書架:7



目録61:妖月の航海 妖月の航海
刊行年:1999年
(ソノラマ文庫NEXT)
出版社:
朝日ソノラマ
定価:552円 著者:井上 雅彦
収録作品:−

有味: いかにもな登場人物がいかにもなアクションを繰り広げるいかにもなアクション・クトゥルフ。いかにもなジャンク作品と分類していたが、今回読み返してみてギリギリ神話していると認識を改めた。
スミス: 神話アイテムは宇宙的恐怖の残滓というよりもアクションのためのガジェットという感じですわね。
有味: よくある使いかただが、あながち名前を借りただけの別物というわけではないので、ネクロノームよりは正伝寄りなのかもしれん。
スミス: オーナー、その例えは全然フォローになっていませんわ。
有味: 昔、オレが勘違いして蓄積した既知のオカルト知識が次々に出てきて笑った。これでシンバがマジックベルトを締めてパワーアップしてくれたら聖典になったに違いない。
スミス: (……?)
有味: 自分でも予想外にソフトな感想になってしまったが、特に毒にも薬にもならない作品。平安時代の船乗りにシンドバッドの魂が宿っているという設定を考えた著者の思考がカオス。



目録62:邪神たちの2・26 邪神たちの2・26
刊行年:1994年 出版社:学習研究社 定価:1,000円 著著:田中 文雄
収録作品:−

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録63:クトゥルー怪異録 ◆極東邪神ホラー傑作集◆ クトゥルー怪異録
刊行年:1994年 出版社:学習研究社 定価:1,000円 著者:菊地 秀行、佐野 史郎、他
収録作品:「曇天の穴」、「邪教の神」、「銀の弾丸」、他。

有味: 学研ホラーノベルズで一番最初に読んだのって、この本だったよ。
スミス: 佐野史郎氏の書き下ろしとか、収録作品はバリエーションに富んでいて面白いですわね。
有味: 作者各人の短編集を買わなくても関連作を一堂に集めてくれているのは親切ですな。高木彬光とか山田正紀の神話関連作品なんて、普通に生きてたらなかなか探し出せんからな。
スミス: そんな中でオーナーのイチオシはどれですの?
有味: 「邪教の神」と迷ったんだけど、より神話正典に近いということで友成純一の「地の底の哄笑」。日本作家の作品でツァトゥグァをメインに持ってくるのは珍しいんじゃないだろうか?
スミス: 『覚醒者』もこちらでいけば良かったですのにね。
有味: いやいや、まったく。先日本棚整理してたら本書の文庫版見つけた。文庫になってたんだね、すっかり忘れてたよ。
スミス: 文庫には朝松健センセの「闇に輝くもの」が収録されていませんわ。
有味: 例によって大人の事情だろう。ま、この作品自体、大して面白くn……(以下検閲削除)
スミス: ……困りますわ。



目録64:アトランティスの呪い アトランティスの呪い
刊行年:1985年 出版社:ポプラ社 定価:420円 著者:クラーク・アシュトン・スミス
収録作品:「死神の都」、「怪盗ニガシム・ジャウムの首」、「二つのエメラルド」、他。

有味: 字が大きくて行間が広く、ほとんどの漢字に読み仮名がふってある。児童書ですな、これは。
スミス: でも付された数点の挿絵はなかなか良い雰囲気ですわ。
有味: 対象年齢低めの本なので小難しい言い回しはなく、逆に内容がストレートに入ってくるかもな。
スミス: 6編の短編が収録されていますけど、なかなか良いチョイスですわね。
有味: ゾシーク、ハイパーボリア、火星、アトランティスと、多様な世界はスミスの真骨頂だね。資料的には「アトランティスの呪い」はあまり収録されない作品なので貴重かも。
スミス: ではイチオシをどうぞ。
有味: クトゥルフ的には「怪盗ニガシム・ジャウムの首」かな。ホラーとしては「遺跡の秘密」が一番だと思う。それよりも本書の目玉は「あとがき」だろう。
スミス: どういうことですの?
有味: 父親が幼い子供2人(男女の兄弟?)に本書の感想を聞くという、対話形式で書かれているんだよ。とにかく子供2人の小賢しさは笑える。本書で一番ファンタジーなのはこの「あとがき」。



目録65:幽霊狩人カーナッキ 幽霊狩人カーナッキ
刊行年:1977年 出版社:国書刊行会 定価:980円 著者:ウィリアム・ホープ・ホジスン
収録作品:「見えざるもの」、「悲響の部屋」、「ジャーヴィー号の怪異」、他。

有味: 最初に収録されている「見えざるもの」を読んで、「幽霊の仕業だと思わせておいて、実は……」ということを繰り返すシリーズだと思ったら……
スミス: 次の「魔物の門口」でいきなりその予想は覆されましたわね。
有味: 「え!? やっぱ幽霊なの!?」みたいな感じで虚をつかれた。
スミス: ラヴクラフト御大が注目した作家といわれているだけに、其処彼処にその様子が伺えますわね。
有味: 『シグサンド写本』とか≪サーマーの儀式≫は親和性が高いね。実際CoCではデータ化されている訳だが。
スミス: ではオーナーのイチオシをどうぞ。
有味: まぁ、どういうわけかクトゥルフ神話に組み入れられてしまった「妖豚」だろうね。『Malleus Monstrorum』によるとサーイティ(小説中ではサイーティ)はグレート・オールド・ワンらしいので。
スミス: 本書の中では確かに一番宇宙的恐怖な感じがしますものね。その対処法は驚愕すべきものですけれど。
有味: まったくだね。ウィルマース・ファウンデーションは一刻も早くカーナッキをスカウトしに行くべきだと思う。ホームセンターで買えるような材料を使ってグレート・オールド・ワンを追い返してしまう彼の才能は、既にクロウを凌いでいると保証する。



目録66:うらにわのかみさま 邪神さまにおねがい うらにわのかみさま 邪神さまにおねがい
刊行年:2007年 出版社:
ホビージャパン
定価:619円 著者:神野 オキナ
収録作品:−

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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目録67:H・P・ラヴクラフトのダニッチ・ホラー その他の物語 H・P・ラヴクラフトのダニッチ・ホラー その他の物語
刊行年:2007年 発売元:東映アニメーション
販売元:幻冬舎
定価:2,980円 原作:ラヴクラフト
監督:品川 亮
美術:山下 昇平
収録作品:「家の中の絵」、「ダニッチ・ホラー」、「フェスティヴァル」。

スミス: DVDのエントリーは初ですわね。
有味: 其処彼処で話題になっていたので、ちょっと挑戦してみた。収録ラインナップはなかなか渋いね。表紙の彼のような造形の人形がジオラマセットの中で動いて物語が進む感じ。ともすれば説明不足なくらいに解説は控えめで、見るのに想像力が必要とされる、かも。
スミス: ちなみにネットでよくお顔を見かけた御仁は「家の中の絵」の語り手さんでしたの。
有味: 「家の中の絵」はラストが「マンホールの中の人魚」を思い出してちょっと笑った。「ダニッチ・ホラー」は短いながらも原作を忠実にトレースしている良作。でも映像作品は視覚に重きを置きすぎるので、ラストの迫力と事件の裏にある真実をどう受け取るかで評価が分かれると思う。
スミス: 私は無限の想像の余地がある原作の方が好きですわ。
有味: まぁ、そういうこと。「フェスティヴァル」は原作読者でも油断していると置いてけぼりを喰らいそうな一品。霧と夢の町キングスポートを舞台にしていると考えればそれも狙いなのかも、と好意的に穿ってみる。
スミス: オーナーはちょうど『キングスポート』サプリメントをお読みになっていたのではなくて?
有味: でも、よりインスピレーションを受けたのは「家の中の絵」だったりする。そんなわけでイチオシはミッキー・カーチスの怪演が光るこの作品。



目録68:クトゥルー神話の本 クトゥルー神話の本
刊行年:2007年 出版社:学習研究社 定価:1,600円 著者:多数
収録作品:−

スミス: 学研からのムックですわ。
有味: スタイリッシュな装丁や巻頭の美麗なカラーイラスト群は手にとって興味を持たせる力がありそうだな。
スミス: 内容的には最新の書き下ろし記事あり、『クトゥルー神話大全』からの再録記事ありですわね。かつての記事がまた日のあたる場所に出てくるのは好ましいことですわ。
有味: でも「クトゥルー神話作家列伝」の記事は苦労してでも識者が最新の情報を書き下ろすべき。17年も前の最新情報の再録は天気予報の再放送並みに情報価値が低いと思う。つーか、明らかに手抜きだろ。せめて最新情報を書き加えるなりしてほしかった。
スミス: もう一つの目玉は「800字のクトゥルー神話小説」大賞の入選作掲載ですわね。
有味: うむ。最優秀賞の「ラゴゼ・ヒイヨ」には「やられた!」と唸らされた。事件の一場面を切り取るのではなく、800字で事件を完結させているのは見事。でもこの本とダ・ヴィンチとSTUDIO VOICEに収録された同じ作者の連作短編(?)は正直言って微妙だと思う。
スミス: 新旧の記事が混ざり合っていて、なかなか読み応えのある一冊でしたわ。
有味: 初心者取り込みのツールには使えんがな。



目録69:クトゥルー神話の謎と真実 クトゥルー神話の謎と真実
刊行年:2007年 出版社:学習研究社 定価:980円 監修:東 雅夫
収録作品:−

有味: 近年の学研の神話関連書籍の刊行ペースたるや、眼を見張る物があるな。
スミス: 上記「クトゥルー神話の本」に続いて学研のムックをエントリーなのですわ。
有味: ボリュームや値段の観点からも初心者取り込みツールとしては出色の出来。「狂気の山脈にて」作品ダイジェストの最後の一文のテーマの歪めっぷりには目が点になったが、概ね納得できる作り。
スミス: ちょっと薄口の「クトゥルー神話大全」といった風情ですわね。
有味: ふんだんにビジュアルを配した所は、受動的に興味をわかせるので成功だな。
スミス: 読んでいて肩が凝らないのは良いですわね。
有味: 正直言って冒頭の佐野史郎のインタビューと監修者の特別寄稿記事くらいしか目新しい情報はないのだが、何度も手にとってパラパラとめくる事のできる手軽さが嬉しい。
スミス: 「クトゥルー神話地図ガイド」等は考えるよりも視覚に直接訴えかけてくれるので楽しいですわね。ヨスが青くなったり赤くなったりしてしまっていますけど。
有味: 個人的には14ページからの「クトゥルー神話外伝」の微妙さが気に入った。



目録70:残虐行為記録保管所 残虐行為記録保管所
刊行年:2007年 出版社:早川書房 定価:2,000円 著者:チャールズ・ストロス
収録作品:「残虐行為記録保管所」、「コンクリート・ジャングル」。

有味: この図書館に収録された書物の、どれにも似ていない1冊かもしれんな。
スミス: 「SF+クトゥルー+スパイスリラー」らしいですわ。確かにここまでの70冊の中でも異彩を放つ1冊かも知れませんわね。
有味: ストーリー的には「魔術」が「技術(テクノロジー)」化された世界で、その技術を悪用する者の暗躍を阻止する組織のエージェントの暗闘といった所か。
スミス: 文字にしますとちょっとありきたりですけど、書式が完全にSFなので目新しく感じますわ。
有味: そーだな。何か久しぶりにSFを読んだ気がする。どれくらい久しぶりかって言うと……『知性化戦争』以来?
スミス: ……それは久しぶりすぎですわ。
有味: 強烈に覚えているSFって『知性化戦争』くらいまで遡るんだよね……。
それはともかく、日本市場ではちょっとありえない感じの神話作品。分類は絶対にSF寄りなんだけど、SFの裾野を考えると、日本では生まれてこない1冊ではないだろうか?
スミス: 続編(?)はさらに神話色が濃くなっているとの事ですので、ちょっと楽しみなのですわ。
有味: 他の読んだ人たちとちょっと議論してみたい作品。とりあえず1篇目の黒幕について意見を聞いてみたい。



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