目録261:グラーキの黙示 3 | ![]() |
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刊行年:2024年 | 出版社: サウザンブックス社 |
定価:1,980円 | 著者:ラムジー・キャンベル | |
収録作品:「グラアキ最後の黙示」 |
有味: | 目録237に続くラムジー・キャンベルの作品集の第3巻。今回は長編(?)の「グラアキ最後の黙示」のみの収録となっている。 |
スミス: | 創造主によるグラーキへの新たな言及となりましたが、いかがでした? |
有味: | う~ん、まあ、なんつーか、「湖の住人」でグラーキは高度に完成されているので、別にいらなかったかな。「湖の住人」で見せた重戦車のごとき圧倒的な迫力がグラーキの良い意味での魅力だと思っている。本作の曰く言い難い不気味な雰囲気は、グラーキの多面性という意味では興味深いのかもしれないけれど、まあ、オレのグラーキではなかった。 |
スミス: | 何だか、RPGのイライラするお使いシナリオみたいな展開でしたの。 |
有味: | 遊びでキャンベルの作品をいくつか翻訳してみたことがあるが、彼の文章は1~2割補ってやらないと、意味の取れる平易な内容にならないという印象を持っている。本作の訳文も単語を追うのに必死で、「この一節があることにどんな意味があるのか?」を頻繁に見失っているように感じた。資料としては正しいアプローチなのかもしれないが。 |
スミス: | 結果として話がオモシロクナイのはいただけませんわね。 |
有味: | 巻末に収録されているクラインによる「ドイツ語版のためのあとがき」でも言及される「ウォーレンダウンの恐怖」もそうなのだが、キャンベルは言葉遊びのようなものが好きっぽいので、それを日本語訳するのはとても難しいとは思う。今後、これを上手く落とし込める人に未訳のキャンベル作品の紹介を続けていって欲しいものだ。 |
目録262:名状しがたいもの | ![]() |
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刊行年:2025年 | 出版社: KADOKAWA |
定価:940円 | 著者:田辺 剛 | |
収録作品:「恐ろしい老人」、「霧の高みの不思議な家」、「ランドルフ・カーターの陳述」他 |
スミス: | 作者様のラヴクラフト作品のコミック化は巻を追うごとにクオリティが上がっていますわね。 |
有味: | 目録214の『時を超える影』以外はかなり高い水準でコミカライズされていると思う。全世界のラヴクラフト作品のコミカライズがどうなっているかは知らないけど、作者氏の一連の作品はトップクラスにランク付けされるのではないかと想像する。 |
スミス: | 作者様の描く、このテイストのクトゥルー神話系RPGがあっても面白いかもしれませんわね。 |
有味: | イチオシは前・後篇で紙幅にも恵まれた「銀の鍵」。見飽きた感もある手垢のついた作品だが、何だか新鮮な感動があった。「銀の鍵」以外の作品もすごく良いのでこの一冊を丸ごとお勧めできる。 |
目録263:ラヴクラフト語辞典 | ![]() |
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刊行年:2025年 | 出版社: 誠文堂新光社 |
定価:2,200円 | 著者:森瀬 繚 | |
収録作品:「虫けら爺さん」 |
有味: | タイトルから内容は推察しにくいが、H・P・ラヴクラフトに関連する事柄についての情報を五十音順に並べた本。表紙には「H・P・ラヴクラフトにまつわる言葉をイラストと豆知識で禍々しく読み解く」と書かれているが、別に禍々しく読み解かれてはおらず、事務的に事実が列挙されている。 |
スミス: | とても興味深い内容の本でしたわね。 |
有味: | 新しい本だから当然のことだが、ラヴクラフトに関して述べている日本語で読める記事として、現状最高の一冊だと思う。よく調べられており、内容は興味深く、とても面白かった。 |
スミス: | なお、当然クトゥルー神話のみにフォーカスされているわけではございませんので、要注意ですの。 |
有味: | 「アレって何だっけなー?」という時に調べる辞典というよりは、普通の読み物。特に著者氏独自の訳語順に並べられており、表記揺れからの誘導はないので、検索性は良くない。まあ、繰り返しになるが、いわゆるdictionaryではなく読み物なので、検索目的ならほかの本を当たった方が良いだろう。 |
目録264:狂気の山脈にて | ![]() |
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刊行年:2025年 | 出版社:星海社 | 定価:2,600円 | 著者:H・P・ラヴクラフト 訳者:森瀬 繚 |
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収録作品:「眠りの壁の彼方」、「潜み棲む恐怖」、「 |
スミス: | 新訳クトゥルー神話コレクション6ですの。 |
有味: | 古のものとイィスの偉大なる種族がいよいよ登場。その他、ラヴクラフトが関わったとされる大小の作品が収録されたバラエティに富んだ一冊。例によって質の高い解説記事とともに、とても面白い一冊だった。 |
スミス: | 文句をつける余地があまりない、アーンド、特に目新しい作品があるわけでもないので、感想も無味になりがちですわね。 |
有味: | そうだよね。訳者氏が目指すラヴクラフト・エントリーとしては成功を収めつつあると思う。 |
スミス: | イチオシ作品はどれですの? |
有味: | 「時間を越えてきた影」というまたしても無味なチョイス。辛抱強く、毎日1章ずつ読み進めたので、物語の構築の仕方なども分かって改めて勉強になった。 |
目録265:暗夜にぞ輝けり~暗黒星奇譚 | ![]() |
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刊行年:2025年 | 出版社: アトリエサード |
定価:2,200円 | 著者:壱岐津 礼 | |
収録作品:「暗夜にぞ輝けり~暗黒星奇譚」、「望郷」。 |
有味: | 「吸血鬼が狙った娘は、異界の神の花嫁だった――」(帯より) |
スミス: | さっそくキラー・マシーン・モードですわね。 |
有味: | この |
スミス: | えーと、12ページ……(ペラペラ)……ああ、輝くトラペゾヘドロンの扱いですわね。 |
有味: | ラヴクラフト作品(クトゥルー神話)で最も有名なアーティファクトの一つ「輝くトラペゾヘドロン」がヨグ=ソトースの目だったとする受容し難い無謀ともいえる挑戦がなされた時点で、超合体戦士サンゴッドVの主題歌くらい「腑に落ちないぜ」状態に陥って、毎日一章(4ページくらい)を読み進めていくのが精一杯になってしまった。 |
スミス: | なにか、完全オリジナルのアーティファクトを投入したいただいた方が、オーナー好みでしたわね。 |
有味: | 物語の最後で「トラペゾヘドロンがヨグ=ソトースと関連あるというのは間違いだった」という“瑕疵のある伝承”的な展開があるのかもしれないと思って読み進めたが、まぁ、もちろんそんなことはなかった。なんか、ぜんぜん内容が頭に入って来なくて、どうにか状況だけは追い続けようと思ったのだが、それも及ばなかった気がする。登場人物たちの動機みたいなものがつかめなかったし、それぞれの顛末も記憶に残らなかった。何のインプットにもならない作品は徒労感が半端ないな。 |