砂の本

英名:The Book of Sand (伊名:El libro de arena) 外見:八つ折版の本
数値効果:1項目読むたびに<クトゥルフ神話>への加算+1%、正気度喪失:1/1D4、下記参照
由来:
 一見したところヒンドスタニー語訳の聖書に見える八つ折版のこの本について、わかっていることはわずかです。1973年にアルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスが、自宅に来た聖書のセールスマンから買い取り、その後気味が悪くなってアルゼンチン国立図書館の中に放置してしまった、というエピソードが知られているだけです。タイトルの「砂の本」とは「砂漠の砂のように無限にページのある本」という意味で、どんな難しい問題にも(それがクトゥルフ神話的トピックであっても!)正解を与えてくれる本です。読む人間が質問を声に出して言えば、正解が書かれているページを開くことができます。それ以外の方法でこの本を読もうとしても、無意味な記述が続くページを延々と繰る破目になります。また、最初のページを開けようとしても開けられません。何度やっても表紙と指のあいだに何枚ものページがはさまってしまいます。まるで本からページがどんどん湧き出てくるように……(これを目の当たりにした探索者は正気度チェックが必要になります。0/1D3)。最後のページでも同様です。ページは古い聖書のように2列に印刷され、上の隅にページ番号が振られていますが、番号はバラバラです。40514の次が999になったりしています。そして、同じページには二度とお目にかかれません。なにしろ無限にページのある本ですから、確率的に不可能なのです。
 ページに書かれている言語は、読む人間の母語に自動的に翻訳されます。
 「砂の本」はそれを持つものに無限の英知をもたらしてくれるため、ニャルラトテップをはじめとするグレート・オールド・ワンや、カルティスト達によって常に争奪の的になっています。しかし、本自体が強力な結界を持つため、奪取には非常な困難が伴います(たとえば、自らの置かれている建物をまるごとダンジョン化する、など。)。
 カルティストの中には、その性質から推測して、「砂の本」はヨグ=ソトースの肉体の欠片から作られたものだと主張する者もいますが、真相は定かではありません。

『砂の本』
 著者:不明
 言語:読む人間の母国語
 <クトゥルフ神話>への加算:1項目読むたびに+1%
 正気度喪失:精読1項目ごとに1/1D4 (※斜め読み:不可能)
 執筆・出版年代:不明。印刷技術・ページの焼け具合・擦り切れ具合から推測すると19世紀。
 呪文:理論上は、すべての呪文

登場シナリオ:『ブラック・ファラオへようこそ!』 (外来:中西鉄山氏作成 オリジナル・シナリオ)

有味: 「アイテム・カルテ」創設4年目にして初めての外来患者がっっっ!!
葵: 中西鉄山様より紹介の症例ね。「自作の魔道書」という事で搬送されてきたみたいだけど、ギミックとかアイテムの立ち位置かしら。
有味: 探索者はニャルラトテップと「砂の本」争奪戦を展開、本の効果でニャルラトテップを退散させて辛くも逃げ切ったとの事です。
葵: 書かれている内容というよりも、書物自体のパワーがシナリオのギミックになっているわね。
有味: 確かにそういわれると「本の形をしたアイテム」的かもしれませんね。かつて私は「クトゥルフのどこが好きか?」と聞かれたら、迷うことなく「魔道書!」と答えていたので、未だに魔道書には強く惹かれます。『エルトダウン・シャーズ』とか『クタート・アクアディンゲン』という字面からは内容が想像もできない書名を初めて見た時は……。
葵: 治療法としては、この後どうやって探索者からこの本を取り上げるかが問題かしら?
有味: キャンペーンやっているなら尚更ですね。探索者に握られたままだと、以降は謎解きになりませんからね。個人的にはニャルラトテップに一矢報いさせてみたいので、ある日ページめくってみたら中身がボルヘスの『幻獣辞典』に変わっていたというのはどうでしょうか? しかもその中にはニャルラトテップの化身の一つがエントリーされていて、それに気付いた探索者は正気度を喪失するという……。
葵: ……ブラック・ユーモア的オチにしてもタチが悪いわね。
有味: 私ゃ勉強不足でボルヘスといったら『幻獣辞典』くらいしか知らんので。
葵: こうして人のアイデアを見せてもらうと、その人なりの嗜好やアレンジの仕方が分かって参考になるわね。
有味: 中西鉄山様、ありがとうございました。引き続き外来患者募集中。


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