イエロー・ヘルからの脱出

ケヴィン・フリーマン 作




『WHITE WOLF』より

WHITE WOLF

2008年7月5日
プレイ

参加キャラクター
 ティスマン
 フィオリア・ミロード
 ジンジャー
 ユーグノー
 シャゼ
 ユーコニアス
 グリン
 大志を抱いた蛮族の若者はいかだに乗ってアル川を下り、ドズ・カムを経て、気がついたら大洋で<新王国>で言うところの漂流状態に陥っていました。前回の外伝「巨大な影」からの帰りの途上でハンスヘルトらがそれを発見し、救助した勢いで新しく仲間に加えたのが、ユー人の部族的戦士ユーグノーです。

 世界的に(その奇矯な成り立ちと編成から)名を轟かせ始めた亡者の船の傭兵団に、アルギミリアはカドサンドリアの混沌の教団から依頼が舞い込みます。その依頼がChaosium社オフィシャル・サプリメント収録の信じられないような内容のシナリオである事など、キャラクターはおろかプレイヤーも知る由がありませんでした。

イエロー・ヘルからの脱出

 カドサンドリアの混沌教団の依頼内容とは、パン・タンから政治亡命を求めてきたダリジョールのカードセムという人物の救出だった。神政官の相談役という高い地位にいたカードセムだったが、神政官と政治的意見が対立したためにその身が危うくなり、次元遷移で<新王国>そのものから一時的に逃亡しようとしたが、あまりに慌てていたためかデーモンに不注意な命令を下してしまった。彼が自分の失敗に気付いたのは、黄色くかすむ異次元、混沌の神ゾートラの支配領域であるイエロー・ヘル(黄色の地獄)にたった一人で取り残されてからだった。イエロー・ヘルにおける混沌の力の表れによって頼りのデーモンをほとんど失ってしまったカードセムは、事前に飛ばしたデーモン・メッセンジャーがカドサンドリアに着く事を祈りつつ、イエロー・ヘルで救出を待っているのだという。パン・タンに関する政治的・軍事的情報が手に入る絶好の機会を逃してはならないとして、混沌の司祭たちは現状で最も腕の立つグループである亡者の船の傭兵団に依頼をしてきたというわけだ。

 依頼を受けた一行は早速イエロー・ヘルの次元への門をくぐって異次元へ赴き、カードセムの捜索を開始する。胆汁色の海と低く昇ったままの太陽という、陰気でくすんだ黄色の世界が一行を迎えた。
 イエロー・ヘルに入るや否や封印していたデーモンの能力が5倍になり、強大な力を得たデーモンたちが主の封印を破らんとPOWの対抗ロールを挑んできた! しかし
フィオリア(&故ピオカーナ)の召喚していたのが軒並み弱いデーモン(POWが1D8)だったのが幸いして、多くのデーモンを再封印して留めておく事に成功する。しかしフィオリアのフィルカーリアン・パイク、ティスマンのブロードソード、シャゼのダガー(2本)に封印されていたデーモンたちが封印を破り、かつての主を嘲笑いながら消えていった。
 先行きに大きな不安を感じながらも旅を始める一行。

 悪天候に悩まされながら砂丘を越えて行き、この世界で初めての人工物を目撃する。それは長い外套のフードの下から軽蔑の眼差しを投げかけている老人の姿をした、灰色の石でできた巨大なゾートラ像だった。砂丘に埋まっていない部分だけでも90メートルを超える高さがあり、全長は100メートルを超えるだろう。砂に埋もれた町の残骸も見つかり、ここがかつては人の住んでいた場所である事を知った一行だったが、カードセムがいる様子は無い。

 次にたどり着いたのは、目下デーモンの一団に襲撃されている最中の町だった。一行は町の人々を襲う3体のデーモンに戦いを挑み、これを倒す。
 町の住人は死んでこの世界へと送られた死者たちだった。ゾートラ神への供物とすべく死者の魂を狩りに来たデーモンの襲撃と一行の到着が、偶然にも(ダイス目によって)重なったのだった。本来は疑り深い町の住人だが、デーモンを追い払ってくれたという事実はそんな住人たちの心さえも歓迎に動かした。一行は不足し始めていた水や食料の補給を受ける。しかしこの町にもカードセムはおらず、またカードセムの事を知る者もいなかった。困り果てた一行に町長が、しかし気が進まない様子で、不確かな情報をくれる。

「この世界を治めるオブクディという支配者デーモンなら、あるいは何かを知っているかも知れぬ」

 しかし情報提供には法外な代償が求められ、しかもオブクディは完全に邪悪な存在である、と付け加える。

 オブクディが根城としている山間の洞窟へ出発した一行。
 道中、イエロー・ヘルに住む知性を持つ岩のような特殊な知識デーモン「砂漠の古岩」たちからオブクディの情報を聞き出しつつ歩を進める。この時点で
「平和裏に交渉して情報を聞き出そう」という選択肢をまったく忘れているが、どうやらキャラクターはそれには気付いていない様子。
 オブクディの洞窟に着くや、
フィオリアは見張りのデーモンに問答無用で遠距離から火炎攻撃を浴びせ、しかも仕留め切れないという失態を犯す。手負いのデーモンは洞窟の中に敵の出現を告げに行き、待ち構えていた7体のデーモンとの乱戦が始まる。そう、不意打ちは一撃で仕留められなければ、手痛いしっぺ返しを食うものなのだ。
 どうにかデーモンを倒し、オブクディと対峙する。もちろんこの時点でオブクディから情報を聞くという選択肢は消滅しているため、ここでも戦闘開始。2体のガーディアン・デーモンとオブクディの6本の触手による攻撃は脅威だったが、
ジンジャーユーグノーのクリティカル・パリーで触手が4本も無力化され、ガーディアンが倒されると形勢不利を悟ってオブクディはテレポートで逃げ去った。
 オブクディの洞窟にもカードセムの姿はなく、一行は探索行を続ける。

 結局それから9日後にアルカリ鉱床の平野に隠れ住んでいたカードセムを発見し、保護。同ルートを通って次元遷移の門まで戻り、<新王国>へと連れ帰って無事依頼を完了させたのであった。
 一行は約束の報酬を受け取り、カードセムの個人的なお礼として魔術的な支援を受ける事になった。
ティスマンは地の精霊を、ジンジャーはデーモンの召使いを、シャゼはデーモン・ウェポンをそれぞれもらった。フィオリアは≪混沌覚醒≫の呪文を教えてもらう。ユーグノーは地の精霊を、ユーコニアスは火の精霊をそれぞれもらおうとしたが、封印に失敗した。

 イエロー・ヘルでの約2ヶ月に渡る探索行は、こうして終わった。

 ランダム・エンカウントを積み上げていくという前時代的なシナリオです(実際古いシナリオですが)。
 天候、移動距離、デーモンの狩りの周期などを多重管理してイベントに当たらなければならないので、ちょっと手間取りました。パーティが通ったのはほぼ全ての主要イベントを消化できるルートだったので、ゲームマスターとしては満足できました。
 しかし初手でキャラクターからデーモンを取り上げるというギミックは、あまりにも凶悪です。しかも登場するのは多段攻撃を持つ強力なデーモンばかりなので、デザイナーの製作意図に関しては理解に苦しみます。

 「死者やむなし」としてマスタリングしましたが(いつもそう思っていますけど)、思いのほかデーモンが手元に残ったので、強力なデーモンで武装した一行が敵を蹂躙していく展開になりました(いきなりブロードソードを失ったティスマンはかなり苦戦しましたが)。デーモンもクリティカル率の高いものが多く、実際何度も致命的なクリティカルがキャラクターを襲いましたが、幸いにも受けを成功させたために犠牲は破壊された武器だけで済みました。

 ゲームマスター的には新参のユーコニアスが「ゆーこりん」の愛称をもらって可愛がられていた(?)のが微笑ましく、嬉しくもありました。

 今回の外伝は「悲しき死者」。きっと痛ましい事件だったのでしょう。


 パーティ内の派閥争いは激しさを増しています。
 デーモン・ソードを失ったティスマンはフィオリアにデーモンを召喚してもらっていよいよフィオリア派に加入かと思われましたが、亡きピオカーナへの友情を優先してサラマンダー・ソード(シャゼ作)を選択し、ハンスヘルト派に留まります。また、シャゼはカードセムから譲与されたデーモン・バトル・アックスを主武器に使う事に決め、フィオリア派の勧誘を完全に拒否した模様です。
 新加入のユーグノーは鎧や盾をフィオリアに作ってもらった経緯もあってフィオリア派に入りました。しかし武器として力天使スピアを選択したり、ティスマンとの超党派コンビ「バーバリアンズ」を結成したりと、態度は流動的です。コウモリ野郎と呼ばれています。
  • ハンスヘルト派:ハンスヘルト、ティスマン、スタイン、シャゼ、グリン
  • フィオリア派:フィオリア、ジンジャー、ユーグノー、ユーコニアス
  • アナスタシア派:アナスタシア
 傾向としてハンスヘルト派は攻撃力重視、フィオリア派は防御力重視となっています。



ルテル・クヮグリンの亡者の船へ戻る