Chill

『Chill』入門


!!!注意事項!!!
 以下は「終末同盟」での『Chill』のプレイ環境を元に記述されています。ハウスルールは導入していませんが、複数のサプリメントを複雑に混交させていますので、プレーンな『Chill』第2版ルールとは相違する記述があります。特に大きな変更点は、統合整理された『Beast Within』の技能ルールを採用している点です。



能力値、技能、技能レベル

 『Chill』のプレイヤー・キャラクター(=エンヴォイ)は8個の基本能力値を持ちます。身体全体の俊敏性を表す敏捷度(AGL)、手先の器用さを表す器用度(DEX)、キャラクターの運の良さを表す幸運度(LCK)、判断力や観察力を表す知覚力(PCN)、他者に与える印象となる人格(PER)、耐久力を表す活力(STA)、肉体的な力強さを表す筋力(STR)、精神力を表す意志力(WPR)です。
 基本能力値は10〜90までの数値で表され、高いほど優秀ということになります。また、ゲーム中の能力値ロールはこの基本能力値を元にしてロールされます。障害となる大岩をどかすための筋力ロールの成功率は、筋力10のキャラクターは10%、筋力90のキャラクターは90%というわけです。
 上記の基本能力値から算出される派生能力値がいくつかあります。
 活力と同値を上限として始まる現在活力は、キャラクターの肉体の疲労度を表します。ダメージを受けたり、全力疾走をすると現在活力は減少します。現在活力が0になったキャラクターは意識を失います。
 意志力と同値を上限として始まる現在意志力はキャラクターの精神的な疲労度を表します。恐ろしいものを目撃したり、アート(超能力)を使ったりすると現在意志力は減少します。現在意志力が0になったキャラクターは自由意志で行動することができなくなります。
 また、(活力+筋力)÷4で求められる負傷ボックスはキャラクターがどれだけダメージに耐えられるかを表します。負傷ボックスは□(=ボックス)で表され、ダメージを受けるたびにチェックを入れることで記録していきます。すべての□にチェックが入るとキャラクターは死亡です。
 技能は2つの基本能力値の合計を2で割った数値が基本成功率となります。知識技能グループの技能の基本成功値は(知覚力+意志力)÷2です。接近戦闘技能グループの基本成功値は(敏捷度+筋力)÷2になります。なお、取得していない技能の基本成功値(技能なし値)はさらに低くなります。例えば、知識技能グループの<建築学>を“取得した”キャラクターの技能判定の基本成功率は上記の通り(知覚力+意志力)÷2ですが、<建築学>を“取得していない”キャラクターの技能判定の基本成功率(=技能なし値)は(知覚力+意志力)÷10です。
 技能はポイントを費やして「レベル」を上昇させることができます。レベルが上昇すると技能判定の成功率が上がります。レベルには「見習」「師範」「達人」の3段階があり、「見習」レベルに達すると基本成功値に+15%、「師範」レベルに達するとさらに+15%(合計+30%)、「達人」レベルに達するとさらに+20%(合計+50%)のボーナスが加わります。
 つまり、知覚力50、意志力50のキャラクターが<建築学>を「師範」レベルで持っている場合の技能判定の成功率は[(50+50)÷2+15+15=80%]ということになります。
 もし上記のキャラクターが取得していない<建築学>の技能判定をしなくてはならなくなったら、その成功率は[(50+50)÷10=10%]にしかなりません。



判定

 『Chill』はD100による%ロールによって判定の成功/失敗を決定します。判定には2種類あります。一般判定と段階判定です。
 一般判定は対抗者がいない、あるいは成功度が不要なアクションの判定に使います。廃屋がいつの時代に建てられたかを判断するために必要なのは、<建築学>の一般判定です。
 段階判定は対抗者がいる場合、あるいは成功度が意味を持つアクションの判定に使われます。段階判定は4種類に結果が分かれています:L成功(=low、部分的成功)、M成功(=medium、成功)、H成功(=high、大成功)、C成功(=colossal、完全成功)です。
 ニコラス・リーが足音を忍ばせてトム・カークの背後をすり抜けようとする場合、段階判定による対抗判定が発生します。ニコラスは<忍び>の段階判定をして、トムは知覚力の段階判定をします。ニコラスの<忍び>の成功度が、トムの知覚力の成功度を上回れば、ニコラスはトムに気付かれずに彼の背後をすり抜けられます。
 また情報系技能の判定で成功度によって手に入る情報量に差がある場合、段階判定が使われます。スティーヴ・ウィアットは<捜査>技能でトトメス・ザ・エルダー王について調査します。

 L成功=スティーヴはトトメス・ザ・エルダーが展示品のミイラの1つとして世界を巡っている古代エジプトの王である事を知っています。ミイラの保存状態は素晴らしいものです。トトメス・ザ・エルダーの発見で、考古学者は古代エジプトの歴史を改めて見直す事になりました。
 M成功=スティーヴはL成功の情報に加え、トトメスのピラミッドを発見した考古学者が、その分野では物議をかもした人物である事が分かります。
 H成功=スティーヴはLとM成功の情報に加え、当初からトトメスと共に埋葬されていた宝物の多くが展示品の一部に入っていない事を知っています。
 C成功=スティーヴはLとMとH成功の情報に加え、トトメスの埋葬室からスフィンクス像を運び出した後、謎の死を遂げた者が3人いる事が分かります。

 上記のように設定がなされている場合、スティーヴの<捜査>の段階判定の成功度によって、得られる情報に制限がかかる可能性があります。
 さらに、段階判定は戦闘でも使われます。成功度が高いほど、キャラクターは敵に大きなダメージが与えられるのです。

恐怖判定
 アンノウンのクリーチャーと遭遇した場合、エンヴォイたちは現在意志力の段階判定=恐怖判定をしなくてはなりません。恐怖判定の成功度によるキャラクターへの影響は以下の通りです。

 失敗――キャラクターは直ちに2D10の現在意志力を喪失し、1D10ラウンドパニックで逃げ回ります。
 L成功――キャラクターは1D10ラウンド逃げ回るか、ただちに現在意志力を2D10喪失します。
 M成功――キャラクターは1D5ラウンド逃げ回るか、ただちに現在意志力を1D10喪失します。
 H成功――キャラクターは1〜2ラウンド逃げ回るか、ただちに現在意志力を1D5喪失します。
 C成功――キャラクターは恐怖判定から何ら不利な結果を被りません。

 以上の通り、キャラクターはC成功をしない限り、恐怖判定によって何らかのペナルティを被ります。
 逃げ回るか現在意志力を喪失するかの選択権はキャラクターに委ねられています。クリーチャーに今立ち向かうか、クリーチャーについて(どうしたら殺せるかといったような事を)もう少し多くを学んだ後に立ち向かうかを決めるのはプレイヤーです。



アート

 アートとはアンノウンの世界から力を引き出す能力です。魔法というよりは超能力に近いでしょう。アートの使用には1ラウンドの精神集中が必要になります(つまり、効果を表すのは早くても2ラウンド目だということです)。
 SAVEのエンヴォイが使えるアートは4つの流派に分かれています:「交信系」、「幽体系」、「防御系」、「回復系」です。
 アートの取得方法は技能と同じですが、成功率の算出方法が若干異なり、2つの基本能力値の合計を2で割ったものではなく、3で割ったものになります。たとえば「交信系」のアートの基本成功率は(知覚力+人格)÷3ですので、知覚力50、人格50のキャラクターの交信系アートの基本成功率は[(50+50)÷3=33%]です。
 アートの各流派は、その中でさらに細分化されており、そのそれぞれをディシプリンと呼びます。ディシプリンそれぞれが一つの技能と同じくみなされます。アートの各流派は『The Things』サプリメントの追加分を含めると6つのディシプリンに細分化されていますので、複数のディシプリンを使うには、それぞれのディシプリンについてレベルを取得しなくてはなりません。
 アートはエンヴォイがアンノウンと戦うには不可欠な力です。使用時のコストや効果範囲などを理解し、調査の中で効果的にディシプリンを使える人物こそが、優秀なエンヴォイと言えるでしょう。

《アンノウンの感知》
 《アンノウンの感知》はアートのどの流派にも属さない特殊なディシプリンです。何らかのアンノウンの存在/痕跡を感知するためのディシプリンで、コストはかかりませんが、精神集中は必要になります。《アンノウンの感知》の基本成功率は「知覚力÷5」%であり、レベルによってボーナスを得ることはできません(そもそもレベルの概念がありません)。
 《アンノウンの感知》に成功することによって、エンヴォイが辛くもアンノウンの罠を回避することもあるでしょう。《アンノウンの感知》こそ、何も知らない一般人とエンヴォイを分ける能力だと言えるかもしれません。

イビルウェイ
 アートの邪悪な使用がイビルウェイです。イビルウェイはアンノウンのクリーチャーが使います。イビルウェイのほとんどは、クリーチャーが持つ独特な特殊能力を再現するための、いわば「演出」的効果のためのものです。
 例えば、「幽霊(ゴースト)が霧が立ち込める墓場で人魂を伴って突然出現したら、気温が下がったように思われた」という状況はイビルウェイの使用で再現できます。ゴーストは《霧の波》、《鬼火》、《出現》、《気温を変化させる》のディシプリンを使ったのです。
 イビルウェイは「交信系」、「歪曲系」、「四大系」、「精神系」、「念力系」、「感覚系」の6つの流派に分かれています。少数ですがダメージを与えるディシプリンも存在しますので、エンヴォイは要注意です。



SAVE

 SAVE(銀道の永遠協会、Societas Argenti Viae Eternitata)は1844年にチャールズ・オボイランによって設立された対アンノウン組織です。アイルランドのダブリンに本部を置き、世界各地に支部を持ちます。アンノウンに立ち向かうSAVEのエージェントたちは、自分たちを「エンヴォイ」と呼んでいます。
 SAVEは非公式組織です。アンノウンは罪のない一般人からは秘匿された存在であり、SAVEは人知れず命懸けの暗闘を繰り広げているのです。しかし、エンヴォイは決して孤独な戦士ではありません。時には政府の高官の中にさえSAVEのメンバーがいるのです。ダブリンにあるSAVE本部のロビーには、SAVEの創設に関わった3人(チャールズ・オボイラン、ヘンリー・ボールトン、ストレンジ卿)の彫像があります。その台座にはこのように刻まれています。「1人で立ち向かう必要はない」。
 前述の通りSAVEの世界司令部はダブリンにあります。その下にあるのが北米(所在地、ニューヨーク)、南米(ブラジリア)、ヨーロッパ(プラハ)、アジア(東京)、アフリカ(カイロ)、オーストラリア・南極(シドニー)の6つの大陸司令部であり、さらに下部の組織である地域司令部以下を統括しています。
 SAVEの主な役割とはアンノウンのクリーチャーを倒して、その情報を蓄積することにあります。蓄積した情報のデータベース化により、世界中のエンヴォイが、仲間の血と汗の結晶を利用できるようにするのがSAVE世界司令部の役割なのです。エンヴォイはクリーチャーに対峙した時に悟るでしょう。かつて仲間が血を流して残してくれた情報があるからこそ、自分は目の前のクリーチャーの弱点を突くことができるのだと。
 1989年、世界中のSAVEの司令部が同時にアンノウンの襲撃を受けるという事件が起こりました。この世界同時襲撃により、SAVEはそれまで蓄積した記録のほとんどを失うことになります。SAVEは自らを解体し、地下に潜りました。
 2004年、SAVEはダブリンの地所に本部を回復し、再生しました。時を同じくしてミシェル・オボイラン、アンリ・ボールトン、33代目ストレンジ卿の、創設者の子孫たちが帰還します。
 翌年、SAVEは調査遠征隊を組織してそれを送り出しました。人類の反攻の始まりです。



アンノウン

 アンノウン(Unknown)は未知の力がやってくる源です。それは異次元かもしれませんし、我々が地獄や魔界と呼ぶ場所なのかもしれません。恐ろしいクリーチャーはアンノウンの領域からやって来ます。エンヴォイのアートやクリーチャーのイビルウェイはアンノウンから力を汲み出して行使するものとされています。
 世界中のありとあらゆるモンスターはアンノウンの領域から来たクリーチャーである可能性があります。伝説のさ迷える海賊船や移動する湖の背後にはアンノウンの陰謀があるのかもしれません。ヴァンパイアやワーウルフやマミーたちが、人間界の転覆を狙っている可能性があります。しかし全ての詳細は不明です。アンノウンなのです。
 『Chill』で扱う全ての事件にアンノウンが関わっています。不可思議なこと、正体不明の怪物は全てアンノウンです。

 「それはアンノウンのしわざだ!!」。

 これが『Chill』の全てです。



Chillトップへ戻る