黄色の習作

英名:A Study in Yellow 外見:キャンバスに描かれた油絵
数値効果:
  • 最初に油絵を目にした時に正気度チェック(0/1D2)
  • 絵の中のローブの人物が動いているのに気付くごとに正気度チェック(0/1D4)
  • 現実の世界に現れたローブの人物を目にすると正気度チェック(1/1D2)
  • 絵を破壊しようとしてそれが不可能なのに気付くと正気度チェック(0/1D4)

由来:
 「黄衣の王」ハスターと《名状しがたい誓約》を結んでその下僕と化した19世紀末イギリスの怪奇画家、スコット・カースウェルが描いた一連の肖像画です。
 月明かりの下を歩む極めて写実的に描かれたモデルの背後から、黄色いぼろぼろのローブを着た胸のむかつくような人物(実は「黄衣の王」の御姿)が追いかけてくる、という構図になっています。一見して非常に不気味な印象を与える絵画です(正気度チェック0/1D2)。
 描かれたモデル本人がこの絵を見た瞬間から真の恐怖が始まります。絵を改めて見返すたびに、黄色いローブの人物がモデルの方にわずかながら近づいているのに気付くのです! これを目にした者はそのたびに正気度チェックが必要です(0/1D4)。
同時に現実の世界にも、絵に描かれているとおりの黄色いローブの人物が現れ、モデルの住居を監視し始めます。この姿を目にしたら正気度チェックが必要です(1/1D2)。絵の中のローブの人物の接近度に比例して、現実のローブの人物の監視も露骨になります。
 そのまま手をこまねいていると、12日ほどで絵の中のローブの人物はモデルのところまで到達し、絵の中のモデルを絞め殺してしまいます。同時に現実の世界でもローブの人物がモデルの住居に侵入し、モデル本人を絞め殺してしまいます。どんなに厳重に警戒してもこの侵入を防ぐことはできませんし、どこに逃げても追いつかれてしまいます。汽車の中でも豪華客船の中でも! 後にはモデルの死体と、死後何年も経過したローブを着た腐乱死体が残されることになります。
 この絵を破壊することはできません。絵に与えられたダメージは全て現実のモデル本人へ跳ね返ってきて、絵そのものは傷ひとつ付きません。これに気付くと正気度チェックが必要です(0/1D4)。現実の世界に現れるローブの人物に対する攻撃も同様です。対処法はただ一つ、カースウェル本人を見つけ出し、殺害することです。
登場シナリオ:『黄色の習作』 (外来:中西鉄山氏作成 オリジナル・シナリオ)

有味: またしても中西鉄山様による症例の紹介です。いつもいつも助かっております。
葵: 「1896年のロンドンを舞台にして、プレイヤーの皆さんにはシャーロック・ホームズ、ワトソン博士、レストレイド警部の探索者3人を演じてもらったシナリオ」とのこと。ホームズとクトゥルフの親和性は「クトゥルフ・バイ・ガスライト」で公式に模索されているテーマね。
有味: キャラクターの能力値はガスライト準拠だったんですかね? 探偵小説史に燦然と輝くビッグネームのホームズはINT 19などを持ちますので、黄衣の王といえどもうかうかできませんよ。
葵: シナリオはドイルの「緋色の習作」にアイデアをもらった内容だったようね。自分の得意分野をシナリオのネタにできるのは強みよね。
有味: 私ゃホームズといえばがきんちょの頃に読んだ「まだらの紐」くらいしか覚えていないので、「ガスライト」モノにはインスピレーションが湧きませんすいません。
葵: 描かれた画の内容が恐怖と連動するというのは古典よね。
有味: 時代を移せば心霊写真モノの怪談にもこのプロットがありますね。ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』も近似テーマかな。
葵: あなたもこのプロットを使ったことがなかったかしら?
有味: あります。葵先生も参加したシナリオ「レン高原の魔宴」ですね。この時は“写真に写った祭壇に謎の人物が近づいていく”という、誰かが写真の奥へ向かって進んで行く、今回の症例とは逆のギミックでしたが。「Super 8」の“映像から抜け出してくる”というギミックも類例といえるかもしれません。


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