書架:9



目録81:恐怖と狂気のクトゥルフ神話 恐怖と狂気のクトゥルフ神話
刊行年:2009年 出版社:笠倉出版社 定価:552円 著者:クトゥルフ神話研究会
収録作品:−

有味: なんつーか、ここ2、3年、この手の神話解説本の出版が多すぎね?
スミス: 最近では同じようなコンセプト(解説+イラスト)で『「クトゥルフ神話」がよくわかる本』がありますわね。
有味: 何も出ないよりは何か出た方が良いのは当然として、流石に食傷気味だなぁ。
スミス: 先行の本とどれだけ差別化を図れるかが勝負の分かれ目といったところでしょうか。
有味: 本書に限って言えば、それは第5章の「関連作品紹介」かな。様々な作品を強引に大系に組み入れてしまうのはクトゥルフ神話の十八番とはいえ、『ロマンシング・サガ3』まで持ってくるのは流石に虚をつかれた。ロマサガ3は“地すり残月”が最後まで閃く事ができなかったので悔やんでいるゲーム。
スミス: 基本的には現在から過去へのベクトルでしか記事が書かれないので、多かれ少なかれ似た印象になってしまうのが解説本の痛い所ですわね。ゲーム先行で元となった原作の翻訳が追いついてこないのも憂うべき問題ですわ。
有味: いやー、結構アスラ道場には通ったと思うんだよ、我ながら。そういえば“タイガーブレイク”も残したままだったなぁ。
スミス: 『秘神界』が成功だったか否かは分かりませんが、また未来へ繋がる創作を本邦から発信できると良いですわね。ケイオシアム社の『〜Cycle』的なテーマを絞った作品集が日本でも受け入れられると面白いと思いますわ。
有味: でもロマサガはやっぱり2が最高だというのがオレの持論。ホーリーオーダー(女)と軽装兵(女)は必ず入れていたよ。可愛いんだよね。
スミス: もう、何の話ですのっ!? 



目録82:ゾティーク幻妖怪異譚 ゾティーク幻妖怪異譚
刊行年:2009年 出版社:東京創元社 定価:1,200円 著者:クラーク・アシュトン・スミス
収録作品:「ゾティーク」、「地下納骨所に巣を張るもの」、「蟹の支配者」、他。

スミス: スミスおじ様の異世界短編集ですわね。滅び行く超未来世界ゾティークを舞台にした短編が17作収録ですわ。
有味: やはりこういうテーマを絞った短編集は話の繋がりがあって面白いな。神話色は薄いのだが、「死体安置所の神」のモルディッギアンはデータ化されているので余裕でセーフだろう。
スミス: 作風は女性がらみのお話が多くて、やっぱり御大とは一線を画していますわね。
有味: 作品の色彩感が違うな。「ウルアの妖術」とか「モルテュッラ」なんて、絶対御大の短編集には入って来ない作風だ。
スミス: これでゾティークの地図でもついていれば歴史的傑作でしたわね。オーナーのイチオシは?
有味: 「拷問者の島」。あまりにもスミスっぽくてラストはギャグかと思った。
スミス: 巻末の解説でも言及されている「塵埃を踏み歩くもの」の邦訳を切に願っておりますの。
有味: ところで、本書を元に「クトゥルフ・ゾティーク」とか作れると思うんだよ。ネットでサラリと調べてみたらゾティークをゲーム化しようとしているグループがいくつかあるし、地図も何種類か見つかったしね。あとはタサイドンの能力値が見つかれば、と思っているんだけど、どなたか心当たりありませんかね?



目録83:文学における超自然の恐怖 文学における超自然の恐怖
刊行年:2009年 出版社:学習研究社 定価:2,500円 著者:H・P・ラヴクラフト
収録作品:「文学における超自然の恐怖」、「ダンセイニ卿とその著作」、「ユゴスの黴」、他。

スミス: “ラヴクラフト御大の評論を3本、その他”といった1冊でしょうか。
有味: もっと退屈するかと思ったけど、なかなか興味深く読んだ。表題の「文学における超自然の恐怖」はクトゥルフのキーパーとしてはあまり役に立たなかったけど、ホラーRPGのゲームマスターとしては参考になった。
スミス: 「惑星間旅行小説の執筆に関する覚書」は、舌鋒鋭いですわ。
有味: 現代日本SF風味ライトノベルなら滅多切りだからな。これが現代に発表されてたら叩かれまくっただろ、御大。
スミス: 「インスマスを覆う影」の未定稿も面白い資料ですの。
有味: アーカム・ホラーの拡張キット「暗黒ファラオの呪い」で加わるイヴァニッキ神父がこんな所に先回りしていたとは虚を突かれた。イラストを見たときから只者ではないと感じていたんだよ。
スミス: では恒例のオーナーのイチオシなど。
有味: 「世紀の決戦」。コレしかない。「フランク・チャイムスリープ・ショート・ジュニア」に爆笑した。



目録84:萌え萌えクトゥルー神話事典 萌え萌えクトゥルー神話事典
刊行年:2009年 出版社:
イーグルパブリシング
定価:1,500円 編著:クトゥルー神話事典制作委員会
収録作品:−

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録85:邪神伝説 クトゥルフの呼び声 邪神伝説 クトゥルフの呼び声
刊行年:2009年 出版社:PHP研究所 定価:1,000円 原作:H・P・ラヴクラフト
漫画:宮崎 陽介
収録作品:−

スミス: いわずと知れたラヴクラフト御大の「Call of Cthulhu」をコミック化したものですわね。
有味: かなり原作に忠実にコミック化されているな。受け狙いのギャグの挿入や萌えキャラの追加などは一切せず、面白味がないほどに原作をトレースしている。
スミス: 原作を3章に分割して、章毎の幕間に解説を入れるという構成ですの。
有味: 解説も手を広げすぎず、この「クトゥルフの呼び声」という作品周辺に極力焦点を絞ったという感じで好感が持てる。解説自体も公平で中立的だしね。
スミス: 「クトゥルフの呼び声」という一作品のガイドブックとしてはかなりオススメではないでしょうか?
有味: 実際、オレも小説「クトゥルフの呼び声」のオモシロさを理解するにはかなり時間がかかったので、手の付けやすいコミックから入るのはアリだと思う。コレを読んで疑問に思ったり、細部に興味を持ってくれたニューカマーが神話に入ってきてくれると嬉しいね。



目録86:風に乗りて歩むもの 風に乗りて歩むもの
刊行年:2009年 出版社:小学館 定価:648円 著者:原田 宇陀児
収録作品:−

有味: 最初にネタバレすると、神話じゃありません。
スミス: ホラーではなくてミステリーですわね。ミステリーなので感想が述べづらいですわ。
有味: 神話的存在の“風に乗りて歩むもの”という用語が作中に登場するが、その扱いについては実際に本書を読んで確認していただきたい。
スミス: 正典ではありませんが、一応オーナーの感想など、どうぞ。
有味: タイトルに釣られて買ったクチなので、予備知識無しに読み進めていって正典ではないことを確認した。ミステリーを読むのは久しぶりだったので、それなりに楽しみながら4時間くらいで一気に読みきった。直前に読んだ貴志祐介の『黒い家』も4時間くらいで読みきったが、1冊の本を同じ時間で読み終えても「質が異なる時間の過ぎ方をするものだなぁ」と、まるで読書家のような感想。
スミス: ラノベにしては文章量が多い印象ですわね。
有味: しかし消費エネルギー量がやはり違う気がする。息抜きにはオススメです。



目録87:魔界王国《妖奇と耽美の珠玉集》 魔界王国
刊行年:1986年 出版社:
朝日ソノラマ
定価:520円 著者:クラーク・A・スミス
収録作品:「氷魔」、「アトランティスの美酒」、「秘境のヴィーナス」、他。

スミス: スミスおじ様の短編集ですわ。おじ様の創造した6つの幻想世界を舞台にした11篇の小説が収録されていますの。
有味: C・A・スミスの小説はやはり無邪気で面白いな。今回の舞台は「ゾシーク」、「ハイパーボリア」、「レムリア」、「ポセイドニス」、「プトレマイデス」、「アゾムベイイ」。どれにも特徴があって面白い。
スミス: 神話的にはゾシークとハイパーボリアに注目でしょうか。
有味: ツァトゥグァやモルディギアンといった神話に組み込まれた存在は登場しない作品ばかりなのだが、ワールド・ガイドとして読むには雰囲気は伝わってくる。
スミス: アヴェロワーニュを舞台にした小説が収録されなかったのはオーナー的には残念だったのでは? ではお約束のイチオシを。
有味: ハイパーボリアものの「神殿の盗賊」。邦題は冴えないが、なんともスミスらしい笑える小編。大好きです。
スミス: ゾシークとハイパーボリアの地図は何度見てもワクワクいたしますわね。
有味: 特にハイパーボリアは『クトゥルフ・ワールド・ツアー』の傑作ヴァリアント「クトゥルフ・ハイパーボレア」で親和性が証明されているので、日本が世界に先駆けてサプリメントを作ってしまえばいいと思う。保守的なサプリメントで手探りするのではなく、ドイツやフランスのように突き抜けた企画を期待するのは無理だろうか?



目録88:うちのメイドは不定形 うちのメイドは不定形
刊行年:2010年 出版社:PHP研究所 定価:514円 著者:静川 龍宗
原案:森瀬 繚
収録作品:−

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録89:本当に恐ろしいクトゥルフ神話 本当に恐ろしいクトゥルフ神話
刊行年:2010年 出版社:笠倉出版社 定価:571円 著者:クトゥルフ神話研究会
収録作品:−

有味: 目録81のカラー版。
スミス: ……え!? それで終わりですの!?



目録90:黄衣の王 黄衣の王
刊行年:2010年 出版社:東京創元社 定価:1,200円 著者:ロバート・W・チェイムバーズ
収録作品:「仮面」、「ドラゴン路地にて」、「黄の印」、他。

有味: 狂気の戯曲『黄衣の王』にまつわる4編の短編と、クトゥルフとはあまり関係がない長編「魂を屠る者」が収録された一冊。
スミス: 黄衣の王が好きなオーナーとしては待望の一冊ですわね。
有味: 魔道書『黄衣の王』およびハスターの化身「黄衣の王」を扱おうとするキーパーには必読の一冊。独特な雰囲気があるので、シナリオのハンドリングには絶対参考になるはず。うちの駄プレイ「生ける神の手」も、本書があればもっと掘り下げられたかも。
スミス: オーナー的イチオシは?
有味: 「評判を回復する者」。主人公(?)の狂いっぷりがなんとも居心地悪くて良い。
スミス: 長編の「魂を屠る者」はどうでしたの?
有味: 1920年にこの「伝奇ラノベ」が既に書かれていたのは、今日の日本ラノベ界を鑑みて、色々と驚愕させられる。ラノベをあまり読んでいないオレが言うのも何だが。これをもクトゥルフに取り込もうとするダニエル・ハームズには、尊敬をおぼえると共に戦慄する。



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