジャガーになった男』(集英社文庫)でがっかりしたにも関わらず、次に読んだ『双頭の鷲』(集英社文庫)にはすっかりノックアウトされ、読めば読むほど、とりつかれるようにページをめくってしまう。
 そんなこんなでもうほとんどの著作に手を出してきて、ついに代表作『傭兵ピエール』(集英社文庫)に手を伸ばした。『双頭の鷲』同様、上下巻でなかなか手が出ず、買っても未読のまま置いておかれたのだが、ようやく手に取ったとたん、やはりすっかりのめり込んでしまった。
 気が付くと、集英社文庫ででている佐藤賢一の著作を大部分読んでしまったことになるが、不思議なことにほぼ逆の順番で読んでいる。 フランスの伝説的な人物の一人であるジャンヌ・ダルク。彼女の世紀を史実にのっとり、やがて伝奇小説ならではの奔放な展開にのせて、彼女を影のごとく支えていった、貴族の私生児である傭兵隊長ピエールを主人公に、物語は進んでいく。自分としてはあとから読んだものだったが、実際はあのがっかりした『ジャガーになった男』の次の作品。この目を見張る成長はどうだ。後に名作を次々と生み出す作者の実力が遺憾なく発揮されている。
 佐藤賢一の特に長編はむさぼるように読むほど、展開もスムーズで、読み手の物語への渇望を裏切らない。適度の葛藤とカタルシスが、佐藤賢一の主戦場であるヨーロッパの歴史をベースに展開されるのはいつものこと。だが、『傭兵ピエール』 を賞賛したいのは、今までなにか一つ納得がいかなかった、物語の締め方が、コレまで読んだなかでは一番好みにあったからだ。やや付け足されたようなつながりの悪さはないでもないが、この適度の余韻が、これ以降の作品にも欲しかったのだ。程々のカタルシスと決して脳天気でない幕引き。この流れがスムーズになったとき、佐藤賢一は本物になるような気がする。

 今年は色々な事情から誕生日のプレゼントをいくつかもらえる年だったが、一番の驚きは、felunさんからもらったエクセルファイル。いつのまにそんな地道な作業をやってくれたのかわからないのだが、開始当初からのこの読み週記に記された本・雑誌のデータを全て打ち込んでくれているのだ。仕事が忙しくなるに連れ読む量も減り、祝日に休むようになったこともあって、後半はかなり数が少なかったそうだが、それにしても大変な量。さらにそれを活かして行けるといいと思っている。ありがとう。

 

第1週(9/1〜9/8)

 どうもこのところスランプの様な気がする。本屋で新刊の棚や文庫の棚を見ていても、どうも今まで読んだことのない様な新しい著者、ジャンルに手が出にくくなっているのだ。それも手伝って、このところ新しい本を買えずにいる。いったいどうしたことなのか。

 先週上巻を読んだ、オーソン・スコット・カード『消えた少年たち』(ハヤカワ文庫)の下巻を読む。まっすぐにモルモン教の信仰に実を投じ、出来うる限り誠実に、公平にあろうと日々戦う夫婦とその子どもたちを主人公にした物語は、長男の謎を中心にますます不思議な家族小説として進んでいく。一体どうなってしまうのか、と思っているうちに、あれよあれよと言う間に衝撃のラストへとなだれ込んでいく。巻末の北上次郎が言うように、「99%家族小説」として進展していくが、終盤の展開についてはとてもここに書くわけにはいかない。感動の物語と言えるが、どうも個人的な感覚にはしっくりこなかったようにも思う。だが、それを置いても傑作であることには変わりが無いだろう。この読後感をどう表現して良いのかわからない。おそらく読み手によって、評価だけでなく、抱く読後感も千差万別なのではないだろうか。

 このところ大型書店での本の買いだめをしていない。その辺がスランプの原因なのか、とちょっと思ってみた。もっと本屋で食指を動かしたい。