金翅の聖獣

伏見 健二 作




RPGマガジン創刊号
掲載シナリオ


RPGマガジン 創刊号

2008年6月7日
プレイ

参加キャラクター
 ティスマン
 フィオリア・ミロード
 ジンジャー
 アナスタシア
 ユーコニアス
 グリン
 志半ばで不本意にも亡者の船を降りる事になったガーリックでしたが、故郷に帰って自らの意志をある人物に託します。紫の街の島で船長をしていた弟・ジンジャーです。ガーリックの認めた紹介状を手に、ジンジャーは亡者の船の傭兵団が逗留するアルギミリアの首都カドサンドリアにあるハンスヘルト邸へと向かいました。
 カドサンドリアについたジンジャーを迎えたのは、兄から聞いていた面々と、そして意外な人物でした。なんと、フィオリアとジンジャーはかつて一緒に冒険していた仲間だったのです! 導かれるようにして再会したかつての仲間に奇縁を感じ、斧使いジンジャーが亡者の船の傭兵団に合流します。

 フィオリアがパーソナリティを務める新番組(?)「らっきー☆ぱらだいす」によりジンジャーもデーモン武具で身を固めた立派な魔神傭兵になり、同時に前回の冒険でフィオリアが封印したデーモン・ファイター「ララハト」もデーモンの武具を与えられます。

 新しい仲間を加え、一行はルテル船長の魂の在り処を求めて旅を続けます。

金翅の聖獣
ユーコニアス
 カドサンドリアで仕入れた情報を元に、隣国フィルカールの首都ラスキルまでやってきた
ティスマンフィオリアジンジャーアナスタシアだったが、それはまったくの無駄足に終わった。疲労で重くなった足を引きずって夕刻のラスキルを宿を探して歩いていると、とある酒場から乱暴に蹴り出された若い女性を見かける。助け起こしてみると、女性はフィオリアと同じマイルーンの有翼人だった。ユーコニアスと名乗ったその女性は路銀も尽き果て、空腹と疲労で憔悴していた。同郷のよしみで食事をご馳走し、当座の路銀まで与えるフィオリア。聞いてみると、ユーコニアスは人を探して辺境マイルーンの地からやって来たという。路銀の尽きた彼女は得意のフルートでそれを稼ごうとしたが、暗く物悲しいそのメロディは酒場にはそぐわず、酔客によって叩き出された現場を一行が目撃したというわけだ。涙ぐみながら何度も礼を述べると、ユーコニアスは一行と別れてラスキルの夜の闇へと消えていった。

 翌日、酒場兼宿屋「グッド・イン(Good Inn)」の主人から一行に声がかかる。

ロウマ・イム・フィリアーノ男爵が、仕事を請けてくれる冒険者の一団を探している。興味があるなら訪ねてみてはどうだ?」

 このまま手ぶらで帰るのも面白くないと考えた4人はフィリアーノ男爵の仕事を請ける事にする。
 フィリアーノ男爵の依頼とは
「神々しく光り輝く金の翼を持つ鳥」を探して、捕まえてくるというものだった。珍奇な物の収集家である男爵は「金の鳥」の情報を収集させるため、数週間前にアックスという通り名の盗賊を雇ったが、その男は未だに報告に現れないという。一行はアックスらしき人物が目撃されたという場末の酒場を訪ねて周り、やがてアックスその人と会う事に成功する。
 しかし、盗賊アックスは話に聞いていたよりも随分と老け、肉体的にも精神的にも正常には見えなかった。アックスは
「金の鳥」に対する畏敬の言葉を並べ立て、一行に捜索から手を引くよう警告する。

「あ、あれは神だ。て、手を出しちゃならねえぞ!」

 頑として「金の鳥」の居場所を明かさないアックスに手を焼いて、とりあえず彼をフィリアーノ男爵に会わせるために立たせようとすると、突然アックスは激昂し、立ち上がって彼の通り名の所以となったバトル・アックスを振り回し始める。

“ハルジ村”には絶対行かせねえぞ!」

 自分が口を滑らせた事に気付いたアックスは
ティスマンに襲い掛かるが、もつれる足で振り回される斧が歴戦の勇士である彼に当たるはずもなく、やがて自ら倒れて伸びてしまう。
 ハルジ村という手掛かりを得た一行はフィリアーノ男爵にその事を伝え、場所を聞いて出発する事にする。アックスの所在を突き止めて情報を持ち帰った一行に男爵はひどく満悦し、妹であるストラーシャの司祭(見習い)ラウマスへの紹介状を書いてくれる。ストラーシャの神殿で紹介状を見せると、ラウマスは
「兄の悪趣味な道楽の手助けなどしたくありません!」と激昂するも、一行が迷惑をこうむっていると思い、水の精霊を封印した涙滴型の護符を貸してくれる。
 借り物のこの護符が後々一行を救う事になろうなどとは、ゲームマスターも含め誰にも分からなかった。

 到着したハルジ村ではまったく迷惑がられた一行であったが、気を取り直して「金の鳥」を求めて霧深き北の山に分け入っていく。
 山の中の温泉で再会したのは、ラスキルの街で出会ったマイルーン人の
ユーコニアスであった。なぜここにいるのかを尋ねると、1年前、彼女の姉リューカ「古き神に魅入られて」突然変異し、光り輝く聖獣となって南へと飛び去ったのだという。族長に止められたにもかかわらずユーコニアスは姉を探して旅立ち、姉の「存在感」だけを頼りにここにたどり着いたのだという。自らの目的を話し終え、次いで一行がなぜここにいるのかを不思議そうに問うユーコニアス

 その時、「光り輝く鳥」聖獣リューカが現れた! 立ち込める霧がリューカの放つ光で黄金色に染まる。リューカのPOWを吸い取る魔の視線が
フィオリアに向けられるも、強靭な精神力(POW対POWの抵抗ロールに成功)でそれを跳ね返す。姉の名を呼びながら抱きつこうとしたユーコニアスをかわして、リューカは霧の渦巻く空へと飛び去ろうとする。有翼人のユーコニアスがそれを追い、撃墜されて温泉に落ちた。妹の事など分からない様子で何処へともなく飛び去るリューカ。
 
ユーコニアスを温泉から引き上げると(幸い怪我はなかった)、霧の山中で一行と聖獣の追いかけっこが始まる。

 どうにか聖獣を見失わずに追う一行。散々逃げ回った後、聖獣は茂みに隠された洞窟の中へと逃げ込んだ。それを追って洞窟に入った一行を待っていたのは、のたうつ聖獣リューカを口にくわえて不敵に笑う、大きな鉤爪を備えたデーモンだった。
 実は一行とリューカが迷い込んだこの洞窟は、かつて<法>の教団によって破壊されたスローター神の廃寺院だったのだ。祭壇に置かれた灯明皿に封印されたデーモンの幻術の力により、一行の目に廃寺院は昔日の絢爛さを保っているように見える。そしてこの場の守護者こそ、300年に渡って寺院を守ってきたテンプル・デーモン「マギエルト」だった。
 マギエルトは聖獣リューカの魔力のエキスを喰らいつつ、寺院を荒らす闖入者に手下をけしかける。火のついた灯明皿が見せる幻術を誰一人として見破れなかった一行には、マギエルトの手下の動死体が完全武装の神官戦士に見えるのだった。20名の神官戦士(動死体)を相手に、一行+
ユーコニアスの戦いが始まる。

 瓦礫に埋もれた足場の悪い廃寺院内は、幻術の力で磨き上げられた床のように見えている。これが一行を苦しめた。武器で打ちかかろうにも、何故か足を引っ掛けて転んでしまう。そこへ殺到する神官戦士たち。空を飛べる
フィオリアユーコニアスを除いた3人が大苦戦を強いられる。やがてジンジャーが重傷を負い、アナスタシアの力天使グレート・ハンマーがクリティカルを受けて破壊される。神官戦士の囲みを破ってマギエルトに突撃したフィオリアララハトを出してこれに対するも、強力なデーモンの守りを破れず、逆に追い詰められていく。
 一進一退の戦闘が続き、もはやこれまでかと覚悟した一行だったが、幻術を打ち破った
ジンジャーが機転を利かせ、ストラーシャの司祭ラウマスから借りた水の精霊で灯明皿の火を消させる事に成功! ようやく幻術から解放された一行はティスマンのサラマンダー・ブラスト3連発でマギエルトを辛くも撃破、その後勝利を収める。
 しかし犠牲は大きかった。
フィオリアのデーモン・フィルカーリアン・パイク、デーモン・アーマー、ララハト(デーモン・ファイター)はマギエルトに破壊され、ティスマンの封印していたノームとサラマンダーも解放されてしまった。ジンジャーのデーモン・バトル・アックスも失われていた。そしてほぼ唯一とも言えるこの廃寺院に残されていた財宝、変形デーモンの「ガウロアスクスクス」は、ジンジャーが封印に失敗して解放されてしまったのであった。

 マギエルトに力を吸い尽くされてしまった聖獣リューカは不活性状態になり、体を丸めて動かなくなってしまった。しかし
ユーコニアスはそんな姉の姿にも生命の温もりを感じ取り、故郷マイルーンの古き神の神殿で元に戻るまで見守るのだという。マイルーンまでの帰路の護衛を一行に依頼するユーコニアスだったが、一行の事情も鑑み、亡者の船に乗り込んでいずれ来るその時を待つ事になった。
 こうして若干頼りない仲間がまた一人、亡者の船の傭兵団に加わったのであった。不活性化した聖獣リューカは、亡者の船の船倉の奥にひっそりと安置されている。

 なお、ロウマ・フィリアーノ男爵には
「金の鳥、いませんでした」と嘘を報告した。

 灯明皿の幻術には大苦戦しました。あと一撃で死ぬという状況にフィオリアとジンジャーが追い込まれましたが、奇跡的なダイスの目もあり(例によってオープン・ダイスですが)、どうにか全員生還できました。フィオリアのデーモン・ファイターは死んでしまいましたが、彼の活躍は決して無駄ではありませんでした。第1話で入手し、ここぞという場面の盾として活躍してきたティスマンのノームもついに死んでしまい、激戦だった事を偲ばせます。
 どこかの宇宙公国の公子も言っていましたが「戦いは数だよ!!」というのが本当に当てはまるのが『ストームブリンガー』です。動死体は一撃で屠られてしまう弱い敵だったのですが、数で押されると歴戦の傭兵団といえども窮地に陥ります。

 今回は参加キャラクターを絞ったので、外伝にはスタイン、ハンスヘルト、シャゼが回りました。「巨大な影」という、何やら不安を掻き立てる冒険に挑んでいたようです。


 最近キャラクターの出入りがあるため、亡者の船の傭兵団内で派閥争いが勃発しつつあります。
  • ハンスヘルト派(別名:ピオカーナを知る世代):ハンスヘルト、ティスマン、スタイン、シャゼ、グリン
  • フィオリア派(別名:ピオカーナを知らない世代):フィオリア、ジンジャー、ユーコニアス
  • アナスタシア派:アナスタシア
 フィオリア派によるシャゼの引き抜き工作が水面下で激しくなっています。また、今回の失態(グレート・ハンマーを早々に折られ、しかも予備の武器を持っていなかった)でアナスタシア派は急速に弱体化しています。超党派の「泉の友」(「アーモルィナーナの砦」の泉で能力値を増加させたキャラクターで構成:ティスマン、ハンスヘルト、ララハト)はララハトの殉職により解散となった模様です。



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