書架:21



目録201:狂気の山脈にて(全4巻) 狂気の山脈にて
刊行年:2017年 出版社:
KADOKAWA/
エンターブレイン
定価:1巻 680円
2、3巻 720円
4巻 740円
著者:田辺 剛
収録作品:-

有味: H・P・ラヴクラフト最高傑作の内の一つとして名高い長編作品のコミック化。著者の画力と情熱、そして紙幅にも恵まれており、過去日本でコミック化された『狂気の山脈にて』の最高作品であると断言できると思う。
スミス: 「なにかトンデモナイこと」が起きたのが伝わってくる作品ですわね。
有味: 正直言って、傑作すぎてあまり書くことがない。読んでくれ、としか言いようがないな。
スミス: 強引にTRPGへ話題を繋げるには、これを機に未訳キャンペーン『Beyond the Mountains of Madness』を翻訳していただきたい、といったところでしょうか。
有味: 本書のラスト付近で語られるスタークウェザー=ムーア探険隊の冒険を扱った長編シナリオだな。……調べてみたら、三年位前に序文をちょこっと訳していた。いつか星辰が整ったら、続きを訳してみるのもいいかな。



目録202:新・クトゥルフ神話完全ガイド 新・クトゥルフ神話完全ガイド
刊行年:2017年 出版社:
コスミック出版
定価:2,400円 著者:-
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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目録203:All Over クトゥルー クトゥルー神話作品大全 All Over クトゥルー
刊行年:2018年 出版社:
三才ブックス
定価:2,296円 著者:森瀬 繚
収録作品:-

スミス: 日本語で読める/聞けるクトゥルー神話作品を紹介した大鑑ですの。労作ですわね。
有味: 労作としか言いようのない一冊。クトゥルー神話関連作品紹介パートも圧巻だが、巻頭のブライアン・ラムレイとラムジー・キャンベルのインタビュー記事はすごく興味深かった。古い菊地インタビューはいらん。なんでこんなものを入れてきたのか本気で理解に苦しむ。
スミス: 「Cthulhu Chronicles [Mythos:神話]」の記事も力作ですわね。
有味: 既存の設定を極力拾ってまとめようという野心的な試み。言うまでもなく正解ではなく解釈の一つに過ぎないが、そのチャレンジ精神には頭が下がる。
スミス: 昔の『The Unspeakable Oath』誌のコラム「Scream & Scream Again」のように、どれほど「濃い」のかを★とかで評価してくれたらもっと良かったと思いますが、忖度社会の日本では難しいでしょうか。
有味: まぁ難しいだろうねぇ。
とにかく、労作であることは間違いない。しかし「面白い、面白くない」という本ではないので、個人的には二度と読み返さないと思う。



目録204:クトゥルフ神話 探索者たち 鈴森君の場合 クトゥルフ神話 探索者たち 鈴森君の場合
刊行年:2018年 出版社:KADOKAWA 定価:1,200円 著者:墨の凛
収録作品:-

有味: 小説とリプレイ書籍の中間的な位置にありそうなコンセプトの作品。面白かった。
スミス: 読前はまったく期待していませんでしたわね、オーナー。
有味: 確かにまったく期待していなかった。しかし読んでみたら濃厚に神話作品であり、一貫してクトゥルフ神話であったので虚を突かれた。最近の流行りのレイヤーがかかっていたので「カプラン時空」行き待ったなしと思っていたが、嬉しい誤算。
スミス: 「クトゥルフ神話作品」というよりは「クトゥルフ神話TRPG作品」といった感じでしょうか。
有味: アイデアは面白かったし、既存の設定を踏まえつつも新たな提案もなされている気がするので、個人的には評価の高い一冊。迷っているなら一度読んでみることをお勧めできます。



目録205:邪神任侠 家出JCを一晩泊めたら俺の正気度がガリガリ削れた 邪神任侠
刊行年:2018年 出版社:KADOKAWA 定価:680円 著者:海野 しぃる
収録作品:-

スミス: 初見の印象とは大きく異なる内容でしたわね。
有味: もっとおちゃらけた内容の作品かと思ったら、意外と全編に渡ってシリアスというか、ちゃんとした「話」が書かれていた。装丁で誤解される本だと思う。別に「かわいい邪神with銃」とか「暗黒神話体系現代異能バトル」とか「家出JCを一晩泊めたら俺の正気度がガリガリ削れた」ではなかったように思うけど。
スミス: 確かに帯の煽りで変に身構えてしまったところはありました。
有味: 妙な先入観を持って読み始めたので、結局最後まで何を書きたかったのか把握できずに終わった。いかにもWEB小説サイト発らしい、場当たり的な一貫性の無さが感じられる作品。とりあえず、オリジナルの神性らしきものをぶっ込んできた勇気は称賛する。
スミス: でも、そろそろかわいい邪神にも飽きてきましたわね。
有味: まぁね。考えていたよりも辛辣な感想になってしまったが、こういった価格が手頃な作品が濫造されればブームにも賑わいが出るとは思う。



目録206:戦艦大和VS邪神戦艦大和 戦艦大和VS邪神戦艦大和
刊行年:2018年 出版社:創土社 定価:1,000円 著者:林 譲治
収録作品:-

有味: なぜこんな短いスパンでこの作者の「帝ルル」が再登場したのか理解に苦しむが、事前の予想の通りツマラナイ作品だった。
スミス: 取り付く島もありませんわね……海戦ものだけに( •̀∀•́ )ドヤァ
有味: 人間の怨讐に応えて時空を操作して戦艦を操り、人間同士の戦争に介入して魂を回収するとか、クトゥルフはどれだけマメなんだよ。
スミス: 復活の日はまだ遠いので、結構暇なのではないかと。
有味: 「クトゥルフ」という単語を「プッピろピーィ神」とかに変えても何ら破綻しない程度の話。例によって「クトゥルフ神話」ではないのだろう。もし購入を迷っている人がいるならお勧めしない。上記2冊(目録204、205)の方がよっぽどクトゥルフ神話です。
スミス: 架空戦記クトゥルフには、いつも通り手厳しいですわね。
有味: 面白い架空戦記クトゥルフを一度も読んだことがないので。二章くらいまで読み終えた時点で、最終章まで読み飛ばそうかと本気で思った。どうでも良いけど、山本五十六って日本でも名うての邪神ハンターになってきてない?



目録207:黒い碑の魔人 黒の碑の魔人
刊行年:2018年 出版社:青心社 定価:740円 著者:新熊 昇
収録作品:-

スミス: 目録94『災厄娘 in アーカム』、目録166『冥王の刻印』のアイリーン・シリーズの最新作ですの。このシリーズは三部作とのことですので、本巻でいったん一区切りなのでしょうか。
有味: タイトルからも分かる通りハワードの「黒い碑」に題を取った作品だが、完全にヒロイック(ヒロイニック?)・ファンタジーだな。とりあえず54ページでジャスティン・ジョフリーがシュトレゴイカヴァールで死んだと言われた時点でクトゥルフ神話として真面目に読むのは止めた。
スミス: 「冒険活劇として気楽に読めば、まぁ、それなり」という感じでしょうか。
有味: 相変わらずアイリーン嬢のキャラクターが曖昧でつかみどころがなく、シリーズを通して悪役のキャラクター付けがみんな同じなので、どの作品に誰が登場していたか思い出せなくなる。作者氏に筆力があるのは認めているので、それがこのシリーズには活かされなかったのは残念。ホント、「面白くなかった」というより「残念だった」という感想。
スミス: 「新熊先生の次回作にご期待ください」。



目録208:『ネクロノミコン』の物語 『ネクロノミコン』の物語
刊行年:2018年 出版社:星海社 定価:1,400円 著者:H・P・ラヴクラフト
訳者:森瀬 繚
収録作品:「無名都市」、「『ネクロノミコン』の歴史」、「ダンウィッチの怪異」他。

有味: 目録197:『クトゥルーの呼び声』を含め、新訳クトゥルー神話コレクションというシリーズになったらしい。収録作はほぼ既読の作品なので、今後感想を出し続けていけるかどうかは怪しいところ。
スミス: とりあえず読了のスタンプとしてエントリーですの。
有味: 早速だけどイチオシは「無名都市」。クトゥルー神話的にはかなり独特な位置にある設定なんだけど、読めば読むほど面白さが増す味のある小編。今回もこの作品を読みながら、これから生まれてくるかもしれないTRPGのシナリオを夢想したりした。
スミス: 今回も訳者様の深い理解のもと、ストーリーがスッと入ってくる感じでしたわね。
有味: クトゥルー神話への理解度で言えば日本屈指の人材が訳しているからね。あえて注文を付けるならやっぱり研究家の仕事だってことかな。「翻訳」というよりも、「日本語訳」って感じ。
スミス: 癖のないプレーンな仕事ですわね。作品の紹介であって、文章の面白さとかは他のシリーズに回せば良いかと。
有味: 今回は解説パートがイマイチ面白くなかったので、次巻ではまた盛り返してくれるのを期待したい。



目録209:オカルトファンタジーの原点を知る
現代クトゥルフ神話の基礎知識
オカルトファンタジーの原点を知る 現代クトゥルフ神話の基礎知識
刊行年:2018年 出版社:カンゼン 定価:1,700円 著者:ライブ
収録作品:-

有味: 濫造系ガイド本。
スミス: いきなりバッサリですの。
有味: 孫引き記事を集めた「まとめサイト」みたいな本。本書に限らず、最近のクトゥルフ神話ガイド本の大半は「まとめサイト」本だけど。需要がそこに向かっているのかな。
スミス: 本書は、何と言いますか、収録基準が良く分かりませんわね。
有味: 未訳作品のアイテムを収録するのは良いけど、きっと原典は当たっていないんだろうね。ソースが『マレウス・モンストロルム』で完結している記事とか結構ありそう。あとは一次資料へのリンクがかなり乏しいので、展開力がないのも残念。まぁ、一次資料を当たっているかどうか以前に、その情報の起源の在り処すら把握していないのかもしれない。
スミス: 昨今の状況を鑑みてみますと、朱鷺田祐介様の日本にローカライズされた解説本には相応の手間がかかっていたことが分かりますわね。
有味: ちなみに、オレはこの手の本ではシアエガの記事を判定基準としている。シアエガの登場する「闇、それが我が名(Darkness, My Name Is)」は『マレウス・モンストロルム』では把握しきれない要素がたくさん入っている素晴らしく面白い話なので(原文は気が狂いそうなほど分かりにくいが)、その内容が反映されているかどうかで「理解」しているのか「孫引き」しているのかが判定できると思うんだよね。なお、まったく理解していない噴飯モノの好例は「目録187:ファントム・ゾーン 邪神狩り」ね。



目録210:ブラマタリの供物 ブラマタリの供物
刊行年:2018年 出版社:新紀元社 定価:1,800円 著者:フーゴ・ハル
収録作品:-

スミス: 表紙には「クトゥルフ神話ブックゲーム」と書かれておりますが、いわゆるゲームブックなのですの?
有味: パラグラフを追っていく形式なので、いわゆるゲームブックだね。個人的にはゲームブック・ブーム(1984年~1990年?)の後期型のさらに発展形という感覚。後期型によく見られた、指示されたパラグラフを追うだけじゃなくて、事前に得た情報をキーワードと組み合わせて次のパラグラフを生成するという手法がかなり多く使われている。
スミス: 「○○○というキーワードが出たら、次に進むべきパラグラフ番号に10を加えたパラグラフへ進む」等の指示ですわね。
有味: ちなみに、この手法を強く意識したのはFFシリーズ第23巻の『仮面の破壊者』だったと記憶する。
まぁ昔話はさておき、本書は冒険記録用紙を使わずに済むようにカバーを裏返してメモとして使えるようになっている。クトゥルフ関連のゲームっぽい「狂気度」の数値管理は書籍本体に書かれた数値とこのカバーでできるという面白い設計。「筆記用具を使わずともプレイできますよ」ということなんだろう。
スミス: 実際、筆記用具を使わずにプレイできましたの?
有味: 実際に筆記用具は使わなかったが、それにはかなりの記憶力が必要とされるんじゃないかな。前述した「キーワード」で派生する情報を覚えておかなくてはならないので、少しずつ進めていると自分がどのような情報やアイテムを入手したかを頻繁に失念する。おかげで何度も夢落ちループしては入手アイテムを失い続けた(笑)
スミス: クトゥルフ神話としてはいかがでしたの?
有味: クトゥルフ神話としても高い水準にある作品。文章、イラスト、システムが著者一人で用意できるので、作品としての一体感は文句のつけようがない。ゲームブック作家としてはレジェンド級の著者で、クトゥルフ神話にも造詣が深いとあれば然もありなん。
スミス: この本、売れると良いですわね。
有味: 是非とも続刊を期待したい。



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