書架:24



目録231:死もまた死するものなれば 全4巻 死もまた死するものなれば
刊行年:
2019年~2021年
出版社:
KADOKAWA
定価:
①、②780円
③、④660円
原作:海法 紀光、桜井 光
作画:狗句
収録作品:-

スミス: 『クトゥルフ神話TRPG』と連動したコミックですの。
有味: 各巻末にTRPGで使えるヴァリアント・ルールやデータが記載されているという、初代ソードワールドRPGの短編集を思い出させる構成。
スミス: ルール部は……不完全な異世界サプリメントといったところでしょうか。
有味: 良く調べていないから憶測だけど、多分マンガが先で、ルールは後付けで設定しているんだろうね。汎用性というよりは、マンガの内容を成立させるためのゲーム的後ろ盾みたいな感じ。試みは面白い。
スミス: 内容的にはいかがでしたか?
有味: マンガ自体は絵はきれいだけど、話は今一つ。もっと面白い作品だと良かったのだが。



目録232:クトゥルー 深淵に魅せられし者 クトゥルー 深淵に魅せられし者
刊行年:2021年 出版社:青心社 定価:700円 著者:新熊 昇、他
収録作品:「アルハザードの初恋」、「エウロパの海に眠るもの」、「白い花嫁」他。

スミス: 今回はネガティブ発言禁止ですの。
有味: え!? そんなこと言ったらこの文庫の存在意義が……。
スミス: そんなババ色の存在意義、いりませんの。本書は「クトゥルー」と「恋愛」をテーマにした短編集とのことですの。
有味: ……。一見相いれないテーマを組み合わせて、そのギャップで勝負するという戦略なのだろうが、なかなか難しかったようだ。つーか、ほとんどの作品が成功していな――
スミス: ネガティブ禁止ですの。
有味: ほとんどの作品が「恋愛」要素の挿入に苦戦した様子。「深き眠り」はテーマに沿えていると思うので、この作品がイチオシかな。「九十九度目の春は来ない」は作品としては面白いんだけど、「恋愛」というテーマにはまったく沿えていないのが残念。
スミス: 青心社のアンソロジーもシリーズとして軌道に乗ってきたみたいなので、今後に期待ですわね。
有味: ……。新熊昇の新作の面白くなさっぷりには落胆した。そして基本的にどの作品も印象薄くてすぐに内容忘れる。
スミス: もう! オーナー! ネガティブ禁止ー!



目録233:インスマスの影1、2 インスマスの影
刊行年:2021年 出版社:KADOKAWA 定価:各780円 著者:田辺 剛
収録作品:-

有味: 本邦でコミカライズされた「インスマスの影」では群を抜いた作品。著者氏の画力が出色であることはもちろんのこと、何よりもホラー漫画になっているところが素晴らしい。
スミス: ギルマン・ハウス投宿前後から脱出までの切迫感にはゾクゾクしましたの。
有味: 紙幅にも恵まれているし、“描かされている”のではなく、著者氏が前のめりで“描いている”のが伝わってくる傑作。ということで、傑作になるとウチの文庫では特に書くことがなくなるな。
スミス: 原作小説を読んでいなくても、このコミック2巻を読めば、「インスマス、知ってる!」と言ってもOKかもしれませんわね。
有味: 『超訳ラヴクラフト・ライト3』を読んで「インスマス読んだ!」という奴は《アザトースの呪詛》でしおしおにするが、この2冊だったら許してやってもいい、そんな感じ。
スミス: おススメです。



目録234:幻夢の英雄 幻夢の英雄
刊行年:2021年 出版社:青心社 定価:1,000円 著者:ブライアン・ラムレイ
収録作品:-

有味: ラムレイの長編ガッカリクオリティを覚悟して読み始めたが、良い意味で予想は外れた。楽しみました。
スミス: 幻夢境を舞台にしたシリーズが開幕ですわね。
有味: CoCサプリメント『ラヴクラフトの幻夢境』をフルに活用する気なら、マストで読んでおくべき作品。サプリメントでいまいちピンと来なかった記述の理解に、大いに役立つ。
スミス: 本邦において幻夢境に関する資料はあまり多くないので、続刊にも期待ですわね。
有味: 正直言って、幻夢境にはあまり興味はないので、気合入れて自力で調査する気にはなれないんだよね。他の人が訳して成果を提供してもらえるのは実にありがたい。幻夢境ものと言うと……ゲーリー・マイヤーズの「神像彫刻師」だけは調査したことがあったな。
スミス: 「ナニか大きなもの」を持ち出さないまま、サーガが進んでいってくれると良いのですが。
有味: ラムレイは「タイタス・クロウ・シリーズ」という壮大な前科があるから、気を抜けないよな。



目録235:猫の街から世界を夢見る 猫の街から世界を夢見る
刊行年:2021年 出版社:東京創元社 定価:880円 著者:キジ・ジョンスン
収録作品:-

スミス: 上記目録234から連続してドリームランドものですの。まったく予想外なところから“夢の国”がきましたわね。
有味: 正直言って作者氏についてはまったく知らなかったが、アナログ・ゲーム業界的には超大物みたいね。
スミス: “夢の国”については良く調べられていますわね。
有味: ゲーム資料が執筆に役立てられたかは不明だが、脱帽だね。ラヴクラフト含め、ドリームランドを舞台とした作品の中では、個人的に過去最高に面白かった。
スミス: 作者様なりの「未知なるカダスを夢に求めて」の再解釈、新評価的な作品なのかもしれないですわね。
有味: 原題『The Dream-Quest of Vellit Boe』からどうしてこんな冴えない邦題にしてしまったのかは理解に苦しむ。猫で釣ろうという魂胆か?



目録236:ポオ収集家 ポオ収集家
刊行年:2000年 出版社:新樹社 定価:2,000円 著者:ロバート・ブロック
収録作品:「バルザックの珍獣たち」、「灯台」、「ジュリエットの玩具」他。

有味: 本邦オリジナルのブロック短編集らしいね。ホラーはもちろんSF等もあり、バラエティに富んだ内容で楽しんだ。
スミス: 最初に収録されております「冥府の守護神」がクトゥルフ神話ということですわね。
有味: 1936年の作品らしいので、「無貌の神」とか「闇の魔神」と同年だね。クトゥルフ神話に掠るのは「プリンがサラセンの祭儀の章で述べている……」という箇所くらい。薄い、薄いよ。
スミス: 他のいくつかの短編にも少しだけ用語が忍び込んでいたりしますが、神話作品というわけではありませんの。
有味: まあ、創造者による『妖蛆の秘密』の設定とみれば重要な作品なのかも。他の書籍に収録されていないという点もポイント高い。エジプトファンでニャルラトテップに飽きたキーパーには参考になるのでは?
スミス: 随分とニッチな需要ですわね。
有味: 調べてみたら、アヌビスってクトゥルフ神話に組み込まれていないんだね。ハンセン・ポプラン卿も触れていないから、オリジナリティを求めるキーパーは狙い目かもよ☆



目録237:グラーキの黙示1、2 グラーキの黙示
刊行年:2022年 出版社:
サウザンブックス社
定価:各2,200円 著者:ラムジー・キャンベル
収録作品:「湖の住人」、「ムーン=レンズ」、「嵐の前に」他。

スミス: ついにラムジー・キャンベルの作品集が邦訳ですの。
有味: 既訳、初訳を織り交ぜてまとめて読めるのは本当にありがたい。クトゥルー神話ファン待望の2冊ではないだろうか。
スミス: 『(新)クトゥルフ神話TRPG』で名前とゲーム・データだけ知られてはいるものの、詳細な性質などが知られていない存在の答えが詰まっていますの。
有味: キャンベルの神話サイクルに興味がある人はマスト・バイ。絶対に損をすることはないと思う。
イチオシはグロースの登場する「誘引」。実は「The Tugging」は過去2回翻訳に挑戦して2回とも途中で挫折したので、プロの手による日本語訳を待望していた。これでようやくグロースのキャップが外れたので、オレもシナリオで惑星神を使うことができるようになったよ。
スミス: 翻訳ができるだけでなく、クトゥルー神話に明るい識者様たちが集まってくれているので〈クトゥルフ神話〉技能を上げたい方はぜひ、ですの。
有味: 作品解題も素晴らしい。この解題でここ数年引っかかっていた謎が一つ解けた。



目録238:クトゥルー 異世界へ! クトゥルー 異世界へ!
刊行年:2022年 出版社:青心社 定価:700円 著者:松本 英太郎、他
収録作品:「クニガティン・ザウムの娘」、「ウルタールのアルハザード」、「暗緑色なる夢の淀み」他。

有味: 青心社のこのシリーズも軌道に乗って来たのかね。過去には目を覆うばかりのものもあったが、今回はどの作品も「クトゥルー神話」を書こうとはしているっぽい。
スミス: 今回は異世界をテーマにした短編集とのことですの。
有味: 個人的にオレの考える「異世界」とは解釈が違っている作品が多いのだが、タームの定義が明かされていないのでそこを突っ込んでも答えは出ないのだろう。
スミス: “異世界性”の違いですわね。
有味: イチオシは「調査隊」。クトゥルーだし、異世界でもある。ちゃんとルール内で勝負している感じ。まぁ、でも、どれもドラスティックな作品ではないよね。
スミス: 基本的には三次創作です。この一冊でクトゥルー神話は一歩も前進しておりません。
有味: それでも門戸があるのは良いこと。ランドルフ・カーターも門戸があったからこそ探求を成し遂げたのだ。この文庫のネタにもなるからな。



目録239:幻想とクトゥルフの雫 幻想とクトゥルフの雫
刊行年:2022年 出版社:
ツーワンライフ出版
定価:500円 著者:杉村 修
収録作品:「クトゥルフ」、「春夏秋冬」、「特別な体」他。

有味: SF、なのかね? ホラーではないよな。
スミス: 短編11作と中編1作が収録されていますの。作品間のつながりは特にないようですわね。
有味: クトゥルフ神話でもなく、価格もワンコインなので、燃え上がる憎悪で引き裂くほどの気力も湧かない。まあ、こういう一冊として完成しているのだろう。
スミス: 手軽に読める手段として、こういう方法も良いですわね。
有味: クトゥルフ神話についての何かを求めてこの一冊をチョイスしたなら不幸としか言いようがないが、偽典としてこういう書籍が増えてくれば文化としてクトゥルフ神話が根付いたことになるのかも。知らんけど。



目録240:エイリアン邪神戦線 エイリアン邪神戦線
刊行年:2022年 出版社:創土社 定価:1,000円 著者:菊地 秀行
収録作品:-

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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