書架:17



目録161:狙われた女 狙われた女
刊行年:2014年 出版社:扶桑社 定価:920円 著者:ジャック・ケッチャム、
リチャード・レイモン、
エドワード・リー
収録作品:「シープメドウ・ストーリー」、「狙われた女」、「われらが神の年2202年」。

有味: 某所で少し話題となったので、遅ればせながら手を出してみた。冒頭で銃を手にした男が女性の日常を踏みにじる、という共通した導入で始まる短編集。
スミス: ケッチャムと言えば、何年か前、オーナーは一時読み漁っていましたわね。
有味: そんなわけで、またケッチャムは誘拐された女が誘拐犯のチ○コを食いちぎるような凄惨な話を書いたのかと思ったが、ちょっとコメディな短編だった。表題にもなっているレイモンの作品が一番オーソドックスにテーマに沿っているのかも。
スミス: そしてリーの「われらが神の年2202年」がクトゥルフ作品ですの。本書の半分以上はこの作品にページが割かれていますの。
有味: かなりギリギリの部分はあるけど、面白さでは十分にクトゥルフとして迎え入れることができる。いわゆるSFクトゥルフなので『Cthulhu Rising』の参考にもなるなーと思いながら読んだ。今年読んだクトゥルフ関連の小説の中でも、1、2を争うほど面白かったのでオススメ。
スミス: こういうクトゥルフを謳わない作品はなかなか見つけられないので、情報提供者様には感謝、感謝ですわね。



目録162:魔海少女ルルイエ・ルル、魔海少女ルルイエ・ルル2 魔海少女ルルイエ・ルル
刊行年:2010年 出版社:キルタイム
コミュニケーション
定価:各657円 著者:羽沢 向一
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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目録163:狂気山脈の彼方へ 狂気山脈の彼方へ
刊行年:2014年 出版社:創土社 定価:1,700円 著者:北野 勇作、
黒木 あるじ、
フーゴ・ハル
収録作品:「頭山脈」、「恐怖学者羅文蔵人の憂鬱なる二日間」、「レーリッヒ断章の考察」。

有味: 題名からもわかる通り「狂気山脈にて」へのオマージュ・アンソロジー。
スミス: なかなかの良書ではないでしょうか。三作とも明らかに狂気山脈なので、オマージュとしては納得できますわね。
有味: 「頭山脈」は夢うつつな展開の端々に狂気山脈をフラッシュバックさせて面白い効果を生んでいる。「あれあれ?」と思っている間にラストで落とされて、なんとも不思議な感じで面白かった。「恐怖学者羅文蔵人の憂鬱なる二日間」もサスペンスっぽくて引き込まれた。古のものとショゴスの立ち位置が、通常とは逆転しているのも面白い。
スミス: 例によってオーナーのイチオシはゲームブック「レーリッヒ断章の考察」ですの。
有味: ゲーム云々抜かしてもオススメの作品。つーか、ゲームブックというよりは面白い仕掛けのある小説って感じ。ちょっと変わった角度からの狂気山脈へのアプローチで、凄く興味深い。個人的にはラ・ブレア・タールピットはツァトゥグァの眷属のスケルトン・スミロドンの棲み家なのだが(分かる人だけ分かれ!)、その不思議な性質はクトゥルフ的要素を匂わせて、人を惹きつけるものを持つと見える。
スミス: 巻末収録の「狂気の山脈にて」部分訳も興味深い資料ですわね。
有味: ラヴクラフトの読みにくい文章を良く再現している訳だと思う。この一文一文の長さは、自分で訳すとなったら余裕で発狂できる。



目録164:邪神決闘伝 邪神決闘伝
刊行年:2015年 出版社:創土社 定価:1,000円 著者:菊地 秀行
収録作品:-

有味: 例によって小説としてはそこそこ面白く、クトゥルフとしての価値はほぼ皆無という作品。
スミス: CMFシリーズの菊地作品は総じてそんな感想ですわね。
有味: どの作品も雰囲気があまり変わり映えしない、超人の跋扈する物語ばかりなので、さすがに飽きる。まぁ、『妖神グルメ』以上のものを書けっていうのが既に無理ゲー過ぎる気もする。
スミス: 何か続編もありそうな感じですの。
有味: あー、うん、なんかそんな感じね。CMFシリーズ全体に言えることだけど、書下ろし(オマージュ以外)にガッチリとしたクトゥルフ神話ってないよね、なんか。正直言って、初めから期待薄なので感想にも力が入らないよよよ。
スミス: なんだか文句にもキレがありませんわね。



目録165:ダイン・フリークス(全3巻) ダイン・フリークス
刊行年:
2013~2015年
出版社:富士見書房 定価:
第1巻、第2巻580円
第3巻620円
原作:鋼屋 ジン
作画:空十雲
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録166:冥王の刻印 冥王の刻印
刊行年:2015年 出版社:青心社 定価:640円 著者:新熊 昇
収録作品:「冥王の刻印」、「ザーナックの庭」。

スミス: 目録94の『災厄娘 in アーカム』の前日譚のようですわね。
有味: とりあえず、登場人物たちの活き活きしてなさっぷりには驚かされた。本書の内容からして、アイリーンやエリザベスの愛らしさとか若さが物語の魅力になってしかるべきだと思うんだけど、そこら辺がまったく伝わってこないので、むしろ狼狽した。
スミス: イノック・ボウアン氏のとほほっぷりも計算でしたら凄いと思いますの。
有味: この作者の文章は凄く上手いと思うんだけど、書いている内容とそれが合致していないって感じ。キャラクターの造形っていうか、立ち上げが苦手なのか? 名もなき語り手が淡々と事象を報告していくオーソドックスなクトゥルフ話の方が向いてそう。
スミス: 端々にオリジナル設定を挿しこんでくる野心的な部分は素晴らしいですわね。
有味: 独特の神話観とか、クトゥルフ神話の展開に対する姿勢とかは凄く評価しているんだけどなー。あと足らないのは面白い話っていう実績かな?



目録167:二重螺旋の悪魔 完全版 二重螺旋の悪魔 完全版
刊行年:2015年 出版社:創土社 定価:2,300円 著者:梅原 克文
収録作品:-

有味: クトゥルフ神話ではないという情報を得ていたので手を出していなかったが、完全版としてCMFから復刊されたので読んでみた。なるほど、面白い。
スミス: あとがきで作者様も言っている通り、クトゥルフ神話のキーワードを借りているだけで、コズミック・ホラーではありませんの。
有味: キーワードを借りなくてもエンターテイメント作品としては鮮烈。本文665ページという大冊だが、苦も無く読み切った。誤植の多さには閉口したが(特に後半)、それ以外には特に文句のつけようがない作品。ラストの選択も、個人的には納得。
スミス: 神話ではない作品に関しては寛容ですわね。
有味: 全方向に噛みついていると、歯がすり減っていざという時に役に立たなくなるからね。



目録168:ラヴクラフト傑作集1、2 ラヴクラフト傑作集1
刊行年:
1974年、1976年
出版社:東京創元社 定価:各280円(!) 著者:H・P・ラヴクラフト
収録作品:「インスマウスの影」、「闇に囁くもの」、「クトゥルフの呼び声」他。

有味: ラヴクラフトの代表作を7編チョイスして二分冊にした傑作集。目録46の『ラヴクラフト全集』1、2巻がそのまま傑作集1、2巻と同じ内容だな。
スミス: インスマウス、クトゥルフ、ミ=ゴと傑作集と銘打つには納得のラインナップですわね。
有味: エーリッヒ・ツァンとか「死体安置所にて」とかは心憎いチョイス。そして個人的に大好きなチャールズ・ウォードも入っているので、収録作品に関しては文句なし。7編の限りの中ではかなりバラエティに富んだものが集められている印象。
スミス: 「壁のなかの鼠」は読むたびに解釈に困惑いたしますの。
有味: 不気味な余韻のある作品なんだけど、読者任せの部分があるとは感じるよね。それに比べて「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」は痛快で面白いので、初心者にもオススメ。
スミス: でも、今では入手困難な2冊なので、『ラヴクラフト全集』を読めば問題ありません。
有味: コレクター向け。同じ作品を何度も読んで楽しめる人は記念に持っていても良いでしょう。



目録169:大いなる闇の喚び声 大いなる闇の喚び声
刊行年:2015年 出版社:創土社 定価:1,500円 著者:倉阪 鬼一郎
収録作品:-

有味: 思っていたよりも面白かった。CMFシリーズの書き下ろし作品の中では、完成度高い一冊かも。
スミス: 幕間に挟まる詩とイラストが良い雰囲気を作っていますわね。
有味: それも含めて一作品として面白かった。クライマックスでしっかりと“一にして全なるもの”の名を連呼しているので、紛れもなくクトゥルフ神話作品。
スミス: 話自体はそれほど難しくないので、気楽に読めますの。



目録170:遥かなる海底神殿 遥かなる海底神殿
刊行年:2015年 出版社:創土社 定価:1,700円 著者:荒山 徹、
小中 千昭、
協力 クラウドゲート
収録作品:「海底軍艦『檀君』」、「キングダム・カム」、「海底カーニバル」

スミス: ラヴクラフト御大の「神殿」へのオマージュですの。
有味: 終末同盟としては、「神殿」は小神グルーンの陰謀であり、クトゥルフやルルイエとは無関係の海の恐怖である、というのが前提。しかし、残念ながら収録作のほとんどは神殿=ルルイエとしている。ルルイエを扱いたいなら「クトゥルフの呼び声」をもう一度編んでもらえばいいのに、って感じ。
スミス: 月桂冠をかぶった象牙の小片が完全に無視されてしまったのは残念ですわね。
有味: 読者参加企画の中の一篇「首飾りが呼ぶ怪と海」はどうにかルルイエを回避しているので、これがイチオシ。
スミス: 読者参加企画「海底カーニバル」はカオスですの。
有味: 相変わらずのチャレンジ精神には感服する。しかし、まぁ、明らかに企画としては失敗でしょ、これ。ゲーム当事者以外の第三者(つまりオレ)には面白さを見い出す、というよりも物語を理解すること、というよりもそもそもの趣旨が把握できなかった。やはり読参は参加者と傍観者では熱が違いすぎる。ちなみに、オレはレギュレーションを読むのが面倒になって参加しませんでした。
スミス: 「神殿」はオーナーが何度も繰り返し読んで好きになった作品ですから、少し残念な一冊でしたわね。
有味: 繰り返すけど、神殿=ルルイエ(クトゥルフ)とか、想像力なさすぎる。神殿≠ルルイエがプロの仕事なんじゃないの?



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