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2001年
◎一月三日〜二十二日
栃木県は、鹿沼市にある知的障害者更生施設「鹿沼希望の家」の前施設長が、定員外で受け入れた女性の施設利用料を二〇年間にわたって簿外処理し、約二二二〇万円を取引先を接待するなど施設の交際費に流用していたことが判明したとして、施設側に全額返済するよう指導した。前施設長は県の必要な報告をしないまま、定員外で入所させ、女性の両親から、前施設長が管理する法人の理事長名の口座に毎月八万円から一〇万円振り込ませ、一九七九年から二十年間で計二二二〇万円を流用していた。使途を裏付ける領収書や帳簿は残されていなかったという。流用は一昨年、法人の内部監査で発覚。報告を受けた県が全額返還を指導し、法人は施設に全額返還し、一部を前施設長が負担することで合意した。二十二日、同県は、施設利用料の流用について、社会福祉法に基づく特別検査に入り、事情聴取を始めた。このほかにも不明朗な会計処理が明らかになっており、検査後、行政処分を検討する。
▼一月十日
静岡地裁沼図支部は、沼津市立病院で出産した子どもに脳性まひの後遺症が残ったのは、病院側の対応に過失があったからだとして、同県内に住む子どもが両親を法定代理人として同市を相手取り、損害賠償を求めた訴訟で、「監視記録などから危険性は予測できた」とし、医師らの過失を認め、同市に約一億九〇〇万円の支払いを命じた。
◎一月十日〜十七日
千葉県警捜査一課と小見川署は、社会福祉法人「香取学園」の運営する知的障害者更生施設「瑞穂寮」の男性職員二人と、元職員(女性)の三人を、一九九四年二月十四日、入所者の両手の甲にたばこの火を十数回押しつけて、二週間から三週間のやけどをさせた傷害の疑いで、千葉地検に書類送検した。千葉県は、同法人が運営する児童養護施設「松葉寮」で長期間体罰が行われていたことが発覚し、昨年八月に改善勧告を行ったが、「瑞穂寮」についても入所者四人にけがを負わせる体罰があったとして、昨年十一月に同法人に改善勧告をしていた。十七日、同法人は「瑞穂寮」の入所者の処遇改善をまとめた計画書を県障害福祉課に提出した。理事会に保護者代表を入れて処遇改善を図る、入所者の苦情解決のための委員会を設置する、職員の意識改革を推進する倫理大綱を定めるなどを盛り込んだ。また、同法人は、入所者の手の甲にたばこの火を押しつけた件については、同施設の聞き取り調査で虚偽の申告をした男性職員二人と施設長を減給処分とした。
◎一月十日〜十九日
埼玉県健康福祉部は、精神・内科病院「朝倉病院」に対して昨年十一月に調査に入った結果、診察した「任意入院」患者十六人のうち、五人から六人については「医療保護入院」扱いが妥当として、十二月に入院形態の見直しを求める改善命令を出していたが、今月十日、病院側は「変更の必要はない」と回答してきたため、改善命令を事実上無視して、患者に対して不適切な処遇を続け、県に入退院などを届け出る必要のある症状の重い患者を、手続きが簡略化できる形の入院形態で入院させるなど精神保健福祉法違反の疑いがあるとして、十九日臨時の実地指導に入った。同法で定める指定医を同行して、入院患者を独自に診察するほか、入院形態の実態や、患者に対して不適切な処遇(違法に拘束していないか、外から病室に施錠していないかなど)がないかについても調査する。また、同県と埼玉社会保険事務局は、一昨年十一月から一年間に死亡した入院患者七十七人のうち、食事や水を自力で接種できるのにもかかわらず血管に直接栄養を送りこむIVH(中心静脈栄養)を受けたケースが複数に上っていることが分かり、患者に不必要なIVH療法を施し診療報酬を不正請求していた疑いや、生活保護を受けている入院患者についての生活保護不正請求の疑いがあるとして、二十二日から三日間、同病院の共同監査を行うことを決めた。故意の不正・不当な診療報酬請求が認められれば、保健医療機関としての指定取り消しなどの行政処分を行う方針。
▼一月十二日
熊本地裁は、西日本の国立ハンセン病療養所の入所者(熊本と鹿児島の元患者十三人)らが、国のハンセン病隔離政策の責任を問うために全国で初めて起こした国家賠償訴訟について、一九九八年七月の第一次提訴から二年五カ月余りで結審した。五月十一日に判決を出す。第四次提訴までの原告は一二七人となる。原告側は、「ハンセン病は遺伝病ではなく感染力が弱いため、予防対策として患者の隔離や断種、中絶の優性手術は不要で、遅くとも治療薬で容易に治るようになった一九四〇年代には隔離の医学的根拠は全くなく、憲法違反のらい予防法で戦前からの強制隔離政策を継続し、その後も法や政策を見直さず、優性手術の強要や拘禁などの人権侵害を引き越し放置してきた。また、差別や偏見が助長され社会で平穏に暮らす権利を奪われた」と国の責任を訴えている。しかし、国は「治療法の確立は一九八一年頃で、これまでの隔離は有効」「隔離や優性手術の強要はなく、治療薬の進歩に応じて法は弾力的に運用され、昭和四十年代には外出なども自由になり、人権侵害は発生していない」「差別や偏見は有史以来あり、法や政策とは無関係」と主張し争っていた。
▼一月十二日
厚生労働省は、戦前の旧癩病予防法で定められたハンセン病患者の強制隔離政策について見直しを検討した一九四九年の全国療養所所長会議で、ハンセン病の権威だった長島愛生園の所長(故人)が強制隔離の継続を強く主張し、方向転換を見送る政策決定に大きな影響を与えたことが、厚生省の内部資料(出席者のメモ)で分かったことについて、「係争中であり、個別の問題についてはコメントを控えたい」としていることがわかった。当時、特効薬の「プロミン」が開発され政策の見直しは世界的な流れだったため、一九四九年の会議で厚生省の医務局長が「過去四〇年を顧みて反省し、将来の根本策を計画すべき年である。四〇年前と現在とは情勢が全く異なるから、必要あらば予防法を変えてもよい」と発言。予防課長も「非常に警戒したものは退所させたらいかが」としたのに、長島愛生園の所長が「それは生兵法で大けがのもとだ。軽快者だとて出してはいけない。遺言としておく」と政策の継続を訴えたという内部資料(出席者の一人が速記したメモ)を、日本らい学会会長などを努めた成田稔氏が療養所関係者から入手した。
▼一月十五日
文部科学省の「二十一世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議」は、最終報告書をまとめた。これまで「特殊教育」とされてきた名称を「特別支援教育」などと改めることを検討することにし、従来の「養護・訓練」重視路線から、「児童生徒の自立と社会参加を生涯にわたって支援する考えが必要」とする路線の転換を強調、乳幼児期から学校卒業までの一貫した支援態勢作り、障害に応じた使いやすい情報機器の開発などを提言した。また、盲、ろう、養護学校への就学先の決定に例外を認めることとし、合理的な理由がある特別な場合、基準上は養護学校などに就学する障害でも、車イスを利用している子がエレベータやスロープを設けられた学校にいく場合や、パソコンを利用すれば意思表示や記述が可能な場合などは、市町村教育委員会の判断で、普通学校(小・中学校)に受け入れ可能なように見直すとした。市町村教育委員会は保護者が専門家の意見を聞いたり、子どもの体験授業を設けたりし、保護者が就学についての意見を述べる機会をつくるべきだとした。また、市町村教育委員会は学校、医療機関、児童相談所、保健所などとチームを作って、子どもや保護者の相談にのるよう提言した。さらに、専門的な立場から、児童・生徒の就学で教育委員会に助言する「就学指導委員会」に、専門家以外にも保護者や地域の有識者を委員とすることを盛り込んだ。盲、ろう、養護学校の教員が特殊教育教諭の免許状を全員が取得する計画を作ることを県教育委員会に求めた。「通級による指導」の充実として、専門知識のある非常勤講師の活用や、複数教員で指導にあたるチームティーチングなどを提唱した。
▼一月二十日〜二十三日
難病のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に感染したのは、移植されたヒト乾燥硬膜か原因の「薬害」のためとして、輸入承認した国などを相手取り、大津地裁に損害賠償請求訴訟を起こしている原告の林琢己(はやしたくみ)さんが死亡。二十三日、初の原告となって提訴した谷たか子さんが肺炎のため死亡したため、大津訴訟の原告患者十一人が全員死亡した。大津訴訟は今年七月に結審し、秋以降に判決の見通しだった。
◎一月二十日〜二十六日
埼玉県と厚生労働省の埼玉社会保険事務局は、精神・内科病院「朝倉病院」をめぐる診療報酬不正受給疑惑で、昨年八月から国民健康保険法に基づく立入り検査を実施、カルテなどを持ち帰り、薬品納入業者らに対する事情聴取を続けていたが、二十二日から二十四日の三日間、共同監査を行うことを決めた。二十二日、内視鏡検査に使ったとして同病院が診療報酬請求した(薬睡眠導入剤「ドルミカム」)の量が業者からの納入量よりも多いことが分かったと発表した。また、同じく胃内視鏡検査などに使われる薬品・硫酸アトロピンとブスコパンについても確認された。病院ぐるみで診療報酬を水増し請求した疑いがあるとしてさらに調査を進めていたが、二十六日、厚生労働省と埼玉県は、入院患者十数人が、カルテ上は胃内視鏡検査や気管支ファイバー検査について受けたことになっているにもかかわらず、監査に伴う聞き取り調査に「診察前は朝食を抜くように病院側から指示されたが、検査は受けたことがない」と話していることが分かった。同院長も、不正請求の一部を認めているという。
▼一月二十五日
法律扶助協会東京支部は、「犯罪被害者法律扶助」事業(法律相談や刑事告訴の事務代理、法廷傍聴の同行、証人尋問への付き添いなどの形で弁護士の力を借りるに際して、弁護士報酬を立て替える仕組みで、援助額は最高一五万円、最低一〇万円の増額ができる。立て替えた費用の償還は、明らかに資力が回復した場合を除いて免除する)を今月一日から開始したが、第一号として、元夫から繰り返し激しい暴力を受けた女性の申し込みを認め、弁護費用として一五万円を援助することを決定した。娘二人も同様の被害に遭い、娘のうち一人とこの女性は精神的な障害が残り、病院に通院しているが、弁護士に相談するのに十分な資力がないという。
◎二月七日
新潟県燕市西蒲原吉田町は、精神障害者の社会復帰を支援する「燕市西蒲原地区地域生活支援センター」の設置計画を進め、社会福祉法人西蒲原福祉会に町有地を無償貸与し、建設を予定していたが、「施設に不安を感じる」とし署名活動を始めた地元住民の設置反対により、当初予定地での建設を断念し、建設用地を変更する方針を決めた。新たな設置場所として、同町大保町にある町保健センター敷地内とすることを決め、地元住民に説明会を開き、理解を求めることにした。
▼二月七日
東京都世田谷区は、低所得の高齢者や障害者がアパートの賃貸や更新契約を拒否されるケースがあるため、新年度からアパートなどを借りやすくし自立生活を支援するために家賃補助することを決め、新年度予算案に約一三〇〇万円を計上した。六十歳以上の高齢者、障害者手帳の交付を受けている人、十八歳未満の子どもを持つ一人親の世帯で、家賃の支払い能力があり、区内に二年以上継続して居住している人を対象とする。区の都市整備公社が窓口となり、民間の保証機関と利用者が不動産業者を通じて直接契約する。利用者が家賃を滞納して保証機関に損出が生じた場合、区が補助金で損出金を助成する。また、こうした世帯に介護保険や食事、寝具などの福祉サービスの紹介も行う。
◎二月七日〜八日
厚生労働省と埼玉県は、精神・内科病院「朝倉病院」の監査を実施しているが、病院長が、「看護婦が不足し、食事の介護に十分な時間がとれなかったため」として、食事を自力で摂取できる入院患者らに、カルテの看護記録を読まずに対象患者を選定し、本来不必要な中心静脈栄養(IVH)療法を実施していたことを認めたことを明らかにした。八日、一九九八年一月以降に実施したとされる胃・十二指腸と気管支の内視鏡検査や、IVH療法に伴う高カロリー湯液投与などの費用を架空請求して、約六項目の検査・診療で診療報酬を不正請求していたことがわかった。診療報酬を不正請求していたことを裏付けるものとして、健康保険法などに基づく保険医療機関の指定取り消しを視野に調べている。
◎二月九日
横浜地裁は、身体障害のある中学生が別の中学校の生徒七人に集団暴行を受け、志望する高校に進学できなかったとして、生徒と保護者を相手取り計約四六五万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、「足が不自由な男性に暴行を加えた卑劣、悪質な行為は、通常の暴行事件とは比較にならないほどの精神的損害を与えた」「男性は傷害を負ったことで期末試験に悪影響が出たほか、受験勉強がはかどらなくなり志望校に進学できない苦痛を味わった」と指摘。「生徒らは年齢や学年からみて事の善悪を識別でき、賠償する義務がある」として、生徒七人に連帯で約二九〇万円の支払いを命じた。保護者に対する訴えは棄却した。
▼二月十三日
最高裁は、「水俣病待たせ賃訴訟」(認定の申請に対する判定を、長い間待たされて精神的苦痛を受けたとして、熊本県や京都府などの認定申請者三八人とが国と熊本県に計約八三〇〇万円の慰謝料の支払いを求め一九七八年に提訴した)の上告審判決を出した。「申請者らの静穏な感情を害さないようにすべき義務に、県知事が違反したとは言えないとした二審の福岡高裁判決は是認できる」として、請求を棄却した同高裁判決を支持し、原告側の上告を棄却した。提訴から二二年ぶりに、原告側敗訴が確定した。一九九六年九月の二審の福岡高裁判決は、水俣病の診断は医学的判断は困難で専門医の確保は難しく、審査件数を大幅に増やすのは不可能、申請者の急増は行政にとって予測不可能などと指摘し、「知事は通常期待される努力を尽くした」と行政責任を否定して原告側の請求を棄却した。
◎二月十三日
最高裁第三小法廷は、交通事故の後遺症による足のけいれんが原因で就労先を解雇され、野宿生活を余儀なくされた日雇い建設作業員林勝義さん(一九九九年死去)が、同市中村区福祉事務所に生活保護を請求したが、医療扶助を除いて生活扶助と住宅扶助の請求が却下されたのは違法として、名古屋市などを相手に処分の取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、「両足に大きな負担のかからない作業をする能力や働く意思はあり、仕事先は積極的に探せばあった。実際に能力を活用できる場がなかったとはいえず、生活保護受給の要件が備わっていない」と認定した二審の名古屋高裁判決を支持し、処分の取り消し請求は林さんの死亡により終了したとして、慰謝料請求などを棄却した。林さんの死後は名古屋市内の支援者が訴訟を継承していた。
▼二月十四日
厚生労働省は、障害による「欠格条項」の見直しについて、三十三の資格・制度にかかわる法令を一括法で改正する方針を決め、試案を公表した。障害のある者に免許を与えない「絶対的欠格事由」の条項を廃止し、免許を与えないことがある「相対的欠格事由」に緩和する方針で、免許ごとに制限対象となる障害を区分けし、障害があっても業務が可能かどうか個別に判断することにした。また、病院や薬局などの雇用者に対しては、障害を補うための職場環境を整備する「配慮」を省令で位置付ける。薬剤師や歯科技工士など六免許は、制限対象となる障害を視覚、精神障害に限定。聴覚や言語の障害のある人は、国家試験に合格すれば特別な審査なしに免許を取れることにした。医師や歯科医師、看護婦などは視覚、聴覚、言語、精神障害が制限対象となった。また、免許を交付するかどうかの判断方法として、これらの障害があっても同省が個々に判断して決めること、診断書や臨床実習などの内容を考慮して、補助手段を使って業務ができる場合には免許を取得できることなどを盛り込んだ。三月二日まで市民からの意見を募集し、今国会に提出する予定。
◎二月十四日〜三月一日
東京高裁は、芥川省作家の柳美里さんが一九九四年九月号の月刊誌「新潮」に発表したデビュー作「石に泳ぐ魚」をめぐって、小説のモデルになった女性がプライバシーを侵害されたとして出版差し止めと慰謝料などを求めた訴訟の控訴審の判決を出し、「出版によって体に障害のある者の精神的苦痛を倍加する。このような人間存在にかかわることは、表現の自由の名の下であっても女性の平穏な日常生活が困難になるようなことを発生させてはならない」とプライバシーを侵害を認めた。また、東京地裁判決が作品公表の場合は訂正版を出版することで出版差し止めを命じたが、高裁判決は合意を認めず、原告は公的な存在ではなく、問題の表現は公共の利害に関するものではない。公表によって読者が増えれば体に障害のあるものの精神的苦痛が倍加し、柳さん側が差し止めで被る不利益を上回る不利益が生じ、事前に差し止める必要性がきわめて大きく、賠償金で済ますことはできないとして、差し止めを認めた。プライバシー侵害を理由に文芸小説の出版差し止めを戦後初めて認め、一三〇万円の慰謝料支払いを命じ、柳さん側の控訴を棄却した。女性側は「心をうち砕かれた弱い者の苦しみ、痛みに人間的に共感した暖かみのある判決だ」と評価。出版元(新潮社)は二十八日に上告。柳さんは、判決が「現実に表現を求める場合は小説は現実と切断しなければないない」としたことについて、「法の側が出す言葉として危険。一審よりも、表現の自由にかなり介入し、理解にはなばだ欠けて、私小説が書けなくなる恐れが強まり、到底認められない」として、三月一日、最高裁に上告した。
◎二月二十一日
名古屋地裁は、名古屋の都通団地(都市基盤整備公団)に住む無職の高齢者夫婦宅を家賃滞納のため退去を求めて強制執行に訪れたが、高齢者夫婦は死亡していて、死後約一カ月たっていた。昨年五月に入居以来、月約八万二〇〇〇円の家賃を滞納。電気とガスは昨年十一月から、水道は今年一月上旬から止められていた。公団が退去を求めて提訴し、裁判所が認め強制執行に入った。夫妻は受給年齢に達していたにもかかわらず、年金を受け取っていなかった。妻は心臓病なとで障害者一級の認定を受けていた。県在宅重度障害者手当を受け取ることができたが、昨年六月に「手当はいらない」と申し出て、受け取りを拒否していた。冷蔵庫には食料がなかったため、餓死していたことがわかった。
▼二月二十一日
米オレゴン州健康局は、米国で唯一積極的「安楽死」(患者の希望に基づき医師が薬剤を投与して死に至らせる)を認めているが、同州健康局は、一九九七年に合法化して三年間で、九六人が「安楽死」を希望したことを発表した。一九九八年は二四人、一九九九年は三三人、昨年は二七人が薬剤投与により死亡した。昨年の二七人のうち男性は一二人、女性は一五人で、平均年齢は六九歳、二一人が末期がん患者だった。
▼二月二十二日
厚生労働省の「脳死下での臓器提供事例にかかわる検証会議」の座長は、愛知県の藤田保険衛生大学で昨年六月に行われた臓器移植法に基づく八例目の「脳死」判定で、同大の判定医が同省のマニュアルで望ましいとされる血中の酸素濃度を守らずに無呼吸テストを行い、「脳死」状態の女性が一時的に低酸素血症に陥り、血圧が低下するなど、「脳死」判定の安全性が十分確保されていなかったことを明らかにした。同大の担当医は「望ましい値は知っていたが、心電図など他のデータから全身状態は良いと判断して判定を続けた」としている。女性は最終的に、法的に「脳死」と判定されたが、医学的な理由で臓器はすべて提供されなかった。検証会議は「低酸素血症による影響ではない」としている。
◎二月二十六日
北九州市教育委員会は、一九九七年、授業中に教室内で知的障害のある小四の女児を全裸にして床に寝かせていたとして、市内の養護学校の男性教諭を懲戒免職処分にした。一九九九年には中二の女子生徒を教室で全裸にして立たせていた。男性教諭は事実を否定しているという。
◎二月二十七日
神戸地裁は、甲山事件(一九七四年三月に兵庫県西宮市知的障害児施設・甲山学園で園児が水死体見つかった)で殺人罪に問われ、一九九九年十月に無罪が確定した元保母の山田悦子さんと、偽証罪に問われて無罪が確定した元園長の荒木潔さんに対する裁判費用と勾留などの補償額を決定した。山田さんに対しては「旅費や報酬を補償する弁護人を延べ一五人に限るのが相当」とし、保償金額を二〇三三万円と算定。刑事補償は勾留された計四八日間に刑事補償法で規定された一日当たり一万二五〇〇円を乗じた六〇万円と決めた。荒木さんにも同様の算定方法で、費用補償を約五八〇万円、勾留二五日で三〇万円とした。二一年に及ぶ長期裁判だったため、算出に一年以上がかかった。弁護団は、逮捕されて無罪が確定するまでにかかった二五年間についても配慮すべきであり、多いときで二三九人の弁護士がかかわったので範囲を広げてほしかったと話している。
◎二月二十八日
大阪地裁堺支部は、クリーニング工場で働いていた知的障害のある米澤千里さんが、一九九六年七月にロール式のプレス機で衣類の加工作業中、右腕をロールに巻き込まれ、肩から先を切断したのは、会社側が安全装置を切ったまま作業させたのが原因として、会社と修理業者などを相手取り慰謝料など約一億円の損害賠償を求めていた訴訟で、会社側の責任について「障害者雇用で税法上の優遇措置や障害者助成金給付も受けており、障害者の作業上の安全に一層判断すべきだ」と指摘、修理業者には「機械を障害者らが扱う可能性が高いことを知っていたと言え、安全への重い注意義務があった」と判断し、会社側と修理業者に四三七六万円の支払いを命じた。
▼三月二日
厚生労働省は、精神病院への立ち入り検査について、各病院の不正を行政側が見抜けなかったケースが増えているため、問題のある病院については、これまでの原則の「予告」を変更し、予告なしの「抜き打ち」検査を積極的に進める方針を固め、各都道府県に通知。「法律上適正を欠く疑いのある精神病院に対しては、予告なしに実施指導・立ち入り検査を実施するなど指導監督の徹底」を求めた。
▼三月二日
東日本のハンセン病療養所の入所者や退所者計十四人は、「らい予防法」(一九九六年廃止)による強制隔離政策で人権侵害を受けたとして、一人当たり一億一五〇〇万円の損害賠償と謝罪広告を求めて東京地裁に提訴した。第七次提訴で、東京地裁の原告は一二六人。
◎三月二日
埼玉県は、精神・内科病院「朝倉病院」で内視鏡検査や中心静脈栄養療法(IVH)のほか、必要のない患者に対し血液製剤の投与もしていたことを同県議会で明らかにした。国と県が入院患者のうち約三〇人にについて一九九八年から二〇〇〇年のカルテなどを調べたところ、同病院ではほとんど全員に対し、実際にはやっていない内視鏡検査の一回から数回分の診療報酬を不正請求。また、ほとんど全員に必要のない血液製剤の投与を行い、不正請求をしていた。長期入院の患者の場合、投与期間は継続的に何カ月にも及んでいたことがわかった。
◎三月八日
大阪府堺市教育委員会は、一九九六年夏に発生した病原性大腸菌O157の集団食中毒で、脳に重度の後遺障害を負った市立中学校三年の女子生徒を特例措置により、通常の定員枠とは別の枠を設けた私立商業高校に合格させた。「進学の道を閉ざした責任は市にあり、特例措置を設けてでも高校教育を受ける機会を提供するべきだと考えた」としている。高校ではほかの生徒と同様に指導、教育するが、別に専任教諭一人を配置し、学科や体調に応じて個別指導もする方針。
◎三月九日
山形地検は、酒田市の心身障害者作業所「つくしんぼ」の元所長と元指導員の両容疑者を、利用者の知的障害を持つ女性に売春させたとして、売春防止法違反の罪で山形地裁に起訴した。売春防止法違反の罪で逮捕されたが、不起訴(建議不十分)になり、不起訴処分後の昨年七月、酒田検察審査会が「不起訴不当」を議決し、同地検が再捜査していた。売春しなければ食事を与えないと脅し、売春で得た現金六万円を受け取っている容疑が固まったとしている。
◎三月九日
福岡県八幡東署は、下半身マヒの重度障害の北九州市内の男性が、職業訓練校で知り合った足に軽い障害がある男から、恐喝されていたことがわかったとして再逮捕した。一九九五年頃から「車いすを取り上げるぞ」などとおどかされ、障害基礎年金などを取り上げられた上、一九九八年五月に自宅を売却、一九九九年六月に自己破産にまで追い込まれ、自宅売却後同市内の団地に移り住んでいたが、男は約一年後に捜し当て、恐喝を繰り返していたという。男は昨年五月、金融会社で男性の乗用車を担保に金を借りさせ、十四万円を脅し取ったなどとして今年一月、恐喝容疑で逮捕、起訴されていた。
◎三月十三日
最高裁第三小法廷は、大阪に住む全盲のマッサージ師塩見日出さんが、国民年金法の改正で国籍要件が撤廃されたのに、韓国籍だったことを理由に、障害福祉年金を支給しないのは法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、国を相手取り、不支給処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、「社会保障を実現する立法措置は立法府の広い裁量にゆだねられており、法改正以前にさかのぼって制度を適用させるような救済措置を講じなかったことが著しい合理性を欠き、裁量を乱用しているとまではいえない」「特別の救済措置を取るかどうかは立法の裁量の範囲内」として上告を棄却する判決を出した。大阪府に支給申請した際、同法の付則に「一九五九年の法律施行当時、日本国籍がなかった者には支給しない」との規定で認められなかった。第一・二審とも「付則の規定は立法府の合理的裁量に基づくもので合憲」として棄却している。
▼三月十三日
警視庁玉川署は、身体障害者用の「駐車禁止除外指定車」を偽造して違反駐車をしていたとして、自動車販売会社社員を有印公文書偽造、同行使容疑で書類送検した。障害者を家族に持つ顧客からもらったものを使用、有効期限が切れていたため、日付をワープロで書き換えていたとしている。
▼三月十七日
日本政府北朝鮮被爆者調査団は、広島と長崎で被爆した北朝鮮在住者の実態を把握するために北朝鮮を訪問していたが、北朝鮮側が示した被爆者は一三五三人(うち生存者九二八人)で、日本政府に補償を求めたことを明らかにした。被爆者は、「反核平和のための朝鮮被爆者協会」が昨年末までに認定したもので、さらに増える可能性もあるという。同行した日本の専門医二人が症状の聞き取りをした。政府は、調査結果を検討して今後の対応を決定する方針。
◎三月二十二日〜二十三日
東京地裁は、式典で工校庭に掲揚された日の丸を下ろし、自分のロッカーに入れたため戒告処分を受けた都立立川養護学校教諭が、都に処分の取り消しと二〇〇万円の慰謝料を求めた訴訟で、「校長の日の丸掲揚は適法な職務行為で、処分は掲揚への協力を強制するものとはいえない」「実力で国旗掲揚を防害した行為を考慮すると、処分は社会観念上著しく妥当性を欠いているとは言えない」として請求を棄却した。二十三日、東京都品川区の教育長は、卒業式の「国家斉唱」で起立しない来賓は「招待しない」との方針を表明。野党議員は「地域の人を思想信条で差別し、君が代を強制するものだ」として反発している。
▼三月二十六日
毎日新聞社は、全国一三の国立ハンセン病
療養所の入所者自治会と二つの民間専門施設の計一五カ所に「らい予防法」の廃止(一九九六年)後の五年間に療養所を出て社会生活を送っている人について実施した調査結果を発表。入所者総数四四四六人のうち、九施設で四二人と一%未満であることがわかった。回答がなかった一施設を除いて五施設は復帰者がいなかった。社会復帰支援制度を利用した退所者は一八人、ほかは長期外泊などで法廃止後帰園しないで国の支援を受けていないことがわかった。
◎三月二十六日
社会保険庁東京社会保険事務局と東京都は、東京都町田市の精神病院「上妻病院」が診療時間や患者数などを水増しし、診療報酬(精神科作業療法)を不正に得ていた疑いが強まったことで、立ち入り調査に入った。今月八日から、病院の指示で職員が診療報酬の明細書を突き合わせ看護記録の書き換えをしていた。一九九七年にも看護職員の水増しで一億四〇〇〇万円以上の返還を求められているが、過去四年間で数億円になる見込み。昨年三月には死亡した女性患者の改印届を職員が勝手に作成し、患者の預金を下ろそうとしたことが発覚し、東京都衛生局が医療監視に入っている。
◎三月二十六日〜二十八日
朝日新聞社は、東京都青梅市の精神病院「青梅成木台病院」で、三月上旬から看護記録が改ざんされていたことを掴んだ。職員数十人が参加、弁当も支給し、病棟の廊下側の窓には目隠し、病棟を転々と移しながら作業を続け、診療明細書(レセプト)と看護記録、医師の処方せん、処置施行表などを突き合わせ、矛盾が出ると砂消しゴムや修正液で消し書き直していた。診療報酬の一部を不正に請求していたため、行政の監査で発覚しないよう関係書類のつじつまを合わせるのが目的と見られる。二十八日、東京都衛生局は、医療法に基づく緊急立ち入り検査を行った。
▼三月二十八日
東京地裁は、薬害エイズ事件「帝京大ルート」で、エイズウイルス(HIV)の混入した非加熱濃縮加熱製剤の投与で三〇代の男性患者を死亡させた業務上過失致死罪に問われた安部英帝京大元副学長に対し、「エイズによる血友病患者の死亡という結果発生の予見可能性はあつたが、その程度は低く、過失があったとまでは言えない」「HIVの性質やその抗体陽性の意味については、不明な点が多々存在しており、明確な認識が浸透していたとは言えない」「当時、クリオ製剤を用いる治療には支障があり、大多数の専門医が非加熱濃縮加熱製剤を使っていた」「結果回避義務違反があったとは結論できず、過失があったとは言えない」として、当時の水準での妥当性を認め、無罪判決を出した。また、被告の刑事責任を認めた関係者の証言については、「自らの責任追及を緩和するために検察官に迎合したのではないかという疑いを払拭しがたいなど問題があり、信用性に欠ける」とした。HIV訴訟弁護団は「判決は被害者にとって受け入れがたいものだ。何人の患者が死ねば安全な製剤が供給されるようになるのか。こうした医療に甘い判断が下される限り、日本の薬害問題はなかなか解決されない」と訴えた。
▼三月二十八日
東京地裁は、四歳時にDRF三種混合の予防接種を受けた後に重度障害を負ったとして、福島県の女性と両親が国に一億五〇〇〇万円の損害賠償を求めた訴訟で、予防接種と障害との因果が関係を認め、接種を行った医師について「必要な余診を尽くしたとは言えない」と過失を認め、国に七八〇〇万円の支払を命じた。
▼三月二十九日
那覇地裁は、県立那覇病院で一九九六年に心臓停止後にじん臓を提供した男性の遺族が、「同病院が『脳死』状態になったと説明し、家族の反対を無視して治療を緩め、心臓死を早めた」として、医師さんにんを殺人容疑で告訴した件で、「男性は心停止前に『脳死』状態で人工呼吸器の換気量を減らしたのは、消極的治療行為として正当である可能性が高い。死との因果関係は不明で立証は困難」として、嫌疑不十分で不起訴処分にした。
◎三月二十九日
埼玉県は、精神病院「朝倉病院」に対して二度にわたって改善命令を出してきたが、「見直したが問題なし」として無視私的たため、入院形態の変更を強く求める三回目の改善命令を出すと共に、精神保健福祉法に基づいて入院制限命令(三カ月間新規入院患者の受け入れを制限する)を出した。全国で初めてと言われている。
▼四月一日
埼玉県志木市は、障害は人の個性の一つに過ぎないのに、「害」は「公害」「被害」などに使われイメージが悪いとして、「障害者」という表記を「障がい者」と改めた。一日づけの広報紙から使用する。また、規則類もすべて改めた。市役所内と市民向けとを問わず、文書はすべて「障がい者」に統一する。今後、さらに適切な言葉を考えていく方針。
▼四月二日
同志社大学は、介助犬とともに車いすで生活している岐阜県出身の館林千賀子さんの入学を、介助犬の付添いとともに認めたが、館林さんは介助犬「アトム」とともに入学式に出席した。
◎四月二日
神戸地方法務局は、伊丹市公園緑化協会の
非常勤嘱託職員で知的障害のある男性が、職場の男性臨時職員に下腹部を触られるセクシュアル・ハラスメントをくりかえし受けていたとして、男性からの人権救済の申し立てを受けて、セクハラによる人権侵害行為と認定し、同様の行為を繰り返さないよう「説示」した。一九九九年春から昨春にかけて何回も下腹部を触られ、これによるストレスで声が出なくなることもあったという。母親から調査を求められた市が当初、男性からの事情を聞かぬまま、事実認定で否定と回答していたため、昨年四月に人権救済を申し立てていた。
◎四月四日
埼玉県警寄居署は、精神障害者社会復帰施設「社会福祉コロニーきぼうの園」(一九七〇年四月に開設し、精神障害者一八人が入所している個人経営の入所施設)から出火、全焼し、焼け跡から女性一人が焼死体で見つかったと発表。
▼四月五日
ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会は、超党派1〇1人の議員により正式総会を開き発足した。会長は江田五月衆院議員。「らい予防法」が廃止された一九九六年以降もハンセン病の元患者への偏見の解消や国の社会復帰支援策が進んでいないため、全国の元患者らが起こしている国家賠償訴訟を側面的に支援し、訴訟に加わっていない元患者も含めたハンセン病問題の全面解決を目指す目的で結成した。
▼四月五日
最高裁第一小法廷は、日本軍の軍属として第二次世界大戦で重傷を負った在日韓国人とその遺族らが、厚相(当時)を相手に戦傷病者遺族等援護法に基づく障害年金の支給を求めた訴訟の上告審の判決で、「日本からも韓国からも補償を受けられず、日本人の軍人・軍属との間に差別状況が生じていたことは否めない」「法の下の平等を定めた憲法に違反しないかどうかが検討されなければならない」と指摘。その上で、「外交交渉はより解決が予定されており、十分な合理的根拠があった」「立法府の裁量を著しく逸脱したものとまでいうことはできない」として、上告を棄却し、原告敗訴の二審(東京高裁)判決が確定した。二審判決が「日本人に準じて処理する方が適切」とした点については、補足意見で、「日本人との間で生じてきた差別解消については十分とは評価しがたい。人道的見地に立脚して明確な法的解釈が望まれる」と述べた。
◎四月五日
神奈川県警鶴見署は、横浜市内の地域作業所の元所長を、通所者数を水増しするなどして横浜市から財団法人横浜市在宅障害者援護協会を通して交付された助成金約五〇万円を騙し取った疑いで逮捕した。また、一九九七年四月から一年間、障害者グループホームで働いていた時、架空の領収書を作って実際には働いていないアルバイトに謝礼を払ったように装って、交付された助成金を着服した疑いも持たれている。同協会は、約七五〇万円を着服した疑いがあるとして、業務上横領の疑いで県警に告発している。
▼四月六日
全国の国立ハンセン病療養所の医師グループは、C型肝炎ウイルスに感染した患者の実態調査結果を発表。一九九八年から一九九九年に入所者を対象に調査した結果、抗体検査で陽性反応が出た患者は、「栗生楽泉園」(群馬)で六〇・五%、「多摩全生園」(東京)で二三・一%。過去に所内で使い回された注射針の消毒不足などが原因と見られ、閉ざされた状況の中で活動が行われことが感染を蔓延させた可能性が高いとしている。
◎四月九日
名古屋家裁は、名古屋市内で今年2月、寝たきりの双子の兄を刺殺し、殺人の疑いで家裁送致された通信高校生の一七歳の少年の審判を開き、「自殺未遂から寝たきり状態になった兄の将来を悲観し、親愛の状を抱いていた兄の意思を遂げようとしたもの」と判断したが、動機や結果の重大性から少年の処遇は「刑事処分が相当」として検察官送致(逆送)とする処分を決定した。
▼四月十日
東京地検は、薬害エイズ事件で安部英元帝京大学副学長に対する判決に対し、事実誤認があるとして東京高裁に控訴した。事実誤認の理由として、予見可能性を不当に低く評価している。代替となるクリオ製剤の有用性を過小評価し、当時の安部英元帝京大学副学長の言動、患者の症状での検討が不十分の三点をあげ、専門医としての過失、医者の患者に対するあるべき姿を見失っている判決であると批判した。
▼四月十日
オランダ上院は、世界で初めて「安楽死」を合法化する法案を賛成四六、反対二八で可決・成立した。下院では昨年十一月に通過している。患者の明確な意思表示がある、耐え難い苦痛がある、治療の方法が残されていない、第三者の医師と協議する、医師の事後届け出を義務付けるなどの要件を満たせば「安楽死」を認め、かかわった医師らを殺人や自殺ほう助などの刑事訴追の対象にしないことを法で定めるもので、一二歳以上を対象とし、一六歳未満の場合は親権者の同意を必要とする。
▼四月十二日〜十三日
全国ハンセン病療養所入所協議会は、「ハンセン病国賠訴訟」について、積極的に参加する方針を決めた。十三日、熊本地裁は、「ハンセン病国賠訴訟」で、新たに四療養所の入所・退所者とその遺族ら一七人が、一人当たり約一億五〇〇〇万円の賠償を求めて追加提訴したことを受理した。原告は五六二人(東京、岡山を加えると七四〇人)。年齢は四一歳から八三歳で、平均年齢六三歳、平均在園期間は約二七年、最長は五八年。
▼四月十三日
最高裁第三小法廷は、元日本軍属として戦傷を負いながら戦傷者戦没者遺族等援護法による障害年金支給を受けられなかった在日韓国人の姜富中さんと鄭商根さん(訴訟中に死亡)が、国を相手に不支給処分取り消しを求めた訴訟で、「戦争犠牲に対する補償のあり方は立法府の判断に委ねられている。在日韓国人が補償の対象とならないことが、立法府の裁量を逸脱した違憲とまではいえない」として、二審判決を支持、上告を棄却した。姜富中さんは「六十三年間、日本の飯をくってきたが、こんなに差別されていることが裁判を通して初めてわかった。まさか日本がこんなことをするとは思わなかった。震えが止まらない」と記者会見で語った。
▼四月十三日
徳島地裁は、徳島県立中央病院で一九九九年に診療を受けた市内の男児(二歳)の脳に障害が残ったのは医師の診断ミスだとして両親が県を相手に約二億九九〇〇万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしたことについて受理した。レントゲンやコンピューター断層撮影(CT)検査をした担当医は翌日「何の異状も認められない」と説明したが、状態が悪化し、別の病院で脳の出血などが判明。両親が問い合わせた結果、脳内出血と骨折があったことがわかった。男児は寝たきりとなり障害児施設に入所している。
▼四月十四日〜十七日
自民党の中川昭一衆議院は、新しい歴史教科書をつくる会が中心となって執筆した歴史教科書を批判している報道機関を「ヤコブ病で脳がスボンジ状態になっている。思考が停止している」と発言した件で、薬害「クロイツフェルト・ヤコブ病」に感染した「患者」として、国などの責任を問う損害賠償請求訴訟を起こしている患者・家族ら原告団は、「発言は患者・家族・遺族の尊厳を踏みにじり、侮蔑するもの」として発言の撤回と謝罪を求める抗議文を郵送。十七日、同議員は「不適切な発言を撤回させていただく。患者の皆様、ご家族、ご遺族に心からおわび申し上げる」とし、同訴訟の弁護士に謝罪、弁護士は原告に直接謝罪するよう要求した。
▼四月十九日
JR西日本は、聴覚障害者の生活を手助けする「聴導犬」の電車内同伴を国内の大手鉄道会社で初めて認め、大阪市阿倍野区の主婦が同日午後「聴導犬」とともに、JR阪和線の電車で乗車した。二階の乗車試験で、乗客を威嚇しないことなどを確認、聴覚障害者の日常生活に不可欠な存在として乗車を認めた。
▼四月十九日
東京都は、都が補助金を出している心身障害者入所施設(都外施設を含む)を対象にした二〇〇〇年度のサービス評価(七三の調査項目についてAからDの四ランクで自己評価する)結果を発表。A(B水準を満たした上に独自の工夫をしている)水準が一四・五%、B(最低基準以上の望ましいサービス水準)は四六・六%、C(最低基準以上の望ましいサービス水準)は三四・九%。D(改革が必要な水準)は五施設(三・九%)で前年度の一六施設から一一施設減った。施設の種類では、知的障害者施設が四カ所、身体障害者施設が一カ所。つまみ食いした利用者の尻を蹴ったり、牛乳ビンを投げつけた利用者の頬や頭を平手打ちしたケースなどがあげられている。都は、この五施設に是正指導をした。「利用者に対する職員の態度」では三三施設がDランクで、「対等な関係にを位置付けているが、高圧的な態度を取ってしまう」「利用者をちゃん付けで呼んでしまう」などが上げられている。「施設オンブズマン」の評価は、全体的に自己評価よりも甘くなった。Aは一七・一%、Bは五〇・一%、Cは二九・九%、Dは二・九%。第三者評価より施設の自己採点が甘い施設は一五%あった。
▼四月二十日
厚生労働省は、埼玉県の精神病院「朝倉病院」を診療報酬不正疑惑(常習性があり悪質として)で、保険医療機関の指定を取り消す方針を固めた。カラ検査でカルテやレセプト(診療報酬請求明細書)に実施したように記載して不正に受給していた。
▼四月二十三日
神奈川件教育委員会は、県立学校(高校、盲、ろう、養護学校)が作る調査書(内申書)と指導要録の開示請求について、今年度以降に記載される分は、特記事項なども含め原則的に全面開示にすることを決めた。指導上参考となる事項や所見欄は原則として開示することで教師と生徒に一層の信頼関係が生まれるとして、全面開示することになった。これまで指導現場での混乱を理由に不開示としてきた。
◎四月二十四日
東京都福祉局は、知的障害者施設「七生福祉園」で入所していた男性が二階非常口から転落し、死亡したと発表。男性は柵を乗り越えて飛び降りたと見られている。詳しい状況について同園に報告を求めている。
◎四月二十五日
埼玉県と埼玉県社会保険事務局は、精神病院「朝倉病院」の診療報酬不正受給疑惑を調べていたが、今年一月に合同監査に入り、帳簿などの整理・分析を進めてきたが、実際に行っていないのに報酬だけを請求する「カラ検査」が繰り返えされていたり、中心静脈栄養(IVH)を投与した患者に通常の食事も提供し、写真撮影を伴う検査をしたことになっているのに撮影したフイルムが保存されていなかったなど、十項目に及ぶ不正・不当請求があったとして、保険医療機関と生活保護指定医療機関の二つの指定取り消しを前提に病院側の弁明を聞く「聴聞」の手続きに入った。不正請求の総額は追って確定し返還を求めていく方針。
▼四月二十六日
横浜地裁は、骨盤位(逆子)だった胎児を正常な位置に戻す処置を誤ったため、重い脳障害になったとして、両親が助産婦を相手取った訴訟の判決を出し、「胎盤早期はく離は外回転術で生じたもので、助産婦はその危険性について十分な医学的知識がなかった」ため、「母親の容態が急変した時点ですぐに病院での診療を受けるよう指示すべきだった」として約一億二〇〇〇万円の支払いを命じた。
▼四月二十七日
大阪高裁は、「水俣病関西訴訟」(熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸から関西に移り住んだ水俣病未認定患者五八人とその家族が国と熊本県、チッソを相手に損害賠償を求めている)の控訴審判決を出した。国と熊本県の法的責任については、「一九五九年十一月にはチッソ水俣工場が、原因物質のある種の有機水銀化合物を排出していることが認識できたはずで、水質二法(当時の水質保全法と工場排水規制法)などによる工場排水の規制権限を行使しなかった違法がある」「国が水俣病に対する認識と判断を誤り、対応が遅れたことは行政裁量の範囲を逸脱したもの」と指摘し、これを否定した一審・大阪地裁判決を逆転、原告の勝訴となった。水俣病の被害状況については、「死亡者を含む多数の患者が発生していて、被害拡大の防止には一刻の猶予も許されない非常事態ともいうべき危機だった」と判断。水俣病の現行の判断基準については、「同一食生活を送っていた家族に認定患者がいるなど、一定の要件があれば、感覚障害だけで水俣病(メチル水銀中毒患者)と認められる」として、国側の「判断条件を満たさなければ水俣病患者とは言えない」とする主張を退けた。国と熊本県には原告患者四五人対し、チッソには五一人に対し賠償責任を認め、賠償総額三億一九五〇万円(国と熊本県の責任はチッソの四分の一の計八八〇〇万円)、一人当り四五〇万円から八五〇万円の筈因障を命じた。七人については除斥期間が満了していると判断し賠償から除外した。控訴以来一九年間がすぎた。環境省の環境保健部長は「現在の認定基準を見直す考えがない」ことを明らかにした。
▼四月二十七日
最高裁第二小法廷は、東京都の日赤医療センターで双子の一人が死亡し、一人が重度の脳障害を負ったため、本人と両親が日本赤十字社を相手取り総額約一億三〇〇〇万円の損害賠償を求めた訴訟の上告受理の申し立てを受けた。二審・東京高裁が「必要な検査は行われていた」として、一審・東京地裁判決(担当者が適切な検査を怠ったとして約九九〇〇万円の支払を命じた)を取り消していたため原告側が上告した。
◎五月八日〜二十九日
警視庁小松川署は、今年二月、耳と言葉の不自由な女性(六四歳))が殺害された事件で、野宿生活をしていた無職の少年を殺人の疑いで逮捕した。金を出せと脅したが、女性は耳が不自由だったため何の反応もしなかったため、刺したと供述しているという。二十九日、東京地検は、「刑事処分相当」の意見をつけて強盗殺人罪などで東京家裁に送致した。
◎五月九日〜十日
埼玉県は、鴻巣市にある知的障害者更生施設「啓明学園」が入所者から多額の寄付(入所者全四九人から計一億五〇〇〇万円)を要求していたことが分かったため、多額の寄付集めは措置費制度を損なうとして社会福祉法に基づき文書で禁じる指導をしてきているが、さらに行政処分を検討していることを明らかにした。寄付金の割り当ては一人当たり三〇万円から最高四五〇万円に上る。十日、入所者の多くが四五〇万円の寄付を求められ、残金を障害基礎年金から分割で支払うよう約束させられていたことが内部資料でわかった。四九人のうち二三人が四五〇万円、三人が四〇〇万円を既に入金、一人は一〇〇万円を支払った。残る二二人は約三〇万円から三〇〇万円を入金、残金として四五〇万円との差額が記されていた。一七人が支払に応じ、うち八人が障害基礎年金から支払うことを約束。分割払いなども記されていた。
◎五月九日
神奈川県警港北署は、私立昭和幼稚園の園児が保母らと散歩中に、近くの知的障害者施設の職員と散歩していた男性通所者に七メートル下の線路脇の砂利に落されたとして、殺人未遂容疑の現行犯で逮捕した。
◎五月九日
大阪市(福祉事務所)は、生活保護を受けて西成区のアパートで一緒に暮らしている女性三人が、冷蔵庫を購入しようとして、家具・什器費(生活必需品をまかなうもので上限四万二〇〇〇円)により、三万三〇〇〇円の冷蔵庫代を支給申請したところ、「大都市にはスーパーもあり、食品はそのつど買えば長期間保管しなくても済む。冷蔵庫は必ずしも最低限度の生活に必要不可欠とは言えず、毎月の経常費からねん出してほしい」として却下した。生活必需品の基準は各自治体が地域の事情に合わせて判断している。三人は堺市の公園で七年半の路上生活をしていた。
▼五月十一日
熊本地裁は、「らい予防法」(一九九六年廃止)による国立ハンセン病療養所への強制隔離政策で人権侵害を受けたとして、入所者ら元患者が一人当たり一億一五〇〇万円を求めた「ハンセン病国家賠償訴訟」で、全国に先駆けて初の判決を出した。一九九八年七月、九州の二療養所の入所者一三人から始まり、同地裁には原告五八九人(一五次)が提訴していた。判決では、「遅くとも一九六〇年以降、隔離の必要性は失われ、過度に人権を制限した予防法の隔離規定の違憲性は明らか」として国の責任を認め、原告側全員に総額一八億二三八〇万円の支払いを命じた。判決の他の骨子は、厚生省は同年以降、一九九六年の新法(らい予防法)廃止まで隔離政策変更を怠り、違憲性があった。国会は遅くとも一九六五年以降、新法の隔離規定を廃止しなかった立法上の不作為があり、違憲性があった。原告一二七人の慰謝料額は一人当たり一四〇〇万円から八〇〇万円の四段階。認容総額は一八億二三八〇万円で、除斥期間の起算点は一九九六年の新法廃止時であり、適用はないとした。
◎五月十一日〜三十一日
警視庁浅草署は、女子短大生を殺害した容疑で、北海道札幌市出身の二九歳の男性を逮捕した。三十一日、東京地検は簡易鑑定を実施し、刑事責任能力はあると判断し、殺人と銃刀法違反の罪で起訴した。弁護団は記者会見で「容疑者は軽度の知的障害者で、札幌市内の高等養護学校を卒業。七年前に函館市内で女性を襲う事件を起こしている。この事件の裁判で、精神鑑定が行われ、刑事責任能力はあると判断されている」とし、事件の背景には「事件の一週間前から金がなく残飯を食べ、路上生活をしていたため、心身耗弱状態だった。知的障害のための差別や貧しさがある」と発表した。
▼五月十一日
国と熊本県は、大阪高裁の「水俣病関西訴訟」判決(患者側の逆転勝訴)で、国と県の責任が認められたことを不服として最高裁に上告した。理由については、環境相は「政府としてはできる限りの努力をしてきた。当時の水質二法に基づく権限を行使しなかったことについて賠償責任があるという判決は、根拠として示されている法律の解釈と適用に納得ができないものがある」「これまでの対策が依拠してきた医学界の定説とはまったく異なる」と述べ、熊本県知事は「行政責任と病像判断について判決を受け入れることは難しい」として、「国は認定基準の見直しを変えるべきではない」と述べた。チッソは、上告しない方針を明らかにし、判決を受け入れた。原告のうち八人は、一審・大阪地裁の認容額を減額されたり、一審の請求が棄却されたりしたため、賠償額を一審判決の額に戻すよう求め、チッソを相手に上告した。
◎五月十五日〜十六日
埼玉県は、鴻巣市にある知的障害者更生施設「啓明学園」が入所者から寄付金を集めていた問題で、入所者五〇人の保護者からアンケートをとった結果を発表。一五人が「寄付を要請された」としていたため、「寄付金の強要はあった」と見て、関係者から事情を聞いたうえで、社会福祉法に基づく寄付金の返還や施設役員らの解職勧告などについても対応を検討していくことになった。十六日、寄付金の変換要求に応じる趣旨の文書を保護者に郵送していることがわかった。「啓明学園を支援する親の会」会員だけに、保護者会役員と理事長が協議し郵送していた。
◎五月二十一日
さいたま地裁は、多数の障害者を雇用したまま倒産した入間市の機械部品製造会社「中村製作所」を相手取り、埼玉県中小企業振興公社が同社とクリーニング機器業者にリースした工作機械の購入代金など総額二七八六万円の損害賠償を求めた訴訟で、リースを装って、差額代金を騙しとったとして、二七八六万円の支払いを命じる判決を出した。同社はクリーニング機器業者から二六四〇万円で購入したことにして、契約を結んだ別の業者から一〇五〇万円で購入して差額を得ていた。
◎五月二十二日〜二十四日
滋賀県警八日市署は、知的障害者更生施設あかね寮(社会福祉法人蒲生野会)の職員が、入寮している女性がほかの入寮者の食事をつまみ食いしたことに腹を立て、暴行し内臓破裂の重傷を負わせた疑いで逮捕した。滋賀県は事実関係を調べて指導について検討すると発表。二十四日、滋賀県は県内七九の施設長を集め、再発防止策について話し合った。
▼五月二十三日〜二十四日
小泉首相は、国が敗訴したハンセン病訴訟の熊本地裁判決を受け、原告団の代表九人と面会し、役四〇分話し合い、その後、関係閣僚と与党三党党幹部を官邸に呼び協議。夕方、「判決を重く受けとめ、極めて異例だが、問題点を明記した政府声明を出して控訴を行なわないことを決定した」と発表。官房長官は「控訴断念に関する要旨」を発表した。要旨では、「患者・元患者の苦痛と苦難に対し深く反省し、おわびする」と、政府として、始めて公式に謝罪した。しかし、「判決は重大な法律上の問題点があり、本来なら控訴手続きを取らざるを得ない」とし、「国会の不作為について法的責任を広く認めたことは、司法が国会議員の活動を過度に制約する。民法で二〇年以上前の権利は消滅すると定められているのに、四〇年間の損害賠償を認めている」の二点について、「重大な法律上の問題点」と指摘、これを政府声明で問題提起する方針を示した。患者・元患者は高齢であり、早期に全面的な解決を図ることが必要。全国の患者・元患者を対象に新たな損出補償を立法措置により構ずる。年金の創設、ハンセン病資料館の充実、啓発事業の検討を進める。患者・元患者の抱えるさまざまな問題を政府と協議する場を設けるという内容だった。二十四日、控訴を断念したことが臨時閣議で了承された。
▼五月二十四日
東京地裁は、小学六年生の時にインフルエンザの予防接種を受けた後、重度の障害を負った埼玉県の助成と両親が国を相手に約一億六六〇〇万円の損害賠償を求めた訴訟で、予防接種と障害の因果関係を認め、「適切な問診を尽くさなかった」と担当医の過失を認定し、国に一億一七〇〇万円の支払いを命じる判決を出した。
▼五月二十五日
政府は、政府声明と患者・元患者らに謝罪したうえでハンセン病問題の早期・全面的解決を約束した救済策を示した首相談話を閣議決定した。政府声明は判決の法律上の問題点を指摘した控訴断念に関する要旨とほぼ一緒のもので、そのうえ、一般社会に偏見、差別が存在したことも指摘し、国民一人ひとりがこの問題を真剣に受けとめ、過去の歴史に目を向けて将来に向けて努力していくことが必要と呼かける部分を加えている。厚生労働相は、患者・元患者との協議機関を来週にも設置する見通しであることを示した。今国会中に議員立法で補償金などの予算措置が取られる見通しとなった。法務省は判決の論理に納得しないとして、「原告ごとに事情は様々なのに、療養所に入所していたことと差別、偏見を受ける地位にあったことの損害を一律に認定しており、損害額算定の根拠も不明確だ」と主張した。
▼五月二十六日
ハンセン病訴訟の原告団と弁護団は、判決の確定を受けて、「控訴断念は原告らの勇気に満ちた運動と国民世論の勝利であり、ハンセン病政策の被害者にとって『人間回復』のための歴史的な第一歩となった」とする声明を発表。「全面解決」に向け、原告らの移行を十分に踏まえて対処することを求め、国の真摯な謝罪、謝罪広告などによる名誉回復と損害賠償、療養所での生活の補償や退所者支援などの恒久対策、真相究明と再発防止、継続協議の場の設定を要望。政府声明については「国会議員の立法不作為の責任を認めた判決について、行政が声明を出すのはおかしい」「声明は国の法的責任にいささかの影響も与えない」と批判した。
◎五月二十六日
知的障害者授産施設「奈良県立大淀授産所」は、奈良県から「社会福祉法人綜合施設美吉野園」に委託運営された、入所三〇人、通所四〇人の施設だが、昨年五月まで入所していた男性(重度の知的障害で身体障害者手帳二級・三〇歳)が、入所中の昨年四月に胸にアイロンを当てられ、やけどさせられるなどの虐待を受け、ほかにも背中や頭部に多数の傷跡があったとして、男性と母親は同法人を相手に一五〇〇万円の損害賠償を求めて奈良地裁に近く提訴すると発表。理事長は虐待を否定したうえで「やけどの原因がはっきりしないというのは、監督不行き届きと考え、家族に謝ったうえ、幹部二人を降格して別の施設に異動させた」としている。
▼五月二十九日
衆院厚生労働委員会は、ハンセン病に関する集中審議を行い、厚生労働省健康局長が入所者に対する堕胎手術を「優生手術は遅くとも昭和四〇年代移行は適正に本人の同意を得て行われてきたが、それ以前はいわゆる半強制的な優生手術が行われてきた実態もあったと認識している」と初めて公式の場で認めた。隔離の必要性が失われた時期については、「隔離の必要性がなくなったのは、サルファ剤や抗生剤などを組み合わせた多剤併用療法が定着している一九八一年以降と考えている」と従来の主張を繰り返し、熊本地裁判決の一九六〇年以降を否定した。
▼五月二十九日
埼玉地方社会保険医療協議会は、診療報酬不正請求疑惑のある精神病院「朝倉病院」の保険医療機関指定の取り消しが適当と答申した。そのため、保険医療機関と生活保護法医療機関の指定について正式に取り消されることが決まった。患者は健康保険での受診ができなくなるため転院の手続き期間などを配慮して、七月十六日付で指定と朝倉院長の保険医登録が取り消される。
▼五月三〇日
東京高裁は、出産時の対応の不適切さにより重度障害が残ったとして、両親らが産婦人科医を相手取った損害賠償請求訴訟で、請求を棄却した一審・浦和地裁川越支部の判決を取り消し、医師に九四〇〇万円の支払いを命じる逆転判決を出した。また、提訴から一審判決まで約一〇年かかったこと、鑑定人探しに時間を要し控訴審で四人に鑑定を依頼するのに二年を費やしたこと、提訴してから十五年もかかっっていることなどから、「審理の遅延は主として裁判所がその責を負うべきものである。真摯に反省する」と謝罪した。
▼五月三〇日
東京地裁は、中野区立第九中学校で一九九四年に水泳部員の中学一年生が飛び込み練習でプールのそこに頭を打ち重度の障害が残ったとして、本人と両親らが一九九八年に東京都と顧問、教頭ら三教諭を相手に計約三億七〇〇〇万円の損害賠償を求めた訴訟で、「顧問教諭は生徒の安全に配慮すべき注意義務を怠った。両親も精神上の損害を受けた」として、本人に約一億六五五〇万円、両親に計約八八〇万円の支払いを命じた判決を出した。学校側の責任は全面的に認めたが、教諭個人は賠償責任を負わないと判断した。
▼六月一日
坂口厚生労働相は、省内でハンセン病国家賠償訴訟の原告・弁護団と面談し、控訴断念について「幾多の許されない歴史を反省し、心からお詫びしハンセン病問題のすべてに決着したかった」と説明、「患者の隔離を唯一の手段として人権を著しく制限してきた過去の施策を検証し、後世に伝える義務がある」として、隔離政策で人権を侵害した責任を明確に認め、国の誤りを反省し謝罪した。原告側は、全国の療養所で入所者に直接謝罪すること、新聞などでの謝罪広告で名誉回復に努めることなどを求めた。与党三党は法案の前文に「過去の偏見と差別の中で、多大な苦痛と苦難を強いられている方に対して、国として政策変更を怠ってきたことへの反省、おわびの意思を表明する」という趣旨の言葉を盛り込む方針で検討に入った。
◎六月一日
警視庁小松川署は、東京都江戸川区の会社員宅で、高校卒業前後から精神的に不安定になり、自宅に引きこもる状態が長年続いていた長男(二八歳)が首を絞められ死亡し、会社員も首をつって死んでいた件で、長男の将来を心配した無理心中ではないかと発表。家族間では筆談の会話をしていたことがわかった。
▼六月一日〜十五日
大阪地裁は、旧日本軍に徴兵され、広島で被爆した韓国原爆被害者協会の郭貴勲(クァククィフン)元会長が三年前の来日中に取得した被爆者健康手帳を帰国で失効させられ、健康管理手当の支給を打ち切られたとして国と大阪府などに手当の支給継続などを求めた訴訟で、「被爆者救済を目的とした被爆者援護法の趣旨に反する。被爆者を日本に住むか一時的に滞在するかで差別することになり、法の下の平等を定めた憲法十四条違反の恐れもある」「日本を離れると被爆者援護法の適用外とする一九七四年の局長通達は、国内在住被爆者と在外被爆者を区別する規定はなく、同援護法の解釈に反する」として、郭さんの健康手帳を有効と認め、手当の支払い分約一一六万円と今後の手当の支給を命じた。七日、「在外被爆者に援護法適用を実現させる議員懇談会」のメンバーは、厚生労働相に控訴の断念を申し入れた。しかし、十五日、政府は、「一九九四年の被爆者援護法の国会審議の過程で、国外に在住する外国人は同法の対象にしないとの趣旨が明確になっている」、「一九九九年の広島地裁の同様の裁判では国が勝訴している」などの理由で控訴した。控訴に伴って、政府が在韓国被爆者の医療支援のために韓国に設置した基金の積み増しを行う方向で検討に入った。
◎六月五日
横浜地裁川崎支部は、生後四カ月の長男を殺害した主婦を殺人罪で起訴した。精神状態が不安定だったため、同支部は責任能力の有無を判断するため鑑定留置していたが「刑事責任は問える」と判断した。
◎六月六日
千葉地裁は、社会福祉法人「香取学園」の経営する知的障害者更生施設「瑞穂寮」に入所していた女性が、入所中の十五年間に虐待を受け「車椅子」生活になるなどの後遺症が残ったとして、職員、元職員計四人と、暴行行為を放置・容認したとして同法人、監督責任・権限を怠ったとしてに千葉県を相手取り、慰謝料など計約二億円の損害賠償を求める訴えを起こしたことについて受理した。女性は昨年十一月に退所している。一九九四年に女性にたばこの火を押しつけ火傷せた事件で、職員三人が書類送検され、今年一月に罰金十万円の略式命令を受けている。
▼六月七日〜八日
衆院本会議は、「ハンセン病問題に関する決議」を全会一致で採択した。「ハンセン病患者に対する隔離政策により、多くの患者、元患者が人権上の制限、差別等により受けた苦痛と苦難に対し、深く反省し謝罪の意を表明する」と謝罪。今後の対応として「すみやかに、患者、元患者に対する名誉回復と救済等の立法措置を講ずる」とし、政府には「患者、元患者の方々の今後の生活の安定、ならびにこれまで被った苦痛と苦難に対し、早期かつ全面的な解決を図るよう万全を期す」ことを求めている。国会の責任については、「隔離政策の継続を許してきた責任を認め、このような不幸を二度と繰り返さない」とし、立法不作為責任を明確にした。しかし、与野党で立法不作為責任についての認否について見解がわかれるなど問題を残すものとなった。八日、参院本会議でも採択した。
▼六月七日
東京都中野区の福祉オンブズマンは、昨年度の苦情処理状況を区長に報告した。計十八件の苦情のうち八件について、改善を検討するよう申し入れた。身体障害者用無料福祉タクシー券の交付日に当たる四月一日が土曜日のため三月中に申し込んだら断られたケースについては「例外的な対応があってしかるべき」と指摘し、十月以降、交付開始日が休日の場合、前日の交付が認められるよう改善した。住宅の手すり工事を行った際に職員が間違った説明をした件では、職員や住宅改修業者に説明会を開いて徹底するよう申し入れ具体化したなどの成果があったとしている。
▼六月八日〜九日
大阪府警は、大阪教育大学付属池田小学校に刃物を持った男が乱入し、児童生徒や教諭23人が死傷(死亡八人)したと発表。男は殺人未遂容疑で逮捕された。文部科学省は、緊急対策本部を設置し、情報収集のための職員の派遣と、全国の学校に安全管理の徹底を求めることを決めた。首相は、再発防止策の検討を指示した。厚生労働省は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)対策のため大阪府に「こころの健康づくり
対策官」(専門官)を派遣しサポート体制づくりを進める。また、大阪府などに、各地の保健所に児童らの相談窓口を設けるよう指示した。警察庁は、学校や通学路での制服警察官によるパトロールを強化するよう全国の警察本部に通達した。九日、大阪地検は、容疑者の男性を刑事責任能力を確認するため精神鑑定する方針を固めた。
▼六月十一日〜十二日
自民党は池田小事件対策本部の初会合を開き、「犯罪をおかした精神障害者問題対策本部」を設置することを決めた。精神医療の強化・拡充によって精神障害者の犯罪を防ぐべきだとし、法律家や医師、ケースワーカーなどの専門家が精神障害者が起こした事件の事実認定と判断を行い、治療方法などの対応を求める専門家機関の設置を求めた。政府与党連絡会議では、公明党の神埼代表が「精神障害者に対する安易な措置入院の強化は問題。人権を考慮すべきだ」とし、保安処分の復活につながるような法改正には慎重な姿勢を示した。十二日、自民党幹事長は、対策本部の名称を「池田小学校事件対策および触法精神障害者問題対策本部」としたことを明らかにし、精神障害者全般にかかわる印象を避けるため「触法」と限定をつけるなどとしたことを説明した。しかし、首相は「精神に問題がある人が犯罪を起こしても、人権の問題とか医療の問題の難しさもあって、何もしないできた。いろいろな反発があるからと言って、何もしないでは済まされない。全部見直す」として、刑法改正を含む法整備に改めて意欲を表明した。また、保守党は、「安全社会づくり対策本部」を設け、当面の対策として「刑法に『保安・治療処分』の規定を想定する」ことをあげ、ほかには都市の重点地域に監視カメラを設置する、酒酔い運転事故の加害者に重罰を科すなどを盛り込んだ案をまとめた。
▼六月十二日〜十三日
与党三党は「触法精神障害者の処遇に関するプロジェクトチーム」を設置した。十三日、池田小学校で起きた小学生殺傷事件を受け、精神障害者の犯罪対策について、精神障害を理由に不起訴や無罪となった重大犯罪の容疑者・被告に対する「措置入院制度」の見直しを軸に検討に入った。退院の判断に裁判所も関与し、基準を明確化する、退院後も通院を継続する体制を構築するなどが課題となる見込み。政府は、首相の刑法改正には閣内に異論があり、検討に時間がかかるため、退院基準などの問題に絞って見直しを優先させる。また、法務省と厚生労働省による検討会の協議を促進し、「一、二カ月で結論を出す」方針を明らかにした。
▼六月十二日
政府の障害者施策推進本部は、障害者の免許・資格取得を促進するため、点字による試験実施など必要な環境整備を行うよう各省庁に指示することを申し合わせた。資格試験や教育機関の入学・卒業試験での点字試験などの実施、手話通訳・移動介助などの支援、教育機関の講義における手話通訳などの支援や、点字教材などの配置、職場での障害を補う補助器具の配置やバリアフリー化などを盛り込んだ。また、首相や関係閣僚が障害者や障害福祉関係者から直接、意見を聞く「障害者施策に関する懇談会」を七月に開催することを決めた。
▼六月十二日
東京地裁は、ハンセン病患者に対する隔離政策をめぐり元患者らが国に賠償や謝罪を求めたハンセン病東京訴訟で、各地の訴訟で裁判所として初めて原告側と国側に和解を勧告した。
▼六月十二日〜十五日
衆院本会議は、ハンセン病の元患者らに補償金を支給する補償措置法案が可決、衆院を通過。前文に「悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受けとめ、深くおわびする」との文言を盛り込んだ。補償金は療養所の入所期間によって一四〇〇万円から八〇〇万円の四区分。入所していた元患者全員を対象とするが、法律の施行前に死亡した人、裁判で判決が確定し、国家賠償を受ける人には支給しない。請求は法律の施行日から五年以内に行わなければならないとしている。十四日、参院厚生労働委員会で審議、十五日、参院本会議で可決、成立した。
◎六月十四日
埼玉県健康福祉部は、知的障害者更生施設の啓明学園が、入所者用のベッドマットなどの備品を通常の市販価格の二倍以上の高額で購入し措置費の水増し請求をしていたと判断し、運営する社会福祉法人・翌桧会に対し、委託料(措置費)約六〇〇〇万円の返還を要求した。納入業者のうち三社は実体不明の会社で、所在地は同園の職員の住所と同じだった業者もいた。また、架空職員名で約二年半給料として約八〇〇万円を払った疑いもあり、この分についても追って返還を求める。さらに、入所者側に多額の寄付金強要問題で希望者に寄付金を返還するよう指導する。
▼六月十五日〜十七日
法務省と厚生労働省は、重大な犯罪行為をした精神障害者を強制入院させる専門治療施設「特定精神病院」(仮称)の設置に向け検討に始めた。刑法改正ではなく、新法で対応するとしている。医師、法曹関係者有識者を加えた判定機関が入退院を判断する方式を導入する方針で、「二〇床程度の専門病棟を各地に新設し医療スタッフや保安要員を常駐させる」などして「刑務所に限りなく近くなる」としている。十七日、森山法相は、現行の措置入院制度に司法の判断を加える必要があるとの考えを示した。坂口厚生労働相も同意する考えを示した。日本精神神経学会は、今月末をめどに提言をまとめることを決めた。
◎六月十六日〜二十一日
いわき検察審査会は、いわき市立病院の神経科の医師が「精神分裂病」で通院していた男性に包丁で切りつけられ死亡した事件で、福島地検いわき支部が男性患者の刑事責任能力を問えないとして不起訴処分にしたのは不当(男性は二度にわたり刃物を準備し、犯行後も逃走するなど計画性が認められ、精神分裂病による行動と断定するのは難しい)と議決した。医師の遺族が同審査会に不起訴不当の申し立てを行っていたことに対し判断した。二十一日、福島地検は、再捜査を始めることを明らかにした。
▼六月十八日
全国精神障害者家族会連合会は、池田小学校殺傷事件を受けた報道について、事実関係が明らかでない段階で容疑者の入退院や病名などが報道され「精神障害者は危険だ」という社会的偏見が強くなったとして、精神障害者への配慮や慎重さ、正確さを求める声明(事件の背景や病気の状態が明らかになっていない段階で特定の病名や通院歴を報道すべきではない、法的な責任能力の問題を精神障害の問題に置き換えて報道しない、今回の事件と触法精神障害者の処遇問題を安易に結びつけないなど)を出した。同会には「報道により社会参加ができなくなった」、「アルバイト先を辞めさせられた」などの相談が多数寄せられている。
◎六月十九日
福岡地裁は、殺人、死体遺棄罪に問われた男性に対し、「殺害時は精神分裂病で、心神耗弱だった」と限定的な刑事責任能力を認めたうえで、「社会復帰後、再犯の恐れが強く懸念される」として、懲役八年の判決を出した。男性には二度の精神鑑定が行われ、捜査段階では完全責任能力を認めたが、公判では弁護側請求の鑑定で「心神耗弱」と判断が別れていた。また、これまで二度の反抗に対し、精神鑑定で精神障害と診断され、不起訴処分となり入院した。
▼六月十九日
ブッシュ米大統領は、障害者への対応について、地域でケアできる障害者を「不当に隔離することは障害に基づく差別である」と位置付け、「障害を持つ人々は、問題としてではなく、あくまで尊敬される人間として扱われるべきだ」として、施設に収容するよりも地域のケアを中心に進める政策(行政命令)を発表した。一九九九年に連邦最高裁か地域でケアできると医者が診断した精神障害者については、各州政府が地域で生活できる対応を取らなければならないとする判決を出していたが、この判決を障害者全体を対象とし政策レベルで実施するもので、連邦政府が地方自治体と協力する。
▼六月二十二日
厚生労働省は、労働安全衛生法に基づく入社前後の健康診断項目の一つとして企業に義務付けている色覚検査について「検査で色覚検査と判別されても、大半は支障なく業務を行えることが明らかになってきている」と判断し、公共職業安定所を通じて事業者に対し廃止することを決めた。「色覚異常者は不可」との求人条件を出すのをやめ、代わりに仕事の内容欄に「色覚異常」では困難な業務の内容を詳細に記述する、採用選考時に合理性のない色覚検査を実施しないことなどを啓発、指導する。
▼六月二十二日
衆院本会議は、障害を理由に一律に免許や資格を認めない「欠格条項」を見直すため、医師法など二七の法律にかかわる三三制度を一括して改正する法律を可決、成立した。障害を特定して免許や資格から排除している文言を削除する。欠格条項を完全撤廃するのは「栄養士免許」「調理師免許」など七制度だけで、残る二六制度は制限付きに認めるために「心身の障害により業務を適正に行うことができない者として、厚生労働省で定める者」に、免許や資格を「与えないことがある」とする文言が入る。
▼六月二十三日
法務省は、大阪の池田小学校児童殺傷事件を受け、事件を起こした精神障害者が責任能力なしとして不起訴や無罪となった場合、精神病院へ措置入退院するかどうかの判断をする審査機関を創設し、裁判官が参加する仕組みを導入する方針を固め、今秋の臨時国会中に特別立法を提出する方針。裁判所から独立した機関とし、ほかに医師や社会福祉士を加え協議し入退院を決定する。審査機関は検察官からの通報により審査を開始する。また、精神科医の診療報酬を充実させるなどの精神医療への予算拡大、重大な犯罪を繰り返す精神障害者を扱う専門施設の新設なども盛り込む方針。今後、厚生労働省との検討会の中に提示する予定。
▼六月二十八日
政府・与党は、年内に法案作りに着手する方針で重大犯罪行為の精神障害者の処遇に対する試案を明らかにした。精神病院への強制入院、退院の判断などに司法関係者らが関与する「準司法手続き」を採用。専門家の育成、治療法の研究・開発のための「司法精神医療研究所」(仮称)を新設する。試案の対象犯罪は、殺人、放火、傷害、傷害致死、強姦、強盗の六つ。これらの犯罪行為をした精神障害者が不起訴や無罪になった場合、裁判官(OBを含む)を責任者にして精神科医、弁護士、審理カウンセラーらで構成する「司法精神医療審判所」(仮称)が、専門治療施設である「司法精神病棟」への強制入院について決定。強制入院の必要がないと判断された場合は、訓練命令、社会復帰訓練施設(通所型)に入所。強制入院後、審判所が治療が進んだと判断すれば、「司法精神病棟」からの退院の決定をくだされ、訓練施設に移す仕組み。審判所の審判は精神障害者、犯罪被害者双方の関係者が傍聴できるようにする。訓練施設はアフタケアーを充実する目的で、精神科医、精神保健福祉士、保護監察官が協力して支援する体制を整備する。厚生労働省は、「同審判所」を全国八カ所程度に設置する方針。裁判所の一機関と位置付け、審判所の長には現職裁判官を充てることを提案している。
▼六月二十八日
精神科七者懇談会(精神医療にかかわる日本精神病院協会、日本精神神経学会など)は、大阪池田小事件を受けて、「精神障害者の裁判を受ける権利を補償し、医療を提供しつつ刑事責任能力を評価するための制度を新設するべきだ」、「重大な犯罪行為をした精神障害者のための専門病院の新設には慎重であるべきだ」などとする緊急声明を発表。法務、厚生労働両省に提出した。
◎七月四日
東京地裁八王子支部は、知的障害者だった長男(四二歳)が勤務先のクリーニング会社の洗濯機に巻き込まれ死亡したのは、会社には安全管理者を専任して現場管理をする義務があったのにの専任していなかったり、安全管理体制が整備されていないなど安全管理に不備があったとして、町田市に住む両親が会社とその経営者を相手に総額八七〇〇万円の損害賠償を求める提訴を受理した。同社はこの事故で今年三月、労働安全衛生法違反の疑いで八王子労働基準監督署から書類送検されている。
▼七月五日
厚生労働省の社会保険審査会は、無年金障害者(学生時代に障害者になったが年金に未加入のため障害基礎年金が受けられなかった)障害基礎年金の支給を求めて再審査を請求したことについて五月に棄却したため、全国十一都道府県の二六人の障害者(三一歳から六〇歳)が「不支給は法の下の平等を定めた憲法に違反する」「不支給により自立生活が阻まれている」などとして、国と社会保険長長官を相手取り、年金支給と一人二千万円の損害賠償を求めて全国八地裁に一斉提訴した。記者会見した厚生労働事務次官は、「年金では、保険料を払った人が年金を受け取るという制度の根幹に触れるものであり、対応するのは難しい」との考えを改めて示した。
▼七月五日
大阪高裁・地裁は、九七ある全ての法廷の傍聴席に車椅子二台分のスペースを設けることを決めた。これまで自由に法廷に入れず、傍聴の権利が侵害されていたためで、今夏にも工事を始め、今年度中に完了する予定。
▼七月六日
仙台市太白区選挙管理委員会は、参院選・仙台市長選で、障害の実態を考慮し、区民で右半身不随の身体障害(二年前から二級)の佐藤隆さん(七六歳)に「郵便による不在者投票」を認める決定を行った。歩行可能とみなされた半身不随の障害者は、公職選挙法施行令上、郵便投票の対象外だったが、佐藤さんの抗議を受け、当初の「対象外」の判断を改めた。同選管が本人に面会、自宅前が急坂で車椅子やつえ利用は危険であるため、市障害企画課に障害程度の判定を以来。一〇分以上立っていられない「体幹障害二級相当」と市長名の証明書が出たため、郵便投票の対象者として認められた。
▼七月六日
東京都は、患者の権利に関する理念を掲げた「患者権利章典」を制定。都立一四病院に適用する。だれでも良質な医療を公平に受けられる、自分の診療記録の開示を求められる、診療の過程で得られた個人情報の秘密が守られるなど、患者の権利七項目を盛り込んだ。患者の責務として、健康に関する情報を正確に(医師に)提供する、医療に関する説明が理解できるまで質問するなど三項目が加えられた。
▼七月七日〜十三日
東京都立松沢病院は、患者を沈静させるためとして、全身にけいれんを起こす「電気ショツク」(電気けいれん療法)を頻繁にかけていることが明らかになった。同療法は懲罰的に使われてきた歴史がある。松沢病院は精神病院の草分け。実施されていたのは症状の激しい患者が入る病棟で(新規入院患者を受け入れる二病棟)と、処遇の難しい患者等が入る長期入院病棟の四つの病棟で、いずれも閉鎖病棟だった。対象となるのは、興奮して暴れる患者、患者仲間に軽い暴力をふるう患者、看護婦に脅迫的な言動があった患者で、保護室で催眠鎮静剤を静脈注射して眠らせたうえで、両側のこめかみに電極をあてて電気ショックをかけるなどが行われていた。国際的常識の「無けいれん法」で実施でき、常勤の麻酔科医師がいて、全身麻酔をかける設備もあるにも係らず、「電気けいれん療法」が十年前から急増していると批判が出ている。十三日、全国自治体病院協議会精神病院特別部会は、「電気けいれん療法の使われてきた歴史的背景を十分に考慮し、十分な説明と同意のもとに、厳密に対象を選択し、適切な術式を決定する必要がある」と「部会長見解」を発表。松沢病院など全国の加盟病院一七三病院を対象に実態調査を行う方針を決めた。アンケート方式によるもので、「電気けいれん療法」の実施件数と患者数、対象患者の病名と病状、無けいれん法と有けいれん法の実施件数の割合、患者家族への事前説明と同意の状況などを聞く方針。
◎七月十日
神奈川県警捜査二課は、横浜市にある心身障害児福祉施設「横浜療育園」の元指導員が、子どもの治療のために訪れる医師やカウンセラーへの謝礼目的で近くのスーパーからハイウエーカートなどを園に無断で購入し、約二一〇〇万円をスーパーの銀行口座に振り込ませた詐欺容疑で逮捕した。購入したものは金券ショップで換金し、海外旅行などに使っていたという。スーパーには購入品の名目を消耗品などに書き変えさせ、請求書が届くと園長などに代金支払などの承諾を得ていた。一九九九年九月に懲戒解雇されているが、同捜査二課では余罪を追及している。
▼七月十日〜十七日
厚生労働省は、欠格条項を見直す法改正に伴い、薬剤師国家試験に三年前に合格し、旧厚生省の求めで聞き取り、口の動きによる言葉の読み取りなどの検査を受けたが、聴覚障害を理由に免許申請を却下された女性(早瀬久美さん)に対し、免許を公布することを決めた。聴覚障害者が薬剤師免許を受けるのは初めてと言われている。十七日、厚生労働相から免許証を交付された。
▼七月十二日
東京ヘレン・ケラー協会は、参院比例選の候補名を紹介する視覚障害害者向けの点字名簿を「点字ジャーナル」号外として制作、政党名や略称、代表者名のほか、政党ごとの公約を掲載し、閲覧用として投票所に備える選挙管理委員会も多いが、参院選は今回から非拘束式に変わったため候補者が増え、二十九日の締切りに間に合わないとして、政党ごとの公約を掲載しないことに決めた。また、任意にカセットテープを作っている大阪府視覚障害者福祉協会でも、政権や公約などの録音を見送った。視覚障害者団体から「ボランテイア団体に任せず、国や自治体の協力が必要」との訴えが出ている。
▼七月十六日
厚生労働省は、ハンセン病の元患者の代表と恒久対策を検討する第二回会議を開き、同省側は、予算に元患者の納骨堂に眠る遺骨を故郷の墓地に改葬する費用等について盛り込むこと、療養所の中には肝炎感染率が半数以上を超える施設もあることから、専門医らによる研究班を設置し、抗体検査を希望者に無料で実施することなどを明らかにした。また、差別被害の実態を調査し、強制隔離を伝える療養所施設や資料の保管方法などを弁護士等による研究班が検討することで両者の意見が一致した。
▼七月十七日〜三十一日
厚生労働省とハンセン病東日本訴訟の原告は、東京地裁の和解勧告を受け入れることを決めた。国の法的責任を認め、謝罪広告を出し、恒久対策を盛り込む。先月施行されたハンセン病補償措置法に基づく額と同額の一時金(総額三〇四億円)を支払うなどの内容。二十三日に基本合意を取り交わすことになった。岡山、熊本も月内に合意する方針。二十七日、東京地裁で和解が成立し、国が原告の元患者ら五六六人の約八割に当たる四八六人に総額六三億七四〇〇万円の一時金を支払うことなどで合意した。三地裁で、原告全員のうちほぼ半数の一一〇六人が国と和解。三十一日、第二陣八二人の和解が成立した。
◎七月十九日
愛知県警天白署は、寝たきりの両親(パーキンソン病とせき髄の病気)に「看病が大変だろう、殺してくれ」と頼まれたとしとて、長男(せき髄の病気で身体障害者手帳を持ち、杖を使いながら歩くなど歩行が困難な状態で、両親の介助や世話をしていた)が、両親を首を締めて殺し、自らも左手首を切り重傷になった件で、無理心中事件とみて、長男の回復を待って殺人容疑で逮捕する方針を発表。同日、埼玉地検は、一九九九年十二月に当時七九歳の寝たきりの母親を餓死させたとして、保護責任者遺棄などの容疑で送検された息子を殺人罪で起訴した。
▼七月十九日〜二十七日
熊本地裁は、ハンセン病国家賠償訴訟(西日本訴訟)で初めての和解が成立。五次から七次の原告一一七人のうち療養所入所歴が確認された九四人で、和解内容は、国が原告に多大な苦痛と苦難を与えてきたことを真摯に反省し衷心より謝罪すこと、謝罪広告を出すこと、総額一一億四二〇〇万円の和解一時金を支払うこと、一時金は患者・元患者の損出補償法に基づき入所歴に応じて一人八〇〇万円から一四〇〇万円、弁護費用などを国の負担とすることなど。二十七日、原告一八七人に対し、国が総額二二億円の一時金を払うことなどで二度目の和解が成立した。計一八一人の和解が成立した。また、療養所の入所歴がない元患者ら八四人に対しても、「差別や偏見に苦しんだ未入所者にも賠償請求権がある」「隔離被害に限定せず国家賠償請求権を持つ」として和解対象とする所見を示した。残りの原告八七〇人についても七月中に和解を目指す。
▼七月二十日
日本弁護士連合会の精神医療問題小委員会は、重大な事件を起し捜査段階で不起訴処分になったり、裁判で無罪になったりした精神障害者の治療期間や方針を判断する審査会を新設する独自の素案を固めた。現行の措置(強制)入院の際に二人以上の精神科医の診断を元に都道府県知事が措置(強制)入院を決めることを基本に、事件に係った検察官と弁護士からも意見と資料の提出を求め、適切な治療方針を立てることを目指す。看護婦やソーシャルワーカーも加わる審査会で担うようにし、その際、精神科医は措置権当時の状況などを把握しながら判断できるようにするなどを盛り込んでいる。
◎七月二十一日
北九州市若松署は、元中学校講師の女性と軽度の知的障害のある妹の二人が自宅で餓死と見られる遺体(死後約一カ月)で発見されたと発表。生活保護は受けていないため生活状況について市役所も把握していなかった。ガスや水道、電気などは料金滞納で止められていたため、代わりに簡易コンロや飲料水があった。現金や食料品はほとんど残っていなかった。
▼七月二十三日
国(厚生労働省)は、ハンセン病の元患者らが国家賠償法で原告側と和解の基本的合意書を取り交わす調印式を行った。基本方針は、国が元患者に対し、謝罪広告を含むできる限りの名誉回復措置を取る。元患者らへの損失補償法の基準に従った金額と同額の和解一時金(一人八〇〇万円から一四〇〇万円)を支払う。一時金のほかに訴訟費用や弁護士費用を上乗せすること。今後は元患者の社会復帰支援や在園保障など入退院者への医療・福祉などの恒久対策も盛り込んだ具体的な被害回復措置に移る。全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長は、「今日の調印を持って九〇年にも及んだハンセン病対策がすべて決着したわけではない。むしろ、ハンセン病問題の解決は、その緒についたばかりだ」とコメントした。
▼七月二十四日〜二十六日
岡山地裁は、ハンセン病損害賠償瀬戸内訴訟で口頭弁論を開き、国が元患者ら原告三五六人のうち、国との遅延損害金の調整が間に合わなかった十七人を除く三三九人に、総額四四億七八〇〇万円の一時金を支払うことで和解が成立した。同日、厚生労働相は、二人の副大臣と分担して六月十六日から始めた国立一三カ所、私立二カ所の全ハンセン病療養所を回る「謝罪の旅」を終えた。二十六日、厚生労働省の「ハンセン病問題対策協議会」は、隔離政策が九〇年も続いた理由などの真相究明のための「検証委員会」(元患者、学識経験者、弁護士、マスコミ関係者らで構成)を八月中にも発足することで合意した。来年度中に報告書をまとめ、同省に施策を提言する予定。
▼七月三十一日〜八月二日
東京都教育委員会は、歴史をねつ造しているなどとして内外から批判・反対のある「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で執筆された歴史と公民の教科書(扶桑社発行)を、公立学校として初めて都立養護学校の一部で使うよう事実上非公開審議で決定(七月二十六日)していたことがわかった。都道府県立の盲・ろう・養護学校の中学部に限っては都道府県教育委員会が決めることになっている。東京都の場合、都立養護学校で使う歴史と公民について、病弱で六人のうち四人、知的障害で三人と同教科書を推す意見が多数を占め、肢体不自由では「生徒が使いやすい」との理由で他の教科書、ろう学校では再投票で他の教科書が採用される方針を固めた。四月、石原都知事は「教育委員は自分の良識で教科書を採択してほしい」と区市町村の教育委員連絡会で要請していた。就任以来、教育委員五人(二人は再任)を任命している。東京都障害児学校教職員は反対の声明を発表。他団体・個人も反対のメールや抗議行動、採択反対の申し入れなどを繰り返している。八月二日、在日本大韓民国民団東京本部は、都教育庁に採択しないよう申し入れた。
▼八月三日〜十日
東京都教育委員会は、都立養護学校の一部で、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した「歴史」と「公民」の教科書を採択する方針を固めたが、「障害者と家族の生活と権利を守る都民会議」などが都教育庁に不採択を求める要請書を提出した。六日、東京荒川区では「区民共同アピール連絡会」が、二八〇人の区民の賛同を得て不採択のアピール(教科書の内容が平和教育に反するとし、再び侵略への道につながる不安を持たざるを得ず、区内に住む多くの在日韓国人・朝鮮人らとの交流に悪影響が懸念されるなど)を発表。十日、市民グループが「人間の鎖」などで抗議行動をする中、荒川区教育委員会は非公開で審議した結果不採択となった。これまで国立市、杉並区などでも反対行動が行われてきたが、十日、都内二三区のうち二一区が採択審議を終了、同教科書は選ばれなかった。
▼八月三日〜七日
政府は、重大犯罪を行った精神障害者(触法精神障害者)の処遇システムの検討を進め、専門医学・医療の立場から精神障害と犯罪との関係や効果的な治療法などを幅広く研究する「司法精神医療研究施設」(仮称)の設置案を提案しているが、研究を進める上で司法と精神医療が連携した「司法精神医療」の専門家や専門医の養成が不可欠として、国立大学に「司法精神医学講座」を設置する方針を固めた。今後、文部科学省で設置時期や、設置の範囲などの具体策を検討し、対応する方針。七日、厚生労働相は、精神病院への入退院の判断を地方裁判所に設置する新たな組織が担うとしている点について、全国の主要な地裁の一〇カ所前後に併設する構想を明らかにした。毎日新聞の調査では、「専門治療施設」の設置に概ね賛成する自治体は五九自治体のうち一四自治体、入退院の判断をする「第三者機関」の設置は一七自治体であることがわかった。都道府県・政令指定都市の約四分の一にとどまっている。
◎八月七日
埼玉県は、知的障害者更生施設「啓明学園」が入所者側から集めた寄付金の総額が一億六七一〇万円になっていることを明らかにした。「啓明学園支援する親の会」名義など二口座の入出記録を、親の会関係者らが保護者らの同意を得て、金融機関から取り寄せ県に提出したことで判明した。残高が八〇数万円しかないため、今後は記録の分析や関係者から事情を聴き、不透明な施設の運営実態の解明を進める方針。
▼八月七日〜八日
東京都教育委員会は、公立学校としては初めて「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した扶桑社の中学の歴史・公民の教科書を一部の都立養護学校(病弱の二校一分教室五〇人)、精神的障害(知的障害の一分教室二〇人)で使用することを、非公開で採択(六人の委員のうち賛成四反対二)した。点字本がないため盲学校では使えず、ろう学校、肢体不自由養護学校、もともと検定本を使わない知的障害養護学校も外し、都立養護学校の一部に導入するやり方で、都教育庁には反対する人たちがつめかけた。また、同教育委員会にはこれまでに約五〇九〇件(賛成一五〇件、反対四九四〇件)の電話やファクスが寄せられている。都立青鳥養護学校長が「教科書自体を使わない」と発言しているのに、同校の一分教室などに導入するという政治的立場の導入で、現場の声を無視していく姿勢が表れている。子どもが知的障害養護学校に通った作家の大江健三郎さんは「養護学校に使わせるのは、抵抗の弱い相手への狙い撃ちです。権力を持った者と、その意を体する者らの、勘定合わせにすぎません。どこに障害者への配慮がありますか?東京都教育委員会のやったことは、もっとも弱い部分に向けられた、むごいご都合主義です」と語った。この日、市民団体、教職員団体、障害者団体など約二〇団体が採用撤回や再協議を求める声明を発表した。中国外務省は、「日本側はアジアの戦争被害者の声を厳粛に受けとめ、教科書問題に適切に処理するよう要求する」とコメントを発表した。八日、東京教育委員会には電話やメールが約六六〇件寄せられ、抗議や撤回を求めるものが六三六件と大半を占めた。
▼八月八日〜十四日
愛媛県教育委員会は、東京都教育委員会と同様に扶桑社の中学の歴史・公民の教科書を県立養護学校(死体不自由一校一分校)、ろう学校(二校)で採択することを全会一致で決めた。同教科書で来年学ぶのは養護学校五人、ろう学校は中学部に進学する生徒はいないため〇人。十三日、採択を受け、市民団体の代表らが県教育長に採択の撤回と再審議を求めた。十四日、採択対象校の第一養護学校の元PTA会長らが、県教育委員会に「なぜ、障害児学校の子どもたちだけが侵略戦争を美化しているとされる教科書で勉強しなければならないのか」などとして、採択撤回を求める要望書を提出した。
◎八月十日
ロワイヤル仏家庭・児童・障害者担当相は、エールフランスの航空機を利用しようとした障害者(軽い自閉症や視覚障害者夫婦)が、「安全が保障できない」として会社側の医師の同意が得られず、三件相次いで搭乗を拒否されていた件について、「安全云々は理由にならない。単に良識の問題で、障害者差別だ」と批判。問題を検討するため同社会長を含めた関係者の円卓会議を九月に開催する方針を発表した。
▼八月十二日〜十四日
市民の人権擁護の会日本支部は、精神医療現場での人権侵害をなくすように呼びかけているが、精神医療ホットラインを設置、実態告発を呼びかけた。手紙、FAXでの速報は常時呼びかけている。
▼八月十三日
熊本地裁は、ハンセン病熊本訴訟で三回目の和解が成立。七次から一八次の原告の元患者(収容期間が確定した六七七人)と被告(国)との間で合意した。熊本訴訟の未解決の原告は二一〇人となった。
▼八月十六日
東京都教育委員会は、来年度から使用する小中学校の教科書について採用状況を公表。十五日の期限までに、扶桑社発行の「歴史」と「公民」は、都立養護学校三校のみで採用、区市町村ではまったく採用されず、国立大学付属中学でもすべて採用されなかった。公立校の採用は東京都立養護学校三校と愛媛県立の養護学校、ろう学校各二校に止まった。私立は六校で「歴史」と「公民」、二校で「公民」だけ採用された。韓国の新千年民主党は、「日本国民の良心を評価する」「大多数の良識ある日本国民が拒否したことは意義深く、われわれはこの良心勢力と固く連帯していく」と表明、日本政府に「現実を直視し、教科書問題を適切に処理すべきだ」と求めた。中国も同様の声明を出した。
◎八月十七日
山形地裁は、心身障害者通所施設「つくしんぼう」の通所者に売春させ現金を受け取ったとして、売春防止法違反罪に問われた元所長と、元指導員に、「社会的弱者である被害者の人間性を無視した卑劣な行為」として、元所長には懲役一年、罰金二〇万円、元指導員には保護観察付きの懲役一年、罰金一〇万円の有罪判決を出した。二人は別の通所者の通帳を使い現金を盗んだとして昨年三月に有罪が確定している。
▼八月十七日〜二十三日
精神科七者懇談会は、重大犯罪を起こした精神障害者の処遇制度の導入の動きを受けて、声明を発表。制度導入の動きに日本精神病院協会が賛成したため、他の六団体名で発表した。「重大犯罪を起こした精神障害者がさらに精神障害による犯罪を起こすことは極めて少なく、まれな事例に対する施策のみでは抜本的解決は得られない」「責任能力の判定や医療・矯正施設での実態の調査が必要」などと指摘した。二十三日、東京都内で、精神障害者や弁護士、国会議員らが「新法反対」の集会を開いた。精神障害者から「池田小学校の事件で社会の偏見にさらされている。精神医療の貧困さを問題にせず、当事者の話しも聞かないで新法を作る動きを許してはならない」などの声があがった。
▼八月十九日
読売新聞は、精神保健福祉法に基づく措置入院の患者を受け入れる全国一一五二病院の医療基準の状態を調査。うち一三一病院が、国の定めた医師や看護職員数の最低基準を満たしていないことがわかった。医師不足は、国公立病院では一二、私立病院では一一四。看護体制が四対一の基準に満たないなど看護体制が望ましいレベルに達していない病院は、国立一、指定病院二二九、基準割れを合わせると約三割(三五二病院)だった。基準に満たない指定病院が多いのは北海道の一三、福岡の九、青森と福島の各七などで、看護体制四対一未満の指定病院は神奈川二一、茨城一九、静岡一二、埼玉と大阪の各一一、東京の一〇の順で大都市圏に多いことがわかった。
◎八月二十一日
千葉県健康福祉部は、我孫子市にある知的障害者更生施設「みどり園」の入所者と職員八九人が食中毒を越こしたと発表。うち四六人が病院で診断を受け複数の患者から病原性大腸菌O六が検出されたとして、柏保健所は同施設の給食が原因と断定し、三日間の給食施設の使用を停止した。同園は今月二日か三日の給食が原因として、七日に柏保健所に報告、十日から給食を自粛し仕出し弁当で対応していた。
▼八月二十一日〜二十八日
厚生労働省は、精神科救急医療の充実を図るとして、全都道府県に二四時間対応の電話相談窓口を設置する方針を固め来年度予算の概算要求に盛り込むと発表。夜間・休日など緊急時にも医療を受けられるようにするためには、「臨床の知識や経験が豊富な医療機関などで、適切な対処ができる窓口が必要」と判断し、自治体病院を中心に中核的な民間病院、精神保健福祉センターなどを対象に設置、患者・家族からの相談や入院先の確保などについて、複数の医療スタッフが対応する。また、来年度、国立病院などの医師を海外の専門機関(病院や大学など)に派遣して、臨床的な治療技術を学んでもらう。研修期間は半年から一年で、臨床現場にいる精神科医一〇人から二〇人程度を選ぶ。二十五日、森山法相は、触法精神障害者の処遇をめぐり、刑法に基づいて治療を命じる治療・保安処分制度をもつドイツで収容施設(保安看護施設)を視察し、制度を作る参考にする意向を明らかにした。三十日からドイツ、英国、スウェーデンの三カ加国を訪問する予定。二十八日、政府は、同処遇について、全国五〇カ所(北海道の四地裁と四六都道府県地裁)にある全ての地方裁判所に、入退院を判断する第三者機関として「審判所」を併設する方針を固めた。
▼八月二十四日
日本精神神経学会は、全国精神障害者家族会が「人格を否定するような響きを持つ『精神分裂病』という名称を変えてほしい」という意見書を受けて、名称変更を「脱・偏見」活動の一環と位置付け、来年横浜で開かせる世界精神医学会十二回大会までに新病名を正式に決定する方針。新たな呼び方案として「言語(ラテン語)の読み方をカタカナ表記した(スキゾフレニア)」、「疾病の概念の確立に功績のあった人名にちなんだ(クレペリン・ブロイラー氏症候群)」「言語を翻訳した(統合失調症)」の三つで、学会内に設けられた「呼称変更委員会」が提案している。また、同家族会は新聞広告を通じ市民から新病名を募集することを検討している。
▼八月二十四日
厚生労働省は、入社後にうつ病や神経症など精神障害になった人が、職場に復帰する際の相談窓口を各都道府県ごとに設置する方針を決めた。同省の「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」がまとめた報告書に沿ったもので、精神障害に悩んでいる人へのアドバイスや、職場復帰のための作業訓練、対人関係をスムーズに築くための研修会などを実施。企業に対しても、職場復帰のための情報提供などをして連携を図る。障害者から相談を受けた場合のプライバシーについても最大限尊重し、仮に会社に連絡することが必要な場合でも、本人の了解を得る方針。
▼八月二十八日
国は、大津・東京両地裁が和解勧告をした「ヤコブ病訴訟」で、「国の法的責任は認めがたく、法的責任を前提とした協議には応ずることは困難」とする意見書を両地裁に提出した。
▼九月二日〜四日
世界精神医学界などは、ドイツのラアイプチヒで「精神分裂病に対する偏見と差別をなくす国際会議」を開催。精神分裂病への差別をテーマにした初の国際会議で、研究や治療に携わる医師や行政当局者、医薬品業界関係者らが意見交換する。差別と偏見をなくすための協調策を探るのが狙いとしている。
◎九月三日
名古屋地裁は、自殺未遂で寝たきり状態になっていた双子の兄を刺殺したとして、殺人罪に問われた高校生の弟(一七歳)に対する判決で、「周囲の人間の心情をおもんばかる気持ちを失い、犯行に至ったなど、生命の尊厳について十分な思慮を欠いた自己中心的で短絡的な犯行。兄の心の悩みや心情に共鳴し、兄の意向通りに死なせるしかないと思い詰めたり、犯行後に自首し、犯行を素直に認めているなど経緯、動機にくむべき事情はあるが、後悔の念や反省の態度は最後までうかがわれず、保護処分は相当ではない」として、懲役二年から三年の不定期刑(実刑)を出した。]
◎九月五日
三鷹市は、市内にある障害者通所授産施設「三鷹第一作業所共同室」の所長が、常勤職員数の水増しをするなど、架空の職員名義の給料や実際に勤務している職員の賞与を支払ったことにして、八年間で東京都と同市の補助金など約三〇〇〇万円を生活費に充てるなど流用していたことが分かったと発表。今後、調査を進め、不正受給分の返還を求めるとともに、刑事告発についても検討する方針。
▼九月七日
東京都個人情報保護審査会は、今年五月措置入院とされた患者(精神障害)が、決定の際の診断書を開示請求したが、診断した医師や立ち会った職員の氏名などが非開示だったため、同月末に審査会に異議申し立てしていた件で、「公開すれば、不信感や誤解を招き、(患者から)日常生活に影響をおよぼすような追及をされる恐れが否定できない」として、東京都の非公開とした判断は妥当と知事に答申した。既に公開している自治体もあるため、今回の非開示には疑問が出ている。奈良県情報公開審査会では今年六月「措置入院制度の適正な運用を確保するため、責任の所在を明確にしておく必要がある」として公開に踏み切ったが、同県の担当職員は「現場で支障が出たという話しは聞かない」と発言している。
◎九月十日
大阪地裁は、交通事故の後遺症により、自力で食事や排せつなどができない遷延性意識障害になった養護学校中学生(事故当時小学二年生)と両親らが、事故の相手方の男性に約六億円の損害賠償を求めた訴訟で、平均寿命を考えると事故後六九年間の介護が必要として、介護費用など総額約一億七〇〇〇万円の賠償を命じる判決を出した。事故から一年半後に在宅介護となり、両親は交互に介護休暇を取っていたが、一九九九年三月から母親が退職して付き添っている。
◎九月十日
新潟地裁は、新潟県柏崎市で女性が九年二カ月にわたって監禁されていた事件で、逮捕監禁致傷と未成年者略取などの罪に問われた被告について、精神鑑定を実施していたが、鑑定医らから出された犯行時の精神状態について「善悪の判断をする能力があった。刑事責任能力はある」とする鑑定結果を受理した。昨年十二月以降中断されていた公判が約一年振りに開かれることになった。
▼九月十一日
文部科学省は、来年度の中学校歴史教科書の使用予定数を発表。「新しい歴史教科書をつくる会」が編集を指導した扶桑社版を使用するのは、公立養護学校五校の二三人(冊)、私立六校の四九八人(冊)、計一一校の五二一人(冊)の見込み。同社のシェアは〇・〇三九%。各項とも来春から四年間使用する。
▼九月十三日
熊本地裁は、ハンセン病国家賠償訴訟の口頭弁論を開いたが、元患者の遺族と非入所者について国が和解を拒否、原告側も判決を求めた。地裁は年内結審の意向を示した。弁論で国側は判決を求め、原告側は「控訴断念の首相談話や国会決議の精神に反し、厳重に抗議する」と批判した。
▼九月十四日
大阪地検は、大阪教育大学付属池田小学校で児童・生徒二三人が殺傷された事件で、容疑者を殺人と殺人未遂、銃刀法違反、建造物違反の罪で大阪地裁に起訴した。精神鑑定で「妄想性人格障害」(妄想性、非社会性などの複数の人格障害)と診断され、地検は刑事責任を問えると判断した。また、犠牲者の遺族や負傷した児童の家族らに対し、鑑定結果を含め、起訴に至った経緯など刑事処分などについて説明することを決めた。弁護側は「措置入院の見通しがあるなら、再度の精神鑑定をやってもらってもいい」と求めたことを明らかにした。事件の事実関係は争わない方針だが、「刑事責任能力が争点になる」とし、公判での精神鑑定を裁判所に求める考えを強めていることを表明した。
▼九月十四日
東京都杉並区社会福祉協議会は、二十三区で初めて成年後見制度を利用しやすいように、区民の相談にのったり情報を提供したりする支援事業を十月に開始することを発表。支援事業の拠点となる杉並福祉サービス支援センターを開設する。五人の職員が常駐し、相談に応じたり、障害者団体の会合で制度の説明をしたりする。
▼九月十六日〜二十六日
福岡県弁護士会は、シンポジウムを開催し、大阪府池田市の小学校殺傷事件を受け、政府・与党が特別の裁判所をつくって触法精神障害者の処遇を決めるなどとする立法化の動きに対し、「ショッキングな事件に引きずられて、新たな立法措置を図ることがあってはならない」と反対するアピールを採択した。二十六日、大阪精神障害者連絡会など精神障害者を中心とした九団体は、「国は障害者の声を全く聞かず、予断と偏見に基づく予防拘禁制度をつくろうとしている」として、反対の署名活動に乗り出すことを決めた。政府・与党の進めている新法は実行性がなく、今の政策のありようを見直すべきとして、大半が不起訴となっている起訴前鑑定の是正、拘置や服役中の医療の充実、医療や地域生活支援サービスの底上げなどを首相、法務、厚生労働両大臣に求めていく。
▼九月二十六日
厚生労働省は、「社会的入院」を解消するため、入院の必要性がないのに六カ月以上入院を続けている患者を対象に、入院費用分については医療保険からの給付をやめ、患者の自己負担とする方針を固め、中央社会保険医療協議会小委員に示した。難病患者など医学的に長期入院の必要性がある人を除き、ベッド代、食事療養費、看護料などを医療保険の給付対象から外し、入院基本料の一定割合を新たな自己負担として追加徴収する。患者の重症度に応じて入院料に差をつける仕組みを新たに導入する。リハビリ必要度などを指標に、入院の必要性の高い患者には医療費を手厚くするよう改める。外来でも必要な治療、投薬などの医療費は医療保険の対象とすることを盛り込んだ。
◎九月二十八日
東京高裁は、段ボール加工業「アカス紙器」の元社長が、知的障害者従業員への虐待事件等で執行猶予付きの有罪判決を受けたことを不満として、水戸地裁から出ようとした元社長らが乗った乗用車を支援者と一緒に取り囲み、監禁罪などに問われた二被告の控訴審で、「裁判所職員の証言などから監禁行為は明らか」として有罪判決を出した。大河内被告に対しては一審判決後、弁護士との間で示談が成立したことから、懲役一年に減刑。無罪を主張する平島被告に対しては、一審を支持し控訴を棄却した。二人とも上告した。
▼九月二十八日
東京地裁は、薬害エイズ事件「厚生省ルート」の裁判で、業務上過失致死罪に問われた松村明仁元厚生省生物製剤課長に禁固一年執行猶予二年の有罪判決を出した。帝京大病院の患者に非加熱製剤が投与された一九八五年五月から六月当時、エイズには不明確な点が多かったが、旧ミドリ十字が非加熱製剤を出荷した一九八六年一月から三月にはかなり明らかになっていた。一九八五年の起訴事実(医師に製剤投与を控えさせ感染を防止する注意義務を怠り、帝京大病院で治療を受け一九八五年五月から六月に投与を受けた血友病患者を感染、死亡させた)については、例のない治療方針を血友病患者に実施させるべき注意義務はなく、無罪。一九八六年の起訴事実(患者に非加熱製剤の投与が続けば、HIVに感染、死亡することを知る立場にあったが、医師に安全な加熱製剤が承認された同年十二月以降も製薬会社に対する非加熱製剤の販売中止や回収措置を取らなかったため、旧ミドリ十字が一九八六年一月から三月に出荷・販売した製剤の投与で肝臓病患者
を感染、死亡させた)については、非加熱製剤の販売中止・回収をさせる注意義務があったのは、漫然と放置した過失があり、有罪とし、官僚の不作為を認定した。「帝京大ルート」では、安部英・元同大副学長が無罪、「旧ミドリ十字ルート」では同社の歴代三社長が有罪となっているが、この判決を踏襲したものになった。HIV訴訟原告団は「厚生行政の監督責任を限定的にとらえており、あらたな感染症に対する危機管理に甚大な影響及ぼしかねない」と批判した。
▼十月三日
千葉市は、交通事故の後遺症で車いす生活をしている市職員の勤務に介助犬の同伴を認めることを決め、市職員に通知した。十日から一カ月間は訓練者が付添い、問題がなければ正式に認める。同市は「立法化の準備も進んでおり、肢体不自由者の自立と社会参加を支援する必要もある」として決定した。ほかに九人いる車いす生活をしている市職員にも申し出があれば認める方針。市職員は二年間にわたって要望してきたが、「必要性が理解できない」「役所は不特定多数の人が訪れ、犬が苦手な人もいる」などとして認めてこなかった。
◎十月四日
津地裁四日市支部は、四日市内に住む二家族が、「出産時の監視を怠ったため異常に気づかず、子どもに重い障害(てんかんや両手足などに二級の行為障害、目が見えないなど一級の障害)が残った」として、同時に市内の産婦人科医院と院長を相手取り、二億円と一億五〇〇〇万円の損害賠償を求めた提訴を受理した。二家族は、出産全体を助産婦や看護婦まかせにし、危険な陣痛促進剤を患者に説明なしに使っているなど、基本的な注意事項が守られていないとして、提訴に踏み切った。
◎十月五日
東京地検は、東京・浅草で四月に女子短大生を刺殺し殺人罪などで起訴された男性が卒業した札幌市立の小・中学校と高等養護学校の三校が、警視庁浅草署に対し、成績や行動記録などの個人情報を提供していたことを被告弁護団に開示した証拠資料により明らかにした。札幌市個人保護情報条例では本人からの請求が原則で開示が禁じられている。捜査協力など他の行政機関が開示を求めた場合、例外として本人の承諾なしで提供できるが、警察、司法への提供の範囲については、学校名、在籍期間、進学先、就職先、出欠記録などにとどめるなどのガイドラインを設けている。しかし、小・中学校は五段階評価の成績表を、高等養護学校は正規の手続きで情報提供を求められる前に指導要録の内容を浅草署に口頭で伝えたり、正規の手続き後は知能指数も明らかにしていた。また、各校の担任による学習、行動、性格に関する記録、素行に関する記録などもあり、同条例が定める範囲を逸脱していた。札幌市教育委員会は市議会決算特別委員会での議員の追及に、今回の提供先である浅草署に対しては、基準を超えた回答部分の削除を求めることを明らかにするとともに、警察に個人情報を提供する同様のケースが過去一年半の間に十四校で行われていたことも明らかにした。北海道教育委員会は、道個人保護情報条例には回答項目を定めたガイドラインがないため、管轄の道内の全二九九校に対し道条例に基づく捜査機関からの指導要録の開示請求に対する回答状況を調査することを決めた。
▼十月五日
旭川医科大学の羽田明教授らのグループは、日本人類遺伝学会で、国の新生児検査で先天性疾患(甲状腺機能低下症)と診断された患者が、治療法が確立されているのに保険への加入を断られたり、告知義務違反を理由に保険を解約されるなどの差別を受けている実態を報告した。六六人の患者の家族にアンケート調査した結果、生命保険や学資保険に加入しようとした五八人のうち、二八人は疾患を理由に加入を断られた。また、簡保の学資保険などに加入していた三人は、入院給付金の申請をしたところ、加入時に病名を申告しなかったことを理由に保険を解約されていたことがわかった。
▼十月九日
岡山地裁は、ハンセン病国賠訴訟の瀬戸内訴訟で、新たに原告一一人に対し、和解を成立させた。提訴後に死亡した一人を除き全員(計三六〇人)の和解が成立した。国が謝罪し一時金として一人当り八〇〇万円から一四〇〇万円、計一億四〇〇万円を支払う。同訴訟は事実上、全面決着した。
▼十月十一日
東京地検は、元厚生省生物製剤課長が業務状過失致死罪に問われた薬害エイズ事件(厚生労働省ルート)に関する東京地裁判決について、起訴事実の一部を無罪としたことを不服として控訴した。
▼十月十六日
東京地裁は、ハンセン病国賠訴訟の原告八人と国との間で和解を成立させた。国が支払う一次金総額は九四〇〇万円。東京地裁の原告六五八万人全員について和解が成立し、同地裁の国賠訴訟は事実上終結した。
◎十月十八日〜十九日
東京都東村山市の西武鉄道の西武線二駅では、相次いで視覚障害者の男性がホームから転落する事故が起きた。十八日、西武新宿線久米川駅上りホームで、十九日、西武池袋線秋津駅上りホームで転落して骨折した。両駅は上下線それぞれに独立したホームがあり、両ホームの間の上下電車が運行する「相対式」の駅で、待っていたホームとは反対ホームに到着した電車のドアが開く音を聞き違えて、電車に乗り込もうとして転落した。両駅では電車が近づくと到着を知らせる自動アナウンスが流れ、上り下りの違いが男女別の声で区別されている。
◎十月十九日
東京地裁は、東京・浅草で今年四月、女子短大生を刺殺したとして殺人罪などに問われた被告の初公判を開き、被告は罪状認否で起訴事実を認めたが、弁護側は起訴事実に関する違憲を留保し、「被告には自閉症の範ちゅうの発達障害があり、障害とそれに対する周囲の無理解により、たまたま緊張が爆発し事件が起きた。被告には責任能力がない可能性が高く、殺意もなかった」として、精神鑑定の必要性を強調した。傍聴した被害者の父親は「責任能力がないと言われても、納得できない」と話した。
◎十月二十四日
埼玉県は、知的障害者更生施設「啓朋学園」が保護者から多額の寄付金を集め、不明朗な経理処理をしていた問題について、「施設運営が著しく適正を欠く」として、運営主体の社会福祉法人翌檜(あすなろ)会に対し、社会福祉法に基づく改善を強く求める行政命令の手続きに入った。命令に従わない場合は、法人理事長の退職勧告などに踏み切る方針。入所者から得た寄付金は、今年五月までに計約一億六七一〇万円(五五人分)以上に上るが、開所後に県に提出された決算報告書では、寄付金収入は計約七八〇〇万円で、差額約一億円の使途について経理資料の開示を求めて調査しているが、不明部分が多い。法人と法人関係者が経営する会社やペーパーカンパニーとの備品などをめぐる不明朗な取り引きを指摘しているが、満足な回答が得られていないため、予定される命令内容や運営の不適正な点を法人に知らせ、弁明の機会を与えるための行政手続き方にのっとった通知署を出す。
◎十月二十四日
名古屋地裁は、身体障害者の認定を受けた寝たきりの両親から頼まれて殺害したとして、嘱託殺人罪に問われた被告について、「周囲の者に助力を求めることもできたのに、思慮を欠いた犯行」と指摘した上で、「献身的な介護を続け、両親と自分の病状が悪化し、将来を悲観して突発的に犯行におよんだ経緯に酌量すべき点もある」として、懲役三年、執行猶予五年の判決を出した。被告自身も身体障害者三級の認定を受け、自宅で両親の介護を続けていたが、両親から「死にたい。殺して楽にしてくれ」と哀願され、介護疲れや将来を悲観して両親を絞殺し、被告も手首を包丁で切るなどして一家心中を決意したが、死にきれず、一一〇番して逮捕されていた。
▼十月二十六日
政府・与党は、重大な罪をおかしながら責任能力が問えずに無罪や不起訴になった精神障害者について、新たな処遇システムを検討しているが、概要が固まった。入・通院の要否や退院の判断をする判定機関を地方裁判所に設ける。判定については、裁判官だけでなく医師、精神保健福祉士らが共同作業で決定を下す審判方式を取る。メンバーの構成比や表決方法については今後検討する。判定機関は、検察官の申し立てを受け、対象者の精神状態や生活環境を調べて、入院や退院の処遇を決める。処遇方法は精神障害が原因で再び犯罪行為をする恐れがあるかどうかが焦点となる。対象者は弁護士をつきそわせることができ、いない場合は判定機関の側で選任する。決定に対する不服や退院の許可を申し立てられるようにする。犯罪の被害者や遺族の審判傍聴を認める。適切な治療が受けられる場として、国公立の病院などを基盤に、人員配置や設備を充実させた専門施設を設ける。退院後の生活を見守り支援するため、地域の保護観察所や保健所、治療施設を活用する。また、司法精神医学の研究体制の整備、精神医療相対を充実させるための基本計画の策定なども検討課題としている。三十日、自民党のプロジェクトチームは、全国の地域内の判定機関が精神病院への入退院や通院を決定する「治療措置制度」(仮称)を新規立法で創設すること、退院後や通院中は、現行の保護観察所に生活指導を行わせることなどを決めた。
◎十月三十日
岡山家裁は、自宅に放火し母親ら二人を焼死させたとして、現住建造物党放火と殺人容疑で送致された二女(十八歳)に対する審判を開き、「心身耗弱状態にあり、拝啓には、知的障害を持つ二女が感情の制御などを身につけることができなかったという教育不足があった」「更生させるためには、相当長期間にわたる教育が必要不可欠」として、「知的障害に対する特別な教育が行われている少年院に送致するのが相当」と判断し、特別少年院送致とする保護処分を決めた。収容期間については「三年以上」とする処遇勧告を行った。
▼十一月三日〜五日
全国ハンセン病療養所入所者協議会は、全国一三カ所の国立ハンセン病療養所に入所している人の社会復帰に関する希望調査結果を発表。社会復帰を希望しているのは計八六人で、二月現在の総入所者数(四三八八人)の一・九六%だった。二園では希望者が一人もいなかった。同協議会は、国家賠償訴訟で全面勝訴判決が出ても、すぐに偏見や差別がなくなるわけではなく、差別や偏見を恐れ、社会生活への不安を感じている元患者が依然として多いことがわかったとしている。五日、静岡県御殿場市のハンセン病療養所「国立駿河療養所」で、例年、入所者と遺族だけで実施してきた入所者の追悼慰霊式が、国の謝罪を受け、全国では初めて、元患者の原告団とともに行政側の関係者も参列して行われた。
▼十一月六日
米司法長官は、積極的「安楽死」に協力する医視の麻薬処方登録を拒否する米麻薬取締局の方針を認め「痛みの軽減に麻薬を使うことは合法的な医療行為だが、自殺ほう助に使われるべきではないという麻薬取締局の法解釈は正しい」とした書簡を、同局長官に送った。「末期患者の自殺を手助けするために連邦管轄の薬剤を使うことは『合法的な医療目的』には当たらない」として、違反した医視の免許を取り消すよう求めた。全米で唯一「安楽死法」を定めたオレゴン州の「安楽死」を禁止する目的。麻薬処方には、麻薬取締局のに登録しなければならない。
▼十一月七日〜十六日
厚生労働省は、ハンセン病国賠訴訟の和解金で毎月退所者に支払われる「給与金」の額を決める作業部会を開いたが、元患者らは「こんな金額では生活できない」と同省を追及した。同省側が示した月額は生活保護よりやや高い程度の一四万六〇〇〇円で、元患者側が国民生活基礎調査などをもとに求めた最低二八万円の半額程度になっている。また、入所者の生活保障についても、国の謝罪広告のあり方、和解の対象とならなかった入所歴のない元患者やその遺族に対する保障が残され、同省と元患者側が話し合う「対策協議会」は六月に設けられたが全面合意にいたった項目は一つもない。九日、日本弁護士連合会は、奈良市内で開いた第四四回人権擁護大会で、ハンセン病患者の人権救済をめぐって同会の対応が遅れたと謝罪し、改めて積極的に取り組むことを誓う特別決議案を採択した。十五日、全国一三の国立ハンセ病療養所の入所者自治会出作る「全国ハンセン病療養所入所者協議会」は、半世紀の運動歴史を網羅し、熊本地裁判決までの記録をまとめた「復権への日月」を出版、協議会結成五〇周年を記念する集会を東京都内で開いた。十六日、同省と元患者は、「退所者給与金」の額を夫婦とも元患者で新たに退所する場合は二人で月約四二万円、療養所を出て一人暮らしをしている人で毎月約一八万円でほぼ合意した。
▼十一月七日
東京地裁は、十四日に和解協議を行うが、ヤコブ病東京訴訟の原告の一人が入院中の千葉県内の病院で肺炎で亡くなった。大津訴訟では原告(一三患者)全員が亡くなり、東京訴訟の原告(一二患者)のうち、生存者二人になった。
▼十一月七日〜十一日
全国精神障害者家族会連合会は、先月、「『精神分裂病』に代わる名称を、一緒に考えてください」と新聞広告等を通じて呼かけたところ、約二五〇〇通の反響があり、患者や家族以外にも一般市民からの意見も二割あった。原語を翻訳し直した「統合失調症」が約四割の支持を得た。十一日、日本精神神経学会は、「『精神分裂病』の呼称を考える公聴会」を開いたが、同連合会は集計結果を報告した。
▼十一月八日
厚生労働省は、厳しい雇用情勢が続いて、障害者の雇用拡大を阻害している制度を取り除く必要があると判断し、知的障害者や身体障害者の就業が困難な業種に特例で定めている雇用義務の除外制度について、段階的に廃止する方針を固めた。
▼十一月八日〜九日
日本弁護士連合会の人権擁護大会実行委員会は、「障害のある人に対する差別を禁止する法律」の試案(宣言)を策定し、奈良市で開かれる第四四回人権擁護大会で発表した。目的に「国家や国民(企業)による差別を包括的に禁止し、事件を回復するための救済手段を提供する」とし、労働、教育、住宅、交通、参政権などの各分野で、障害者の参入や利用を阻んでいる障壁(バリア)を取り除くことを企業などに義務づけた。不動産の売買や賃貸に関しては、「障害を理由に、不利益な扱いをしてはならない」と定めた。商店や金融機関、旅館や娯楽施設については、「合理的配慮義務」を企業に課し、「障害のある人がサービスを利用できない不合理な手続きを変えなければならない」として、違反した場合は障害者の側に損害賠償権が発生するなどを盛り込むなど、障害者を従来の「福祉の対象」から「権利を実現する主体」と位置付けている。九日、日本アビリテイズ協会など七団体は、「障害者差別禁止法を実現する全国ネツトワーク」を設立した。
▼十一月十二日
東京都障害児学校教職員組合は、「二〇〇〇年度障害児学校卒業生の進路実態と課題ー二〇〇一年三月卒業生ー」を発表。卒業生は九四七人で企業への就労は二四八人(二六・二%)で、昨年より三四人減少した。二年連続の二八・三%を下回った。企業規模では一二九人(五二・〇%)が大企業に就職しているが、就労できた人数は卒業生全体で考えると少数である。法定雇用率未達成企業が五五・七%あり、企業規模が大きくなるにしたがって未達成企業の数が多くなっている。零細企業への就労率は昨年度の一〇・六%から八・一%へと減り一割を割っている。また、卸売、小売業、飲食店が三八・七%から四〇・三%、クリーニング・清掃などを加えると四七・六%から五〇・〇%となり、一部業種に集中し、障害者全体では職業選択の幅が限定されていることがわかった。福祉就労は五八七人で、法内更生施設一三〇人(一三・七%)、法内授産施設一二八人(一三・五%)、無認可小規模作業所一五六人(一六・五%)で、福祉就労が企業への就労を大幅に上回った。今回は学校側の担当者の意見も掲載され、「例年採用してくれるスーパーで採用のレベルが上がり、不採用となった。」「健常者とまったく代わらない労働力を要求されることが多かった。育てていくという理解ある職場がもっとほしい」などが寄せられている。
◎十一月十二日
東京都教育委員会は、世田谷区に住む知的障害がある大門香織さん(一七歳)が都立千歳丘高校を二度受験して不合格になっていることに対し、支援団体の「大門香織さんの高校進学を実現する会」から、「同教育委員会が進めている都立高統廃合の結果、これまで定員割れで実現していた知的障害者の進学ができなくなったのは、障害者に対する差別である」として、来年度入学できるよう柔軟な制度を求める要望書を提出された。
▼十一月十二日〜十七日
与党三党の「心神喪失者等の触法および精神医療に関するプロジェクトチーム」は、重い罪を犯して不起訴になった精神障害者の入退院を決める新しい手続きや専門治療施設の創設を柱とする報告書をまとめた。触法精神障害者を取り巻く現状について、不起訴や入退院の判断過程が不透明で社会の信頼を得ていない、退院後のシステムが確立していないなどで一致。その上で、新たな処遇手続きとして、殺人などを犯した精神障害者が心身喪失などを理由に無罪・不起訴になった場合、全国五〇地方裁判所に裁判官、精神科医、精神保健福祉士ら精神医療関係者で構成する判定機関を新設し入院・通院の処遇を決める。国公立病院に専門治療施設を整備する。対象犯罪は「重大な犯罪行為」にあげた六つの犯罪とする。判定機関の決定に対しては、検察官と精神障害者双方に不服申し立て権を認め、精神障害者は弁護士の援助を受けられる権利があることなどを明記した。犯罪被害者やその遺族に対し、一定の範囲で判定機関の審議の傍聴を許可できることも盛り込んだ。また、日本の精神医療や福祉の充実を求め、患者が地域で安心して生活できるよう、地域医療を充実させるべきだとし、他科に比べて低い診療報酬の改善を求めている。政府は「心神喪失状態等重大犯罪者処遇法案」(仮称)の作成作業に入る。
▼十一月十四日〜十六日
東京地裁と大津地裁は、薬害ヤコブ病訴訟で和解勧告を出していたが、国の薬事行政と企業の責任を指摘した所見を正式提示し、二十七日までに所見への回答を求めた。両地裁の所見は、感染源はヒト乾燥硬膜の「ライオデュラ」てあることを前提として、被告側の国と企業(ドイツの医薬品メーカーのビー・ブラウン、日本ビー・エス・エス)に救済責任を求めている。東京地裁は、ヒト乾燥硬膜の「ライオデュラ」は死体から採取された硬膜をもとに製造されるため、病原体が硬膜を通して伝わる危険性があったとし、被告企業は遅くとも一九七八年十二月までに、クロイツフェルト・ヤゴフ病が伝染することを予見できたと判断。国についても、移植による感染が疑われる症例が一九八七年二月に米国に報告されたのに、有効な対策を講じなかったと指摘。国に対し法的責任の存否の争いを超えて、被害者の救済と再発防止に向け、積極的に職責を遂行することが妥当と考えるとして、和解を求めた。大津地裁は、遅くとも一九八七年には国の薬事法に基づく緊急命令など結果回避措置をとるべきで、そうしていれば被害は一定の範囲で妨げた」として、「国の責任を全面的に否定することはできない」と、行政の「不作為」について指摘、和解を促した。原告側は被告側に所見の受け入れを求め、厚生労働省前で先週から六日間の抗議の座込みを続けていた。十六日、同省は、所見を受け入れて和解する方向で検討を開始した。
▼十一月十五日〜十七日
政府・与党は、「重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇に関する新法」案について、障害者団体から反対の声があるとして、精神障害者に対する差別・偏見の解消を条文化する方針を固めた。十七日、全国ハンセン病療所入所者協議会は、これまでの支援に答え、社会の問題に積極的にかかわる必要があるとして、政府・与党の新法制定に反対している障害者グループの署名活動を支援することを決めた。
◎十一月十五日〜十九日
東京都交通局は、昨年二月に神保町駅で視覚障害者の男性が、下り電車が到着した音を上り電車の音と聞き間違えて線路内に転落していたことを明らかにした。この男性は、これまで駅での転落事故に五回あっていた。理由は、ホームの工事で電車の停止位置が変更されていた、点字ブロックが設置されていなかった、電車乗降側の点字ブロックと間違えたなどだった。十八日、警視庁池袋署は、東武東上線池袋駅のホームに一人で入った車いすの男性が転落、電車にはねられて渋滞になったと発表。十九日、車いすの男性は死亡した。
◎十一月十六日
最高裁第二小法廷は、第二次大戦中に日本軍の軍人として戦地で右腕を失った韓国人の金成寿(キムソンス)さんが、恩給の請求を棄却した不支給処分の取り消しと、国に損害賠償を求めた二件の訴訟の上告審判決を出した。争点の恩給法で日本国籍があることを支給条件とされていることが違憲かどうかについては、「日本国籍のある旧軍人と国籍を失った旧軍人の区別は、外交交渉による解決が予定されており、合理的な根拠があった」として訴えを退けた二審判決を支持、上告を棄却。国籍を失った旧軍人の戦傷者に対する補償がないことについても、「高度に政治的な考慮を必要とする立法政策上の問題で、裁量を逸脱したとは言えない」として棄却し、原告側の敗訴が確定した。
▼十一月二十日〜二十二日
東京地裁と大津地裁は、薬害ヤコブ病訴訟の和解勧告を出しているが、原告側は、両地裁が国と企業の責任を指摘し、救済を果たすべきだと述べていることを評価、和解を受け入れ、謝罪と所見を前提とした和解手続きでの被害者全員の救済を強く求める意見書を両地裁に提出した。二十一日、東京地裁は、薬害ヤコブ病訴訟の患者原告二人が、被告の医薬品メーカー(ドイツの医薬品メーカーのビー・ブラウン、日本ビー・エス・エス)など企業側に対し、医療費などの支払いを求めていた仮処分申請で和解を進めていたが、企業側が医療費など毎月二〇万円を支払うことで合意した。原告の男性には薬害ヤコブ病訴訟の判決が予定されている来年三月分まで、死亡した原告には九、十月の二カ月分が支払われることになった。二十二日、厚生労働相は、一九八七年以降の国の責任を指摘した裁判所の所見を受け、「和解に対する所見は大変厳しいが、法的責任ばかり主張していては、患者救済にならない。早く結論を出さなければならない」して、和解協議を進めることを正式発表し、両地裁に回答した。しかし、「裁判所の所見では、一九八年六月の第一症例に関する報告以前の国の責任は認めておらず、これが和解協議の前提となる」と国の責任の範囲を限定した。判決に至れば、確実に法的責任を問われると判断、関係部署への責任追及も想定されることが予想されるため、責任追及を回避したと見られる。被告企業も「いくつかの重要な事項、特に予見可能性にかかわる医学、科学文献の解釈については同意できない」としたが、「合理的な和解条件に達する可能性を求めて、できるだけの努力をする」として、和解手続きに参加する意向を示した。これで三者が手続きを進めることが確認された。原告が大津地裁に最初の提訴をしてから五年経過している。
▼十一月二十三日
厚生労働省は、今年度上半期の一般企業に就労している障害者の解雇状況について明らかにしたが、過去最悪を更新した。二〇〇一年四月から九月までに企業が「事業主の都合」による解雇届けを職業安定所(ハローワーク)に届けた障害者数は一五二九人で、内訳は身体障害一〇八三人、知的障害四一九人、精神障害二七人。過去最悪だった一九九八年度上半期の一四三九人を上回った。また、下半期は上半期を上回ることが多いため、年間数も一九九八年度(二九五〇人)を上回り、最悪になる見通しとなった。都道府県別では、愛知県が一番多く一〇一人、次いで北海道八五人、新潟県六〇人、長野県五七人、宮城県五三人の順だった。同省は、中小企業の事業所閉鎖や縮小、倒産に伴うものがほとんどで、全国的なリストラ傾向が障害者にも響いていると分析。愛知県が急増(昨年三八人)理由としては倒産が七件あることや、九月の三菱自動車工業名古屋製作所の乗用車ラインの閉鎖にともない十三人が解雇されていることが原因としている。新潟県では、新潟中央銀行の破たんに伴い一〇人が解雇された。
◎十一月二十七日
東京地裁は、視覚障害の女性を刺殺したとして強盗殺人罪に問われた二〇歳の被告(事件当時一九歳)の初公判を開いたが、被告は動機について「自分でもわからない」とし、殺意などを否認した。弁護側は「被告は幼い頃から虐待による心的障害があり、犯行当時は心神耗弱状態だった」と主張した。
◎十一月三十日
新潟地裁は、新潟県三条市の女性を九年二カ月間監禁して未成年者略取・逮捕監禁致死傷などの罪に問われた男性被告の論告求刑公判を開き、検察側は論告で「精神鑑定の結果は心身耗弱状態ではなく、被告が幻覚、幻聴があったというのは言い訳に過ぎない」と判断。「思春期の人格形成の時期や義務教育・高等教育の機会もすべて奪い、筆舌に尽くしがたい苦痛を与えた」と女性が受けた被害が大きいことを指摘、「自己中心的で陰湿かつ醜悪な反抗で、被害者が受けた苦痛を補うには、法の認める最高刑を課す以外に考えられない」「事件の悪質性を考えると、判決に未決拘留日数を参入すべきでない」などとして、逮捕監禁罪の最高刑である懲役一〇年を上回る懲役一五年を求刑し、結審した。検察側は女性に与える下着を万引きした窃盗罪で追起訴し、最高刑がより重くなる併合罪を適用し、女性が監禁された期間を上回る懲役を求めた。弁護側は最終弁論で、新ためて「心身耗弱状態」と未成年者略取罪の時効を主張。自宅に閉じこもる生活や家庭環境による寂しさなどもあったと情状酌量を求めた。
▼十二月四日
東京、大津両地裁は、薬害ヤコブ病訴訟の和解協議を進めているが、原告側は、和解案として、被告の国と企業に対し、支払いを求める基本額を患者一人当り一律六〇〇〇万円とし、これに、各患者の年齢などに応じた逸失利益を加算する案を両地裁に提出した。原告側の示した和解案は、患者の発症時の年齢や収入を考慮し、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を発症しなければ得られたであろう逸失利益や慰謝料を、基本額に積み上げるもので、発症から死亡までが特に長かった患者については、家族の負担を考慮し、要求額を増やしている。
▼十二月四日
岡山地裁は、ハンセン病国家賠償請求訴訟「瀬戸内訴訟」で、最後に残っていた原告三人が国と和解し、初提訴から二年三カ月で、同訴訟の原告(計三六二人)全員の和解が成立した。療養所の入所期間に応じて一人あたり一〇〇〇万円から一四〇〇万円の和解金を支払い、名誉回復の謝罪広告を掲載するなど。死亡した一人は遺族が見つからないため、相続財産管理人(弁護士)が和解、ほかの二人は元入所者が対象のハンセン病補償法に基づかず、家族らに病歴を知られることのない和解を選んだ。
▼十二月七日〜十八日
熊本地裁は、国のハンセン病政策をめぐる国家賠償請求訴訟のうち、療養所への入所歴のない元患者と、その遺族について、原告側と国の双方に、七月に続いて二度目の和解を勧告し、和解額を指定した所見を示した。七月の勧告では国側が勧告の受け入れを拒否しているため、早期解決を求めた。元患者の発症時期や死亡時期に応じた金額の算定基準を示し、遺族には元患者の死亡時期に応じて五五〇万円から七〇〇万円。非入所者は発症時期に応じて五〇〇万円から七〇〇万円。所見では、「入所歴のない原告について、社会で生活したことで一層、ハンセン病への偏見による差別を受けたり、入所者と異なり、十分な医療を受けられなかった」などとして、国家賠償請求権を認めた。十二日、原告弁護団は、和解勧告の受け入れを決め、十八日、国が和解に応じるよう厚生労働省に申し入れた。同日、熊本地裁は、原告、国側に和解のための補充所見を出した。国側の「根拠が示されていない」という求めに応じたもので、遺族に対する慰謝料は元患者と国で合意した若い基準を参考に、死亡時期に応じて慰謝料を一部減額、非入所者は隔離被害を受けていないことなどを慰謝料算定で考慮したと説明した。
◎十二月七日
水戸地裁竜ケ崎支部は、県内に住む知的障害をもつ女性が県立友部病院で働いている看護士から性的暴行を受けたとして、看護士と同県に慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟で、「不自然、不合理と思われる点が散見され、看護士がわいせつ行為をしたとは認められない」として、女性側の訴えを棄却した。女性には学習障害があり、証言の信憑性などが争点になっていた。弁護側は「障害者に対する認識が、全くない判決だ」としては東京高裁に控訴した。
▼十二月十一日
警視庁丸の内署は、身体障害者手帳で購入した新幹線の切符をインターネットの掲示板で宣伝し転売、約一〇万円の利益を得ていたとして、横浜市内に住む無職の男性を詐欺容疑で東京地検に書類送検したと発表。男性は内臓疾患で二級の身体障害者手帳を持っていた。手帳を持っていると乗車券が半額で購入できるが、男性は「社内や改札で手帳の提示を求められたことがなく、検札を受けたことがなかったことから思いつき転売した」と話しているという。
◎十二月十四日
神奈川県警茅ヶ崎署は、病気の長女が外で暴れたため、汚れた衣服を洗おうと浴室につれ込み、発作的に殺害したとして母親を殺人容疑で逮捕した。母親は「病気の娘がふびんで、一緒に死のうと思った」と供述しているという。
▼十二月十四日
厚生労働省(医道審議会の精神保健指定医資格審査部会)は、診療報酬の不正請求や患者への不当な拘束(個別ケースごとに判断せずに拘束を指示したり、腰ひもでしばるなどしたうえ、カルテにも拘束について記録していなかったなど)などが問題となった精神・内科病院「朝倉病院」について、精神保健指定医の指定取り消し処分を厚生労働相に答申した。一九八七年に指定医制度ができて以来、四人目の処分となった。
▼十二月十八日
法務省は、三千人以上の司法書士でつくる「成年後見センター・リーガルサポート」が三菱信託銀行に管理・運用を委託した基金に、信託法上の許可を出した。「成年後見制度」を利用しやすくするためで、来年初めから助成金制度を開始する。視力が十分でない人が成年後見を申し立てる際の鑑定費用や、後見人への報酬に充てられる。
◎十二月十九日
埼玉県浦和労働基準監督署は、戸田市のクリーニング会社「クリーンホールセール」の社長と同社を、知的障害者ら従業員三人の賃金(四カ月から一年十カ月間の賃金計約六〇〇万円)を支払わなかった労働基準法違反(賃金不払い)の疑いで書類送検した。知的障害者二人は二十カ月から二十二カ月受け取っていなかった。残る一人は入社以来賃金が支払われていなかった。
▼十二月二十日〜二十二日
坂口厚生労働相は、ハンセン国家賠償訴訟で、元患者の遺族と療養所入所歴のない元患者らについて、熊本地裁の和解勧告を受け入れる意向を与党側に伝え、与党三党も政策責任者間で「和解すべき」との意見で一致した。厚生労働相は、入所歴のある元患者への賠償は政府も受け入れておりその権利を遺族が継承できることは過去の判例からほぼ確実、入所歴がなくても、らい予防法によって患者・元患者が差別や偏見に苦しめられたのは入所者と同じと判断し和解勧告を受け入れる方針を示した。しかし、厚生労働省内や首相官邸には「国が強制的に隔離されていた元患者と同じ基準では対応できない」と難色を示す声があがっている。二十一日、熊本地裁は、和解協議を開いたが、国側は回答を保留した。二十二日、厚生労働省は、地裁所見について、遺族への慰謝料算定の根拠が不明、入所歴がない患者の発症時期の認定基準がなく算定根拠も不明、国の違法な隔離政策により被害を受けたというわけではなく、国民に説得力のある国の損害賠償責任の根拠がないなどとして、和解を拒否すべきだとする文書を明らかにした。判決を求め、敗訴の場合は控訴するとしている。与党三党の政調会長は、「敗訴は間違いなく、上訴も困難」として、和解に応じるべきだとする与党見解をまとめ、厚生労働省と法務省の両事務次官に伝えた。
◎十二月二十三日〜二十五日
警視庁三鷹署は、精神病院「井之頭病院」で、入院中の患者の首に身体の動きを抑制するベルトが引っかかって二十三日に死亡していたと、二十五日に発表した。患者は幻覚症状があるとして保護室で治療を受けていたが、ベルトは腹部などを固定するために取り付けられ、苦痛を和らげるためにゆるめられていたため、患者がベッドから転落した際に首に引っかかってしまったためと見ている。同署は管理体制に不備がなかったか調べを開始した。
▼十二月二十四日〜二十七日
政府は、ハンセン病国賠訴訟で、熊本地裁が元患者の遺族と療養所の入所歴がない元患者らについて和解するよう求めた所見について、和解協議に応じる見通しとなった。厚生労働相と法相が和解を受け入れる方針で一致。二十五日、厚生労働相と厚生労働省の事務方が調整し和解協議に臨む基本方針で合意した。厚生労働相が閣議後に、遺族原告と入所歴のない原告との和解に応じることを認めたうえで、国側は遺族原告に遺骨の受け取りや埋葬を要請する。入所歴のない原告に対しては、入所せずに治療を受けられることが容易でなかったことに基づく損害については認める。条件つき(国は原告側の弁護士費用と遅延損害金を負担しない。熊本地裁と同様の訴訟が今後起きた場合、賠償対象となる遺族原告かどうか、相続の適格性を確認する。入所歴のない原告については医療機関の診断書などによる発症時期の証明などから裁判所が認定する)で和解に応じることを正式表明し、同地裁の示した和解案に従い一人当たり五〇〇万円から一四〇〇万円の一時期金を支払う方針を固めた。今後のハンセン病問題の政策の枠組みについても、元患者側と同省は合意に達し、四項目の「確認事項」(新聞に厚生労働相名の謝罪・名誉回復、終生の在園保証、社会復帰・社会生活支援、真相究明)が取り交わされた。二十七日、和解協議が開かれ、原告側は国側の条件を受け入れた。国側は和解勧告受諾の方針を回答、一時金の額など基本部分で原告と同意したが、非入所者の恒久対策協議を盛り込むことなど細部の詰めが間に合わず、和解成立は一月後半となった。
▼十二月二十五日
厚生労働省は、第五回「ハンセン病問題対策協議会」を元患者との間で開き、ハンセン病問題の恒久対策の基本的な枠組みについて、ハンセン病国賠訴訟のうち未解決になっている元患者の遺族と療養所に入所歴のない元患者について、厚生労働相が和解の方針を正式表明したため、元患者側が「全面解決」への道筋がついたとして、両者が合意し、協定書に調印した。同省は、療養所を出て社会で生活する元患者に対し、退所者給与金(来年四月から基本額一人月額一七万六一〇〇円)を支給する。退所者の医療は、国立ハンセン病療養所内に限る。医療費のうちハンセン病と関連疾患の自己負担分を免除する。元患者の名誉回復のため、今年度から来年度にかけ、厚生労働相名で全国紙と地方紙に謝罪広告を掲載する。中学生向けの啓発パンフレットを作成配布する。療養所に入所し続ける権利を保障する。隔離政策を九〇年間も続けてきた原因について、科学的・歴史的に検証し、再発防止のための提言を行う「検証会議」を来年四月に発足するなどを盛り込んでいる。
◎十二月二十六日〜二十七日
長崎地裁は、在韓被爆者の李康寧(イカンニョン)さんが国と長崎市を相手に、韓国への帰国を理由に被爆者援護法の健康管理手当を打ち切った処分の取り消しや未払い分の支給を求めた訴訟の判決を出した。大阪地裁に続いて原告側の訴えを認めた。「手当打切りは法的根拠がなく、法の下の平等を定めた憲法十四条や国連の国際規約に反する」「手当は日本に住まない被爆者にも差別なく支給すべきだ」とする原告側の主張を認め、未払い分一〇三万円の支払いを国に命じた。慰謝料などの請求は棄却した。二十七日、李さんと支援者は、首相と厚生労働相あてに控訴断念と在外被爆者への援護法適用を求める要請書を提出した。
◎十二月二十六日
大阪地裁は、大阪教育大付属池田小学校で児童八人を殺害し、児童十三人と教師二人が殺傷された事件で、殺人、殺人未遂罪などに問われた男性の初公判を開いた。検札側の冒頭陳述が行われ、罪状は殺人、殺人未遂、建造物侵入、銃刀法違反。性格形成として、自らは被害者的にものごとを考え、都合の悪いことは他人のせいにする傾向があり、社会的に高い地位にあこがれたが、学歴に不満をいだいていた。動機としては、一九九年に公務員の職を失い人生がおかしくなったは三番目の元妻が原因と思いこんだ。金を取ろうと離婚調停無効確認訴訟を越したが、父親の助けを得られず、将来に絶望し、学歴への劣等感から社会や他人への責任転嫁するようになり、自殺だけでなく、多くの人に同じ絶望的な苦しみを与えようと決意した。同小を狙った理由は、大量殺人を考えたが、小学生なら逃足も遅く、簡単に殺害できると考え、あこがれていた同小を選んだなどと理由を述べた。被告の男性は起訴事実を全面期に認めたが、弁護側は、被告が一時的に心身喪失か心身耗弱だった可能性を主張、今後再鑑定を求める方針で、被告の刑事責任能力が最大の争点になる。
▼十二月二十六日
大津地裁は、滋賀県五個荘町の肩パット製造会社「サン・グループ」の知的障害をもつ元従業員(十二人)が、元社長に年金を横領された事件(元社長は横領罪で懲役一年六月の実刑判決を受け服役した)で、「元社長による障害基礎年金横領事件が起きた責任の一端がある」として、年金福祉事業団と業務代理をした湖東信用金庫に約八一四〇万円の損害賠償を求めていた訴訟について、和解を成立させた。湖東信用金庫が和解金三二〇〇万円を支払い、和解条項に「知的障害者との取引で本人の意思確認に一層万全を期す」と盛り込んだ。
▼十二月二十六日
政府は、重大な犯罪を犯した精神障害者に対する新たな処遇システムについて、入退院や治療の要否を裁判官と精神科医各一人の合議によって判断する方式を採用することを決めた。判断が異なった場合についての最終責任は未定。司法手続きの中で裁判官以外が裁判官と同等の立場で関与することは過去にない。結論を出すにあたっては精神保健福祉士(PSW)ら専門家の意見も聴くが、最終決定権には加わらない。審判は検察官が地裁に申し立て、結論を出すに当たっては精神保健福祉士(PSW)ら専門家の意見も聴く。その上で裁判官と精神科医が専門治療施設への入院や通院措置などを決める。医師は専門性の高い適格者を事前に厚生労働省に登録する。患者には弁護士を専任することが認められ、決定に不服がある場合は高裁に抗告ができる。治療や処遇の内容に関して高裁が地裁と異なる見解に達した場合は審理を差し戻し、別の裁判官と医師によって再び審判する方針を示した。
▼十二月三十日
厚生労働省は、二〇〇一年六月現在の障害者の雇用状況調査結果を発表。一八万六五七七人が勤務し、平均雇用率は前年と同じ一・四九%。障害者雇用促進法による法定雇用率(一・八%)の未達成率は前年の五五・七%から〇・六%増の五六・三%で、過去最高となった。従業員数別に見ると、九九人以下の企業が一%増で五三・三%と悪化。千人以上は前年より一・一%減ったが、七三・四%で最多だった。関連調査では障害者の解雇者数は、過去最悪だった一九九八年を上回る勢いで増えていて、二〇〇一年九月末までで一五二九人となっていることがわかった。雇用の受け皿だった中小・零細企業で未達成割合が増えていることが大きな要因としている。
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