鬼別郡

 漁村は冷暗な海底に近く、山村は人跡未踏の山奥への通り道です。
 人の目が見通せない場所で、息を潜めてこちらを窺う影があります。波音や木擦れにその吐息を紛らせて、復権の機会を虎視眈々と狙っているのです。
 目に鮮やかな新緑や紅葉が必ず陰を作り、砕けた波の泡が水底を不透明に遮ることを、決して忘れてはいけません。




鬼別渓谷おにわかちけいこく
 鬼別郡を東西に走る幽谷です。谷に沿うようにして国道が走っており、元白凰区へと通じています。深山の湧水、林間の渓流はすべて谷底の千夜来川に流れ込んでおり、清流となって海へと続いています。
(出典:「童織村怪話」)

加羽津村
 山間にある人口200名程度の小村です。主な産業は林業。
 ファフロッキーズ現象という怪奇現象が起こることで、一部で有名になっています。また、雨乞いの霊験のある加羽津神社にある龍穴は、異次元神ダオロスの領域につながっています。
 村でファフロッキーズ現象と神社の龍穴を関連付けて論じる事はタブーです。
(出典:「ファフロッキーズ現象」)

朱鉤湊町しゅくみなとまち
 鬼別郡で1、2を争う規模の海辺の町です。株式会社クサカベの海運基地として栄えており、港周辺にはクサカベ社有の倉庫や貸し倉庫が立ち並ぶ倉庫街があります。
 海を見下ろす高台の上には國史院大学の海洋研究所が建っており、周辺海域の地質的、生物的調査を行っています。
(出典:「Super 8」、他)

厨子村
 鬼別渓谷を外れた山奥、“バスの終点の、更に先”にあった寒村です。御三家と呼ばれる旧家(祁堂、香住、芦鷹)が多大な影響力で裕福なこの村を牛耳っていました。
 村人全員(15歳以下の児童を除く)に参列が促される奇祭「厨子夜婚の儀」が25年周期で執り行なわれていましたが、大規模な山崩れによって奇祭もろとも村は押し流され、壊滅してしまいました。現在、厨子村跡地は立ち入り禁止区域に指定されており、許可なく立ち入ることは出来ません。
 厨子村壊滅の真相にはズー=シャエ=クワン、オーリックス、そしてアザトースが深く関わっています。
(出典:「暗く静かなるもの」)

涼ヶ淵村
 鬼別郡の山間部にある村で、「清淵(きよふち)」「水流(ながれ)」「水澱(みずおり)」の3地区に分かれています。
 20年前、この村に潜伏していた魔術師の操る鰐によって水流地区の住民は一人残らずその餌食となりました。魔術師は実弟と警官隊によって射殺されました。
 しかし復活した魔術師によって再び村は阿鼻叫喚の地獄と化し、今度は清淵地区で78名の犠牲者を出した後鎮圧されています。
 陰鬱な水澱地区の老人たちは今でも魔術師の復活を信じ、待ち続けています。
(出典:「セベクの復活」)

底州村そこすむら
 人口2,500名程度の村です。過疎傾向に頭を悩ませて入るものの、特別うら寂しい村というわけではありません。海辺の村であるためかつては漁業を営む者も多くいましたが、今は漁業のみで生計を立てる者はほとんどいません。
 村の南東に位置する場所には入り江があります。東(海側)から西(陸地)に向かって100メートルほど海水が入り込んでおり、南岸は砂浜、北岸は50メートル級の絶壁になっています。砂浜から海を挟んで岸壁を見上げることの出来る絶好のロケーションですが、度重なる海難事故から忌み嫌われ、地元の人間はそこを「人喰い入り江」と呼んで近づこうとしません。
 入り江に面した崖に埋まるようにして、ここには「古のもの」の砦がありました。もしかしたら未だに発見されていない遺跡が眠っているかもしれません。遺跡の守護者・ショゴスと共に。
(出典:「古の砦」)

底州湾そこすわん  
 岸に沿って朱鉤湊町や底州村がある海湾。
 底州湾には海の怪火“海神の迎え火”伝説があります。それは海中に光が見え、その光を見続けると海に飛び込んで戻ってこないというものです。海底にある竜宮から漏れる光であるといわれています。
 海底には海神(わたつみ)グルーンの神殿(かむどの)につながる入口があります。海神に従う少数の従者が、神の意向にかなうべく秘密裏に活動をしています。
(出典:「海神の神殿」)

千夜来川ちやらいがわ
 白凰市内を流れ、鬼別渓谷を抜けて海へと続く清流です。今でも古老たちはこの川を「ちあらいがわ(血洗川)」と呼んで恐れています(その由来は今後のシナリオで設定されるかもしれません)。
 2011〜2012年にこの川の流域で女性連続殺人事件(千夜来川暗号彫り事件)が発生し、天体ショーとの不気味な関連を見せた後、容疑者死亡で幕を閉じています。
(出典:「モノンガヒーラ川の暗号彫り」、他)

三杜村みもりむら
 三杜村は徒島(かちじま)、凪島(なぎじま)、常島(とこじま)という3つの島で構成されています。徒島が一番大きく、かつては三杜村の中心でしたが、昭和初期に火山の噴火により壊滅的被害を受け、凪島へ全島避難を実施、それ以来無人島となっています。徒島の火山は今でも活動中です。
 凪島の人口は約1,200人、常島の人口は約200人です。病院、警察、それに火葬場などはすべて凪島にあるため、常島では例外的に土葬が認められています。
 常島に伝わる両墓制の風習と、毎年旧暦の10月に開催されるゑびす祭の裏には、常人には受け入れることのできない謎が隠されています。
(出典:「嗤いゑびす」)

揺島町ゆらしままち
 揺島湾に沿って広がる漁業の町です。人口は約1,000人で、ほとんどの住民が漁業に従事しています。特段見るべき所のない、静かで退屈な漁港です。古くから土着の海神「潮神様」を信仰しており、豊漁と航海安全を祈願して5年周期で盛大な祭りを催しています。
 揺島湾沖の深淵で眠る潮神はクトゥルフの落とし子です。揺島町は潮神とその背後にいる偉大なるクトゥルフ神を崇拝する邪教徒の一大拠点です。しかしながら、先日執り行われた祝祭「潮神祭」の最中にアクシデントが起こり、潮神教徒を統べる教団の幹部が軒並み死亡するという大変な事態が起こりました。
 町は混乱していますが、潮神は未だ健在です。常闇の海底で、潮神は大いなるクトゥルフの復権の日を待ちわびながら、怠惰に微睡んでいます。
(出典:「潮神祭」)

分木村わくのきむら
 分木村は白凰市から車で2時間ほど(電車でもほぼ同じくらいの移動時間がかかります)の距離にある人口468人の小村です。風情があるほど鄙びてはおらず、当然都会のように活気があるわけでもない、中途半端に退屈な場所です。主要な産業は農業と林業です。
 分木駅前が村のメインストリートであり、そこから離れるにつれて民家もまばらになっていきます。駅周辺には商店街があり、ビジネスホテルや分木神社がこのエリアにあります。
 近くにある小山、分木山の山頂にある分木神社の洞穴奥宮には緑の神が潜んでおり、何らかの計画のために奇妙な植物の種を生み出しています。
(出典:「ワクワクの木」)

童織村わらおりむら
 人口33名の小集落です。杉林の中の僅かに拓けた土地に、20戸ほどの家屋が身を寄せ合うようにして建っています。住人たちはかつてこの地に住んでいた鬼を封印した武将と巫女の子孫であると言い伝えられています。
 ある猟奇的な事件の舞台となったこの村の住人は、たった一人の発狂した女性を残して、全員死亡するか行方不明になってしまいました。
 村にとって不幸なことに、言い伝えは真実でした。村外れの童織の滝に封じられていた童女鬼(わらおに)は不信心な宮司によって解き放たれ、結果、村は全ての住人を失いました。
 無人の童織村には、今でも童女鬼が潜んでいます。
(出典:「童織村怪話」)





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