時の砂漠

マイケル・ボーマン & マシュー・ハートレー 作




「Chaosium」社ホームページにて公開中のシナリオ

2008年3月8日
プレイ

参加キャラクター
 ティスマン
 ピオカーナ
 ガーリック
 スタイン
 ハンスヘルト
 シャゼ
 グリン
 破滅の岬から古フロルマーに戻ってきた一行はアヴァン公爵の賓客として最上のもてなしを受けています。

 ストラーシャの執行人ガーリックは前回手に入れた報酬で美術品を買い、それを彼の神・水の精霊王に捧げてエイラーンを得ます。エイラーン50ポイントはPOW1と交換できるので、ガーリックは6000LBを海に沈めてPOWを1ポイント上昇させました。

 ピオカーナは例によって混沌の裏神殿に行って、治癒の能力を持つ新しいデーモンを呼び出します。ピオカーナの指にはフェシール種の封印されたデーモン・リングがはまりました。また、シャゼに<攻撃>と<受け>にボーナスのあるデーモン・バトル・アックスを作ってやって、恩を売ります。このデーモン・バトル・アックスが後々大きく物を言うとは、まだ誰も知りませんでした。
 なお、冒険前・冒険後にデーモンを召喚してパーティを強化するピオカーナの活躍は、本編以外で無類の存在感を放つという意味で「らっきー☆ちゃんねる」と呼ばれる事になります(主にゲームマスターによって)。

時の砂漠
<虹彩異色の少女・前編>

 古フロルマーの雑踏を歩いていたスタインは、片手に笛を持つ灰色のボロボロの服を着た少女に出会う。右目が茶色、左目が緑色をしたヘテロクロミアの少女はスタインに皮袋を渡すと、一つ頷いて雑踏の中に姿を消した。
 皮袋の中には油布に包まれて一冊の書物が入っていた。それは『ヴァーリム・サーラバーの航海日誌』――100年ほど前の著名な探検家の旅行記である。『航海日誌』には溜息の砂漠にある伝説的なクォルツァザート帝国の都市の廃墟について記されていた。『航海日誌』は残念ながらサーラバーが都市の廃墟にたどり着いたところで終わっている。しかし廃墟には昔日の壮麗さを損なうことなくとどめたままの宮殿があるとも書き残されている。
 伝説のクォルツァザートに財宝を夢見た一行は、アヴァン公爵にしばしの暇を告げて溜息の砂漠沿いの小都市サボナへ向かう。

 サボナについた一行は砂漠のガイドを生業とするベドゥ族と交渉して物資を調達し、キャラバンを組む。ベドゥ族の首長の紹介でヤッスフという名の男に率いられたガイド隊を雇い、ラクダに乗っていよいよ砂漠へ出発。過酷な砂漠の猛暑に加えて、砂嵐、砂竜の襲撃(水の入った樽が何個か破壊される!)、ガイドたちの裏切り等に遭い、一行はいよいよ脱水症状で死ぬ一歩手前まで追い込まれる(水の精霊を封印している
ガーリックは他のメンバーより余裕が見られたが)。
 最期かと思われた晩、朦朧とした意識の中、一行は甲高くか細い笛の音を聞く。音源をたどった一行が目にしたのは砂漠を東へと進むキャラバンのラクダの列だった。一行は最後の望みをかけ、もつれる足を引きずってキャラバンの後を追う。
 夜明け前の灰色の光が砂漠に射し出した頃、砂丘の天辺から見下ろした場所に、一行はついに発見する。廃墟の中に場違いな黄金ドームの宮殿を持つ、伝説都市バーラヒムである。

 バーラヒムの宮殿にはオシマンド王をはじめとした王族が使用人にかしずかれ、快適に暮らしていた。中庭の噴水でスポンジが水を吸うように水分を補給する一行。道に迷った異邦人として、歓待とは言えないものの、十分なもてなしを受ける。
 しかし、このバーラヒムには明らかにおかしな箇所があった。宮殿のテラスから眺める都市の様子は賑やかでごった返しているというのに、一歩宮殿から出るとそこは乾燥した死体が無数に転がる死の廃墟なのである。

 1万もの死体が転がる廃墟の中で出会った生きた人間はわずかに二人。
 一人は邪悪なデーモンの気まぐれによってこの廃墟に置き去りにされたアルギミリアの少年ラーズル。人も通わぬ異郷の地で同郷人を見つけた
ハンスヘルトは、ラーズルを保護し、砂漠から帰った暁には彼を故郷まで送っていくと約束する。
 もう一人は
スタインに『航海日誌』を託した笛吹きの少女。恐らくは唖者であるオッドアイの少女は笛で宮殿を指し示すと、無人の廃墟の中へ走り去る。スタインは彼女の事を「生き別れの妹では?」と自分勝手な妄想を抱き始める。

 宮殿内を探索した一行は自分たちが思った通りに目的地へ行き着けない事に気付く。王の謁見の間を目指して進んだにもかかわらず、行き着いた先は西の塔のテラスであったという事が頻繁に起こる。
 時を同じくして夜毎の夢に見た事のない悪夢の光景が忍び入る。特に
ティスマンは夢の影響が強く(POWロール失敗!)、模糊としていた悪夢は日を追って鮮明さを増す。大破壊される都市を逃げ惑う住民とシンクロしたような、絶望的な夢である。

 壮麗な宮殿の中にあって場違いな物は3つ。
 西のテラスにある盥に満たされた水銀に浮くバスケットボール大の水晶「水晶の心臓」
 なぜか粗末な服を着て宮殿を徘徊するスローターの司祭クァレブ
 そして豪奢な宮殿の中にあるにもかかわらず、場違いに黴臭く古めかしい祭壇の間
 祭壇が動かせる事に気付いた一行は、その下にあった地下室へ続く階段を発見する。階段を下りて行った先には、バーラヒム宮殿の守護者、上級デーモン“暗闇に住むもの”ヌールガーシュがいた。

 ヌールガーシュは語る。
 かつてバーラヒムが繁栄していた頃、宮廷に仕える魔術師にしてスローターの司祭クァレブが、不遜にも永遠の命を神に願った。スローター神は下僕の願いを聞き入れ、その代償としてバーラヒムの住民1万人の命を求めた。1万の寿命を得る代わりに1万の命を生贄に捧げる公正な取引だと、古き神は語る。クァレブは神の提案を承諾し、スローターはクァレブを除くバーラヒムの全人口を大虐殺する。しかも古き神はクァレブの願いを曲解し、1万人の寿命の期間だけ、虐殺の夜を繰り返しクァレブに与え、クァレブの正気を打ち砕いた。老化、渇き、飢えから守られつつ、クァレブはいつとも知れぬ永劫の未来まで廃墟をさ迷う運命を背負う事になった。
 一方クァレブに使役されていたヌールガーシュは、意志なき主人に代わってスローターから新たな命令を受ける。彼の新しい使命は、幻覚の魔術で宮殿の壮麗さを保ち、道に迷った旅人に破滅の夢を見させて新たなる住人として取り込む事。
ティスマンは、その一歩手前まで来ていたというわけだ。

 幻術に取り込まれた哀れな魂を解放するため、なにより
ティスマンを救うために、一行は4本の触手を持つ闇の球という姿をした“暗闇に住むもの”ヌールガーシュに戦闘を挑む。
 強力な上級デーモンであるヌールガーシュは、まず感情操作(恐怖)の魔力にて
ハンスヘルト(6D6のダメージディーラー)を恐慌に陥らせ、1ターン(25戦闘ラウンド!)の間、戦線離脱させる。次いで4本の触手による攻撃が荒れ狂い、その内の一本がガーリックのデーモン・アーマーをゴッソリと削る。さらにうなる触手がシャゼにクリティカルヒット! しかしデーモン・バトル・アックスの<受け>ボーナスのおかげで辛うじてパリー、新導入のデーモン・バトル・アックスは女主人の命を救って魔界へと召される。一行を幾度となく救ってきたサラマンダー・ブラスト等で猛襲をかけるも、ヌールガーシュは止まらない。
 続く戦闘ラウンドで再び
シャゼをクリティカルヒットが襲う! しかしバトル・アックスを失ってもまだターゲット・シールドのあるシャゼはこれを受け流し、九死に一生を得る。その後の猛攻にてヌールガーシュは倒れ、勝利を収めた一行であった。

 ヌールガーシュの幻術が解けたバーラヒム宮殿は、外の廃墟と同じくみすぼらしい倒壊寸前の建物という真の姿をさらす。廃宮殿同様みすぼらしい姿をしたクァレブは、真の廃墟となったバーラヒムで、世界の終わりまでスローターの大虐殺を追体験し続けるのだろう。
 一行は砂に埋もれたわずかな財宝を掘り出し、「水晶の心臓」(ヌールガーシュの拠り代でもあった)を手に入れて、クァレブの残るバーラヒムの廃墟を後にする。

 古フロルマーに戻ってきた一行は、バーラヒムで出会った少年ラーズルを故郷へ送り届けるため、アヴァン公爵に別れを告げ、亡者の船で南大陸へ向けて出港する。なお、「水晶の心臓」はルテル船長の魂の隠し場所ではなかった(最近この目的を忘れそうになる)。

 南へ向けて海原を進む亡者の船。
 ある日、甲板に出ていた一行は、ラーズルに憑依したスローター神の訪問を受ける。粗末な身なりの少年ラーズルが、輝くような美少年の姿をした古き神スローターになったのだ!!

「よくも我が箱庭を壊してくれたな。クァレブめをこのように“早々に”解放して、我が楽しみを奪いおって。この償いは新しい玩具、つまりお前たち自身にしてもらうことにするぞ」

 スローターの言葉が終わるや否や「水晶の心臓」が爆発し、一行は意識を失った……。

 今回のMVPはシャゼでしょうか。ただでさえ一撃必殺の『ストームブリンガー』にあってクリティカルヒットを2回やり過ごすのはなかなかできる事ではありません。
 ゲームマスター的には悪夢に追いつめられていくティスマンや、笛吹きの少女にいるかどうかも分からない妹の面影を見るスタインが笑えました。

 次回は<虹彩異色の少女・後編>となります。



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