書架:23



目録221:クトゥルフの呼び声 クトゥルフの呼び声
刊行年:2019年 出版社:
KADOKAWA
定価:830円 著者:田辺 剛
収録作品:-

スミス: この作者様のラヴクラフト傑作集シリーズについに「クトゥルフの呼び声」が登場ですの。
有味: ここまでじっくりと実績を積み重ねてきた作者氏の満を持しての「クトゥルフの呼び声」だけに、さすがの出来。本邦でコミック化された「クトゥルフの呼び声」では頭抜けた作品。価格も比較的良心的だと思うのでオススメ。
スミス: 絶賛ですの。
有味: 多分、原作小説を読んでいない人にも内容が理解できると思う。んー、大きなアラが見つからないので、あまり書くことないな。
スミス: 傑作ですの。興味があって躊躇われているお方がいらっしゃったら、是非ご一読を。



目録222:宇宙そらの彼方の色 宇宙の彼方の色
刊行年:2020年 出版社:星海社 定価:1,500円 著者:H・P・ラヴクラフト
訳者:森瀬 繚
収録作品:「ハーバート・ウェスト――死体蘇生者」、「古の轍」、「戸口に現れたもの」他。

有味: 収録作品的にはもう目新しさはないので特に言うことはない。この価格でこのボリュームは、何度も言うけど素晴らしい。
スミス: 安定したクオリティのシリーズですわね。
有味: 「ソラノカナタノイロ」というシャアのポエムのようなタイトルで笑わせに来ているのはともかく、チョイスされているのは面白い作品ばかり。イチオシは明らかにホラーな「戸口に現れたもの」かな。明確にクトゥルフ神話かと言われると微妙だが、魔術師譚として分かりやすくホラーだと思う。
スミス: 何だか噛みつきどころが少ないのか、このシリーズの感想はおとなしめになってきていますの。
有味: もうすでにツッコミ尽くした作品群なので、オモシロイ感想はひねり出せないね。「ソラノカナタノイロ」とか、“千の子を随えし山羊”とか、フォロワーのいなさそうな珍妙な訳にはこれからも注目していくつもり。
スミス: ……相変わらず根性ババ色ですわね。



目録223:クトゥルー 闇を狩るもの クトゥルー 闇を狩るもの
刊行年:2020年 出版社:青心社 定価:680円 著者:新熊 昇、他
収録作品:「水妖の街」、「エネルギー革命」、「ガラスの卵」他。

有味: いつもの青心社のガッカリ神話短編集クオリティ。そもそも書名からして面白くないと思わせる雰囲気が強烈に漂う失笑系短編集。
スミス: いきなりバッサリですの。
有味: まぁ、クトゥルー神話が「目的」ではなくて、「手段」に過ぎない作品が多いよね、この会社の短編集に限らないけど。『〈暗黒神話大系シリーズ〉クトゥルー』の出版社として矜持を持ってクトゥルー神話に取り組んでほしいけど、これは無責任な消費者に過ぎないオレの個人的願望。
スミス: イチオシはどれですの?
有味: 新熊昇の「ウマル皇子の天球儀」。さすがに実績がある作者なので神話の深みが他とは違う。おそらく作者得意のフィールドはこの中世アラビア周辺だと思うので、独自色を維持しつつ、これからもこの路線で行ってほしい。
スミス: 編者様の目論見というか、本書を企画するに至った過程や基準みたいなものをあとがきで良いので知りたかったですわね。
有味: 何を書いても誹りは免れないので、投げっぱなしというのも作りとしては正解なのかもしれないけどね。



目録224:魔術師の帝国1~3 魔術師の帝国3
刊行年:
2017~2020年
出版社:早川書房 定価:①2,200円
②2,300円
③2,400円
著者:クラーク・アシュトン・スミス
収録作品:「ゾシーク」、「ウボ=サスラ」、「アヴェロワーニュ」他。

スミス: 目録42の復刊ということになりますわね。舞台毎に「1 ゾシーク篇」、「2 ハイパーボリア篇」に分冊して、新たに「3 アヴェロワーニュ篇」を加えて三分冊となりましたの。
有味: ゾシークとハイパーボリアはシリーズ作品を網羅できていないので大して価値はない。可能ならば創元の大瀧訳の文庫を当たった方が……と思ったけど、今はそっちの方が入手困難なのか。うまくいかないねぇ。
スミス: 「3 アヴェロワーニュ篇」はスミス叔父さまの書いたものは網羅されていますわね。
有味: 特に「アヴェロワーニュの獣」と「サテュロス」が初稿版なので大注目。個人的には本書はこの2作品のためにあると言って過言ではない。
スミス: どちらも初稿版は中世ロマンス的な内容ですわね。
有味: イチオシは「アヴェロワーニュの獣[初稿版]」。このチョイスには本当に感謝している。「サテュロス[初稿版]」と甲乙つけがたいな。もっとも、「サテュロス」は改稿版のファンタジー的な暗い笑いのオチも大好きだが。



目録225:妖神グルメ 妖神グルメ
刊行年:
①2017年
②2020年
出版社:創土社 定価:各1,000円 原作:菊地 秀行
漫画:①黒瀬 仁、②マーチン角屋
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録226:闇のシャイニング リリヤの恐怖図書館 闇のシャイニング
刊行年:2020年 出版社:扶桑社 定価:1,100円 著者:スティーヴン・キング、他
収録作品:「青いエアコンプレッサー」、「ピジンとテリーザ」、「告げ口心臓」他。

有味: スティーヴン・キングのファンサイトの運営者が、キングの影響を受けたっぽい作家たちに声をかけて編んだ短編集ってことらしい。オレはあまり熱心なキング読者ではないのだが、それでもキングっぽさみたいなものはつかみ取れた。
スミス: 「珠玉の……」とまではいきませんが、ちゃんとテーマを理解された方々の作品が集まっている感じですわね。
有味: 収録されている「キーパー・コンパニオン」という作品がクトゥルフ神話作品。つーか、テーブルトーク・ロールプレイング・ゲームを扱った作品になっていて、〈クトゥルフの呼び声〉(=『クトゥルフ神話TRPG』)が登場する。
スミス: 内容は読んでいただくとして、タイトルがダブル・ミーニングになっていますの。
有味: 訳者はクトゥルフ神話作家でもある友成純一だが、TRPGには明るくないようで、かなり訳に苦労が偲ばれる。〈ツァトグアの繁殖〉ってなんだろうな? 『The Compact Trail of Tsathoggua』あたりか? ※原文では"Spawn of Tsathoggua"であることが判明。
スミス: オーナーのイチオシはどの作品ですの?
有味: まぁ、この「キーパー・コンパニオン」を推さざるを得ないだろうね。主人公のアルビーはキーパーとしての腕は確からしいので、ぜひプレイヤーとして彼のセッションに参加してみたい。ピザ買って行きます。



目録227:クトゥルフ神話ガイドブック 改訂版 クトゥルフ神話ガイドブック 改訂版
刊行年:2020年 出版社:新紀元社 定価:2,500円 著者:朱鷺田 祐介
収録作品:-

スミス: 目録37の改訂版ですの。
有味: 著者氏は浅い内容を根気強く丁寧に記事にすることにかけては一級品の実力の持ち主。クトゥルフ神話を知りたいけれど、何から手を付けていいか分からないという人たちには、書名通りガイドとなってくれる一冊だろう。
スミス: まぁ、でも、退屈な本でしたわね。
有味: ……手厳しいね、スミス。そのとおりなんだけど。2,500円の内容はないよね、実際。前作(2004年)の内容から改訂するに当たっては、16年の間にあった新たな情報を最後に付け加えただけで、全体を見直していない感じだね。やっつけ仕事っつーか。
スミス: 昨今は似たような書籍が大量に出ていますので、それらとの差別化が図られていない書籍には厳しく当たらざるをえませんわね。
有味: 予想通りと言えば、予想通りの本だった。「ガイドブックが欲しいな~」と考えている人にはオススメできます。面白いクトゥルフ神話の本を探している人はお金を無駄にしないように注意しましょう。
スミス: 結局前作と同じ感想になってしまいましたの。



目録228:狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 狂気の山脈にて
刊行年:2020年 出版社:新潮社 定価:750円 著者:H・P・ラヴクラフト
収録作品:「ピックマンのモデル」、「祝祭」、「時間からの影」他。

有味: 目録215に続くシリーズ2冊目。シリーズ化して続刊が出るとは思っていなかった。前作が結構売れたのかね?
スミス: 今回は表題作と「時間からの影」というラヴクラフト御大的には長編の2作と短編6作の計8作構成ですの。
有味: まぁ、特に奇をてらうことのないラヴクラフト傑作選だね。星海社のシリーズにぶつけてくるところに気概ともったいなさを感じるけど。
スミス: せっかくのリソースがラヴクラフト御大にのみ重複して注がれるのは確かにもったいないですわね。
有味: 調べる気が失せるほど「狂気の山脈にて」は何度も翻訳されているからな。消費者としては他の書籍でも読めるものよりも目新しいものを期待したいところ。
スミス: 硬派な傑作選です。基礎教養の履修としては価格的にも良いテキストになるかと。



目録229:童提灯 童提灯
刊行年:
①2018年
②2021年
出版社:創土社 定価:各1,000円 原作:黒 史郎
漫画:おおぐろてん
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
レンタル中(Click!)



目録230:夢魔 夢魔
刊行年:1993年 出版社:青弓社 定価:2,000円 著者:ロバート・ブロック
収録作品:「蠟人形館」、「火星への片道切符」、「恐怖が追ってくる」他。

有味: ロバート・ブロックの短編集。神話、非神話混在。
スミス: 「夢魔」はクトゥルフ神話ですわね。「蛇母神」にはイグへの言及がございますが、神話作品ではありませんの。
有味: 最後の一文に向けて全力で盛り上げていく手腕はさすが。何でもクトゥルフにすれば良いわけではないが、どの作品も少しいじればクトゥルフ神話の参考になりそう。「大修道院の宴」あたりはC・A・スミスのアヴェロワーニュが舞台でも違和感ない。
スミス: イチオシは神話作品の「夢魔」ですの?
有味: 「夢魔」が悪いわけではないし、実際面白いが、初見じゃないのでとりあえず回避。「蛇母神」と迷ったけど、「真実の眼鏡」がイチオシ。真実の眼鏡というアーティファクトをめぐる話で、眼鏡がその名の通り効果を持つのだけど、きっと作中でも言明されない別の効果があるんだろうなと想像させる。クトゥルフのアーティファクトはかくありたい。「真実の眼鏡」は神話作品ではないけれど。
スミス: 訳も素晴らしく、とても楽しめました
有味: 久しぶりにまじめな感想になったな。



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