Stormbringer 第4版 対応シナリオ

アーモルィナーナの砦

有味 風 作



はじめに
 この冒険は経験を積んだ冒険者4〜6人用に作られています。パーティの半数以上がデーモン・ウェポンやデーモン・アーマーで武装している必要があるでしょう。
 冒険はアルギミリアの首都カドサンドリアから始まりますが、山岳や丘陵地のある場所ならどこにでも舞台を変えることができるでしょう。砦までの道中を変更して、霧の沼地に舞台を変更するのも良いかもしれません。



導入
 アルギミリアのカドサンドリアの街の片隅で、ちょっとした事件が起こっています。

 地元の豪商スーネック卿の義弟アラナーンが行方不明になりました。数ヶ月前、アラナーンは商売に失敗して多額の借金を負いました。家財や貯蓄を全て失ったアラナーンは、同じく借金で首が回らなくなっていた者たちを集めて、一攫千金を目指して古代の遺跡の探索に出発しました。
 アラナーンたちが目指したのはカドサンドリアから南東へ馬で5日ほどの場所に広がる「咆哮丘陵地帯(ハウリング・ヒルズ)」です。狼や野犬が我が物顔に徘徊する、地元の猟師でさえ足を踏み入れようとはしない危険な区域です。この入らずの地域にある滅亡したダルジ族の城砦「アーモルィナーナの砦(通称「魔狼の砦」)」から宝を持ち帰るのが、アラナーンたちの計画でした。咆哮丘陵に程近い小さな村をベースとしてアラナーンたちは砦へ向かいましたが、帰還予定日を過ぎても誰一人帰ってきませんでした。アラナーンにもしもの場合を託されていた村人がスーネック卿の元を訪れ、彼の行方不明が発覚したわけです。

 スーネック卿は義弟を捜索してくれる冒険者を探しています。アラナーンの生死を確認してきたら500LB、アラナーンを生きたまま連れて帰ってきたらそれとは別に300LBのボーナスを各冒険者に支払ってくれます。

 ゲームマスターは冒険者がこの依頼を引き受けるように誘導してください。



咆哮丘陵地帯
 カドサンドリアの南東にある丘陵地帯です。
 1000年前、この地にはメルニボネ人の光の帝国と覇を争っていたダルジ族の前哨基地「魔狼の砦」がありました。基地の司令官は野獣の王ルーフドラックを崇めるアーモルィナーナという名のダルジの魔術師で、野生の狼や呼び出したデーモンを使役して光の帝国軍と激しい戦いを繰り広げました。結局光の帝国は基地の司令部である砦を7頭の竜で襲撃し、毒液で砦を焼き尽くし、迎え撃って出たアーモルィナーナとその眷属を討ち滅ぼしたのでした。砦はメルニボネ兵に略奪されて破壊しつくされましたが、竜の入れない地下深くにある最奥部は強力なガーディアンに守られて、未だ手付かずのままで残っていると伝えられています。<歌謡知識>ロールに成功したキャラクターは、この戦いについて綴られた詩を思い出します。詩の最後でメルニボネ人たちが滅ぼせなかった守護者について曖昧に語られています。
 咆哮丘陵地帯は犬の野獣の王ルーフドラックを崇拝していたアーモルィナーナの庇護によって狼や野犬の天国になっています。咆哮丘陵地帯では自然の犬属を傷つける事は禁忌とされており、そのため猟師たちは足を踏み入れないのです。また、砦の周辺には竜の襲撃を生き延びたアーモルィナーナの手下のデーモンが、未だにさ迷っています。
 丘陵のあちこちに犬をかたどった石のトーテムがあり、得体の知れない不気味さを醸しています。



ラディオマ村
咆哮丘陵地帯 カドサンドリアから馬で5日の場所に咆哮丘陵地帯に最も近い村、ラディオマがあります。この村のパメルという男が出発前のアラナーンにもしもの場合を頼まれ、忠実のその任務を果たしてスーネック卿に彼の危機を知らせたのでした。
 ラディオマは農耕と狩猟が主な産業の人口150人ほどの小村です。村の周りには獰猛な野生生物や盗賊の侵入を阻むために木で組み立てられたバリケードが築かれています。日中はバリケードの一部が撤去されて村内に出入りする事が可能ですが、夜間はその出入口も締め切られます。バリケードを乗り越えるには<登はん>ロールが必要です。ロールに失敗すると1D6のダメージを受けます。
 目に見えて敵対的な態度をとらない限り、ラディオマの村人たちは冒険者たちを歓迎します。村に宿屋はありませんが、村人と交渉すれば安価で寝場所と食事を提供してもらう事が可能です(ゲームマスターの判断で<説得>ロールなどを振らせても良いでしょう)。

 スーネック卿にアラナーンの行方不明を伝えに来た男パメルは簡単に見つかります。村人の誰かに聞けば、彼が村唯一の酒場にいることを教えてくれるでしょう。パメルは中年の男性で、普段は猟師をしています。
 カドサンドリアに行ったパメルはスーネック卿からいくばくかの謝礼をもらい、数日前に村に戻ってきています。アラナーンについて質問すれば、パメルは快く応えてくれます。もっとも、パメルは村を代表してスーネック卿に会いに行っただけであり、パメルが知っている事はラディオマ村の誰もが知っている事です。

「あの旦那がた(アラナーンたち)はこの村で一泊してから、狼の丘(咆哮丘陵地帯)へ入っていきなすったよ。6人連れでしたな。俺たちは行くのを止めるように何度も言ったんですが、笑うだけで聞き入れては下さらなかった。一行の中で一番身なりの良い御仁が“もしもの時はカドサンドリアの義兄を訪ねてくれ”と言って、俺に金をくれたんでさ。7日待って誰も帰ってこなかったから、約束どおり旦那のお兄さんを訪ねたってわけでさ」

 ラディオマの村人たちは咆哮丘陵地帯を「狼の丘」と呼んで非常に恐れています。昔、命知らずな村人が絶好の狩り場である狼の丘へと挑み、狼や野犬、そして魔物(徘徊するデーモン)に一晩中追われた挙句、命からがら逃げてきたという言い伝えがあります。
 咆哮丘陵地帯はラディオマから東へ1日の距離にありますが、道案内を買って出る村人は一人もいません。ただし、狼除けの「ウルフスニーズ」という草から作られた香と香炉を分けてもらえます。ウルフスニーズ2日分と携帯用の香炉のセットで価格は200LBです。
 最後に村人は口を揃えて「狼の丘の狼や野犬を1頭も殺さない方がいい」と忠告します。



砦への道中
 ラディオマから徒歩で1日歩いていくと、やがて道が緩やかな上り坂となり、雑木が目立ち始め、咆哮丘陵地帯に入った事が分かります。狼や野犬の遠吠えが間断なく聞こえ、丘陵地を歩く者を不安にさせます。
 <観察>ロールに成功した冒険者は雑木に埋もれるようにして建つ石のトーテムに気付きます。トーテムは風雨に晒されて磨耗していますが狼をかたどっており、<物品鑑定>ロールに成功するとこれが1000年以上も前に造られたものであることが分かります。
 魔狼の砦までは徒歩で2日かかります。代わり映えのしない景色や不意に頭上を覆う樹木によって道に迷いやすくなっており、目的の方角(東)へ正確に進むには半日に1回ずつの<地図製作>ロールが必要です。ロールに失敗する毎に半日を浪費した事になり、ワンダリング表(後述)を1回多く振る事になります。

 魔狼の砦へ到着するまで、下記「丘陵地帯ワンダリング表」を1日2回(昼・夜)振ります。上記<地図製作>ロールに失敗する度に、ワンダリング表を追加で1回振ります。

丘陵地帯ワンダリング表
D10
3以下: 遭遇なし
4: ダルジの猟犬 1D6体
5: 崩れた塔
6: 焚き火の跡/トーテム
7: フルォウ 1D6体
8: 狼 1D6+1頭
9: 野犬 2D6頭
10: 狼 2D6+3頭
ウルフスニーズの香を焚いていれば、上記ワンダリング表のロールの目から2を引けます。
ウルフスニーズの草は丘陵でも見つけることができますが、十分に乾燥させることができないためその効果は村で手に入れたものの半分(ロールの目-1)です。ウルフスニーズを見つけるには<植物知識><捜索>ロールが必要です。
その他、プレイヤーが思いついた事があれば採用して、適宜修正を決めてください。

3以下…遭遇、発見はありません。
4:ダルジの猟犬…デーモンであるため、狼や野犬にはカウントされません。後述の能力値を参照。
5:崩れた塔…ダルジ族の見張り塔の残骸です。<捜索>ロールに成功すれば2D100LBの価値のある宝石やメダルなどが見つかります。
6:焚き火の跡/トーテム…アラナーンたちが起こした焚き火の跡が見つかります。あるいは狼をかたどったトーテムが見つかります。
7:フルォウ…デーモンであるため、狼や野犬にはカウントされません。後述の能力値を参照。
8〜10:狼/野犬…後述の能力値を参照。キーパーは冒険者たちが野犬と狼を何体殺したか記録して置いてください。その結果はシナリオの最後(「ルーフドラックの寺院」参照)で意味を持ってきます。野犬や狼と遭遇しても、プレイヤーがそれらを追い払おうとする努力(食べ物となる肉塊を投げ与える、サラマンダーの炎で脅かす、等)をした場合、何らかのロールと引き換えにゲームマスターはそれを採用するべきでしょう。



アーモルィナーナの砦
 遅かれ早かれ、冒険者たちは魔狼の砦に到着するでしょう。砦は丘の頂上にありますが、破壊し尽くされており、昔日の偉容は残っていません。
 砦の残骸の周りにはメルニボネの竜に焼き殺されたアーモルィナーナの手下たちの骨が散らばっています。<観察><物品鑑定>ロールに成功すれば骨の中にはフルォウやダルジの猟犬の物も見つかります(丘陵でのワンダリング表でデーモンと出会っていれば、すぐに分かるでしょう)。

 <観察>ロールに成功した冒険者は、砦の周辺が破壊し尽くされているにもかかわらず、その傍にある狼のトーテムが被害にあっていない事に気付きます。トーテムは野獣の王ルーフドラックに捧げられたものであり、メルニボネ人はルーフドラックと友好関係にあるため、その破壊を避けたのです。

 破壊された砦の正面入り口付近には、10メートルはあろうかという巨大な骸骨が4体横たわっています。風食作用により所々崩壊していますが、<観察>ロールに成功すれば、これが巨大な四足歩行動物(恐らくは狼)の骨格である事が分かります。これはダルジの魔術師アーモルィナーナが使役していたグナグフロ種のデーモンの死骸です。
 またデーモンの死骸に混ざって、メルニボネの竜の骨も一組見つかります。この地の激戦でアーモルィナーナの手勢に倒された竜の亡骸です。竜の亡骸に何らかの価値があるかは、ゲームマスター次第です。
 崩れた入り口の残骸には下位メルニボネ語で「ダルジの狼アーモルィナーナを当地にて破る」というメルニボネの兵士が残したと思われる碑文が刻まれています。

 砦の残骸の地上部分には、特に見るべきものはありません。暗青色の石造りの城壁はあらゆる方向に崩壊しており、竜の毒液に焼かれています。<捜索>ロールで地上部分を調査しても、全部で3D100LBの価値の宝しか見つかりません。地上部分はメルニボネ人たちに略奪し尽くされてしまっているのです。

 <観察>ロールに成功すると、瓦礫に積もった砂埃の上に比較的新しい足跡を見つけます。これはアラナーンたちの足跡です。<追跡>ロールで足跡をたどっていくと、砦の残骸が折り重なった場所の一角に、地下への隠し階段へ続く跳ね上げ扉を発見します。足跡を見つけられなかったり<追跡>ロールに失敗しても、<捜索>ロールに成功すると隠し階段への扉を発見する事ができます。


ルーフドラックの寺院寺院内マップ
 砦の地下はルーフドラックの寺院であると共にアーモルィナーナの私的スペースでもありました。暗青色の巨石造りの地下道の壁にはダルジ族の様式で狼の様子が描かれており、<歌謡知識>INT×2ロールに成功すればここが野獣の王に捧げられた寺院である事が分かります。
 泉の間(部屋I)と祭祀の間(部屋K)以外は闇に包まれており、たいまつ等の照明が必要となるでしょう。

 <観察>ロールに成功すると、地下道の床に積もったホコリが最近何者かの足跡で乱されている事に気付きます。これはアラナーンたち及び彼らを迎え撃ったデーモンたちの足跡です。足跡は網掛けをした通路/部屋に見つかります。足跡は混乱して踏み荒らされており、明確な意図を推測して追跡する事は不可能です。アラナーンの仲間たちはデーモンに追われて殺されていき、アラナーンと仲間の一人が隠し扉から宝物庫(部屋H)へ逃げ入りました。しかしデーモンに負わされた傷がもとで仲間は死に、アラナーンも衰弱死しかけています。

※もし冒険者たちが寺院内で時間を浪費する場合、ゲームマスターは以下の「寺院内ワンダリング表」を振って冒険者たちに緊張感を与えてください。

寺院内ワンダリング表
D8 結果
1〜4: 遭遇なし
5: ダルジの猟犬 1D3体
6: フルォウ 1D3体
7: ダルジの猟犬 1D6体
8: フルォウ 1D6体

(※イメージマップ:マップの行きたい場所をクリックすると、その場所の説明へジャンプします)

A:上り階段…この階段を上ると跳ね上げ扉があって地上へ出られます。<観察>ロールに成功すると、アラナーンたちの足跡を発見します。 (マップに戻る)

B:衛兵の詰め所…1000年前、砦が機能していた頃、ここにダルジの兵士たちが詰めていました。今は朽ちた木や骨の破片が散らばっているだけです。 (マップに戻る)

C:猟犬の部屋…ここにはダルジの猟犬が1D6+2体いて、アラナーンの仲間の死体の残骸をついばんでいます。死体は2人分ありますが、どちらもアラナーンの背格好と合致しません。 (マップに戻る)

D:空き部屋…この部屋は空です。 (マップに戻る)

E:アーモルィナーナの私室…ここはかつて魔術師の私室でした。家具の残骸が床に散らばっています。<捜索>ロールに成功すれば1D100LBの価値のあるメダルや宝石の欠片を見つけることができます。 (マップに戻る)

F:行き止まり…ここはかつてトイレとして使われていました。汚物を処理するデーモンがいたはずですが、今はいなくなっています。ここにはアラナーンの仲間の1人の死体があります。デーモンに追いつめられて、ここで力尽きたのです。死体を調べれば1D100LBの価値のあるメダルや宝石の欠片を見つけることができます。 (マップに戻る)

G:死体…通路の途中に死体が横たわっています。アラナーンの仲間の内の1人です。泉の間まであと一歩という所で力尽きてしまっています。死体を調べれば1D100LBの価値のあるメダルや宝石の欠片を見つけることができます。 (マップに戻る)

H:宝物庫…通常の扉と隠し扉の2方向から入ってくる事ができます。
 ここには略奪を免れた財宝が未だに蓄えられています。デーモンの守護者が財宝を守っており、入ってきた者に対してダルジ族の言葉、下位メルニボネ語、共通語で1回ずつ警告を発します。

「主以外の者は手を触れてはなりません!」

 財宝に手を触れたり、武器を抜いて向かってきた者に対して、デーモンの守護者は襲い掛かります。

ヌームレタゥ
宝物庫の守護者 ラッキラ種 CV:451

 上半身は人間、下半身は大蛇で、腕を4本持ち、顔には目が3個あるデーモンです。全身が薄黄色の鱗に覆われています。それぞれの腕にブロード・ソードを握っており、1戦闘ラウンドに最高4回の攻撃ができます。ヌームレタゥは女性です。
STR 33 CON 24 SIZ 20 INT 7 POW 12 DEX 15 CHA 8
耐久力:32 アーマー:薄黄色の鱗による24ポイント+酸の血液(1D10)
魔力:眼球×3、技能、口、酸の血液(1D10)、手×4、ナメクジの足、能力値、武器×4、防護
武器  攻撃  受け  ダメージ
ブロード・ソード1   48%   50%   1D8+1+4D6
ブロード・ソード2   48%   35%   1D8+1+4D6
ブロード・ソード3   53%   41%   1D8+1+4D6
ブロード・ソード4   58%   40%   1D8+1+4D6

 宝物庫の中には150LBの価値のある腕輪が二個、1200LBの価値のあるトパーズの狼像、500LBの価値のある宝石のはまった指輪、2500LBの価値のある大粒のダイヤモンド、600LBの価値のある美しく装飾されたダガー(ダメージ1D4+2)、200LBの価値のある黄金の鎖、その他730LB分のメダルや硬貨があります。
 それとは別にフルォウの召喚の際に使う触媒「フルォウの牙」(7,000LB)、ダルジの猟犬の召喚に使う「猟犬の毛」(5,500LB)が二個ずつ見つかります。それぞれが黒檀の小箱に収められており、小箱自体350LB(×四箱)の価値があります。

 宝物庫の片隅には衰弱したアラナーンと死んでしまった彼の仲間がいます。アラナーンは財宝に手を触れなかったため、ヌームレタゥには襲われなかったのです。衰弱が激しくてアラナーンは一人では歩けません。アラナーンを連れ出すには誰かが肩を貸さなくてはならないでしょう。魔術的な治療を施さない限り、アラナーンは戦闘には参加できません。 (マップに戻る)

I:泉の間…滾々と水を湧かせながらも縁から水をこぼさない不思議な円形の泉が部屋の中央にあります。泉から放たれるぼんやりとした白い光が部屋の内部を照らしています。
 泉の水は魔力を帯びています。水を飲んだ冒険者は以下の表に従ってD8を2回振って自分の身に何が起こったかを決定します。水は一人について一度しか効果を発揮せず、汲み出してしまうと即座にその魔力を失ってしまいます。

泉の効果表
1回目
D8 対象能力値
1 STR 1D4ポイント
2 CON
3 SIZ
4 INT
5 POW
6 DEX
7 CHA
8 耐久力 1D8ポイント
2回目
D8 効果
1 増える
(※耐久力は回復する)
2
3
4
5 減る
(※耐久力は失う)
6
7
8

(マップに戻る)

J:召喚の間…アーモルィナーナがデーモンを召喚するために使っていた専用の部屋で、入り口はデーモン・ドアになっています。デーモン・ドアを開けられるのはアーモルィナーナだけです。冒険者がデーモン・ドアを破壊すると決めた場合、同時に3人までが攻撃に参加できます。

ニキシーラ
デーモン・ドア ラージュ種 CV:325

 丈夫な金属製のドアで、表面に常に周囲の臭いを嗅いでいる大きな鼻が付いています。鼻は扉の前に立った人物の臭いを嗅ぎ分け、アーモルィナーナ以外の人物を部屋の中に入れないようにしています。アーモルィナーナ以外の人物が扉に触れると、鼻から小さな棘を噴き出して攻撃してきます。棘は攻撃に参加している全ての冒険者を一度に攻撃できます(効果範囲参照)。
CON 68 SIZ 19 INT 7 POW 15
耐久力:75 アーマー:68ポイント
魔力:技能、ダート、能力値、鼻、防護
技能:嗅ぎ分け 100%
武器  攻撃  ダメージ  射程距離  効果範囲
ダート攻撃(棘)   45%   3D3  10m  3m

 ニキシーラを破壊して中に入ると、部屋の床には冒険者の人数と同じ数の「混沌の八芒星形魔法陣」があり、それぞれに何物かが召喚されています。召喚は最終段階一歩手前で中断されており、魔法陣の中にいるものは契約(封印)を待っている状態です。
 魔法陣の中のものを封印しようとする冒険者は、以下の表を振って現われる精霊/デーモンを決定し、必要に応じてPOWを決め、通常通り封印を行います。封印に失敗した場合、デーモンが解放されるか封印しようとしたものに襲い掛かるかはゲームマスター次第です。

ランダム召喚表
D100 召喚される精霊/デーモン
01-15 地の精霊
16-30 水の精霊
31-45 火の精霊
46-60 風の精霊
61-67 ラッチャンゲット
68-77 ダルジの猟犬
78-82 バンゴンギ
83-90 フルォウ
91-93 金色の氷の猟犬
94-96 エレノイン
97-99 グラールク
00 混沌の神(※)
※どの神が現れるか、その神がどのような恩恵を冒険者に与えるかは各ゲームマスターが決めてください(混沌の神は理不尽な神罰を冒険者に与えるかもしれません!)。 (マップに戻る)

K:祭祀の間…部屋の四隅に光を放つデーモンが封じられており、冒険者たちが部屋に足を踏み入れると自動的に明かりを灯します。
 祭祀の間は大きな祭壇にそのほとんどを占められており、部屋の一番奥(の場所)には信じられないほど巨大なルビーから彫り出された狼の形をしたトーテムが安置されています。祭壇の四隅には精霊のルーンが刻まれた円盤がはめ込まれており(○の箇所)、それぞれに対応した精霊が1体ずつ封印されています。ルーンの円盤には封印された精霊に対応して土が盛ってあったり、水が湛えられていたり、炎が揺らめいていたり、風が渦巻いていたりします。

 この部屋には最高の守護者が配置されています。祭壇の四大精霊を従えた複合デーモン「フレーオン」です。巨大な狼の姿をしたフレーオンは、コアとなるデーモン「フレーオン」と右前足の爪「スギール」、左前足の爪「トフェル」、牙「グナフ」の四体で構成された巨大デーモンです。それぞれのデーモンに行動機会があり、しかも祭壇の精霊の力を行使します。INT×3のロールか<記憶術>ロールに成功すると、砦の正面入り口跡にあった四体の巨大骸骨がフレーオンと同種のデーモンの死骸であったことが分かります。
 フレーオンは侵入者に対して一度だけ警告を発します。

「速やかに去れ、侵入者よ。主アーモルィナーナ以外、この部屋に入る事は許されておらぬ」

 祭壇の前の石床には1000年前にフレーオンに挑んで返り討ちにあったメルニボネの戦士たちの骨や装備の残骸が散らばっています。
 警告を無視して部屋に留まれば、空気を震わすほどの咆哮を上げて、フレーオンは攻撃を開始します。

フレーオン
複合デーモン グナグフロ種 CV:198

 6メートルを超える巨大な狼の姿をしたデーモンです。銀色の毛並みと真っ赤に燃える目をしています。1戦闘ラウンドに牙と両前足の爪で攻撃する事ができます。
STR 35 CON 39 SIZ 43 INT 10 POW 34 DEX 16 CHA 14
耐久力:70 アーマー:銀色の毛皮による39ポイント
魔力:足、鉤爪×2、眼球×2、口、能力値、防護。
特殊:四大精霊を一体ずつ操る。
武器  攻撃  受け   ダメージ
鉤爪(右)   57%   13%   1D6+3D6+3D6*
鉤爪(左)  46(72*)  13%  1D6+3D6+5D6*
 52%  13%  1D10+3D6+3D6*
*赤字部分はそれぞれの攻撃手段に以下のデーモンが使用される場合の数値です。以下の各デーモンが倒されたら、赤字部分のボーナスはなくなっていきます。

スギール
鉤爪(右) ラッチャンゲット種 CV:51

 フレーオンの右前足についた鉤爪です。
CON 16 SIZ 3 INT 6 POW 19
耐久力:10 アーマー:なし
魔力:武器(+3D6)。

トフェル
鉤爪(左) バンゴンギ種 CV:90

 フレーオンの左前足についた鉤爪です。赤い大きな爪の姿をしています。
CON 16 SIZ 3 INT 1 POW 18
耐久力:10
魔力:武器(+5D6)、技能(攻撃+26%)。

グナフ
牙 ラッチャンゲット種 CV:51

 フレーオンの牙に宿るデーモンです。
CON 24 SIZ 3 INT 6 POW 10
耐久力:18
魔力:武器(+3D6)。

 メルニボネの竜に対抗するための兵器として用いられていたグナグフロ種は非常に強力なデーモンです。しかもこのフレーオンは祭壇に封印された精霊も使ってきます。しかし、武器(鉤爪、牙)は破壊することが可能です。冒険者はフレーオン本体を攻撃するか、武器となるデーモンを攻撃するか、判定の前にゲームマスターに申告します。先に武器となるデーモンたちを倒してしまえば勝利の可能性は上昇するでしょう。冒険者たちが撤退を決意したら、ゲームマスターはそれを認めるべきでしょう。フレーオンの使命はトーテムの守護であり、侵入者の皆殺しは二の次です。

 フレーオンを倒せば部屋の奥にあるトーテム(の場所)に近付く事ができます。トーテムは野獣の王ルーフドラックの依り代で、床に接合されています。アーモルィナーナはこのトーテムにルーフドラックを宿らせて対話をしていました。
 トーテムを運び出すにはこれを破壊しなくてはなりません。破壊したトーテムには10万LGの価値がありますが、それをするとルーフドラックの怒りを買います。ルーフドラックの怒りの具体的な効果は各ゲームマスターに任せます(砦からの帰り道、咆哮丘陵地帯に生息する全ての犬属が冒険者を殺すべく殺到する、等)。

 砦に着くまで狼や野犬を一匹も殺さなかったのなら、ルーフドラックが依り代に宿ります。依り代に宿った野獣の王はその場にいる冒険者の脳に直接語りかけてきます。

「ここ(依り代)からの声を聞くのは、実に久しぶりだ。我が子達を傷つけずにいた事、嬉しく思う、定命の小さきものよ。その声、覚えておこう…」

 前触れもなく、ルーフドラックは去ります。
 魔術師は≪ルーフドラックの召喚≫を学びます。ただし野獣の王は気まぐれであり、魔術師の意図通り現れたり、助力をしてくれたりするとは限りません(『ストームブリンガー』ルールブック参照の事)。 (マップに戻る)

L:隠し部屋…フレーオンを倒した後に<捜索>ロールに成功すると隠し部屋に続く隠し扉を発見する事ができます。隠し部屋は非常に狭く、冒険者が二人も入ったら一杯になってしまいます。隠し部屋の中には机と椅子の残骸があり、それに埋もれてアーモルィナーナの魔道書があります。

『アーモルィナーナの魔道書』
 薄くて堅い灰白色の石の板を綴じて作られた魔道書です。石のページに釘のような尖ったもので引っ掻いたように文字が書かれています。材質の劣化が遅い一方、大変重く、そして脆いのが特徴です。
 失われたダルジ族の言葉「オピッシュ語」で書かれています。<上位メルニボネ語>の1/2ロールに成功すれば読んで研究する事ができます。
 この魔道書にはルーフドラック、ダルジの猟犬、フルォウの召喚の呪文が記されており、それらを召喚する際の<召喚>ロールに+10%のボーナスを与えます。
 好事家や魔術師に売却するなら、この本には30,000LB以上の値段が付きます。 (マップに戻る)



結末
 フレーオンに挑むにせよ挑まないにせよ、アラナーンを見つけてカドサンドリアのスーネック卿の元へ送り届ければ約束の報酬がもらえます。
 スーネック卿は義弟を助けてくれたお礼に、砦で見つけた宝物を適正な価格で買い取ってくれます。ただしルーフドラックの依り代のトーテムだけは買い取ってくれません。価値がありすぎるのと、得体の知れなさに怯えているからです。スーネック卿はイムルイルのメルニボネ人か、特に光の帝国に興味を持っている好事家(たとえば古フロルマーのアヴァン・アストラン公爵など)であれば買い取ってくれるかもしれないと助言してくれます。スーネック卿はイムルイルと取引をしており、頼めば紹介状を書いてくれます。紹介状は冒険者を新しい冒険へ導いてくれるかもしれません。



付録1:能力値

アルギミリアのアラナーン
 アルギミリアのカドサンドリアの商人でしたが、数ヶ月前に商品を満載した船が沈んでしまい、無一文になってしまいました。
 義兄であるスーネック卿が商売の建て直し資金を貸すと申し出ましたがそれを断り、ゴロツキを集めて資金を手に入れるための大博打に打って出ました。博打には失敗し、地下道の片隅で衰弱死しつつあります。
STR 14 CON 12 SIZ 13 INT 9 POW 12 DEX 14 CHA 10
耐久力:13(1) アーマー:ハーフ・プレート(1D8-1)
ダメージ・ボーナス:+1D6/+1D4
武器  攻撃  受け  ダメージ
フォールチォン  52%  51%  1D6+2
ターゲット・シールド  4%  54%  1D6
技能:隠れる 20%、物品鑑定 86%、地図製作 37%、信用 43%、説得 53%、捜索 22%、共通語 76%、下位メルニボネ語 43%。
持ち物:わずかに残った保存食、60LBの価値のある小さな宝石2個。
※衰弱したアラナーンの現在の耐久力は1ポイントです。

典型的なフルォウ
STR 21 CON 18 SIZ 17 INT 7 POW 11 DEX 15
耐久力:23 アーマー:皮膚による5ポイント
武器  攻撃  受け   ダメージ
鉤爪   44%   7%   1D6+1D6
噛み付き  31%  -  1D10+1D6
バックラー  10%  38%  1D6+1D6

典型的なダルジの猟犬
STR 22 CON 21 SIZ 12 INT 7 POW 12 DEX 18
耐久力:21 アーマー:なし
武器  攻撃  受け   ダメージ
鉤爪(2回)   30%   16%   1D6+1D6
噛み付き  39%  16%  1D10+1D6
技能:追跡 45%、捜索 19%、登はん 52%、回避 45%。

典型的な狼
STR 13 CON 15 SIZ 12 INT 1 POW 7 DEX 15
耐久力:15 アーマー:毛皮による1ポイント
武器  攻撃  ダメージ
噛み付き  40%  1D8+1D6
技能:追跡 80%、観察 60%、捜索 60%、嗅ぎわけ 80%、忍び歩き 76%、隠れる 61%、回避 56%。
(※狼は1戦闘ラウンドに1回の攻撃と最大3回の回避をします。ルールブック参照)

典型的な野犬
STR 7 CON 13 SIZ 11 INT 4 POW 7 DEX 6
耐久力:13 アーマー:なし
武器  攻撃  ダメージ
噛み付き  36%  1D6
技能:追跡 78%、観察 50%、嗅ぎわけ 80%、隠れる 22%、回避 25%。
(※野犬は1戦闘ラウンドに1回の攻撃と1回の回避をします。ルールブック参照)



付録2:追加データ

フルォウ(CV:220)
 頭が狼で体が屈強な人型をしたデーモンです。片手に鋭い鉤爪を持ち、もう片方の手にバックラーを装備しています。戦闘時は同一戦闘ラウンドに鉤爪と噛み付きで1回ずつ攻撃します。
 召喚には特殊な加工を施された「フルォウの牙」が1本必要です。召喚されると、エレノインやグラールクのように群れで出現します(その中の一体を封印する事は可能です)。
STR 4D8 CON 4D8 SIZ 3D8 INT 1D8 POW 3D8 DEX 3D8
魔力:足、鉤爪、眼球×2、口、群体、手、能力値、技能、防護。
技能:鉤爪 5D10%、噛み付き 3D10%、バックラー(受け) 5D10%、パンチ攻撃 3D10%、操作技能 3D10%、観察 2D10%、捜索 2D10%。
アーマー:皮膚による5ポイント

ラッチャンゲット CV:51
CON 5D8 SIZ 1D8 INT 1D8 P0W 3D8
魔力:武器(ダメージ+3D6)。
(※『Sorcerers of Pan Tang』より)

バンゴンギ CV:90
CON 3D8 SIZ 1D8 INT 1D8 POW 3D8
魔力:武器(ダメージ+5D6)。
技能:攻撃 5D10%。
(※『Sorcerers of Pan Tang』より)



デザイナーズ・ノート
 上級冒険者向きのシナリオです。出てくるモンスターに一撃必殺の威力を持つものが多く、冒険者たちもデーモンの力を借りなければ真の財宝を手に入れることは極めて困難でしょう。
 報酬はそれに見合った強力なものであり、特に「召喚の間」でデーモンを手に入れることができれば、以後の冒険のパワー・バランスは大きく変わるに違いありません。
 挑戦する冒険者には荷が重いと判断したゲームマスターは、デーモン(特にフレーオンやヌームレタゥ)の能力を弱めたり、数を減らすなどして対応してください。また「召喚の間」で入手する精霊/デーモンの数を減らせばパワー・バランスの振れ幅を小さくする事ができるでしょう。

 このシナリオの固有名詞はある小説に登場する固有名詞をもじったものが大半です。分かる方がいらっしゃいましたら友達になりましょう。

上り階段 泉の間 衛兵の詰め所 猟犬の部屋 空き部屋 アーモルィナーナの私室 行き止まり 死体 宝物庫 召喚の間 祭祀の間 隠し部屋 寺院内マップ