この斧にかけて、お前を刑する。

味 風 作




オリジナル・シナリオ


2008年11月8日
プレイ

参加キャラクター
ジンジャー
クランデール卿
ハンスヘルト
シャゼ
アナスタシア
白鹿のポンパドゥール
 回の冒険で回復デーモンの指輪を失った一行でしたが、クランデール卿が得意の<植物知識>技能を活かして市場から薬草を買い入れ、治療薬を調合します。私財を投げ打ってパーティのために回復手段を用意する卿は、さすが民衆の上に立つ貴族。その姿勢たるや立派です。

 た、前回ブルー・レディからの贈り物である強力な戦斧「クロー・オブ・エクオル」を手に入れたジンジャーは、仲間のデーモン・ウェポンが続々と失われて行くこともあり、一躍戦闘におけるエースとなります。

 兵団を取り巻く環境が少し変化する中で起こった今回の事件は、“最も古き傭兵”の1人であるエシュミールの神官戦士シャゼの過去に端を発する、復讐の物語でした。

この斧にかけて、お前を刑する。

 カドサンドリアの港にパン・タン海軍の戦艦が3隻入港した。それはフィルカールの辺境を略奪して帰国する途中の艦隊の内の3隻であり、物資の補給のためにカドサンドリアに寄港したのだった。3隻の内の1隻は悪名高きパン・タンの黒いガレー船であり、その名を「マベロードの剣号」といった。
 カドサンドリアの商人にとってパン・タン人たちは厄介な客だった。彼らは武力をちらつかせて物資の値引きを要求し、そして港と海の安全の確保のために商人たちはその要求を呑まざるを得ないのだ。
 現在、パン・タン人たちは港の歓楽街で傍若無人な振る舞いをしている。「魔術王の島」事件で知り合った大商人リズアンシプトラら資本家連合は、パン・タン人たちからの補給代金の回収をほぼ諦めていた。補給物資の引渡しは3日後である。

 ある日、傭兵団一行は商人との会合のために上陸したガレー船の士官たちを見かける。その中の一人、赤錆色のデーモン・アックスを持ったハイオンハーンの司祭を見て、普段は物静かな
シャゼが斧を抜いて斬りかかろうとした。

 シャゼ「……あいつ!」

 大事(国際問題!)になることを懸念して
シャゼを押しとどめたクランデール卿ジンジャーが事情を聞くと、ガレー船の士官の1人ハノクス・ムーヴォの正体は、かつてエシュミールのハイオンハーン寺院の大司祭であり、当時シャゼが侍祭として仕えていたムナドという男であるという。今から8年前にエシュミールを襲った「クッテーの3姉妹」との戦いに勝利した後、ムナドは聖なる処刑の直前にクッテーの末妹とハイオンハーンの聖斧と共に姿を消し、教団は大混乱に陥り、ハイオンハーン教団の権威は失墜したのだという。

「クッテーの3姉妹」
 8年前、エシュミール北方の「夜の傷跡連峰」を越えて侵攻してきた蛮族の軍団を率いていた巫女たち。全てを飲み込む巨大なテレポート・デーモン“呑み込む口”を召喚する巫女を抱えた蛮族軍は半年以上にわたってエシュミール軍と戦っていたが、最後はムナドの召喚による混沌の神(ハイオンハーン)の介入によって敗れ、姉妹の内2人は殺され、末妹は捕虜となった。
 捕虜になった1人はハイオンハーンの聖斧によって公開処刑される予定だったが、ムナドは裏切って聖斧とクッテーの女を奪い、その行方をくらました。

 その後、教団の権威の回復を見守った後、
シャゼはムナドに復讐を果たすべくエシュミールを後にし、そしてついに復讐の相手を見つけたというわけである。
 ムナドはエシュミールを出てからパン・タンに渡り、名前をパン・タン風に「ハノクス・ムーヴォ」と変え、ハイオンハーン教団の暗殺者部門「真紅の禿鷹」の一員となった。ムナドは「クッテーの女」から力の供給を受け、エシュミールにいた時よりも強力になっているはずだ。
 
シャゼ刺し違えてでもムナドを倒すと宣誓する。しかし策もなく正面からガレー船に乗り込むのは無謀であり、しかもその方法ではいずれカドサンドリアにも被害が及びかねない。思案に暮れる一行。しかし思いがけなく救いの手が差し伸べたのは、ガレー船をよく思わないことで一行と意見を一致させる大商人、リズアンシプトラであった。

 リズアンシプトラ「やるのなら確実に、周到におやりなさい(ニヤリ)」

 リズアンシプトラら商人ギルドの協力を得て計画を立てる一行。
 リズアンシプトラの経営する高級娼館からスパイを派遣して、出来る限りガレー船の内部を探り、その陣容を調査する。ガレー船の指揮官クラスは以下の4人。

 略奪部隊の司令官であり、マベロードの執行人であるジャ=フラィ
 「マベロードの剣号」の艦長であるピアレーの司祭ローダミア
 戦士長であり
シャゼの仇であるハノクス・ムーヴォ(=ムナド)
 略奪品の管理官であるマルク神の司祭、ヴァナクス

 物資引渡しの前日、パン・タン人たちの航海の安全を祈願した(偽りの)宴を港の歓楽街で催し、これによってガレー船の警備が手薄になるようにする。傭兵団一行はリズアンシプトラが貸すデーモン・ボート「ヨンリン」でガレー船に近付いて潜入。士官たちを亡き者にする。一定時間経過後、リズアンシプトラの私兵(魔術王の島のジラウ船長たち)が漕ぎ手の奴隷、及びフィルカール人の捕虜の解放を開始する。
 一行がガレー船の士官たちを倒したら船を沈める。船を失った乗組員のパン・タン人はリズアンシプトラがガレー奴隷として売り払う。こうしてパン・タンの軍艦を跡形もなく消してしまおうというのだ。
 作戦は決まった。ムナドへの復讐を誓う
シャゼと、マベロードの執行人の首を狙うアナスタシア。大商人リズアンシプトラに恩を売っておきたい商人のハンスヘルトポンパドゥール。様々な思惑が交錯する中、作戦開始。

 一行はガレー船の最下層のオール・デッキに囚われていたクッテーの女を解放すると、脇目も振らずにガレー船の士官たちがいると思われる上部デッキへ。
「混沌の執行人は不意打ちを受けない」という評判どおり、士官たち(+3名のパン・タン人海兵)は万全の体制で一行を待ち構えていた。

 
シャゼ「見つけたわ、ムナド。エシュミールのハイオンハーン教団の怒りを知れ」
 ムナド「……ほう? シャゼか。見違えたぞ、ずいぶんと女らしくなったものだ」
 
シャゼ「我が神に誓った復讐を、私は今、ここで果たす」
 ムナド「黙って出て行った事に怒っているのか? 連れて行ってもらえなかった事が悔しかったか? それともその女(※クッテーの女)に対する嫉妬か?」
 
シャゼ「……黙れ!!」
 ムナド「……かつての師に対する口のきき方ではないな。少し仕置きが必要なようだ」


 過去、2人の間にあった因縁について質しても、きっと
シャゼは口を開かないだろう。今はただ、彼女がずっと固執してきた誓いと復讐に手を貸すのみ。
 2人のハイオンハーンの司祭は顔の前にそれぞれの斧を構え、声をそろえて言う。

 
シャゼムナド「「この斧にかけて、お前を刑する!」」

 ここに激戦の火蓋が切られる。

 聖斧シャタラを振るうムナドに対し、
シャゼ魔斧シェムハザを振るって対抗する。一進一退の攻防が繰り広げられたが、クッテーの女からの力の供給が断たれていたこともあり、ムナドはシャゼの斧の前に倒れた。「助けてくれぇ!」というムナドの命乞いの声に耳を貸すことなく、シャゼは喜悦の笑みさえ浮かべて斧を振りかぶると、それを振り下ろしたのであった。

 シャゼ「ハイオンハーン! ハイオンハーン! 御身の忠実なるしもべ、エシュミールのシャゼが呼びかける! この者の血と魂を御身に捧げん! めでたく受け取られませい!」

 
シャゼの復讐と誓いはここに成就される。

 ……問題は他の面々。
 “剣の王”マベロードの執行人ジャ=フラィは予想に違わぬ実力で剣を振るい、
アナスタシアのグレート・ハンマーを叩き折り、そしてクランデール卿の命を持っていった。全ての武器とデーモン・アーマーを失っても命乞いの言葉を吐くことなく、最期は不慣れな拳すら振るってアナスタシアに肉薄した狂乱の黒騎士は、ムナドを倒して駆けつけたシャゼの斧で両断された。
 信奉する神ピアレーの触手を模したドレッド・ヘアーの司祭ローダミアの繰り出すデーモン・トライデントは、
ジンジャーの命を串刺しにしてリンボ界へと連れ去った。
 パン・タン人海兵と渡り合っていた
白鹿のポンパドゥールは右足を砕かれたものの、命までは奪われなかったのだから、3人の中では幸運だったのかもしれない。

 犠牲を出したもののムナドらを葬った傭兵団一行はガレー船からクッテーの女を連れて脱出する。リズアンシプトラの手配によってガレー船からの捕虜や奴隷の退去は終了しており、それを知ったクッテーの女は自らの命と引き換えに“呑み込む口”を召喚し、パン・タンの黒いガレー船を、いまだに宝物庫を守っているであろうマルクの司祭ヴァナクスもろとも異次元へと消し去った。
 
「ざまあみろ」、それがクッテーの女の最期の言葉だった。

 奴隷と捕虜の退去を指揮したジラウ船長が、ガレー船の中で見つけた一枚の親書を傭兵団一行に渡す。それは本国(パン・タン)へ先に送った略奪品の中に<無情なる>ストノスの遺品があり、それを受け取ったストノスの子孫、チャードロスの司祭ストヌルンから送られてきた親書であった。

 「我が父祖ストノスの残せし財宝、確かに受け取れり。不遜なる商人の魂を閉じ込めたる宝玉にて、我、大いに楽しむ。無事の帰還を大いなるチャードロス神とピアレー神に祈る」

 ストヌルンの手に、ルテル・クヮグリン船長の魂を閉じ込めた宝玉が渡ったという事実がそこには書かれていた……。

 回は色々と都合がつかずにプレイヤー2人という状況でしたが、強引に新章に突入しました。こういう時のために「外伝システム」を導入していたり、準レギュラーNPCを複数抱えているわけですしね。

 果は見ての通りです(笑)。「キャンペーン史上最大の激戦になる!」と予告した通りとなりました。やはり単なる「障害排除」ではなく、完全に「命のやり取り」になるストームブリンガーの戦闘は派手で楽しいなぁと実感します。プレイヤーは「寄り道せずに迅速に士官どもを倒す!」作戦で宝物庫も船内寺院も素通りでした。……せっかくデーモン・ウェポンを用意しておいたんだけどなぁ。

 敵のクリティカル・ヒットを受け損ねてはいけない」というストームブリンガーの掟(笑)を仕損じてしまったジンジャー(出目97で<受け>失敗)とクランデール卿(出目00で<受け>ファンブル)が今回で退場です。「クランデール卿の治療薬」という共有アイテムが涙を誘います。

 伝は「ラサの狼」。ストームブリンガー・コンパニオンに載っている「ウインドウルフ」のことでしょうか?

 回はいよいよパン・タン潜入となります。



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