自己満足。

- あとがきっぽいもの -

 最後までお付き合いしてくださった5名のプレイヤーの皆様、お疲れ様でした。当初の予定を1ヶ月ほどオーバーしましたが、無事完結させる事が出来ました。
 完結に当たって本シナリオの解題を残すこととします。以後は私の備忘録&自己満足となりますので、興味のない方は「こちら」を押してトップページに戻って、他の記事を読んでください。



1.“結晶化した知性”クィス=アズについて
 前作『暗く静かなるもの』に続いてのマイナー神格(グレート・オールド・ワン)の起用です。未訳サプリメント『The Creature Companion』にパラメータが収録されています。私の拙い翻訳結果を以下に載せておきますので、細部まで正確な情報を得たい方は原書をご覧ください。
 なお、私はQ'yth-azを「クィス=アズ」と発音していますが、ケイオシアムの発音手引きだと「キース・アズ」と発音するようです。

クィス=アズ、グレート・オールド・ワン
「異界の鉱物構造体は集まったグループの頭上高くにそびえ、巨大な水晶の塊は不自然な内からの光で輝いていた。形を変えながら成長し――拡張し、収縮していた。巨大な切子面のある結晶がそびえ立つ塊から花開くように萌芽した。ぼんやりと輝く半透明の存在の内部から、色彩と光の狂的な表れがきらめき、閃光を放った。……構造体から伸ばされた鋭利な水晶の長細い触手が周囲を一撫でし、霜のように地面に広がった。……触手に触れられた生命体はすべて、鉱物に変えられ――乗っ取られてしまった。触れられた生命体はすべて、硬いガラスの塊に凍り付いてしまい、鉱物構造体の中で永遠に生かされ続けるのだ。」――スコット・ディビッド・アニオロウスキ『早霜』
  この異界の存在は遠く離れた光無き世界ムトゥーラを住処としています。

教団:クィス=アズは組織的な教団を地球上には持っていませんが、遠く離れた世界で崇拝されているかもしれません。今日では、新世代運動の提唱者の何人かは、無意識の内にこのグレート・オールド・ワンに仕えてしまっているのかも知れません。そのような水晶や石に頻繁に触れている者がクィス=アズから送られた超自然的な夢や幻視によって、奉仕するように騙されているのかも知れません。

その他の特徴:この知覚を持った結晶状の存在には、鉱物で出来た物を通して何処であろうとも自らの意向を送ったり影響を及ぼしたりする力があります。水晶製品に接触していれば、鋭敏な精神の人はクィス=アズの計画を受信することが出来ます。しばしば、このグレート・オールド・ワンの影響は、こうした敏感な人々の夢となって現れます。クィス=アズは地球への導管として利用するために、常に水晶に触れている特別鋭敏な人間に憑依することが出来ます。顕現の際には、そうした宿主は変容し、クィス=アズと完全に同化してしまいます。
 クィス=アズは移動することは出来ませんが、霜のような蔓を伸縮させることが出来ます。この水晶の触手に触れられた細胞はどんなものであれ、硬い鉱物に変化してしまいます。また、クィス=アズは角張った重い結晶や鉱物を突き出して、その巨大さと重さでもって犠牲者を押し潰す事が出来ます。
 晴れ渡った空の地平線の上にムトゥーラが見えている時にだけ、クィス=アズは地球に現れ、留まることが出来ます。例えば垂れ込めた雲などで妨害された場合、クィス=アズは顕現出来ませんし、無明のムトゥーラへと追い返されてしまいます。

クィス=アズ、結晶化した知性
STR 200  CON 95  SIZ 115  INT 15  POW 25
DEX 6   移動 0
                      耐久力 105
ダメージ・ボーナス:+19D6
武器:蔓 90%、ダメージ 結晶に変えてしまいます
押し潰し 80%、ダメージ 19D6
装甲:硬い結晶による15ポイント。加えて、クィス=アズは毎ラウンド1D10ポイント分耐久力が回復します。
呪文:クィス=アズは精神に作用する呪文を使います(≪精神的従属≫、≪魅惑≫、等)。他にもキーパーが望む呪文を知っているでしょう。
正気度喪失:クィス=アズを見て失う正気度ポイントは1D8/5D10です。



2.システム、ルールについて
 諸刃の剣的ヒーローポイント「幸運のお守り」の使用確認をめぐる一連のメールのやり取りが、思いの他このシナリオを長引かせました。しかし、この「幸運のお守り」の使用が本シナリオの肝でもあったので、まったくの無駄ではなかったと信じています。・・・信じたい。

 全てのPCには主要5能力値の他に【水晶の寄生度】という隠し能力値が設定されていました。この値は0から始まって「水晶のお守り」を使う度に+2B13区画へ行く度に+1世羅と同盟を組んだPCが手に入れる魔術<クィス=アズの芽を発芽させる>の対象となる度に+1ずつ増えていきます。

#5開始時点での各キャラクターの【水晶の寄生度】
キャラクター名 水晶使用回数 B13区画来訪 魔術 合計
長内 香織
鈴原 志郎
英 東児
帯刀 祐二
出羽 清虎









-
-
-
11

10
12


 【水晶の寄生度】が10を上回ったキャラクターはラストシーンで結晶化します。世羅と同盟を組んでいるPCは原則として結晶化を免れますが、クィス=アズの招来を成功させるには5名のPC/NPCが結晶化する必要があり、もし結晶化条件を満たすキャラクターが5名に満たない場合、世羅の同盟者で【水晶の寄生度】が10超のPCも結晶化してしまいます(帯刀祐二がこのケースです)。
 巳堂英一が開発する<クィス=アズの芽を枯らす>装置によって【水晶の寄生度】を下げる事が出来ましたが、完成した装置は世羅、英東児、帯刀祐二によって破壊されてしまいました。

 ゲームの性質上どうしても【探索】偏重になってしまいますが、B13区画へ行く都度新たな崩落の危険があり、その崩落から逃げるために【運動】ロールが必要でした。もっとも崩落の危険予知に【探索】が先行して判定され、それに成功すれば崩落を回避できたため、これはあまり意味のない設定となってしまいました。体力勝負(逃走・追跡や戦闘)に持ち込めば当然【運動】の出番ですが、そのような行動に出るPCがいなかったため、またしても【運動】の出番はラストシーンの触手回避のみとなりました。



3.ストーリー展開について
 先に結論を言うと、ミッションは完全失敗です。
 今回のシナリオのミッション・クリア条件は
#4終了時点で苑原柚織が生きており、第3回召集シーン(#5)のクィス=アズ招来を柚織の“雲を呼ぶ声”で阻止する
 というものです。そこに至る過程で日下部矢尋や巳堂英一の協力が得られれば、クィス=アズの犠牲者はより少なくなったでしょう。

 柚織が死んだ時点でバッドエンド確定です。柚織を死なせないためには、#4の3アクション目で彼女をコーラスコンクールに参加させない事が必須行為でした。ただし、彼女は頑なにコンクールに参加すると主張するので、正攻法で参加を阻止することは困難です。柚織を拉致して行動の自由を奪うという強引な方法も考えられますが、それよりも更にスマートで確実な方法がありました。結局PCが誰一人として使わなかった「召集」を用いて、柚織を廃ビルへと呼び出してしまえば良かったのです。「召集」というアクションに「キャラクターを集める」という表の効果と、「他のキャラクターのアクションを邪魔する」という裏の効果があることに気付けるかどうかが勝負の分かれ目でした。結晶化直前にしつこいまでに【出題】を重ねたのは、ギリギリまで「召集」を発動するチャンスを作るためでした。

 #4におけるルート分岐の条件は「#4開始以前に、召集以外で個人的に矢尋/柚織に会いに行っている」というものです。世羅と同盟関係にあるPCは自動的に世羅ルートへの分岐が発生します。ただし、矢尋に関してはNGアクション「鍵ばら撒き」があり、これに該当した鈴原志郎はルート分岐が発生しませんでした。個別ルートに入ったPCは該当NPC(矢尋/柚織/世羅)と一緒に行動している際に発生した判定に+1のボーナスがつきました。



4.ノンプレイヤーキャラクター
 シナリオ開始と同時に5名(後に矢尋も加わって6名)のNPCが登場するので混乱するかと思いましたが、プレイヤー諸氏が積極的にNPCに関わってくれたおかげで、どのNPCも活き活きと活躍してくれました。今一つNPCの動きが悪かった『暗く静かなるもの』と比較して、改善されたポイントだと密かに自負しています。

キャラクター投票 集計結果(有効投票5票)
1位
2位


月辺 鈴姫(3P)
英 東児(2P)
陵 杏里(2P)
巳堂 英一(2P)
ロクスケ(2P)
 
6位
7位

9位
陵 世羅(1.5P)
出羽 清虎(1P)
巧美(1P)
帯刀 祐二(0.5P)
 予想通りといいますか、鈴姫人気あるなぁ(2票入っただけですが)。鈴姫が「速瀬水月」ちっくだという感想は哀・狂兄貴君に指摘されるまで素で気がつきませんでした。設定したり自己紹介を考えている段階で「スレンダーで透き通った感じの美少女」という感想を他人事のように考えていました。今度、もし哀・狂兄貴君と卓を囲むことがあったら、水月ちっくなNPCを出してあげましょう。
 投票者が深く関わったNPCに投票されているのが顕著な傾向です(あたりまえ)。PCにも3票入ったのは嬉しいですね。
※7位の巧美は誤解から入った票と言っても良いでしょう。『クリスタル・ヴォイス』の巧美が『暗く静かなるもの』の芦鷹巧美と同一人物である保障はありません。もちろん、彼女と一緒にいた老エーリッヒがエーリッヒ・ツァンである保障もありませんですよ?

【NPC解説】

赤室翔彦
 世羅の不倫相手という損な役回りから人気のない翔彦ですが、命がけで「幸運のお守り」の危険性を実証してくれるあたり、結構いい人です。彼の結晶化(死)は避けられません(強制イベント)。彼の死を発端として「神話的事件」に巻き込まれていきます。

月辺鈴姫
 鈴姫は「発表会に参加した少女は結晶化する」というメッセージをPCに伝える、いわば柚織生存の可能性を模索させるための役柄です。彼女の死を踏まえて柚織のコンクール参加をどう考え、如何にして阻止するかがミッションの正否を左右するはずでした。
 ちなみに鈴姫にも生き残るチャンスはありました。ただし、鈴姫は柚織と違って「召集」によるアクション阻止はできません(鈴姫が「召集拒否」をするからです)。鈴姫を生き残らせるために必要だったのは、演舞場へ向かう彼女に「選考会に参加するな」と言ってやる事でした。プレイヤーの口からこの台詞は出てこないだろうと予想していましたが、案の定出てこなかったため、鈴姫も翔彦に続いて結晶化しました。

日下部矢尋
 遅れて登場する事で要チェック人物であることを匂わせた矢尋でしたが、あまり人気がありませんでした。二冊の魔道書の内容を知る上では絶対に外せない人物でしたが、もし#ex.で出羽清虎が会いに行かなければ、魔道書の内容も霧の中だったでしょう。翔彦と世羅のマンションを探索するためには彼の協力(部屋の鍵)が必要でした。部屋の鍵は個人的に矢尋に会いに行けば誰でも入手できました。

巳堂英一
 あまり目立たないNPCでしたが、彼のアーキタイプは「天才」です。地質学を専攻しながらも、あらゆる分野の科学・化学に精通しているのが英一です。神話的アイテム「クィス=アズの芽」を科学的に解析し、<クィス=アズの芽を枯らす>装置まで作り出してしまえるのは、彼が天才だからです。
 もしシナリオがハッピーエンドになった場合に重要な役割を果たすキャラクターでしたが、残念ながらそうはなりませんでした。

苑原柚織
 登場シーンからして「重要キャラクターです」という雰囲気が伝わってくるNPCです。魔術<雲を呼ぶ>を歌うのが彼女の役割であり、彼女の歌声なくしてミッションの成功はありえません。
 柚織を結晶化から救う手段は前述の通りです。第2回召集(翔彦の結晶化シーン)を「召集拒否」した柚織は、新たに発動される「召集」を拒否する事が出来ません。柚織といい鈴姫といい、「頑張れ」と応援してあげることで美しい友情が築けるかもしれませんが、神話的事件を生き残るためにはその先を考えなければいけなかった、というのはキーパーの高望みだったでしょうか?

陵杏里
 本人は登場しませんでしたが、内気で幸薄そうでありながらも身体は世羅並(実際に世羅でしたが)にナイスバディという設定にソソられるNPCです。地味で露出の少ない服装も逆に想像を掻き立てます(謎)。

陵世羅
 もう何ていうか、有味の好みが結晶化したNPCです。ラストシーンに近付くほど輝きを放つキャラクターになっていきました。
 『暗く静かなるもの』には明確な悪役がいませんでしたが、世羅は『クリスタル・ヴォイス』において揺るぎない地位を占める明確な悪役です。桜ルートのセイバー(謎)が如く、彼女を救う方法はありません。そんな彼女ですから、柚織のコンクールになんか行かなくてもへっちゃらです。彼女に「人間的な」判断を期待するのは、まったくの無駄なのですから。

その他のNPC
 ロクスケ、巧美、エーリッヒ、松本葵は事件とは関わりのないゲストです。



5.プレイヤーキャラクター
 早い段階でPC全員が同盟を結び、アクションの分散と情報の共有を実現しました。これは『暗く静かなるもの』の経験を踏まえた行動かと思いますが、今回の『クリスタル・ヴォイス』において、それは裏目に出たようです。
 ルート分岐には「召集以外で該当キャラと会っている」という条件が必要です。しかしアクションの分散を図った結果、特定のNPCに特定のPCが張り付く形となり、特定ルートの発生を妨げてしまっています。#4のルート選択時に「日下部矢尋ルート/苑原柚織ルート/陵世羅ルート/通常ルートの4ルートから選択」というキャラがいても良かったのです。世羅と同盟を組むや否や「オレは世羅と同盟組みました!」と高らかに宣言して全員同盟を抜けるという男らしいPCのおかげで、全員同盟に与しながら【水晶の寄生度】を上げるように他PCを誘導するというスパイ活動は行われませんでした。

 「クィス=アズの招来を阻止して世羅の陰謀を砕く」という目的が完遂されなかった以上、たとえPCが生き残っていたとしても、このミッションは失敗です。これは私のキーパリングの結果であり、プレイヤー皆さんの行動の結果です。ともに反省して、経験を次回に生かしましょう。



 尚、このリプレイを作成するに当たり、こちらさま→の素材を多数お借りしました。この場を借りてコッソリとお礼申し上げます。ありがとうございました。



 ミッションは失敗でしたが、楽しいセッションでした。参加してくれたプレイヤー諸氏と、最後まで読んでくれた方に感謝です。
 次回は・・・未定。いつかやるかも。やらないかも。

 平成17年4月21日 有味 風