読み週記 2 月

 

第4週(2/26〜3/4)

 職場の同僚と、職場がある駅の近くの書店に行った。小さな書店でゆっくり店内を見たわけでもないけれど、どこの本屋も雰囲気が違っていて面白い。書店の棚と地域性の相関関係について調査した人っていないだろうか。

 別の職場の人に借りた中崎タツヤ『身から出た鯖』(少年画報社)の5巻を読む。中崎タツヤはどのマンガも似たような雰囲気で、どれもこれもてきとう感がにじみ出していて良い。下手な絵と独特の間が合っていて良い。
 本の内容よりも、その本を貸してくれた人の面白い個性について幾らでも話が出来そうだが、そうも行かないのでこの辺でよすが、とにかく世の中には面白い人が一杯いる、ということでなお良い

 毎回物語が佳境にさしかかり、毎回のようにクライマックスが訪れる不思議なマンガ、浦沢直樹『モンスター』(小学館)の16巻。以前の巻を友達に貸したり家のどこかに埋めてしまって、今までを通して読めないのは少し残念ながら、相変わらず面白くて良い。
 物語は今度こそクライマックスに向かっているようで、少しずつ色んな謎が明らかにされつつある。絡み合う意図と意図。昔この人の絵が嫌いだったことなどすっかり忘れてしまった。

 自分が本やまんがが好きだからと言って、人とその話ばかりするわけには行かない。別に他の話がないわけではないんだけど、最近人と本の話をするとなんだか申し訳ない気持ちになってしまって、あまり引っ張らずにやめてしまう。それくらいで丁度良いくらいなのかどうかは聞いてみないとわからないけど、怖くて聞けないのだ

第3週(2/19〜2/25)

 再読の誘惑に襲われている。以前にも書いたかもしれないけど、昔ある友人に「一度読んだ本を読む時間があったら新しい本を読んだ方がいい」と言われて不思議に納得したことがある。自分自身ではそうは思わないけど、考え方としてはわかる。それではあまりにもつれなかろうて、と感じるけど、確かに未読の本は溜まって行く一方だし、読みたい本、ジャンルも多いのだ。

 ジョン・ヴァーリイ『へびつかい座ホットライン』(ハヤカワ文庫)は、読んでいるウチに訳が分からなくなりそうで面白い。クローン技術が進化した未来世界では、人間の記憶を保存して、その時点でのクローンを創ることが出来るようになっている。その結果として、主人公の科学者リロのクローンが創られて、物語を引き継ぐようになるのだ。
 作り物であるクローンと本人の違いが肉体と、現在と保存された記憶の時点との経験の差以外にない、というのが当たり前の認識(もちろん当人は多少のとまどいを覚えるけど)になってしまっている、という現実を簡単に書いてみせるので、クローンに限らず、その他の技術についても、それが当たり前のように書かれているあたりが、SFの醍醐味っぽくて良い。SF的なギミックが、すでに世界の創造に直結していて、その世界の中で物語が進んでいく、というのは定番的だけど、本来SFに感じていた面白さであるようにも思えるのだ。

 今週はこれだけ。少ないと思われるでしょうが、本当に少ないので仕方ない。生活の中に読む時間を作れずにいる。かといって遠くまで出勤するのも嫌だしなぁ。

 

第2週(2/12〜2/18)

 第1週は月曜日が祝日だったので更新もおやすみ。祝日にかこつけてさぼっただけの話なんだけど、今年は月曜休みが多いので、いい口実が見つかったと一人ほくそ笑む。

 ジャン=ジャック。フィシュテル『私家版』(創元推理文庫)は、絶版だった物が、文庫化された様子。この本を買った次の『本の雑誌』(本の雑誌社)で、「もう絶版」と書いてあってちょっとびっくりした。結局読み終えたのはその次の次の『本の雑誌』が出る頃だったけど。
 フランスの文学界で実際にあった事件をヒントにして作られた物語で、ある出版人の恐ろしい復讐の物語。復讐相手の書いた本の存在を凶器とする、という珍しいタイプの文学ミステリーで、外国の文壇の描写などが面白い。復讐の相手役のキャラクターも個性的で、物語にもテンポと独特の雰囲気がある。ちょっと上手く作りすぎている感があるけど。

 『本の雑誌』3月号は、発行人目黒引退後、浜本新発行人による最初の号。三角窓口の回答者が椎名から浜本に、編集後記の書き手も椎名・目黒コンビから営業杉江、浜本のコンビに変わった他、いくつかの点で変化がある。雑誌そのものが面白くなくなっていたりする感じはないのだが、考えようによっては、最近は昔ほどで無くなっていたりもするので、徐々に新体制に移行しつつあったのかもしれない。
 今は目黒・椎名のコンビがあまり表に出なくなった以外、大きく変わった感は無いが、むしろ変化を感じるようになるのはこれからかもしれない。
 今月の特集「ぬき足さし足恥ずかし本!」はヒット。人それぞれ中身は違う物の、本を買うときに「ちょっとこれは恥ずかしい」と思う本が語られている。冷静に考えれば自意識過剰以外の何物でもないんだけど、確かに抵抗を感じることは時折ある。特に、すっかり面の割れている近所の書店などで買うときは、必要以上に意識してしまうことがあって、これがまた恥ずかしい。半分仕事のためでもあるんだけど、毎週定期購読でジャンプを読んでるのなんかも、時折以上に恥ずかしくて、つい別の本と一緒に買ってみたりしてしまう自分がいるのだ。でも、文庫なんかを買っても裏のバーコードが書店員が見るところなので、書名なんか気にしていないと思うけど、 定期はばればれだよなぁ。

 友達の家で発見したときだけ持ってくるので、途中が抜けているんだけど、『COMIC CUE』(イーストプレス)の9巻を読む。昔は江口寿史の責任編集だったような記憶がおぼろげにあるんだけど、どうやら全然違うらしい。どうしてだろう。
 何やら不思議なマンガを書くマンガ家が、一定のテーマに乗っ取ってマンガを書く、という趣旨の雑誌。不思議なマンガかが多いので、何が面白いのかわからないものや、そもそもなんのことが書いてあるのかわからないマンガがあったりして、非常に面白い。それぞれあくが強いのが多いので、好みが別れたりもすると思うけど、個人的には今号ではとりみきが面白かった。

 連休なんかがあったりして、たくさん本が読めるかと思いきや、毎週末の夜遊びがたたって全然そんなヒマがない。朝方帰ってくると、あんまり思い物は読みたくないので、どうしても軽い物を読んだり、あまりページが進まなかったりしてしまうのだ。どうもいかんいかん、と小さく反省。