書架:16



目録151:風神の邪教 風神の邪教
刊行年:2014年 出版社:東京創元社 定価:920円 著者:ブライアン・ラムレイ
収録作品:-

有味: ブライアン・ラムレイは神話作家としてはかなり上位に位置するほど好きな作家だが、やっぱタイタス・クロウ・サーガは弁護できねーわ。
スミス: 作者氏は、超能力ヒーローと人外ヒロインに何かトラウマでも持っていそうな勢いですわね。
有味: ちょうどムアコックの『コルム』シリーズを読み終えた後に本書を読み始めたんだけど、極寒の地という舞台と圧倒的無勢という設定の類似から、フォイ・ミョーアの襲撃の続きを読んでいる気分になったよ。
スミス: ストーリーの残り半分を切った段階でも、主人公シルバーハットとヒロインのアルマンドラさまのイチャイチャ描写が続くのには、私も眩暈を覚えました。
有味: ラムレイの短編は、思わず英語の短編集を買って読んでしまうほどに好きなんだけど、どうしてクロウ・サーガの長編ではこんなに目が曇ってしまうんだろうか。ここまで来たら、もちろんサーガ完結まで付き合うつもりだけど、できることなら神話作家ラムレイの面目躍如である短編も訳してまとめてほしいものだ。
スミス: イタカ神が人間臭すぎるのも、なんだか萎えるポイントですの。でも、ラストのちょっとした後味の悪さはクトゥルフ神話っぽさなのでしょうか。
有味: そこも『コルム』と似ていて失笑しちゃったけどね、個人的に。



目録152:戦艦大和 海魔砲撃 戦艦大和 海魔砲撃
刊行年:2014年 出版社:創土社 定価:1,000円 著者:田中 文雄×菊地 秀行
収録作品:-

有味: う~ん、う~ん、架空戦記ものは新しい発見が少ないので感想書きにくい。とりあえず字面は追いました。読み飛ばした個所も結構あるけど。
スミス: 今後も何冊か架空戦記ものが予定されていますので、前途多難ですわね。



目録153:無名都市への扉 無名都市への扉
刊行年:2014年 出版社:創土社 定価:1,500円 著者:岩井 志麻子、
図子 慧、
宮澤 伊織/冒険企画局
収録作品:「無名と死に捧ぐ」、「電撃の塔」、「無明の遺跡」。

有味: やってしまいましたなぁ……という感じ。
スミス: 現時点(2014年7月)でシリーズ最大の失敗作なのではないかと。
有味: まぁ、同情すべき点はある。そもそもクトゥルフ神話的にかなり特殊な位置づけの『無名都市』に、この作家陣を送り込んでくることが大博打だと思う。今回編集者のあとがきがないから経緯が不明だけど、人選がどのようにされたのかには興味がある。
スミス: わざわざ『無名都市』でオマージュを一冊出してくるのですから、作家側から「無名都市で行きたい」というアクションがあったのではないかと思うのですが……。
有味: 「無名と死に捧ぐ」は端々に無名都市の情景がフラッシュバックするが、別に宇宙的恐怖じゃない。この作者(岩井志麻子)は宇宙的恐怖を描くには向いていないのかも。「電撃の塔」に至っては全然無名都市が感じ取れなくて困惑した。RPG『インセイン』のリプレイである「無明の遺跡」で、どうにか辛うじて本書は無名都市へのオマージュに踏みとどまった感じ。これを由々しき結果と見ずに、何を由々しきものと見ればよいのか?
スミス: 今回のイチオシはそのリプレイですわね。
有味: ここ最近読んだRPGリプレイの中では最も興味深い(最も面白いではない)記事だった。この真剣じゃないゲームへの取り組み姿勢(雰囲気)が、活字になったってのはある意味価値があると思うんだよね。行間に読み取れるGM氏の「えーと、どうすっかなー?」の雰囲気が身につまされる。



目録154:水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話(全三巻) 水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話
刊行年:
2013~2014年
出版社:角川書店 定価:各560円 原作:朝霧 カフカ
漫画:吉原 雅彦
収録作品:-

スミス: ニコニコ動画で人気を博したリプレイ動画のコミカライズらしいですわ。
有味: いろいろな場所でdisられている記事を見たけど、オレは原作のリプレイ動画は一つも見ていないし、キャラクターの元ネタについてもほとんど知らないので、disるほどの愛憎をこの作品に抱くことはできなかった。
スミス: 『クトゥルフ神話TRPG』を題材にはしていませんのね。普通の漫画です。
有味: ストーリー的にはシロートが考えた、とっ散らかったクトゥルフのシナリオっぽくて、ある意味臨場感はあるのかも(自戒を込めて)。多分尺が短いせいなんだろうけど、物語として理解できなくてはならない部分が三割くらい提出できていない感じ。
スミス: 動画視聴済み前提なのでしょうか? 原作でそのあたりが描かれていたのかは不明ですが。
有味: まぁ、個人的にはフツーの漫画でした。内容をふと思い出して後で読み返すといった類のものではないでしょう。disっていた人たちの方が、間違いなくこの作品を愛してくれていたと思います。
スミス: ただ、現在進行形の『クトゥルフ神話TRPG』ブームを後年になって振り返る際には、この作品は絶対に言及されると思いますの。
有味: 確実に爪跡を残したので、何らかの意味や価値を持っているのでしょう、きっと。



目録155:暗黒の秘儀 暗黒の秘儀
刊行年:1985年 出版社:
朝日ソノラマ
定価:620円 著者:H・P・ラヴクラフト
収録作品:「海神ダゴン」、「海底の神殿」、「戸口の怪物」他。

有味: ラヴクラフトの中短編集。さすがに初見はなかったが、繰り返し読むことで面白さが分かってくる作品もある。特にラヴクラフトは。
スミス: この流れでイキナリですが、オーナーのイチオシはどれですの?
有味: 今更ラヴクラフト作品に優劣をつけるのは難しいけど、ここであえて金字塔的な「クートゥリュウの呼び声」を推す。この作品自体、多分十回以上は読み返していると思うけど、五、六回目くらいからようやく面白さが分かってきた。最初はこれがなぜ絶賛されたのか皆目見当がつかなかったけど、読み返すことによってそれが理解できるようになった。今では自信をもって「面白い」と言える作品。
スミス: 話を本書全体に戻しますと、収録作品も比較的バラエティに富んでいますわね。
有味: クトゥルー関連だけじゃなくて、狭いラヴクラフト分野の中でも結構広範囲なジャンルを集めた印象。神話色は薄いけど、「海底の神殿」とか「戸口の怪物」ってすごく面白い。これらの作品も何度も読み返しているので、「ここでこの手掛かりが!」とか、「ここが伏線になって……」とかが分かって、初読の時とは違った楽しみがある。
スミス: クトゥルー神話にもドリームランドにも属さない作品の立ち位置を想像するのも楽しいですわね。
有味: 本書なら「月の沼」、「アウトサイダー」、「死体安置所の中で」、「冷気」がそのどちらにも属さないのかな。どれもアイデアは面白いので、ゲームに転用できそう。



目録156:魔犬 ラヴクラフト傑作集 魔犬 ラヴクラフト傑作集
刊行年:2014年 出版社:
KADOKAWA/
エンターブレイン
定価:691円 著者:田辺 剛
収録作品:「神殿」、「魔犬」、「名もなき都市」

スミス: ラヴクラフト御大の短編3本のコミック化ですの。雰囲気や画力は良いのではないでしょうか。
有味: ラヴクラフト作品のコミック化にはよくあることだけど、作品チョイスはクトゥルフ神話的にはギリギリ。帯には「クトゥルフ神話」の文字が躍っているけど、別に神話に絞って作品を選んではいないのだろう。
スミス: 「神殿」、「魔犬」、「名もなき都市」は他所でもコミック化されていますので、比較してみると面白いかもしれませんわね。
有味: 「名もなき都市」のだらだら続く天井の低い通路は活字だとその性質を忘れてしまいがちなので、絵で継続的に見せられていた方が閉塞感が感じられるのかもしれない。



目録157:闇のトラペゾヘドロン 闇のトラペゾヘドロン
刊行年:2014年 出版社:創土社 定価:1,600円 著者:倉阪 鬼一郎、
積木 鏡介、
友野 詳
収録作品:「闇の美術館」、「マ★ジャ」、「闇に彷徨い続けるもの」

有味: クトゥルー神話で最も著名なアーティファクトの一つ、輝くトラペゾヘドロンをテーマとしたアンソロジー。
スミス: 「闇をさまようもの」へのオマージュというよりは、トラペゾヘドロンを扱う作品という感じですわね。
有味: この短期間でなぜ再登場の運びとなったのか謎だが、倉阪鬼一郎の「闇の美術館」がイチオシ。マラソンと美術館とトラペゾヘドロンを組み合わせて、それらしくまとめあげる力はさすがと言ったところ。なにより、「ロバート・ブレイク作の詩」という新しい設定を提示してくれたことが素晴らしい。
スミス: 「マ★ジャ」のラストには唖然としましたの。
有味: 途中まではこの作品がイチオシかと思っていたけど、結末に幻滅したのでイチオシを譲った。中盤までのサスペンス・ホラーっぽい展開には引き込まれたんだけどね。こういう予想外の結末が好きな人もいるんだろうけど、個人的には結末のせいで何の価値もないゴミ作品と化した。う~ん、惜しい。
スミス: 「闇に彷徨い続けるもの」はゲームブックですが、オーナーの親しんだゲームブックとはちょっと趣向(というかシステム)が変わっていますわね。
有味: そのあたりは作者氏が本書の中で説明してくれているので、興味のある方は実際に見て確かめてほしい。なんだか話がぶつ切りになって、パラグラフ同士のつながりがよく分からなくなるので、ストーリーの全貌がつかめなかったというのが個人的感想。目指すべき着地点が明確じゃないので、結局選択肢総当たりになってしまったのがその原因かも。



目録158:クトゥルーの子供たち クトゥルーの子供たち
刊行年:2014年 出版社:
KADOKAWA
定価:2,000円 著者:リン・カーター
+ロバート・M・プライス
収録作品:「墳墓に棲みつくもの」、「時代より」、「悪魔と結びし者の魂」他。

スミス: ゾス神話に関連する神々、特にイソグサとゾス=オムモグ周辺の怪事を集めた一冊、という感じでしょうか。
有味: この訳者(森瀬繚)の仕事にして、さすがと言ったところ。定めたテーマがブレないことはもちろん、理解の助けとなる時系列的な並べ替えなど、作品間の流れも見事。
スミス: ゾス=オムモグ神は箱版の『クトゥルフ・コンパニオン』(HJ)に登場して以来、出典の翻訳が待たれていたクリーチャーではないでしょうか。
有味: どうしても知りたい情報があったので、ケイオシアムの『The Xothic Legend Cycle』は入手していたんだけど、「陳列室の恐怖」は長いのと、実はゾス=オムモグにはそんなに興味がなかったので、自力翻訳は諦めたんだよね。日本語で読める機会が来るとは、星辰は整いつつあるな。
スミス: 内容的にはいかがでしたの?
有味: 個人的にリン・カーターとロバート・M・プライスは面白い神話小説が書けない作家だと把握しているんだけど、その理解は残念ながら裏切られなかった。繰り返される神話的存在や魔道書の名前の羅列は、もはや様式美で笑いが出る。ただし、ストーリー的には何ら目新しい展開のない作品にもかかわらず、躊躇なくオリジナルの神性をぶっ込んでくるカーターの潔さには惚れる。リン・カーターはクトゥルフ神話には必要な人材だった。
スミス: イチオシ作品をどうぞ。
有味: 「陳列室の恐怖」。良くも悪くもリン・カーターらしい作品。



目録159:魔空零戦隊 魔空零戦隊
刊行年:2014年 出版社:創土社 定価:1,000円 著者:菊地 秀行
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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目録160:クトゥルフ少女戦隊 第一部、第二部 クトゥルフ少女戦隊
刊行年:2014年 出版社:創土社 定価:各1,404円 著者:山田 正紀
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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