書架:5



目録41:邪神帝国 邪神帝国
刊行年:1999年 出版社:早川書房 定価:640円 著者:朝松 健
収録作品:「ヨス=トラゴンの仮面」、「狂気大陸」、「夜の子の宴」、他

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録42:魔術師の帝国 魔術師の帝国
刊行年:1974年 出版社:創土社 定価:2,400円 著者:クラーク・アシュトン・スミス
収録作品:「ゾシーク」、「ハイパーボリアの女神」、「ヨー・ボムビスの地下墓地」、他

有味: C・A・スミスの作品集。地球最後の大陸ゾシークや、超古代のハイパーボリア世界を舞台とした短編を、ワールド毎にまとめたという面白い構成。
スミス: ゾシークとハイパーボリアの章の冒頭に付されたワールドマップが『ソーサリー!』のマップみたいで良いですわね。
有味: そうなんだよー。「ああ、この地域の話か」等と地図と見比べながら読むとワールドガイドみたいで面白い。
スミス: 神話としてはどうなんですの?
有味: ゾシークは微妙な線だが、ハイパーボリアは重要な位置にあるからな。ヴーアミタドレスの地下世界だけでも個性的な存在がひしめいているからね。
スミス: 『クトゥルフ・ワールドツアー』のおかげで、ハイパーボリアには固定ファンがいますものね。
有味: まったくだな。プルミナ萌え!
スミス: ……。
有味: C・A・スミスはこういった異界幻想譚が得意だなー、と納得させられる一冊。イチオシは「アブースル・ウトカンの悲惨な運命」。でも「二重の影」とかに、より神話テイストを感じたりするのであった。



目録43:レインボウ・レイヤー 虹色の遷光 レインボウ・レイヤー
刊行年:2001年 出版社:
角川春樹事務所
定価:720円 著者:伏見 健二
収録作品:−

スミス: SFクトゥルフというのはどうなんですの?
有味: 皆無ではないが、珍しいな。作者氏が過去に物した中途半端に面白くなかった『セレファイス』や、イラストで壊滅的な不利を被った『ハスタール』に比べれば、物珍しさも手伝って結構読める一冊だと思う。
スミス: ……SFって専門外ですからムツカシイですわ。
有味: しかし、ギミック自体かなり感覚的、というか視覚的なものが多いから難解ではない。実写映画よりはアニメ向け、というか。
スミス: そうですわね。土星猫は愛らしくて好きですわ。
有味: ストーリー的には結末がアッサリし過ぎていて印象に残らない感じ。面白くないわけじゃないんだがなー。



目録44:ラプラスの魔 ラプラスの魔
刊行年:1987年 出版社:角川書店 定価:540円 著者:山本 弘
収録作品:−

スミス: コンピュータRPGのノベライズですわね。
有味: そのようだね。でも原作ゲームは友達がやっているのをちょろっと見たくらいにしか知らない。
スミス: そんな今ひとつ感慨の浅いオーナーの感想をどうぞ。
有味: 色々と神話アイテムを散りばめてニヤリとさせるやり方はこの作者らしいね。ラストをラヴクラフトの『クトゥルーの呼び声』の前日談に繋げる辺りは上手い。
スミス: 『ソーサリー!』における『試練ためしの寺院』のような位置付けですわね。
有味: ゲームブック詳しいね、スミス。
スミス: ほほほ。
有味: 読み易さは折り紙付。完璧にホラーではないが、娯楽小説としてはまとまっている。「NPCは殺すためにいる」という不変の法則にしたがって登場人物をあっさり屠る場面が見もの。



目録45:クトゥルー・オペラ 全4巻 クトゥルー・オペラ
刊行年:
1980年〜1982年
出版社:
朝日ソノラマ
定価:各370円 著者:風見 潤
収録作品:−

有味: 超能力を持つ7組の双子たちが、力を合わせて邪神を倒していく話。神話を題材にしたアクションものの極端な例として興味深い―――
スミス: そうですわね! 良かったですわ。オーナーの事だから、てっきり頭ごなしに―――
有味: ――わけ、ねーだろ!!
スミス: ひゃんっ!
有味: 第1巻のダゴンが真っ二つに引き裂かれるシーンがあまりにショックで数年間続きが読めなかったが、ギルマン文庫に寄贈するために気力を奮い立たせて読破した。感謝しろよ〜? ん〜?(スミスの頬を指でぐりぐり突きながら)
スミス: ん〜っ!(ぐりぐりぐり)
有味: 作者の意図は「神話ファンを失笑させる」という事なのだろう。少年少女たちの機転ごときで次々と屠られていく邪神に復権の日なんか来ねーよ、というコメディ。クトゥグァの「来たな、こわっぱ! 燃やしてくれるわ!」という人間臭い台詞には気絶しそうになった。
スミス: コメディとしては楽しんだという事で良いですの?
有味: ……んな訳、ねーだろ!!
スミス: んん〜っ!(ぐりぐりぐり)



目録46:ラヴクラフト全集 全7巻、別巻上・下 ラヴクラフト全集
刊行年:
1974年〜2007年
出版社:東京創元社 定価:
500円〜840円
著者:H・P・ラヴクラフト
収録作品:「ダニッチの怪」、「エーリッヒ・ツァンの音楽」、「ピックマンのモデル」、他

スミス: 先日完結したシリーズが早速エントリーですわ。
有味: 本邦で最も手軽に大量のラヴクラフト作品を読む手段の決定版がこのシリーズだな。ゲームの流れや雰囲気を掴むためのテキストとしては青心社の『クトゥルー』と本シリーズが双璧だね。
スミス: 早速オーナーのイチオシをお聞きしますわ。
有味: 「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」。オレは昔から変わらずこれがイチオシだぞ。
スミス: ……。でも「ハーバート・ウェスト」はラヴクラフト自身も今一つと言っていたような……。
有味: 平気平気。オレは邪道なラヴクラフト読者だから。でも「レッドフックの恐怖」や「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」も結構好きだぞ。
スミス: どれも神話との関連は薄く……。
有味: 「クトゥルフの呼び声」も最近になって良さが分かってきた。「狂気の山脈にて」も何度か読み返して良さが分かったような気がする、かも。
スミス: 一応恐る恐る嫌いな作品なども聞いてみますわ。
有味: 嫌いっつーか苦手な作品だが、「銀鍵」「カダス」「インスマウス」辺りかな。
スミス: (……どれもラヴクラフトを代表する作品ですわ)
有味: 邦訳されたラヴクラフト作品のほとんどが読めるのでオススメのシリーズ。テキストは多いので、その中から好きな作品を見つけてみるのも良いだろう。

2008/01/30追記 別巻上・下
有味: ラヴクラフトが添削した小説を集めた二冊。小説の添削という職業に今ひとつ馴染みがないだけに興味深くもあるな。
スミス: オーナーの好きな「永劫より」やご友人のN様のお気に入りの「博物館の恐怖」にも御大の手が入っていましたの。
有味: ヒールドの作品にこんなに手が入っていたとは…。御大からは逃れられんな。しかし、添削とはいえ複数の書式で形に仕上げられるのはさすがに職業作家だな。文体の違いも楽しんだ。
スミス: 恒例のイチオシをどうぞ。
有味: D・W・ライムルの「墓を暴く」。「アウトサイダー」的なラストのショックがホラーっぽくて良い。



目録47:召喚の蛮名 学園奇覯譚 召喚の蛮名
刊行年:2003年 出版社:
エンターブレイン
定価:880円 著者:槻城 ゆう子
収録作品:−

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
 レンタル中(Click!)



目録48:ヘンダーズ・ルインの領主 ヘンダーズ・ルインの領主
刊行年:1991年 出版社:
ホビージャパン
定価:1,200円 著者:安田 均と
グループSNE
収録作品:「スキュラの恐怖」

スミス: TRPGを題材とした短編を集めた一冊ですわ。その中の一篇「スキュラの恐怖」(山本弘著)が神話作品ですわね。
有味: 『クトゥルフ・ワールド・ツアー』の巻頭に収録されていた作品の再録だね。他の短編もRPGマガジン誌上でリアルタイムで読んだ。書き下ろしの一篇は未読だったが、別に神話作品じゃないので言及する必要はないな。つーか、ルナルなんてヽ(`Д´)ノ シラネェヨ!
スミス: 一篇の神話のためにコレクター癖を出して死蔵してしまうのですね? 悪い癖ですわ。
有味: う……。SNEらしく巻末に登場人物のパラメータを載せているのだが、これは『ワールド・ツアー』未収録だったよ?
スミス: ……オーナーの蒐集癖にはもう慣れましたわ。では作品の感想をどうぞ。
有味: 話は良く練られているし、作品自体は悪くないと思う。
スミス: 何か奥歯に物が挟まったような言い方ですわ。
有味: 本編の後に「作者から一言」というあとがきみたいなものが付されているんだけど、ここで作者氏が神話作品群を「掘り起こす価値もない、B級小説」と書いているんだよね。そうかもしれないけど、別にそんな事ここで書かなくても良いって。「クトゥルフ神話というムーブメントが好きだ」だけで良いじゃん。
スミス: この作者様は『クトゥルフ・ハンドブック(改訂版)』でもラヴクラフト御大関連の記述で誰かと揉めたと書いていませんでしたかしら?
有味: 揉めてたね。周りを不快にして悦に入るタイプの人だったらヤダな。別に個人的に付き合いのある人じゃないから構わんけど。



目録49:覚醒者 覚醒者
刊行年:2005年 出版社:光文社 定価:571円 著者:友成 純一
収録作品:−

有味: 何だかちょっと異色な感じの神話長編。今回はスミスに感想を述べてもらおうかな。どぞ。
スミス: 責任重大ですわ。ええと、分類的にはインスマス系の回帰譚です、わよね?
有味: そうだね。福岡やインドネシアという舞台は目新しいけどね。
スミス: いきなり地震を発端としておきながら、海浜の物語を延々と続けることには違和感がありました、わよね?
有味: 四大精霊説の議論はともかく、地下世界の神格はC・A・スミスを筆頭に多くの作家が創り出しているんだから、そこをチョイスする手もあったと思うよね。
スミス: アルコール中毒者の心理描写が、経験を踏まえただけあって真に迫っているそうですわ。
有味: そうらしいね。でもそんなの神話と関係ないじゃん。
スミス: ……。もしかして、私の口を介して作品にケチつけてますか、オーナー?
有味: 終わり方の唐突さは気にいりました。このまま続編がなければ評価に値します。
スミス: ……クスン。



目録50:ラヴクラフトの幻想怪奇館 ラヴクラフトの幻想怪奇館
刊行年:1990年 出版社:大陸書房 定価:500円 著者:松本 千秋/岡本 蘭子
収録作品:「レッドフックの恐怖」、「魔犬」、「宇宙からの色」、他

スミス: 少女漫画なのですわ。
有味: ラヴクラフト作品を漫画化というやつだね。『妖神降臨』の悪夢が……。
スミス: 今回はクトゥルフに限ってはいませんので、ラインナップに文句をお付けになるのはナシですわよ。
有味: でも「レッドフックの恐怖」と「宇宙からの色」はこのボリューム(40数ページ)では如何せん説明不足だね。特にレッドフックは訳分からん。
スミス: 「エーリッヒ・ツァンの音楽」も残念な出来ですわ。ラヴクラフト御大が伝えたかったことは何一つ伝わっていませんもの。
有味: 珍しく手きびしいね、スミス。やはり小説とコミックの間には溝があることを感じるね。資料としては珍しい、という事で満足しておこう。
スミス: オーナーのイチオシはどれですの?
有味: 「死体安置所にて」かなぁ。これは御大が伝えたかった雰囲気を巧く理解してコミカライズしていると思う。
スミス: 最後の一コマの使い方が良いですわね。



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