獣の聲



 「獣の聲(The Voice of the Animals)」はWorlds of Cthulhu誌の第4号に掲載されたChristopher Smith Adairによるシナリオです。現代イギリスのブリチェスターおよびその周辺地域を舞台としています。プレイヤーキャラクター(PC)は英国版デルタ・グリーンとでも言うべき「PISCES」という組織の一員となり、事件解決の任務につくよう設定されています。

 本シナリオをプレイするに当たって、例によって若干手を加えています。

 舞台 現代イギリス ブリチェスター周辺 → 現代日本 白凰市周辺
 所属組織 PCは全員がPISCESのメンバー → PCはクサカベと何らかの関わりがある


 正直言って「Super 8」の時ほどコンバートに気を使いませんでした。参加した皆、無茶言ってゴメン。
WoC#4



【探索者】
水原 正人 (医師) 35歳 (プレイヤー:でじ子の父)
 國史院大学付属病院に勤務する医師。三流医大卒であることをコンプレックスにしている。カルテは英語で書く。開始時正気度:70
廣本 浩介 (医学生) 21歳 (プレイヤー:“Junnkie”)
 水原から指導を受けている國史院大学医学部の学生。心の内外で水原を軽蔑している。カルテはドイツ語で書く。開始時正気度:60
竜牙 神 (作家) 25歳 (プレイヤー:whity)
 ラノベ作家。名前はペンネーム。開始時正気度:75
茂山 功 (エンジニア) 25歳 (プレイヤー:一人)
 クサカベの孫系列くらいの工務店の技師。腕は確か。開始時正気度:40
大石 大介 (プロボクサー) 28歳 (プレイヤー:LB)
 茂山の勤める工務店でアルバイトしているプロデビュー前のボクサー。28歳でプロデビュー前というのはいかがなものか? 竜牙の書くラノベの大ファンであり、愛車(痛車)にはラノベの登場人物のイラストが書かれている。開始時正気度:55



【プレイ後の感想】
 ある青年の変死の原因を探る事になった探索者たち。調査を進めていくうちに数日前に起こった殺人事件や、80年前の奇怪な出来事が関係している事が明らかになり、解決の鍵を握るチンパンジーの行方を追って神話的領域に踏み込んでしまうというシナリオです。カルト的音楽活動やエコテロリストといった現代的な題材を加える事により、不気味な現実感を煽っています。

 このシナリオはラムジー・キャンベルの短編「The Plain of Sound(『真ク・リトル・リトル神話大系(9)』における邦題は「異次元通信機」)」の後日談になっており、小説の登場人物が残した記録や奇怪な装置が次々と登場します。小説の後日談的シナリオには前例がありますが、このシナリオは単なる後日談に留まることなく、更なるアイデアの一部として小説を利用しています。

 ストーリーの展開に関しては、ほぼ情報の取り逃しはありませんでした。多少の前後はあったものの、シナリオで推奨されている通りの流れでストーリーは進みました。これはこのシナリオが非常に良く練られたものであるのと同時に、5人のプレイヤーの誰かが場面毎の突破口を見出してくれたからです。キーパー的には非常にハンドリングしやすいタイプのシナリオで、セッションも概ねスムーズに進められたと思います。

 キャラクター作成の時間を除くと、プレイ時間は約4時間でした。私は常に4時間完結を目指しているので、キーパーとしては結果に満足しています。



【アラーラ】
 以下にシナリオのラストシーンで現れる珍しいグレート・オールド・ワン「アラーラ」の能力値を訳出しておきます。興味を持った方がいましたら是非原文を見てみてください(Amazonで手に入るみたいです)。非常に良くできたシナリオだと思います。

アラーラ、グレート・オールド・ワン
「話の中に出てくるのは『カタツムリの角』、『青い水晶のレンズ』、『絶えず目鼻立ちの変わる顔』、『生きている火と水』、『一頭多身の怪物』などだ。しかし、このような比較的正気の期間は長く続かない。正気でなくなった時は、きまって顔一面に恐怖がみなぎり、全身を硬直させ、自分でもわけの分からないことを叫び出す。「あいつが生贄から奪ったものをおれは見た、あいつが生贄から奪ったものをおれは見たんだ!」」――ラムジー・キャンベル『異次元通信機』

アラーラ アラーラは知性のある生きた音で構成された存在です。未知の異次元・スルグオ湾からやって来ます。可視形態の時には象ほどもある青緑色のほぼ球形をしたクリーチャーとして出現します。体の表面はいくつもの人外の顔で覆われており、魚の口のように顎をパクパクさせています。黄色の眼は絶えずキョロキョロしており、決して長い間一つ所を見ていません。球状の身体からはカップ状のベルのような肉趾がついたひょろ長い足が何百と突き出しており、これで歩いたり食事をしたりします。これらの手足は対にはなっていません。アラーラは気まぐれにそれを形成するのです。体の表面から、時折揺れる茎の先端に青い結晶のようなもののついた、触覚状のものを突き出します。これは何らかの感覚器です。その身体の表面は脈打って変化し、波打って煌いて、絶え間ない共鳴に包まれています。動く時、その唸りは百万の耳障りなチャイムが一斉に鳴り出したとしか言いようのない音になります。
 アラーラは底なしの飢えを満たすことのできる物質的な次元に、侵入したがっています。

教団:アラーラの崇拝者は地球上では知られていません。スルグオ湾の住人が不承不承仕えて、アラーラが使うことのできる物質界への入り口を開けようとしています。それまでは、アラーラは生贄として用意されたスルグオ人を食べています。それにはほとんど滋養分がありません。

攻撃と特殊効果:アラーラには実体がないため、物理的な攻撃は無効です。耐久力はPOWと同値です。INTやPOWに影響を与える呪文は効果があるかもしれません。POWを失えば、同様に耐久力も失います。ある特定の音もそれに影響を与えることができます。
 アラーラは犠牲者の生命力を吸い取るために、その触手を用いて攻撃します。毎ラウンド1D6のCONを吸い取って、このダメージは通常の方法では治癒しません。アラーラは一度に1本の触手でしか目標から吸い取ることができませんが、一度に何人ものターゲットに吸い付くことができ、それぞれからCONを吸収します。CONを吸い取られた犠牲者は硬直し始めます。CONを吸い尽くされた犠牲者の身体の有機的な成分は壊れやすいガラスのような緑色の物質に変容してしまいます。数日の内に、体は自重で崩壊し、鮮やかな緑色の塵と化してしまいます。吸い尽くされた死体を見ることによって1/1D6の正気度を失います。アラーラは物質的な存在ではないため、触手を振りほどく方法はありません。もし犠牲者がアラーラの前から逃げ出せたとしても、吸盤はついたままです。アラーラの吸盤を取り外す唯一の方法は、アラーラを打ち破ることです。

アラーラ、チャイムを鳴らす恐ろしきもの
STR n/a  CON n/a  SIZ 70  INT 15  POW 50
DEX 17   移動 15  耐久力 50

ダメージ・ボーナス:n/a
武器:吸いつき 75%、ダメージ 毎ラウンド1D6のCONの吸い取り
装甲:なし。ただし物理的な攻撃は無効です。耐久力を0まで減らされるとアラーラは消え、スルグオ湾に送り返されて、そこで1年間大人しくしていないと、私たちの世界に戻ってくることはできません。この次元から放逐される時、急激な音の真空を作り出します。100フィート以内にいる者はCON×5のロールを振って、失敗すると1ヶ月の間完全に耳が聞こえなくなります。<医学>ロールでこの期間を2週間に減らすことができます。
呪文:キーパーが望むもの。
正気度喪失:アラーラを見て喪失する正気度は1D8/1D20です。



【探索者 結果】
水原 正人
 アラーラを見て一時的発狂(幻覚あるいは妄想)→行方不明(狂気の中、武器となる共鳴版にてアラーラをもといた世界へと追い返す)。正気度:70→55
廣本 浩介
 水原を助けようとして異界に留まり、アラーラにCONを吸い尽くされて結晶化→死亡。正気度:60→49
竜牙 神
 異界から脱出→生還。正気度:75→71(ミッションクリア・ボーナス含む)。
茂山 功
 アラーラを見て不定の狂気(奇妙なもの、異様なものを食べたがる――彼が「食べたがった」ものとは、もちろん…)→行方不明。正気度:40→3(今回のMVPではないだろうか?)。
大石 大介
 アラーラを見て一時的発狂(パニック状態で逃げ出す)。異界の彼方へ走り去る→行方不明。正気度:55→43



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