読み週記 6

 

第2週(6/14〜6/20)

 いよいよ梅雨が本格化。といっても全然雨が降らなくてさりげなく台風が来たりもしてるんだけど、雨そのものよりもこの湿度がいかにもこの季節っぽくて、これからのじっとりした夏が予感されるあたりが梅雨らしい。暑いやらじっとりするやらで、電車の中での読書が滞りがち。

 池袋のLIBROに行くと、必ずドイツ文学の棚を眺めて一冊は買ってくるが、今回も大当たり。ジェイムス・クリュス『笑いを売った少年』(未知谷)ふたを開けてみたら児童文学、ということだったので、あれ、と思ったけど、俺好みのメルヘンの系譜に連なる秀作で、真夜中に読みふけってしまった。大人が読んでの面白さ度合いでは最近読んだ児童文学『チョコレート戦争』(求龍堂)を遙かに凌ぐが、子どもの頃読んだらどんなにか興奮しただろう、と想像するのも楽しい。優れた児童文学はかくある。
 電車の中で再開した古い友人から聞いた物語として語られる、笑いを売った少年の物語。彼が自分の笑いを取り戻すために奮闘するストーリーだが、悪役である男爵がまた魅力的なのがいい。

 暑いというよりも湿気が高いと色んな事のエネルギーが減退するように思う。体力を奪われるし。それだけに涼しい中の読書は数少ない楽しみの一つだ。エアコン万歳。

 

第1週(6/7〜6/13)

 思いの外降らないですな、雨。
 雨で思い出しけど、この時期本を読むのが大変なのは傘があること。鞄を持って傘を持っていると、電車の中で本を読むのが非常に大変。立ってるとほとんど無理だし、座ってても傘が邪魔で集中できない。全く持って面倒な季節になってきた。

 グレッグ・イーガン『幸せの理由』(ハヤカワ文庫)はイーガンの短篇集2訳目。俺にはむずかしくてよくわからないハードSFに入るような内容なんだけど、なるほど、面白い。そもそもSFを読み始めた頃、底に書いてる事のほとんどが理解できなくても面白かったのは、SF的な要素を使って物語が語られていたからだ。はいんらいん『夏への扉』(ハヤカワ文庫)が未だに広く人気を集めているのも、タイムトラベル、という初心者でもわかりやすい題材が使われているからではなく、その物語性にあったはず。イーガンの作品はハインラインの物語性とは全く別物だが、難しさがハードルにはなっても施錠された扉にはならない、物語としての面白さがしっかりある。

 傘を持っていると書店に入るのも気が引ける。ビニールをかければいいんだけど、何となく自分自身がしめってる感じがして、本屋の乾いたイメージに入りきれないのだ。そういえば書店ってあんまりじめじめしていて欲しくないなぁ。並んでる書籍への悪影響、ってだけじゃなくてイメージとして。