<<  2001年へ

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

2003年へ >>

   

2002年

    

◎一月二日〜七日
北海道は、社会福祉法人「札幌育成園」が、入所者に支給される障害基礎年金を全額寄付させていたとして別監査を実施していたが、強制的に寄付させていたことがわかったとして、中止するよう改善指導を出していたことを公表した。昨年末に退所者から「年金を返してもらえない」との訴えで特別監査を実施していた。入所の際、本人と保護者に、年金を保護者らで作る任意団体の「父兄互助会」に寄付し、園のために使用する承諾書を書かせていた。入所者への寄付の強要は厚生労働省通知で禁じられている。同法人は、運営する五カ所の知的障害者施設には入所者計三六〇人がいて、年金支給を受けている約三〇〇人全員から年金全額を寄付させていた。年間約二億円にのぼり、二十年以上前から続けられ、寄付総額は数十億円に達する疑いが出ているという。年金は個々の口座に振り込まれた後、自動的に「父兄互助会」名義の口座に入られていたが、園側が口座の管理をし、園に「再寄付」させていた。園は寄付金から入所者が支払う国民健康保険料と施設利用料を支出し、残りは施設を建てる際の借入金約二〇億円の返済に充てていた。ここ数年は入所者から寄付させていた年間約二億円のうち、約一億五千万円を返済に充てていた。四日、理事長は年金徴収を一月から中止し、当初二年後の予定だった障害者の財産の個人管理への移行を、前倒しする考えを示した。また、互助会口座の年金残高が約六億円であることを明らかにした。徴収した年金の一部を返済に充てていた施設建設費の借入総額は約二〇億円で、現在の借金残高は約六億円。一九九七年までは返済全額に年金を充てていたが、それ移行は大半は法人の剰余金で賄ってきたという。元入所者の一人は、同園を業務上横領で告訴することを明らかにした。七日、同園は一九八九年から一九九五年までの六年間に、道の了承を得ず、入所施設の土地九物件と建物七物件を担保に金融機関から計十四億九七〇〇万円を借りていたことも明らかになった。

  

▼一月七日
大阪地裁は、大阪教育大付属池田小学校事件で、殺人、殺人未遂罪などに問われた男性の第二回公判を開いた。弁護側は冒頭陳述で、「動機の解明に最大限の努力が払われるべき」とした上で、「犯行は計画性があるように見えても、刹那的、衝動的なもので、計画性や行動制御力について慎重な検討が必要」「犯行を決意、実行する過程に一時的な心身喪失、耗弱を疑う」と主張。被告が再度の精神鑑定を「不必要」とし、弁護側と意見が一致していないことに触れ、被告に「君自身の心の軌跡をたどり、なぜ止めることができなかったのか、君しか語りえない責務がある。そのためには、再度の精神鑑定や心理分析を受けることが残された課題」などと呼び掛けた。また、初公判で不同意にした被告の父親や、被告を過去に診断した精神科医の調書の一部など、証拠の一部について、同意に転じた。

  

◎一月八日
厚生労働相は、海外に住む被爆者に被爆者援護法の適用を認めた長崎地裁判決(韓国釜山市在住の李康寧氏が、帰国を理由に同法の健康管理手当の支給を打ち切られたことを不当として訴えた裁判で、国に支払いを命じた)について、判決を不服として福岡高裁に控訴する方針を明らかにした。原爆医療と切り離して健康管理手当を支給するのは制度の趣旨になじまない、一九九四年の援護法制定の際、在外被爆者を対象とする内容の修正案を否決している、国は大阪地裁判決について控訴しており、国が勝訴した広島地裁判決との整合性を図り、高裁段階での判決を待つ必要があるなどと判断した。同省は、大阪地裁判決を契機に、在外被爆者の救済策を検討。被爆者援護法の枠外で、来年度から三年以内に韓国、米国などに住む被爆者二八〇〇人に来日してもらい、必要な治療を受けてもらうことなどを決定している。

  

▼一月八日
大阪府は、精神科病院の閉鎖性を減らし、人権侵害の根絶と医療の質の向上を図るために、精神科病院の入院患者の権利を守る公的な権利擁護制度「精神医療オンブズマン」(仮称)を、新年度から開始することを決めた。NPOと行政機関、専門家、市民の連携で行うもので、入院経験者や一般市民を含め、研修を終え登録したメンバーが、閉鎖病棟も含んで病棟を訪ねて患者の声を直接聞き、患者の不満や要望、相談を聞き取り、調査結果を病院に伝え、病院側に改善を求める仕組み。予告なしの訪問もする。調査結果は患者の個人情報を除いて一般にも公開する。条例などは設けず、病院側は任意で協力する。

  

▼一月八日
警察庁は、昨年六月に成立した道路交通法施行令の改正試案について、「障害者の欠格条項をなくす会」などと協議していたが、精神分裂病、てんかん、低血糖症、そううつ病などの障害名を具体的に指定し、症状に合わせた免許取得の条件を規定することになった。昨年、精神障害者や特定の身体障害者などの免許取得を一律に拒んできた欠格条項が撤廃されたため、その代わりに主治医の診察や、専門医による臨時適正検査と、「過去に病気で意識を失ったことがあるか」といった質問項目を設け、該当者にはチェックしてもらう自己申告制を導入にする見込み。同会は、「試案は『障害者だから人をはねる危険がある』という発想に基づいており、障害者に対する差別を助長することになる」「持病があってもセルフコントロールをしながら安全に運転している人の免許まで奪われる可能性がある」などと指摘している。同庁は、「運転適正相談窓口」の充実で、精神障害者の免許取得を進めるとしたが、交通安全を確保する観点から、試案の見直しは不可能としている。一方、「全国交通事故遺族の会」は、試案について「それだけでは免許の有効期間中、ずっと事故を起こさないという保証はない」として、現行の欠格条項に該当する人に対し、免許申請時に診断書の提出を求める、定期的な健康診断を義務付けることなどを強く求めている。

  

▼一月九日
厚生労働省の労働政策審議会は、障害者雇用の充実を求める意見書を厚生労働相に提出した。従業員のうち一定割合(法定雇用率・企業は一・八%)以上の障害者を雇うように義務付けている制度について、障害者の就業が困難として雇用義務を特例で免除している三六職種について、従業員の割合(除外率)を段階的に縮小・廃止すること求め、民間企業では約十年間かけて免除職種の廃止を目指すことを盛り込んでいる。同省は、意見書に基づき、通常国会で障害者雇用促進法の改正案を提出する。

  

◎一月九日
愛知県警捜査二課と南署は、昨年六月に聴覚障害の女性客をだまし、手話で定期預金の継続手続きを持ちかけ、預金払い戻し請求書を作成させ、その請求書を使って岡崎信用金庫から現金約一〇〇万円を詐取したとして、元岡崎信用金庫職員を詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕した。容疑者の職員は聴覚障害者の親族から手話を学び、窓口では障害者の対応を引き受けていた。容疑者の職員は同信用金庫を昨年六月に懲戒解雇されている。

  

▼一月十日
大津地裁は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CDJ)に感染したとして、患者やその遺族が製薬会社などを相手に起こしている訴訟の第三回和解協議を開いたが、硬膜を製造したドイツの「ビー・ブラウン」は、被告側としては初めて和解案を同地裁に提出した。和解金額は公表されなかった。薬害エイズ訴訟の患者一人当たりの一時金の金額(四五〇〇万円)を参考にしたとみられる。しかし、同社に予見可能性が生じた時期を一九七八年とした大津、東京両地裁の和解所見については、「不同意」としている。

  

▼一月十日
フランス国民会議(下院)は、「誕生前の障害に対して訴訟は起こせない」とする法案を賛成多数で可決した。母親が妊娠中に風しんになったことが原因で視覚障害になった青年が、「医師が母親の病気を見つけていれば、母親は中絶していた」と、誕生前に障害を受けた人の「生まれない権利」を主張していたのを、約一年前(二〇〇〇年十一月)に破棄院(最高裁)が認めて医師に損害賠償を命じた。しかし、障害者団体が「判決は障害者を生きる価値のない人間と決めつけた」と批判の声をあげ、医師団体も診療拒否のストライキを実施、政府も「生まれない権利は障害者を冒涜する」として、この判決に対抗して新しい訴訟法を作成し提案していた。法案では障害者の家族の訴訟権を奪わないために「明らかな医療ミスで子どもに障害が生じた場合は(子どもでなく)両親に訴える権利を認める」としている。

  

▼一月十日〜二十一日
熊本地裁は、ハンセン病国家賠償訴訟の元患者の遺族や入所歴のない元患者についての和解協議を開き、原告、国側の双方が和解案を提出した。原告側は謝罪などの明文化を求めたが、国側が検討するとして和解案の合意を持ち越した。十八日、和解内容に国の謝罪を盛り込むことで合意した。二十一日、ハンセン病国家賠償訴訟の全国原告団と弁護団は、熊本県の国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の園長が、同園の自治会機関紙に国家賠償訴訟を批判する論文(「一部の関係者は勝訴に酔いしれて浮かれっぱなしで、不安を感じる」「裁判は何を目的に、何を議論するために起こされたかはっきりしないものを感じていた」など)を寄稿したことについて、「元患者のほこりと希望を否定し、人権回復を著しく阻害する」として、園長や関係機関に人権回復の措置を講じるよう法務省に人権救済を申し立てた。

  

◎一月十一日
厚生労働省と東京都目黒区は、地下鉄サリン事件被害者の女性が、オウム真理教(現アレフ)から受けた賠償金の一部約三〇〇万円について、「不特定多数の生命に危害が及んだ得意な事件で、国は既に被害者救済に特別な配慮をしている」として、特例で収入認定せず、生活保護費の返還を求めない決定をしたことを明らかにした。目黒区は、一九九八年と二〇〇一年に「受け取った場合は生活保護費の返還を求める」と通知してきたが、女性は三年半にわたり再三収入認定をしないように訴えていた。生活保護を受けながら特例で裁判の損害賠償金(裁判の損害賠償金は返還対象の「収入」として認定されるのが原則となっている)を収入認定しないケースは初めてといわれている。女性は同区福祉事務所を訪れ、「地下鉄サリン事件の被害者となり、身体的・精神的障害を残す結果となったことから受領した損害賠償金の一部であり、生死をさまよい、十分な社会復帰が果たされないことに対する賠償金は、収入認定の対象となりえない」との意見書を添えて、オウム真理教(現アレフ)からの賠償金の一部約三〇〇万円を受け取ったことを申告したが、区側は「オウムの損害賠償金はすべて収入に認定しない」と回答した。

 

▼一月十一日
厚生労働相は、国民年金の任意加入の時代に学生や主婦だったため未加入のまま障害を負い、障害基礎年金を受けられない約一〇万人の「無年金障害者」の早期救済の必要性から、年金制度の枠外での福祉策などを含めた検討に入り、年内にも結論を出す方針を明らかにした。「無年金障害者」が国を相手取った損害賠償請求訴訟を起こしている。

  

◎一月十三日〜十八日
大阪府警淀川署は、「妻と二人で娘の首を占めて殺した」と自首してきた男性(六五歳)と、自宅にいた妻(五九歳)を殺人容疑で逮捕した。「普段から娘(三四歳)が暴れるので二人で殺した」と供述している。十八日、葉県警千葉北署は、「五、六年前から入退院を繰り返し、家庭内で物を壊すなど乱暴を繰り返していた長女(二七歳)が苦になり殺した」として、出頭してきた父親(五三歳)を殺人容疑で緊急逮捕した。

  

▼一月十四日
東京地裁は、「難産が予想されたのに無理に出産させたため、子どもに重い障害が残った」として、帝京大を相手に約一億七九〇万円の損害賠償を求めた提訴を受けた。長女を生んだ際に難産だったため、通院当初から「帝王切開を希望する」と医師らに何度も話していたが配慮がなされなかったためとしている。夫婦側は、担当医に長女の難産の話が引き継がれていなかったことや、安易に鎮痛促進剤を使い監視も怠ったこと、胎児が仮死状態となり切迫した状態でむりやり出産させたことなどの過失があると主張している。

  

▼一月十五日
国土交通省は、障害者の国際会議「障害者インターナショナル(DPI)世界会議」が札幌で開かれるため、国内の航空会社に対し「搭乗人数制限が参加の障壁になりかねない」として制限の緩和を要請してきたが、航空会社側で組織する定期航空協会は、見直しに向けた作業部会を作り、客室乗務員がすべての乗客の緊急脱出を介助できるよう、障害がある旅客に対し人数を制限してきた「搭乗人数制限」の見直しを始めた。現行では、翼の上を除く一階扉の枚数をもとに算出しているが、五〇〇人以上が搭乗できる国内線ジャンボ機の場合、自力で歩けない旅客の上限は「付添い人あり」で一六人、「なし」で四人。目が見えない旅客も付添いがあれば無制限だが、ない場合は一六人までとなっている。

  

▼一月十五日〜二十三日
厚生労働相は、大臣室で薬害ヤコブ病訴訟の大津、東京両地裁原告計十人と公式には初めて面談した。原告団は改めて患者の全面救済や謝罪、早期の和解成立を求めた。同相は、「一九七三年に輸入承認した硬膜で多くの患者が発生。初期に予測できなかったとはいえ、多発した現実は動しがたく、国民の健康を預かる省のトップとして責任の重大さを痛感している。一日も早く患者や家族の苦難にお答えしたい」「亡くなられた方には心から哀悼の意を表し、ご家族に対しても最大限の心を込めてお悔やみを申し上げたい」と、国の救済責任を認めた裁判所の所見を踏まえ、法的責任の争いを超えて早期に全員救済を目指す和解成立を強調した。二十三日、患者で原告の一人が死去した。同訴訟の患者の生存者は全国で三人となった。

  

▼一月十九日
日本精神神経学会は、理事会で「精神分裂病」という病名を「統合失調症」に変更することを承認した。一九九三年に、全国精神障害者家族会連合会が「人格を否定するような響きを持つ『精神分裂病』という名称を替え、偏見や差別の解消を図ってほしい」と意見書を提出していたが、学会が設置した「呼称変更委員会」が議論を重ね、アンケートや公聴会を開いたりしてきた。その結果、「社会的にも医学的にもこの名称は不適切」と判断し、「連想の分裂」を意味する言語の「スキゾフレニア」を翻訳し直した「統合失調症」が最も相応しいということになった。当面、医療、保健、福祉など患者・家族が直接かかわる領域に限られ、医学教育や研究の場では従来通りとされる。新名称は今年八月に横浜市で開かれる世界精神医学会で正式に発表される。また、患者や家族にとって医師や病院を選ぶ材料とするために、一定以上の治療技術を持った医師であることを保証する「認定医制度」の創設も承認された。

  

◎一月二十四日
横浜地裁は、女児(当時三歳)に暴行を加え虐待死させた父親に対し、「被告は耳が不自由で言葉で伝えるのが困難なため、女児がいうことを聞かないと、以前からつねったり、たたいたりしていた」「暴行は、三歳の女児に対する仕打ちとは思えない執拗、苛烈極まりない、しつけとは無縁なものだ」として、懲役四年の実刑判決を出した。

  

◎一月二十二日
東京地裁は、浅草の路上で女子短大生を殺害したとして殺人などの罪に問われた被告の公判を開いた。弁護側による被告人質問で殺意があったかと問われ、「わからない」と応えた。初公判で罪状認否の際には、裁判長に「殺意をもって刺したのは間違いないか」と聞かれ、「間違いありません」と応えていた。

  

◎一月二十二日〜二月五日
新潟地裁は、柏崎市の自宅に女性を九年二カ月にわたり監禁し、逮捕監禁致傷などの罪に問われた被告に対し、「虐待され続けた被害者の苦痛や屈辱感は筆舌に尽くしがたいのに、被告は行動を悔いることも、被害者を哀れと思うこともなく、自己中心的な態度に終始した」「被害者に落ち度はないのに、思春期及び青春時代という最も重要な時期を奪い取られており、反抗の結果はあまりにも重大だ」として、懲役十四年の判決を言い渡した。被告の責任能力については、「脅迫性障害や分裂病型人格障害はあるが、精神病ではない」とした精神鑑定結果を踏まえ、完全責任能力を認定。窃盗事件については「被害者に着せるために反抗に及んだもので、犯情は相当悪質だ」と監禁との関連を重視し、検察側の主張した最高刑がより重くなる併合罪を適用。被告側は控訴した。二月五日、新潟地検は、「量刑が著しく軽きに失するとは断じがたい」として、控訴しないことを明らかにした。

  

◎一月二十四日
横浜地裁は、女児(当時三歳)に暴行を加え虐待死させた父親に対し、「被告は耳が不自由で言葉で伝えるのが困難なため、女児がいうことを聞かないと、以前からつねったり、たたいたりしていた」「暴行は、三歳の女児に対する仕打ちとは思えない執拗、苛烈極まりない、しつけとは無縁なものだ」として、懲役四年の実刑判決を出した。

  

▼一月二十五日
熊本地裁は、ハンセン病療養所に入所後死亡した元患者の遺族や入所歴のない元患者が国会賠償を求めた訴訟で、昨年末から和解協議を進めていたが、国と原告側、未入所者が十分な治療を受けられなかったことについて国が賠償責任を負うこと、一時金額とその条件で「基本合意書」に合意した。国の政策が患者への差別・偏見を助長した法的責任を認める内容で、死者の名誉回復として、療養所に残る遺骨を遺族が引き取れる状況になるように互いの努力することを明記。引き取らなくても、国は一時金を支払う。保障の基本方針は昨年暮れに両者がおおむね合意した内容で、遺族に死亡時期に応じ五五〇万円から一四〇〇万円、入所歴のない元患者に発症時期に応じ五〇〇万円から七〇〇万円の一時金を支払う、訴訟に参加していない遺族や入所歴のない元患者については今後、個別に訴訟手続きをしてもらい、受給条件が確認されれば国は争わずに和解するなどを盛り込んだ。二十八日、厚生労働省内で厚生労働省相と原告代表が「基本合意書」に調印した。国は、強制隔離などの政策により「入所歴なき原告を含む患者・元患者の人権を著しく侵害し根多大な苦痛と苦難を与えてきた」として謝罪した。三十日、熊本地裁は和解協議を開き、国と原告側の間で正式に和解が成立した。入所歴のない元患者十五人と死亡した元患者二四人の遺族六五人に対し、総額約三置く八七九五万円の一時金を支払う。

  

▼一月二十六日
法務省は、触法精神障害者が心身喪失を理由に無罪・不起訴になった場合の処遇の見直し問題で、現行の保護観察官と別枠で、処遇決定後の投薬治療などアフターケアを指導する「精神保健観察官」(仮称)を新設し、全国五十カ所の保護観察所に配置する方針を固めた。精神保健福祉士(PSW)の有資格者の中から採用する。触法精神障害者処遇法案(仮称)に盛り込む方針で関係機関と調整に入った。地域で治療の処遇が欠挺した人を対象に、地理用紙説や保健所、ボランティア団体などと連携・協力し、投薬治療の継続や退院後の社会復帰を支援するコーディネーターの役割をになうとしている。

  

◎一月二十八日
埼玉県警越谷署は、特殊学級に通っていた教え子(中学三年生の女子生徒)にわいせつな行為をした児童福祉法違反(いん行禁止)容疑で、同市立中学校教諭を逮捕した。特殊学級の担任で、電話で家族の留守を確認し、自宅を訪れ、二〇〇〇年七月まで四回から五回、体を触るなどのわいせつな行為をした疑いで、同年九月、生徒の母親が扶助暴行容疑で告訴していた。教諭は容疑を否認している。

  

◎一月三十一日
東京高裁は、神奈川県の相模原協同病院に一歳の時入院した際、看護婦に与えられた玩具で窒息し、障害が残ったとして、九歳の男児と両親が病院を経営する神奈川県厚生農業協同組合連合会などに損害賠償を求めた訴訟で、完全看護態勢をとり、面会時間以外の家族の付添いを認めていなかった事から「安全配慮義務は通常の病院より重い」とし、「玩具を与えた看護婦が三〇分以上病室を離れており、病院は常時監視する態勢を整えなかった責任がある」と判断。「看護婦らに事件を予知できなかった」として請求を退けた一審判決を変更し、同連合会が男児に一億三四二七万円を支払うよう命じた。

    

▼二月二日
政府は、触法精神障害者の処遇についての法律(重大な触法行為をした精神障害者の処遇に関する法律案・仮称)を導入しようとしているが、その骨子を明らかにした。今回の政府案では、入院・通院の判断要件について、「再犯のおそれ」を明記したうえで、「十分な治療をして本人の社会復帰を図る」ことを目的とするとしている。入院期間は、六カ月ごとに裁判所で審判し延長することにし、上限規定を設けていない。精神障害者側には弁護士の選任権や入院延長決定に関する抗告権など不服申し立て制度を設けるなどしているが、入院期限を設けないことにより長期の入院も可能にするものとなっている。一九七四年の改正刑法草案は治安維持を優先し過ぎると批判を受けたが、今回の案は「隔離優先」が懸念され、精神障害者への偏見を増幅する可能性が大きい内容となっている。対象は殺人や放火などの重大な犯罪事件を起こした精神障害者が心身喪失を理由に不起訴・無罪とされた場合。その処遇案は、処遇の審判は全国五十地裁に処遇判定機関を新設し、裁判官と精神科医各一人の合議で、別の精神科医に鑑定を依頼し、その結果に基づいて「再犯のおそれ」があると判断すると入院や通院を命じる。合議体は精神保健福祉士を参与員として関与させ、意見を聞くことができる。入院や通院は厚生労働省が指定する特別な治療施設で行う。施設の管理者は、「再犯のおそれ」がないと判断した場合は退院許可を申し立てなければならない。「再犯のおそれ」があると認める場合は六カ月ごとに裁判所に入院継続を申し立てなければならない。通院治療命令を受けた人の生活指導や経過観察は、全国の保護観察所が担当する。通院期間の上限は延長を含め五年間程度とする。通院者に「再犯のおそれ」があると判断された場合は、保護観察所長が裁判所に入院の申し立てをし、改めて処遇を決定する。精神障害者の生活支援について知識や軽減がある人を新たに「精神保健観察官」に任命し、保護観察所に配置するなどを盛り込んでいる。
 
◎二月四日
近畿弁護士連合会は、五個荘町の肩パット製造会社「サン・グループ」の社長が知的障害の従業員らの障害基礎年金を着服した事件をめぐり、障害者らの訴えに対応しなかったとして、八日市労働基準監督署に対し、知的障害者から申告、要望などがあった場合、安易に排斥せず、積極的に権利侵害の救済に努めるよう求める勧告を出した。同連合会は、一九九六年に「サン・グループ被害者の会」ら被害を受けた知的障害者側から人権救済の申し立てを受けていた。同監督署が一九九二年十一月と一九九四年九月に「サン・グループ」の従業員から投書や電話で相談を受けながら、同社に対して積極的な情報収集活動をせず、監督指導などの対応をしなかったため、知的障害者の公的機関に救済を求める権利を侵害したと認定した。一九九二年の段階で臨検などの積極的な措置をとるべきだったとしている。また、八日市公共職業安定所や滋賀県など四カ所には、障害者の権利擁護のための体制を充実するよう要望書を提出した。
 
▼二月六日
米国オレゴン州は、一九九七年に「安楽死法」を施行したが、昨年一年間に二十一人が「安楽死」(医師が麻薬を処方する)を選択していることを明らかにした。ほとんどが高齢の末期がん患者だった。同州では今まで九十人が法律に基づく「安楽死」を選択している。米司法長官は昨年十一月、「安楽死」に協力する医師の麻薬処方登録を取り消し、同法を事実上の禁止に持ち込む方針を発表したが、同州は、連邦政府が州の権利を侵害しているとして、米連邦地裁に提訴している。
 
◎二月八日
茨城県警つくば北署は、知的障害の長男(二九歳)の母親(五三歳)を監禁の容疑で逮捕した。長男が昼頃まで寝ていたので注意したが従わなかったため、敷地内の物置のはりからつるした鎖を体に巻いて固定し、外からつっかえ棒をしていたが、鎖が首に巻き付いて死んでいるのを発見、通報した。鎖の輪は一人でも抜けられる状態だった。司法解剖の結果、死因は窒息死と判明したが、鎖で固定した行為との因果関係ははっきりしないという。
 
◎二月八日
長野県教育委員会は、県立養護学校の男性教諭が、知的障害の女子生徒が調理実習で失敗しそうになった際、頭部をフライ返しでたたき、一人の額に軽い切り傷を負わせたとして、停職一カ月の懲戒処分にした。一昨年八月頃からこの女子生徒を含む三人に対し、机の下に押し込んだり、顔をたたいて鼻血を出させるなど、計四回の体罰を繰り返していたことが判明、同僚教諭も目撃しながら、注意したり、校長に連絡しなかったという。
 
◎二月八日
埼玉県は、社会福祉法人「翌檜会」の運営する知的障害者更生施設「啓明学園」の不明朗会計問題(寄付金の使途不明など)で、弁明の機会を設け寄付金の使途などについて説明などを求めていたが、法人側の説明が不明確だったため、同法人に対し、社会福祉法に基づき、会計処理を明確にする改善命令を出す方針を明らかにした。
 
◎二月十三日
埼玉地裁は、知的障害者更生施設「啓明学園」が入所者から寄付金を集めていた問題で、元入所者の父親が同学園を運営する社会福祉法人「翌檜会」に対し、寄付金一〇〇万円の返還を求めて提訴したが、受理したことがわかった。父親は二〇〇一年一月に保護者会長から四五〇万円の寄付を要求され、応じなかったところ、当時の学園施設長に退所を求められたうえ、学園顧問から再び寄付を要求されたため頭金一〇〇万円を支払った。領収書の発行や返還も拒否されているため学園側は親の会の問題であるとして寄付金強要の事実を否定し、訴えに対しても返還を拒否している。
 
◎二月十四日
福岡県警少年課と豊前署は、筑上郡の中学二年生で身体に障害がある男子生徒(十四歳)から、中学入学以来約百八十万円の現金を脅し取ったり、カバンの中から盗んだりした疑いで、同中三年の男子生徒(十五歳)を逮捕、同級生九人(うちは二人は女子)を摘発したと発表。被害生徒の父親が自宅の現金がなくなることに気付き、昨年二月、同署に被害届を出したことから、生徒が被害を打ち明け、福岡県警が捜査して発覚した。
 
◎二月十四日
大分県佐伯福祉事務所は、南海部郡内に住み、佐伯市内の通所授産施設を利用している重度知的障害者の男性(二一歳)が昨年十月下旬、路線バスの中で、たびだひ高校生とみられる複数の学制服の男性に蹴られるなどしていじめられていたことから、同じようなことがあれば、その場で注意するか、無理なら福祉事務所などに連絡してほしいと呼びかけている。同福祉事務所は、「障害者が安心して生活する社会を目指す上で、見過ごすことのできない事態」として、交通機関、高校、警察、福祉施設などの代表者を集めて、障害者支援ネットワーク会議を今月六日に開催し、同じような事態を防ぐため連絡体制を整え、迅速で的確な対処をすることを確認した。佐伯市内の高校四校では直ちにクラスで話し合うなどの指導をした。
 
◎二月十四日〜十八日
大津・東京両地裁は、薬害ヤコブ病訴訟の和解協議の所見で、ヒト乾燥硬膜の移植が原因とされるクロイツフェルト・ヤコブ病の第一症例が、米国で報告された一九八七年以降について国の責任を認めたが、和解協議で、原告側は被害者全員について国の責任を求めているため、国側はそれ以前に日本国内で移植を受けた患者に対し責任は認められないと主張、協議が対立している。原告側は厚生労働省に被害者全員の早期救済を求めて申し入れた。十八日、厚生労働相は、「一九八七年で区切ることはなく、国は原告全員に対して責任がある」と述べた。全患者について一定の比率で負担することを示唆した。
 
▼二月二十一日
文部科学省は、小学四年の健康診断で実施している色覚検査を、二〇〇二年度から廃止するために、学校保健法施行規則の改正案をまとめた。生活に支障がなく、見やすい教材の準備などで解決するとしている。一律検査で進学や就職などに不利益を受けることがあったため、「日本色覚差別撤廃の会」などか廃止を訴えていた。
 
◎二月二十二日
山形地裁鶴岡支部は、知的障害者施設(コミュニティーハウスけやきの杜)の敷地内の段ボール箱などに火をつけたとして、建造物等以外放火などの罪に問われた鶴岡市の男性(三二歳)の初公判を開いたが、検察側は冒頭陳述で、動機について、男性は一昨年七月頃に同施設に入所したが、昨年五月頃、生活態度が悪いなどとして退所させられたことに腹を立てていたと指摘した。男性は「火をつけた覚えはない」と否認し、男性の弁護士は「被告は家で寝ていたと話している。自白に基づく証拠しかなく信頼性に欠ける」と、争う構えをみせた。男性は、昨年八月に鶴岡市内の民家から女性の衣服二点(二千円相当)を盗んだとして窃盗罪でも起訴されているが、全面的に認めた。
 
▼二月二十二日
英国の受胎・胎生学局は、英中部リーズ出身の夫婦が、重い血友病の子どもの治療に必要な臍帯血を確保するため、両親が体外受精で白血球の型が一致する胚を選んで妊娠することについて、きょうだいの病気回復のために例外的に認める方針を決めた。新たに妊娠・出産し、胎児のへその緒などに残る臍帯血移植に踏み切ることになった。体外受精児の出産については、知能や容姿などを意図的に選ぶことから慎重論が根強いため、ケース・バイ・ケースで対応することになった。
 
▼二月二十二日〜三月一日
東京地裁と大津地裁は、ヤコブ病訴訟の和解協議を行い、国が計一四%の一億六二一〇万円(原告患者全員に一律三五〇万円を払う)、企業が八六%の計十億十万円を支払う和解案を提示した。和解案の対象は両地裁で既に結審した原告患者二〇人(うち一人は生存)の家族で、和解金は定額部分(一人当たり三六五〇万円)と、収入や年齢などに応じて、逸失利益を加え、平均約六〇〇〇万円となった。一人当りの和解金は特別な理由から減額された一人を除き四三〇〇万円から八二〇〇万円。国の責任が生じたとする一九八七年六月以降に手術した患者については、全員救済の対象に加えたが、国が和解金の三分の一を負担するということになった。原告側は国に一律二五%を要求していた。二十五日、厚生労働相は、衆院予算委員会で、和解案について「最大限尊重する」とした上で、「長い間ご苦労された患者の皆様に心からおわび申し上げる」と初めて正式に謝罪した。二十六日、原告・弁護団は和解案を受け入れることで合意した。政府も、受け入れる方針を固めた。二十七日、原告・弁護団は厚生労働省に早期和解の実現を申し入れた。また、感染源となった硬膜を製造したドイツの製薬会社「ビー・ブラウン」社が、受け入れることを決めた。三月一日、政府も、和解に応じることを決め、両地裁に回答した。同訴訟は最初の訴訟から五年余を経て、和解による決着が決まった。
 
▼二月二十四日
毎日新聞社は、二〇〇〇年度の簡易鑑定の運用実態(検察官が容疑者の刑事責任能力の有無を判断するために起訴前に行う)調査結果を発表。同年度に受理した全事件のうち簡易鑑定で診断したのは二〇四二人で、精神障害者と認定されたのは一四八二人(七二・六%)、うち約五割の七八八人が不起訴となっていた。地域別診断数は、最多が東京地検の三二六人、次いで大阪地検の二五七人、横浜地検の一六一人の順で、他に一〇〇人を超えたのは名古屋地検(一〇九人)、神戸地検(一〇六人)、京都地検(一〇五人)、福岡地検(一〇一人)と大都市圏だった。七地検のうち、簡易鑑定を担当した医師一人当たりの診断者数は最多が大阪地検の一二八・五人で、最少の福岡地検の五・一人の二五倍になった。診断者総数に占める「認定された精神障害者」の割合で比較すると、大阪地検の九二・二%と京都地検の四一・九%では約五〇%の格差があった。不起訴となった精神障害者の割合は、京都地検の九五・五%と大阪地検の三三・八%では六〇%以上の格差があった。
 
◎二月二十五日
東京地裁は、浅草で昨年四月、女子短大生を刺殺して殺人罪に問われた被告の公判を開いた。弁護人は初公判で、起訴事実の認否を留保し、被告人質問後に明らかにする意向を示していたが、今回、「被告に殺意はなく、行為は傷害致死に当たる」として、殺人罪の成立を争うことになった。被告の公判供述が一貫しないことについて、弁護人は「被告には発達障害がある」としている。
 
◎二月二十七日
最高裁第二小法廷は、愛知県の戸塚ヨットスクールで、一九八〇年から一九八二年にかけ、体罰で訓練生二人が死亡、二人が洋上で行方不明になった事件で、傷害致死罪などに問われた校長ら四人について、上告を棄却する決定をした。校長は二審・名古屋高裁の判決(「訓練は人権を無視しており、教育でも治療でもない」とし、懲役六年の実刑)が確定する。コーチらについても、同高裁の懲役三年六月から二年六月の実刑判決が確定する。起訴された十五人全員の有罪が確定し、一連の刑事事件は終結する。校長は、改めて「体罰は必要で、ヨットスクールは存続する」と話している。
 
▼二月二十七日
奈良市社会福祉協議会は、「地域福祉活動計画」を策定するに当たり、市民が精神障害者にどのようなイメージを持っているかを探るため、約千人の住民を対象にアンケート調査を実施したが、精神障害者の家族から「設問の大半が精神障害者を否定的に扱い、精神保健福祉に専門的知識のない市民に誤った先入観を与え、偏見を助長する」として抗議を受け、中止を決定した。アンケートの設問は研究者らと合同で編成した作業グループの一員が作成。「精神病になるくらいなら死んだほうがましだ」「精神病にかかった人はすべて危険である」「精神障害者は、できるだけ人里離れた所に精神病院を立てて、そこに収容すべきである」などの二十項目を列挙していた。
 
▼二月二十八日
人事院は、これまで色覚検査を実施している十種類の国家公務員採用試験のうち、労働基準監督署、法務教官、刑務官、気象大学校の四種類で二〇〇二年度から実施しないことを決めた。色覚検査は「差別や偏見につながる」として批判されているが、「危険物の表示に言葉を添えるなど、職場環境が改善され、色覚に問題がある場合でも仕事ができるようになったため」として、国家公務員採用試験で初めての廃止を決定した。検査が残るのは、航空管制官、皇宮護衛官、入国警備官、航空保安大学校、海上保安大学校の六種類となる。
 
▼三月二日〜十二日
最高裁は、戸塚ヨットスクールで体罰の結果、訓練生を死亡させ、傷害致死や監禁致死などの罪に問われた戸塚宏校長(懲役六年)と当時のコーチの四被告が、決定を不服として異議の申し立てをしたことについて受理。しかし、十二日、上告棄却決定に対する申し立てを退ける決定を出した。二審(名古屋高裁)判決が確定し、収監される。
 
▼三月四日
政府は、今国会に提出する「重大な他害行為をした精神障害者の処遇に関する法案」(仮称)の名称について、従来使ってきた「精神障害者」という言葉を外すことを決めた。患者や家族、政党内の議論などから差別や偏見を助長すると批判が出ていたもので、最終的に採用した名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法案」となった。しかし、法案は精神障害者を対象にしたものであり、保安処分制度につながるとして批判や反対の運動が起きている。
 
▼三月六日〜十二日
政府は、今国会に「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療および観察等に関する法案」提出する方針だが、裁判所が入・通院の治療を命じる場合に義務づけられる精神科医(精神保健審査員)の鑑定が、六カ月ごとの入院継続や再入院の決定には必ずしも必要とされていないことがわかった。入院から通院に切り替わった人が所定の住居に住むなどの決まりを破った場合には、「再犯のおそれ」がなくても保護観察所長による再入院決定の申し立ての対象にし、本来、再入院の申し立てには病院との協議が必要だが、緊急の場合は協議なしでも可能とした。また、対象者が審判の過程で行方不明になったり、病院から抜け出したりした場合は、「必要な援助」も求めることができるとして、警察に所在調査や二四時間以内の保護などを求めることができる規定も盛り込んだ。十二日、日本精神神経学会は、法案について「精神科医に再犯のおそれの有無の鑑定を命じている。再犯の恐れを見通すことは不可能で容認できない」「保安処分の性格が鮮明で、重大な懸念がある」と、撤回を求める緊急声明を発表した。
 
▼三月七日
アイルランドは、妊娠中絶の規制強化(妊娠中絶を犯罪と規定し最高刑を禁固十二年とする、「妊婦が自殺の恐れがある」との理由でも中絶を認めない、母体に危険がある場合にのみ中絶を認めるなど)を図る新法制定の是非を問う国民投票で、賛成四九・六%、反対五〇・四%の僅差で否決した。同国では国民の九五%がカソリックで、憲法でも中絶を禁止している。
 
◎三月十日
埼玉県は、知的障害者更生施設「啓朋学園」の入所者から集めた一億円以上の寄付金の使途不明問題で調査を実施しているが、入所者の保護者(二八人)が学園を運営する社会福祉法人「翌檜会」の理事長が不正に関与していた疑いが強まったとして、刑事責任を追及する方針を決めた。保護者と委任契約した弁護団が、横領や背任の容疑で告訴・告発を視野に入れた調査に入るという。
 
▼三月十二日〜十八日
厚生労働省は、国立医療機関で硬膜移植を受けた大阪府守口市内の女性が、クロイツフエルト・ヤコブ病を発症後、一九九五年四月に死亡していたことがわかったが、同省は、この女性について把握していなかった。十三日、薬害ヤコブ病訴訟の原告団は、ヤコブ病患者が葬儀の際に、感染症であることを理由に葬祭業者に、「通夜の前に荼毘にふしてほしい、化粧は家族でしてほしい、最後のお別れの際にお棺のふたを空けないでほしい」などの差別を受けることがあるとして、経済産業省と日本葬祭業共同組合連合会に、業者への指導を徹底するように申し入れた。また、弁護団、支援する研究者らと共に、「ヤコブ病支援ネットワーク」を設立することを決めた。十四日、薬害ヤコブ病訴訟の原告団と支援者ら約三〇〇人が、国の謝罪を求め、厚生労働省の周囲を取り囲む「人間の鎖」を作って訴えた。十八日、生存患者一人と死亡した患者六人の遺族らが、新たに国や企業を相手に計約四億一〇〇〇万円の賠償を求める訴えを東京、大津両地裁に起こした。これで同訴訟は、原告患者四一人(うち生存患者六人)、請求総額約三五億五千万円となった。
 
◎三月十三日
京都府警伏見署は、伏見区内の中学三年の男子生徒二人(いずれも十五歳)を、社会福祉施設に通う知的障害の女性に、侮辱的な言葉をあびせ、女性の腹を足でけったり、頭を手でなぐったりするなど暴行し一週間のけがを負わせた傷害容疑で逮捕した。ほかに三人いたが、暴行には加わらず見ていたが、二人の行動を止めなかった。女性は社会福祉施設からの帰宅途中に被害にあったため、帰宅して施設を通じて伏見署に被害届を出した。
 
▼三月十五日
政府は、「心神喪失者医療観察法案」を閣議決定した。昨年六月に起きた大阪教育大学付属池田小学校での児童殺傷事件を契機に検討されてきたもので、心神喪失などを理由に不起訴・無罪になった触法精神障害者の処遇を決定する。法案は、再犯防止のため、検察官から申し立てを受け、精神鑑定結果などに基づき、「再犯の恐れ」を基準に、地裁の裁判官と精神科医(精神保健審査員)の二人で構成する合議体が専門治療施設への入退院や通院、治療不要を決める。また、検察官や対象者は、決定に不服がある場合は高裁に抗告できる。治療は国費で行い、国立病院を中心に専門治療施設を整備する。入院の継続は、地裁が半年ごとに必要性を審査する。入院期間の上限は設けず、通院は最長五年とする。退院後や通院治療決定を受けた対象者は、保護観察所に新設する精神保健監察官が、地元の保健所などと連携して社会復帰への指導・調整を行うなどを盛り込んでいる。入院から通院に切り替わった人が所定の住居に住むなどの決まりを破った場合には、「再犯のおそれ」がなくても保護観察所長による再入院決定の申し立ての対象にし、本来、再入院の申し立てには病院との協議が必要だが、緊急の場合は協議なしでも可能とした。また、対象者が審判の過程で行方不明になったり、病院から抜け出したりした場合は、「必要な援助」も求めることができるとして、警察に所在調査や二四時間以内の保護などを求めることができる規定も盛り込んだ。法務省は早期の施行をめざしているが、厚生労働省は医療機関の整備に一定の期間がかかるとして調整が続いている。法案は「再犯の恐れ」の有無で入退院を決める仕組みであるため、「保安処分制度の創設」として、医療関係者や精神障害者らから反対や批判が出ている。
 
◎三月十五日
社会福祉法人「日本身体障害者団体連合会」は、前会長が罪人中に内部規定に違反して出張旅費を多くに受け取ったとして、約三〇〇万円を返済させたことを明らかにした。前会長は身体障害者手帳を持っているため、公共交通機関の運賃が半額維持割引されるのに、同連合会の業務として出張した際、通常運賃を請求し、受け取っていた。同連合会とは関係のない出張の旅費も請求していた。
 
◎三月十五日
奈良県葛城保健所は、医療法人「向聖台会当麻病院」で集団結核感染があり、精神障害で長期入院していた六〇代の女性が感染し、細菌性肺炎で死亡したと発表。入院患者すべての結核検査を実施したところ、七〇代の男性一人が感染していることがわかり、また六〇代の男性三人に感染の疑いがあることがわかった。同保健所は、院内感染の疑いがあるとして、他の感染者の有無や感染経路を調査している。
 
◎三月十六日
埼玉県草加市立栄中学校は、重度の血管性紫斑病(血管がもろくなり出血が止まりにくい)で、病気について学校側にも届けてあった二年生の女子生徒が、男子生徒から暴行され倒れているにもかかわらず、現場にいた教師数人は、駆けつけた女子生徒の母親の求めで救急車を呼ぶまで、介護もしないで放置していたことを明らかにし、市教育委員会と共に女子生徒と保護者に謝罪した。女子生徒は一週間程度の打撲を負った。市教育委員会は、学校側の対応に問題があったとして調査を開始した。
 
▼三月十六日
日本精神神経学会調査特別委員会第一小委員会は、西部バスのっとり事件で医療少年院送致の保護処分を受けた佐賀市の少年が、事件直前まで入院していた国立肥前療養所の処遇に関する調査報告書を理事会に答申した。少年の症状については、法務省などがプライバシー保護の観点から許可しなかったため「狭義の精神病ではなかった可能性がきわめて強い」と判断を避けた上で、少年への一時帰宅許可については「現在の医療水準では事件を予測できる可能性は低かった」「一般的にどの病院でも下しうる判断で妥当」と理解を示した。また、療養所単独で治療を試みたことについては「他機関と連携していれば、最適な治療場所が見つかっていた可能性があった」と、児童福祉などの関係機関との連携の重要性を提言した。同理事会は報告書を了承した。
 
◎三月十六日
新潟中央署は、新潟県立新潟盲学校教諭の渡辺宏さん(視覚障害)方から出火し、隣家の人が発見し消防署に連絡したが、弟で視覚障害のある厚さんが死亡したと発表した。渡辺さん方は二人暮らしで、兄は出勤していた。新潟市は、家の中に非常用ベルを設置していた。
 

◎三月十八日
滋賀県は、八日市市の社会福祉法人八身福祉会が運営する身体障害者通所授産施設「八身共同印刷」で、自己破産した取引業者(広告代理店有限会社テレマ東海)の売掛金約一七〇〇万円が回収不能になっていることがわかり、指導に乗り出した。八身福祉会は詐欺要素も強いとして県警に刑事告訴したことを明らかにした。昨年七月に同県が行った定期監査で授産会計売掛未収金(当時約六八七万円)の回収指示指導を受けたにもかかわらず、受注を受け続けていた。印刷営業担当職員と前施設長の独断で契約書を交わすことなく進めていた。同県は同法人に対し、二月に内部調査による全容解明や法的手段も考慮した債権回収、経営者(理事)責任追及、保護者と通所者への事実説明を義務づけた指導を行い、三月に授産事業による収益は「すべてを利用者の賃金として支給することが義務付けられ、未収金の発生は賃金は賃金の低下を招き、利用者の生活を脅かしねない」として、県内の関係法人に対し適正管理を通達している。
 
▼三月十九日
ハンセン病国家賠償訴訟弁護団は、一時金が支払われることになった療養所入所者の遺族と入所歴のない元患者について、一時金を受け取るためには提訴して裁判所で遺族・非入所者としての認定を受けることが必要なため、これまで原則として熊本地裁に一本化していた訴訟を東京、岡山両地裁にも広げると発表した。訴訟希望者が千人を超える見通しとなり、早期解決のためには三地裁に分散することが必要になったためとしている。
 
▼三月二十二日
岡山地裁は、ハンセン病国家賠償請求訴訟「西日本訴訟」で、死亡した元患者の遺族も国が補償することで和解したのを受け、岡山県などの元患者九人の遺族計二十三人が、国に損害賠償を求めて提訴した件を受理した。瀬戸内訴訟で遺族が一斉提訴するのは初めてという。請求額は一人四十三万円から千四百万円。
 
◎三月二十二日
英国高等法院は、脊椎部の血管破裂で全身まひとなり、意識や言葉に問題はないが、医師にリハビリによる治療の可能性は一%と判断された女性が「死ぬ権利」を求めた訴訟で、病院側に倫理上の問題を理由に人工呼吸器を外すことを拒否された件で、「彼女のような深刻な傷害をもつ人のなかには、生きることが死ぬことよりもつらいと感じる人がいることを、だれも否定できない」として、病院側に対し「人権侵害」の賠償金(約一万八千円)を支払うよう命じる判決を出した。病院側が上訴を断念したため、判決が確定した。

 

▼三月二十三日
政府は、昨年五月二十五日の内閣総理大臣談話を受けて設置された、ハンセン病患者・元患者らと国との協議機関(ハンセン病問題対策協議会)における合意に基づき、ハンセン病患者・元患者らへの「謝罪・名誉回復」を目的として、全国紙、ブロック紙、地方紙計五〇の新聞朝刊に謝罪広告を載せた。厚生労働大臣の「ハンセン病患者・元患者の方々へ心より謝罪いたします」とする談話、衆議院と参議院の「ハンセン病問題に関する決議」、昨年五月の内閣総理大臣談話を同時に掲載した。費用は約一億一〇〇〇万円。ハンセン病訴訟原告弁護団は東京で「ハンセン病裁判勝利のつどい」を開き、国の社会復帰支援制度などをどう生かしていくかについて話し合った。

▼三月二十五日
厚生労働省は、薬害エイズや薬害ヤコブ病を教訓に、血液製剤などヒトや動物の細胞でつくった製品を介したウイルスなどの感染被害に関する救済制度の概要を固めた。同省の研究会が近くまとめる最終報告書に盛り込み、来年の通常国会に提出する方針。対象は、新制度が創設された以降の感染例で、未知の病原体による被害も含む。細胞などの提供者の選択基準などを守って作られた製品からの感染であることを条件にし、被害者本人と、被害者を介して二次感染した家族らを対象とする。血液製剤や医療用具メーカーの拠出金から、医療費や障害年金を支給するなどを盛り込んだ。旧厚生省は、一九八〇年に医薬品による副作用被害についての制度を開始したが、ウイルスや細菌などによる感染被害は企業の製造責任の問題とされ、対象外となっていた。

▼三月二十五日
政府は、薬害ヤコブ病訴訟で企業(ドイツのビー・ブラウン社)とともに、原告団と和解協議書に調印した。和解確認書の骨子は、厚生労働相と企業(ドイツのビー・ブラウン社)らは、原告らを含む被害者が、物心両面にわたる被害を被ったことなどにつき、深く衷心よりるおわびすること。厚生労働相は、医薬品の安全性に関する情報収集体制を拡充強化し、被害を再び繰り返さないよう再発防止に最大の努力をすること。厚生労働相は、患者の専門医療の確保、差額ベッド代の解消などに努めること。ビー・ブラウン社は療養期間が二年を超える生存患者二、療養手当を月二〇万円を支払うことなどが盛り込まれた。また、大津・東京両地裁でも、昨年七月に決心した二〇人との間で、「国が原告患者に一律三五〇万円、一患者の和解金は平均約六千万円を支払う」との内容に双方が合意し、和解が成立した。提訴から五年四カ月ぶりの解決となる。

◎三月二十六日
鹿児島地裁は、「大崎事件」(一九七九年に大崎町で起きた事件で、原口あや子さんらが義弟を殺害したとされ、殺人と死体遺棄罪に問われ、懲役十年などの刑が確定)で、服役後起こした再審請求に対し、再審開始を決定した。再審請求審で新たに提出された、被害者が事故死だった可能性があると指摘した医学鑑定結果が、首を絞めたとする殺害状況と矛盾する可能性が高いと判断し、共犯者の自白の信用性にも疑問を示した。弁護側は自白の信用性について「共犯者とされた原口さんの夫ら三人はいずれも知的能力が低いことから、捜査当局に迎合的なうその自白をした」と主張していた。原口さんは一貫して無罪を主張、一九八一年に最高裁で懲役十年の有罪が確定した後、服役後に再審請求をしていた。死体遺棄罪で懲役一年の判決が確定した共謀したとされる義弟の長男は昨年死亡していたため、母親が請求を受け継いでいた。二十九日、鹿児島地検は、「判断に誤りがある」として、福岡高裁宮城支部へ即時抗告した。

▼三月二十九日
名古屋高検は、「戸塚ヨットスクール事件」で懲役六年の実刑判決の確定した校長とコーチ三人(懲役二年六月から三年六月の実刑確定)を収監した。

▼三月二十九日
文部科学省は、二〇〇三年から小学校四年で実施されている色覚検査を廃止することを決め、官報に告示した。同検査は徴兵検査用に作られたもので、それが一九五八年にできた学校保健法の健康診断の必須項目になり、かつては小・中・高校で四回実施され、生活に支障がないのに、検査で「異常」と判定されると一律に進学や就職が制限されるなど、検査が差別の元凶との批判が出ていた。また、名古屋市教育委員会は、二〇〇二年度からの廃止を決め、教育長名で各小学校長に通知した。
 
▼四月一日
オランダは、国家レベルとしては世界で初の「安楽死」を合法化する法律を発効した。一定の条件を満たして「安楽死」を実施した医師は刑事訴追の対象としないことになる。十二歳以上、十六歳未満の子どもでも、親権者の同意があれば「安楽死」が可能となる。オランダでは一九九〇年から事実上認められてきたことで、毎年約二千人が「安楽死」を選んでいる。法律は現状を追認した上で、必要な手続きを明確化した。
 
▼四月一日
検察審査会は、大阪府に住む聴覚障害者の四十代の女性を審査員に選んだことを明らかにした。検察審査会は、検察官が不起訴にした処分についての当否を審査する独立機関で、「目や耳、言葉に重い障害をもつ人は審査員になれない」とする欠格条項を設けていたが、二〇〇〇年四月に削除した。選挙人名簿をもとに三回の抽選を経て、今年二月、地元の検察審査会の審査員に就任。既に審査会には二度出席、手話通訳で他の審査員との意思疎通は可能になっている。
 
◎四月一日
大阪市は、社会福祉法人大阪市知的障害者育成会に事業委託したガイドヘルパー派遣事業について、知的障害者向けグループホーム三か所で、三年間に計約六七六万円の補助金を不正受給していた疑いがあることを明らかにした。同市のガイドヘルパー事業は、外出の介助や旅行の際の「宿泊援助」をする制度で、実際にはグループホームで休んでいる入居者に対し、旅行にしか適用できない「宿泊援助」を行ったことにして申請書に記入して補助金を受け取り、ガイドヘルパーを務めていたグループホームの世話人や部外のヘルパーに支払われていたとしている。同市は同育成会に対し利息を加算した上で全額返還を求める方針。また、三ホームでは入居者を月約十日間しか滞在させていなかったことも判明したとして、毎日暮らせるよう指導しするとともに、市内六八カ所の全グループホームに対し緊急指導するとともに、今後チェック体制を見直すことにした。三ホームの形式上の運営主体は大阪市育成会だったが、世話人らが法人を結成し、先月から正式に運営しているという。
 
◎四月二日
身体障害者療護施設「飛騨うりす苑」は、入所中の男性が、持病の投薬治療の際に、同施設に併設されている診療所の主治医が過って通常の十倍の量を処方したため急性呼吸不全で死亡したと発表した。主治医と病院はミスを認め、謝罪した。岐阜県警古川署は、業務上過失致死の疑いがあるとみて調べを開始した。岐阜県も施設から事情を聞くなど、原因究明を進める方針。
 
▼四月二日
東京都町田市は、都内では初めて公的年金の受給資格がない在日外国人(一九八二年に国民年金の国籍要件が撤廃された際に、一九二六年四月一日以前に生まれた高齢者と一部の障害者が対象外となった)を対象にした福祉給付金支給制度を開始したが、市内在住の在日朝鮮人二人が初めて支給申請した。在日韓国・朝鮮籍と台湾籍を持つ特別永住者で、市内に一年以上住んでいる人を対象に給付金制度を設けた。高齢者に月額一万円、重度障害者に同二万円、中度障害者に同一万三千円が支給される。
 
▼四月三日
厚生労働省の生殖補助医療部会は、第三者から精子や卵子、受精卵の提供を受け、人工受精や体外受精で生まれた子どもに対し、提供者を特定できる情報を開示することを認める方向で合意した。現在、同省は、生殖補助医療で生まれた子どもに開示するのは、身長や体重など「個人を特定できない情報」だけで、しかも、提供者が開示を承認したものに限っている。「生まれてくる子どもの福祉を優先する」ことを原則とし、「提供者の意向によって、子どもが知りうる情報の中身が異なるのは問題だ」との理由から、「身長や体重などのプロフィルなど提供者を特定できない情報を知るだけでは、出自を知る権利が保障されたことにはならない」との意見が大勢を占めた。今後、提供者の同意の必要の是非、公的機関の情報管理や開示の仕方などを協議する。
 
◎四月九日
東京福祉大学(群馬県伊勢崎市)は、難病の筋ジストロフィーの女性が今年二月に通信教育課程に入学しようと説明会に参加し、「手で字を書けないので、毎月の試験には代筆者などが必要」と伝えたところ、「わが校では対応できない。今回は入学を見送ってほしい」「入学を拒むわけではないが、一人のために余分にお金を使うことができない」と返答し、入学を見送るように求めていたことがわかった。女性は入学願書を提出せず、大学に対応改善を求める署名を集めている。
 
▼四月九日〜十二日
総務省は、郵政事業の公社化と民間参入を控え、郵便の割引制度が公社の負担になると判断して、第三種郵便物と第四種郵便物の割引制度(視覚障害者向けの点字冊子などを無料にしたり、定期刊行物や障害者向け冊子を割引している)を来年度から原則として廃止する方針を固めた。郵便法から第三種郵便物と第四種郵便物に関する条文を削除し、原則として、すべて一般郵便物として同じ料金で扱うとしている。福祉関係など一部については「公社は独自に割り引くことができる」との分限を盛り込む方針。関係者から反対の声が挙がっているため、十二日、総務相は、第三種、第四種郵便にはそれなりの社会的意味があるとして、公的な補助金を検討したいと発言。厚生労働省など関係省庁に公的助成制度を働きかける意向を示した。
 
▼四月十日〜二十二日
衆院厚生労働委員会は、「身体障害者補助犬法案」を可決。障害者が補助犬を同伴して交通機関や公共施設を利用することを保障し、自立や社会参加を促すことが目的で、国や地方自治体が管理する公共施設、公共交通機関のほか、不特定多数が利用する民間施設にも受け入れが義務付けられた。民間の事業所やマンションなどの住宅に同伴を認める努力規定が生じる。また、介助犬と聴導犬については「国の指定法人が認定した犬」として基準を設け、同法人が認定業務を行い、犬が規定する能力を欠いた場合は認定を取り消す義務が生じる。訓練にたずさわる事業者は医療と連携した訓練や譲渡後のアフターケアを義務付け、使用者にも犬の衛生や行動を管理する義務を化した。訓練事業は第二種社会福祉法人として位置付け都道府県による補助犬の貸与事業を定めた。国や自治体は国民が理解するよう広報に努め、国民は補助犬を使用する障害者に必要な協力するよう努めることが求められている。二十二日、参院本会議は、身体障害者補助犬法を可決、成立。公共施設や公共交通機関は今年十月から、宿泊施設や飲食店は来年十月から施行する。罰則規定は設けていない。使用者は、同伴する補助犬が、訓練された犬であることを表示し、他人に迷惑をかけることがないよう行動を管理しなければならないとしている。六人の利用者が補助犬を同伴して国会審議を傍聴した。
 
▼四月十日〜二十四日
衆院厚生労働委員会は、障害者雇用促進法改正案を可決した。障害者を従業員の一定割合(法定雇用率)以上雇う制度について、現在職種によって雇用義務が一部免除されているが、割合を段階的に縮小することを求めている。また、障害者を率先して雇う子会社を率先して雇う子会社を持つ企業グループは、雇用率をグループ全体で算出できるように改め、親会社の責任で障害者の採用が進むようにすることを求めた。二十四日、参院本会議は、改正障害者雇用促進法を可決、成立した。厚生労働省は、二〇〇四年四月から一律に一〇%引き下げる予定としている
 
▼四月十一日
国家公安委員会は、六月一日施行の改正道路交通法と新設の運転代行業法で初めて導入されることになった「身体障害者標識」と「代行運転車標識」のデザインを承認した。標識は努力目標で車の前後に表示する。「身体障害者標識」は水色地に白色の四つ葉をかたどり「四つ葉は幸福の象徴で、葉の形が人の優しさや思いやりを示し、障害者に優しい交通環境を目指す」とし、表示した車が通る場合、周囲の運転者に幅寄せや割込み禁止が求められる。また、酒によった運転者に変わって運転する運転代行業の「代行運転車標識」は、だ円形で緑地にハンドルを握る人の形で「代行」の文字が記され、表示が義務づけられる。
 
◎四月十二日
鹿児島地裁は、昨年十二月に伊集院町で精神障害者の弟に姉が殺害された事件で、兄の家族が「事件前日に器物破損事件を起こした弟を加治木署が逮捕しなかったことが殺人事件の遠因」として、県に損害賠償を求める訴えを受理した。弟は「精神分裂病」で沖縄県内の施設に入所していたが、鹿児島空港近くの駐車場事務所の窓ガラスを壊すなどしたため同署が任意同行し、姉に引き取らせていた。事件はその後に起きている。
 
▼四月十六日
厚生労働省は、昨年六月から国内で販売が始まった精神分裂病の新治療薬「オランザビン」(商品名「ジブリキサ」)を飲んでいる患者十二人に、血糖値が急激に上昇し意識がなくなる糖尿病性昏睡の副作用が起き、うち二人が死亡していたことが明らかになったことから、輸入販売元の日本イーライリリーに対し、緊急安全性情報を出すなどして医療機関に注意を呼びかけるよう求めた。同省は、薬の承認の際、添付文書の「使用上の注意」欄に副作用の記載と、市販後の調査を十分に行うよう指導していたが、添付文書には新たに「警告」欄を設け、「糖尿病性昏睡などの重大な副作用が起きる場合があり、患者の血糖値に注意、副作用について患者や家族に十分に説明し同意を得る」などを明記するよう指導する方針。また、同社の情報提供のあり方についても調査する。
 
◎四月十八日
郵政事業庁は、郵便局で簡易保険加入を受け付けているが、旭川医科大の教授らが調査した結果、先天性の病気がある子どもたちが病名を告知したところ、全員が加入を拒否されていたことが分かった。「先天性甲状腺機能低下症」(七十五人)、「フェニールケトン尿症」(三十人)にかかっている子どもたち百五人を対象に調査したもので、このうち九十人が簡易保険、民間保険への加入を試みたが、四十三人が断られた。簡易保険では病名を告知しなかった三十六人は加入できたが、告知した二十一人全員が加入を拒否された。同庁は、独自につくった医学的基準をもとに判断しているが、その基準は公開していない。
 
◎四月十八日〜十九日
知的障害者更生施設「啓明学園」は、入所者から寄付金一億円以上を集め、使途不明になっているが、入所者の保護者は、一九九八年頃に購入した備品が、約三千万円かかったとしているが、実勢価格は半額以下で、差額の約一五〇〇万円以上が水増し請求され、このうち一部は、同学園を運営する社会福祉法人「翌檜会」の理事長が着服した疑いがあるとして、業務上横領容疑で埼玉県警鴻巣署に告発上を提出した。十九日、「翌檜会」の理事長ら関係者が役員などに就任している七事業者と「啓明学園」との間では計六千万円以上の取引があることがわかった。取引先の介護用品販売会社は元職員が経営していたが、元職員は実際には理事長の経営する幼稚園に努め、取引先の医療法人の理事長は「翌檜会」理事と嘱託医を兼任、「翌檜会」の理事長は昨年五月まで医療法人の理事をしていた。
 
◎四月十九日〜二十二日
川崎協同病院は、一九九八年に気管支ぜんそくから意識不明になった患者(川崎市から公害による気管支ぜんそくの認定を受けていた)に、当時当直医だった医師が気管を確保するための気管内チューブを取り外して筋弛緩剤を投与し、「安楽死」させていたことが、病院の職員の指摘で昨年十一月から実施した内部調査で分かったと公表した。患者本人の意思が明らかになっていなかったり、家族に対して「楽にしてあげたい」と告げたが、家族側はそれを「安楽死」を指すとは認識していなかった可能性があることなどから、「主治医の行為は安楽死ではない」との判断を示した。主治医は死亡診断書に本来の死因とは違う病名を記載していたことも明らかにした。二十日、病院は原因の究明と再発防止策などを話し合う「真相究明委員会」と、「安楽死」や臓器移植について勉強する「倫理委員会」を設置することを明らかにした。また、神奈川県警は、遺族と病院関係者から事情を聴き、殺人容疑を視野に入れて捜査をはじめた。二十二日、川崎市は、専門のプロジェクトチームを設置、病院に立入り検査を開始した。カルテや伝票、薬剤の保管場所や処方せんの有無などを調べる。また、周辺住民の間で不安が広がっているとして、住民窓口も設ける。
 
◎四月十九日
大分県は、竹田市にある民間知的障害者更生施設「のびろ園」で、知的障害者の利用者からつばをかけられた女性指導員が、利用者につばを吐き返していたことについて、大分県知的障害者育成会(保護者団体)から「人権尊重への理解に欠ける」として指導を要請されたが、口頭で再発防止と改善を指導した。同園も口頭で注意した。女性職員は「つばが汚いということを利用者に知らせたかった。悪いことをした」として、同園に五月一日付けで辞表を出した。
 
▼四月二十三日
厚生労働省は、第三者から精子や卵子、受精卵の提供を受け、人工受精や体外受精で生まれた子どもに対し、提供者を特定できる情報を開示することを認める方向で合意した。現在、同省は、生殖補助医療で生まれた子どもに開示するのは、身長や体重など「個人を特定できない情報」だけで、しかも、提供者が開示を承認したものに限っている。「生まれてくる子どもの福祉を優先する」ことを原則とし、「提供者の意向によって、子どもが知りうる情報の中身が異なるのは問題だ」との理由から、「身長や体重などのプロフィルなど提供者を特定できない情報を知るだけでは、出自を知る権利が保障されたことにはならない」との意見が大勢を占めた。今後、提供者の同意の必要の是非、公的機関の情報管理や開示の仕方などを協議する。
 
▼四月二十四日
東京都福祉局は、「福祉サービス第三者評価システム」の内容を公表した。高齢者や障害者、子どもなどへ提供される福祉サービス(十二種類の施設)を中立的な立場の第三者(有識者でつくる専門委員会)が評価する仕組みで、利用者がサービスを選ぶ際の参考にしたり、事業者もサービス改善に生かす。また、東京都の高齢者研究・福祉振興財団の中に「福祉サービス評価推進機構」を開設した。評価機関はNPO法人や福祉コンサンルタント会社、民間シンクタンク、研究機関などで、同機構が評価能力を審査し認証する。評価を行う人は、同機構の研修を受ける。評価方法は、利用者へのアンケート調査(サービスへの満足度)と、事業者への直接調査(経営状況を組織マネシメントなど)の二種類。同機構が共通評価項目を設定し、結果を集約して都民に情報提供する。評価システムは強制するものではなく、評価を希望する事業者と評価機関の間で契約を交わし実施する。
 
◎四月二十三日
日本医師会は、先天性の病気がある子どもの簡易保険への加入を郵政事業庁が一律に拒否していることについて、「遺伝情報にもとづくあらゆる保険加入拒否は認めない」という観点から、具体的事例への解決策を探るなど、積極的に取り組むことを正式決定した。加入できたのは病名を告げていない場合で、先天性甲状腺機能低下症、フェニールケトン尿症、ダウン症などの子どもが拒否されているという。これらの病気の子どもを持つ親の会や小児科医などと連携しながら、同庁に現状の見直しを求めていく方針。
 
▼四月二十四日
東京都東村山市のハンセン病国立療養所「多摩全生園」に入所していた元患者四人は、療養所を出て地域で生活を始めたことを明らかにした。今年四月から始まった国の社会復帰支援制度を受けての退所は、東日本では始めてという。四人は医療と介護について、国や自治体が退所後も十分保障してほしいと要求している。弁護団の話では、全国で少なくとも六十七人が社会復帰を計画している。
 
▼四月二十七日
日本ハンセン病学会は、来月に会長改選を予定しているが、時期会長に事実上内定している国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の由布雅夫園長の就任に対し、全国ハンセン病療養所入所者協議会、同訴訟全国原告団協議会、弁護団の三団体から「元患者の過酷な体験を無視する人物が会長になることは絶対に認められない」と反対する文書が同学会に送られていることを明らかにした。同園長が同園自治会の機関誌一月号に「裁判の無理な進め方もあったし、弁護団の手法に納得できない点もあった」などとあいさつ文を書いていたが、三団体は「原告・弁護団の訴訟活動を一方的に批判し、裁判の意義を誹謗するものだ」などと抗議していた。
 
▼四月二十七日
岩波書店は、昨年十一月出版したハンセン病関連の単行本(ハンセン病ー排除・差別・隔離の歴史)に納められた国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の由布雅夫園長の論文(菊池恵楓園からの訴え)に不適切な記述があったことを認め、改訂版で同論文を削除するとともに、在庫の出荷はしないことを明らかにした。ハンセン病国家賠償訴訟の原告の元患者が「山に隠れ住んでいたが、療養所に強制収容された」と証言したことについて、園長は当時の県の担当者や医師らの対応を「人道的立場で職務を遂行した人々に出会って、入所を決意した」「裁判でなぜ事実がわい曲されるのか、やり切れない気持ちでいる」と反論・批判していた。このことについて同訴訟の原告団・弁護団が岩波書店に削除を求めていた。

 

▼四月二十八日

オーストリア政府は、第二次大戦中にナチス・ドイツに併合された際に、ナチスの「安楽死計画」(生後三カ月から十六歳の障害者や問題児とされた子どもが病院に収容され、毒物注射で殺害されたり、餓死させられた)によって殺害された六〇〇人の子どもたちの遺体の埋葬式を、遺族や多数の市民が参加する中で、五七年ぶりにウィーンの中央墓地で実施した。遺体は、行方不明になっていたが、一九七九年に殺害に関与した医師が脳や神経を標本として保存し、研究に使っていたことが判明した。今回、子どもたちの名前と「決して忘れない」との言葉が刻まれた石碑の下に埋葬された。参列したクリスティル大統領は、「歴史の暗部に向かい合うまで、われわれは時間がかかりすぎた」と反省の念を表明した。

 

◎四月三十日

大津地裁は、会社の同僚とその母親を刺殺したとして殺人罪に問われた元会社員に対し、「妄想性障害が認められるが、心身耗弱程度で責任が問える」と認定、「被害者宅を下見するなど計画的で、自己の行為に対する認識、判断能力があった」として、懲役十年の判決を出した。被告は心身喪失を理由に一度は不起訴となったが、大津検察審査会が不起訴不当を議決、大津地検が再捜査、起訴していた。

  
▼五月三日〜七日
政府は、今国会に「心身喪失者処遇法案」を提出しているが、都台東区の精神障害者グループ「こらーる・たいとう」が、銀座で廃案を求める署名活動をした。六日、法案に反対する実行委員会が、中央区内の会場で集会を開き、「差別と偏見をあおり、地域で暮らす精神障害者を苦境に追い込む法案の廃案を求める」との決議を採択し、集会後、銀座で約三六〇人がデモをしながら廃案を訴えた。七日、同実行委員会は、廃案に追い込むとして議員会館を手分けして訪問し、衆参両院議員全員に「法案は予測不可能な再版の恐れを前提に無期限の強制入院を認めており、精神障害者の人権を踏みにじるものだ」などとする問題点を説明した。
 
▼五月八日
兵庫県労働局は、二〇〇一年の社会福祉現場での労働災害数が、前年の約一・五倍の一〇〇人に急増していることを明らかにした。休業四日以上の労働災害は五七四六人で約五%減ったが、老人ホームや知的障害者施設など社会福祉現場に限ると四九・三%(三十三人)と大幅に増えていた。八割は高齢者介護の現場だった。最多は「動作の反動・無理な動作」で三十三人で、次いで「転倒」が二十三人、発生状況は、「高齢者をベッドから移した」「抱きかかえてふろから出た」時などが多かった。症状としては、腰痛、頚腕傷害、手のしびれなどがみられた。社会福祉現場の労働災害が急増したため、一九九九年から「保健衛生業」からわけて調べたが、一九九九年度は五十九人、二〇〇〇年度は六十七人だった。全国調査でも二〇〇〇年度より二五%増え、二〇〇一年度は二〇六九人になった。
 
▼五月九日〜十四日
日本看護協会と日本精神科看護技術協会は、「心身喪失者医療観察法案」について、「法案は保安目的が極めて強く、精神障害者への偏見をかえって高める」として、共同で反対意見をまとめた。問題点として、再犯の恐れを根拠とした処遇決定は安易な行動制限につながること、地域の精神医療体制を充実させる視点が欠けていることなどを挙げた。十四日、日本医師会と日本精神科病院協会は、今国会での成立を求める見解を発表した。
 
▼五月十日〜十一日
日本ハンセン病学会は、ハンセン病国家賠償訴訟の違憲判決で国の法的責任が確定したのを受けて、原告団から謝罪を要求されていたが、元患者らに対し、過去のハンセン病対策を人権侵害だったと学会として初めて明確に認め、総会を開き、「旧来の対策が人権の著しい侵害をもたらしていた。心からおわび申し上げます」とする謝罪声明を決議した。また、十一日、同学会の次期会長に就任する予定だった菊池恵楓園の園長が、原告団らから国家賠償訴訟を批判する発言を指摘され、就任を辞退したため、当分の間、会長を空席とすることにした。
 
▼五月十一日
ハンセン病国家賠償訴訟の全国原告団協議会などは、熊本地裁判決から丸一年を迎え、元患者側の全面勝訴を祝う集会を約五〇〇人の参加で行った。また、毎日新聞はハンセン病の国立療養所自治会アンケートを実施し、五月一日現在の在園者は計四〇六三人、平均年齢は七五・〇一歳で高齢化が著しいことがわかった。また、元患者の退所者が一三一人になり、現時点で退所を希望している人は少なくとも六八人いたこともわかった。熊本地裁判決以降、療養所内の納骨堂に安置されていた遺骨を親族が引き取ったのは二四件あった。一方、都道府県の担当者が、転入者として退所者を把握している数は七九人に止まっていた。沖縄県は県内にある二つの療養所の退所者(三人)を把握していたが、退所者七六人のうち、都道府県の把握数は約三分の一の二四人だった。医療費については香川県と山口県が医療・介護費の自己負担分について全額補助する制度を始め、山口県は元入所者一世帯当たりに三万八七〇〇円の支給を決めたが、それ以外は独自の施策はなかった。
 
◎五月十二日
総務省は、先天性の病気の子どもらが、郵便局で扱う簡易保険への加入を一律に拒否されている問題で、加入の可否をめぐる判断基準について見直しを含めて再検討することを決めた。専門医からの聞き取り調査などを進める考えで、厚生労働省と協議を開始、簡易保険の実務を担当する郵政事業庁とも意見交換する。同省郵政企画管理局の保険企画が中心となり、小児医療の実情や医学の進歩に関する資料を収集し、どんな病気の子どもが見直しの対象になるのか審議する。
 
▼五月十四日
東京地裁は、ハンセン病国家賠償請求訴訟のうち、療養所に入所歴のない元患者と、入所者の遺族が起こした訴訟について、国が遺族三〇人に総額約一億八六〇〇万円の一時金を支払うことなどで、初めて和解を成立させた。残る原告八三人も順次、和解する見通しとなった。弁護団は、同地裁分について、さらに四〇〇人の追加提訴を予定しているという。
 
▼五月十五日
厚生労働省は、ハンセン病国家賠償請求訴訟の全国原告・弁護団と「全国ハンセン病療養所入所者協議会」から、ハンセン病問題の恒久対策に関する今年度の要求書を受けた。昨年末の同省と元患者側で合意した名誉回復措置や社会復帰支援策などを着実に実行することを基本に、新たに、療養所以外で受ける医療費助成制度の創設、「ハンセン病手帳」の新設、療養所に入所歴のない元患者への恒久対策などの要求を盛り込んだ。
 
▼五月十五日
民主党の「司法と精神医療の連携に関するプロジェクトチーム」と法務、厚生の各部会は、「心身喪失者処遇法案」の対案をまとめた。「不確実な再犯予測を根拠とした無期限の強制入院は、重大な人権侵害につながりかねない」と指摘。代わりに現行の措置入院制度の適正化と充実を求めた。刑事責任能力の判定が適切でないために起訴すべきケースが見送られるとして、検察庁法などを改正して「司法精神鑑定センター(仮称)」を設置、鑑定の仕組み(起訴前・不起訴後の鑑定体制)の充実と透明性を図り、起訴・不起訴について、より厳格な判断を可能にするとしている。また、精神保健福祉法を改正し、都道府県指定の医師二人による判定委員会を新設し、合議により入退院の判定を行い、起訴されなかった人についても、措置入院や入院解除を適切に判定できるようにするなどを盛り込んだ。
 
▼五月十六日
ベルギー下院は、医師による「安楽死」を合法化する法案を賛成多数で可決した。上院は昨年十月に可決しているため、オランダに続き二番目の「安楽死」承認国になった。十八歳以上で、本人の強い希望、耐えがたい苦痛、複数の医師の同意などの条件を満たせば、医師が患者を「安楽死」させても刑事罰には問われなくなる。
 
◎五月十六日
東京都は、足立区にある医療法人財団「足立病院」に対し、衛生局から年間五百万円から六百万円を助成しているが、一九九六年度から二〇〇一年度に医師と精神保健福祉士の人件費の半分を助成する制度を利用した際に、都に提出した書類に誤りがあったとして理事長より訂正の報告があった件で、届けられたアルコール治療病棟の看護要員の数が実際と違うなどの疑いが出ており、補助金の額や交付の経緯が適正かどうか調べることにした。補助金約三六〇〇万円を不正に受給していた疑いが出ている。また、アルコール治療病棟の一部を、用途変更の届け出をしないまま、別の施設として利用していたことも明らかになった。さらに、理事長が実質的に経営するレストランなどの赤字を、病院経営で得た収益で補填していたこともわかった。補填額は一九九九年と二〇〇〇年度の二年間で約一億円に上るという。
 
▼五月十七日〜二十日
「『新処遇法案を廃案に』全国ネットワーク」は、衆院議員会館で記者会見し、近く超党派の国会議員とも連帯して「市民の会」を設立し、政府の「心身喪失者処遇法案」に幅広く反対運動を展開していくことを発表した。また、同法案に反対する精神障害者ら約三五〇人は、国会周辺でリボンを持って「人間の鎖」をつくり、「差別と偏見を助長する新法反対」などと書いた傘をさしたりして抗議行動を行い、廃案を訴えた。二十日、日本刑法学会に所属する刑法学者七十六人が「解決すべき問題が多く、立法は慎むべきだ」とする意見書をまとめた。関係省庁に送った上、さらに賛同者を募る方針。
 
▼五月二十日
東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランド社は、障害のある入園者向けに発行していた「ゲストアシスタントカード」の一部(待ち時間なしで速やかにアトラクションに入ることができる)を廃止した。カードは入園後に、自閉症など「待つことができにくい障害」を自己申告してもらって発行している。障害を説明する苦痛への配慮から、障害の内容を聞いたり障害者手帳の提示を求めたりしない。しかし、悪用されるケースが目立ち、利用者の公平性が保てなくなったため一部を廃止することにしたという。今後は新しいシステムを考えていく方針。
 
▼五月二十日〜二十三日
厚生労働省は、ハンセン病国家賠償訴訟を批判する論文(国立ハンセン病療養所菊池恵楓園自治会の機関誌一月号)を発表し、元患者から抗議を受けていた同園園長が、ハンセン病の啓発活動のため公務で出張した際、違法(法律に規定された以外に受け取れないとする国家公務員法に違反する行為)に計約二〇〇万円の報酬を受け取ったとして、戒告の懲戒処分をしていたことを明らかにした。同省は、問題の論文(「一部の関係者は勝訴に酔いしれて浮かれっぱなし」などと記した内容)についても「誤解を招く不適切な表現だった」として、同省健康局長名で同園長を厳重注意処分にした。二十三日、全国原告団協議会、全国ハンセン病療養所入所者協議会、全国弁護団連絡会の三団体は、同訴訟熊本判決で、国が控訴を断念してから一年にあたるとして、判決を待つことなく死亡した元患者らを追悼する式典と報告集会を開いた。元患者、厚生労働相、法相、政党代表など約二五〇人が出席した。
 
◎五月二十二日
東京都健康局は、足立区にある医療法人財団「足立病院」が、アルコール治療病棟の一部を、用途変更の届け出をしないまま、別の施設として利用していたことがわかったと発表した。また、理事長が実質的に経営するレストランに病院職員十人を派遣し、給与約四八〇〇万円を肩代わりしていたり、赤字を病院経営で得た収益で補填していことがわかった。計七四〇〇万円余の流用を確認し、厚生労働省に報告した。このほかにも、一九九一年から一九九三年に入院患者からの預かり金を元職員が九五〇万円着服し、病院側が補填、生活保護費計二九〇〇万円を適切に処理せず、病院に残していたことも明らかになった。都監査委員は、同病院で医療法違反の疑いが発覚したことから、各会計定例監査のなかで、老人福祉施設やアルコール精神疾患専門病棟への国や都の補助金が適正に支給されたかについて調べることにした。
 
▼五月二十五日
厚生労働省は、雇用保険の加入資格がある労働者のうち企業を解雇された障害者の数が、二〇〇一年度には、対前年度比で約一・六倍に急増し、全国で過去最悪の四〇一七人に達したことを明らかにした。労働者全体の対前年度比約一・二倍を上回る増え方になっている。就職希望者が過去最多の十四万三七七七人になったのに比べ、就職件数は対前年度比四・五%減の二万七〇七二人にとどまっているため、就職率も統計を取り始めて以来、最悪の三二・四%を記録した。
 
◎五月二十七日
岩手県は、盛岡市にある社会福祉法人・カナンの園の設立時からのメンバーである前理事長が、運営する知的障害者施設の利用者から預かった障害者基礎年金約二億四千万円を、一九九四年ごろから無断で株式投資につぎ込み、ほぼ全額を失っていたことを明らかにした。年金を担保に銀行から融資を受け、自己名義の株式に投資したが失敗したという。障害者基礎年金は、知的障害者施設の利用者の六十九人の保護者が任意の年金組合をつくって積み立て、銀行や郵便局の「福祉預金」で運用、年間約五〇〇万円の利子を生活訓練などの活動費に充てることになっていた。前理事長は代理執行人として一人で管理をまかされていたが、積立金総額とほぼ同額の約二億四千万円を失っていた。組合側は損害賠償を求める方針で、刑事告訴も考えているという。理事長は流用の事実を理事の一人に告白し、二十三日付で理事長を解任された。また、前理事長が理事長を兼務していた別の社会福祉法人・泉の園の「一戸子どもの家保育園」でも、運営費約二千万円を株式投資につぎ込み、全額を失い回収不能になっていたことも、県の監査で明らかになった。
 
▼五月二十八日
衆院本会議は、「心身喪失者医療観察法案」の趣旨説明と質疑を行い、審議入りした。また、同法案に反対する民主党は対案として「精神保健法改正案」「裁判所法改正案」などを提出。両案はいずれも法務委員会に付託された。民主党議員の「政府案が社会防衛的な色合いが濃く、入院機関に上限を設けていないなど入院の長期化を招く」との質問について、法相は「患者本人の社会復帰が最終的な目的であり、いわゆる保安処分とは異なる」と述べた。また、「再犯のおそれの有無について、予測は不可能」とする質問に対しては、「病状や治療状況などの慎重な鑑定によって予測は可能」と答弁した。
  
六月一日
▼東京都目黒区は、保健福祉サービスに対する苦情調査委員制度を開始した。区やサービス提供事業者に対する苦情や不満などを直接には言いにくい場合、区民に代行し対応する。委員には弁護士や学識者などが当たり、苦情申立書に必要事項を書いて提出すれば、週一回の面談日に委員が直接対応するもので、申立書は区健康福祉部などで配布する。
 
▼六月三日
東京都板橋区保健福祉オンブズマンは、昨年七月の発足以来今年三月までに寄せられた民間福祉サービス事業者や行政機関に関する苦情受付が、二十六件あったと発表。オンブズマンが処理したのは五件で、二十一件は面接や電話応対のみで、苦情申し立ての手続きはとらなかった。意見表明したのは三件あり、乳幼児健診で区に紹介された病院が検査設備はあったが、治療設備がなく治療が受けられなかった女性の苦情を受け、区に対し「説明不足」と意見を述べるなどした。
 
◎六月五日
東京高裁は、全盲の女性がぶつかって来たために足の骨を折るけがをしたとして、川崎市の女性が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、「全盲の女性は盲導犬をつれ、つえで前を確認しながら歩いており、過失はなかった」として、けがをした女性の訴えを退けた。また、視覚障害者の過失判断基準として「健常者と同じ注意義務はなく、視覚障害者としての標準的な注意義務を果たすことが求められる」との考えを示した。
 
▼六月七日〜八日
衆院法務委員会は、「心身喪失者医療観察法案」の審議に入った。裁判所が殺人や放火など重大犯罪を起こしても刑事責任が問えない「触法精神障害者」の処遇を決め、国の責任で治療して退院後の社会復帰を支援するという内容で、野党の一部から「患者を隔離差別する保安処分につながる」との批判が出ていることに対し、法務省刑事局長は「継続治療で社会復帰を目指すことが目的で、社会防衛を直接目的とはしていない」、法相は「国の責任において手厚い医療を統一的に行う必要がある」と反論した。治療対象として年間四百人を想定している。同日、八日に法案のきっかけとなった大阪教育大学付属池田小学校の乱入殺傷事件が一年目を迎えるにあたって、亡くなった児童の父母七人が、記者会見し「国は責任の所在を明らかにして再発防止策に取り組んでほしい」と訴え、「学校側の安全管理体制が不十分だった」として、賠償金の支払いと、事件の詳細な調査報告書の作成を文部科学省に求めていくことを明らかにした。八日、同小主催の追悼式典「祈りと誓いの集い」が開かれた。
 
▼六月十二日
兵庫県は、「成年後見制度」の「法定後見人」に、法人としては県内で初めて「神戸市社会福祉協議会」を選任した。市内に住む一人暮らしの八十歳の女性について、区役所から「痴ほうが進み、後見人の必要がある」との情報が寄せられたため、弁護士や医師らでつくる同協議会の成年後見判定部会が審査し、一月に神戸家裁に申請していた。今後は、同協議会が女性の財産目録を作成し、財産管理や福祉施設などへの入所手続きなどを支援することになる。報酬は女性の財産に応じて同家裁が決定する。同協議会はこれまで「任意後見」の契約を五件結んでいるが、「法定後見人」も六件が審判中。
 
◎六月十二日
国土交通省は、全日本空輸が社内規定(非公開の内規)に基づいて、今年二月、沖縄ツアーに参加した精神障害者二人に対し、帰京当日に旅行者から病気のことを聞いて、搭乗をいったん拒否、翌日家族などを同乗させたうえ、東京便に乗せてていたことがわかり、同社や同様の内規を持つ日本航空、日本エアシステムに対し、「障害者の社会参加を進める国の方向性を踏まえるように」と内規を見直すよう指導した。全日本空輸の内規には「精神保健法」(現・精神保健福祉法)に基づく精神障害者などは、医師か看護婦が同伴、付添人と安全を証明する診断書がある場合のみ搭乗を認めている。他の二社はさらに古い「精神衛生法」(一九五〇年制定)に基づいていた。三社は他の乗客への危害や他の迷惑行為の有無により、搭乗の可否を判断する方向で見直しを進めている。
 
◎六月十四日
大阪地裁堺支部は、大阪府高石市にある精神病院(浜寺医院)に入院していた男性が窒息死したのは拘束帯(ベルト)で首や胸を圧迫されたことが原因だとして、遺族三人が、病院を経営する「医療法人微風会」を相手取り損害賠償を求める訴えを受理し、第一回口答弁論を開いた。病院側は「体の表面に傷がないのに拘束帯による窒息死とした解剖医の所見はおかしい。死因は心臓疾患で、裁判では死体検案書について争うことになる」とする答弁書を提出し全面的に争う方針示した。
 
◎六月十八日
神戸家裁は、一九九七年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件で、中等少年院(十六歳以上二十歳未満を対象)に収容されている少年(十九歳)が来月で収容年齢を越える二十歳を迎えるにあたり、中等少年院側が「さらに長期の処遇が必要」として収容継続を申し立てていたことを明らかにした。同家裁は今後、再審判を実施し、中等少年院(二十三歳まで)か医療少年院(二十六歳まで)での収容継続を決定する見通しとなった。
 
◎六月二十日
東京地裁は、「性同一性障害」と診断された男性が、女装で出勤したことなどを理由に勤務先(出版社「昭文社」)から懲戒解雇されたのは不当だとして仮処分の申し立てをしていたことについて、元社員の主張を認める決定を出した。元社員は「性同一性障害の人が治療の過程で職場を追われたり、戸籍と生活上の性が違うため、正社員として働けない人も多い」と意見を述べているが、「女性としての行動を抑制されると、多大な精神的苦痛を被る状態だった」と妥当性を認め、「混乱を避けるために女装しないよう求める会社にも一応の理由はあるが、時間がたてば違和感は緩和される余地があり、女装で出勤しても会社の秩序や業務に著しい障害が起きるとはいえず、解雇に相当性はない」とした。元社員は今年一月に会社側から配置転換を打診されたのを機に、「女性として働きたい」として、女装出勤、女性用トイレ・更衣室使用の三点を配転の条件として出したが、会社側は拒否したため、三月から女装で出勤。会社側は女装しないよう命じ自宅待機処分にしたが、その後も女装で出勤、解雇の意図を感じたため仮処分を申し立てた。しかし、業務命令違反や配置転換命令に従わなかったなどを理由に解雇された。
 
◎六月二十日
米連邦政府は、米バージニア州で空軍兵を射殺した知的障害(知能指数五十九)のある男性被告に対する同州最高裁の死刑判決について、弁護側が「被告は自立した生活や仕事ができないほどの知的障害があり、不当な量刑だ」として訴えていた件で、一九八九年の連邦最高裁判決(同種の裁判に対し「合憲」と判断)を覆し、「知的障害者の死刑は犯罪に対する適切な刑罰ではなく、将来の犯罪の抑止にもならない」との見解を示し、「連邦憲法修正第八条(残酷で異常な刑罰の禁止)に違反する」として、同州最高裁に差し戻した。賛成は六人で、反対の三人は「多数意見は世論や国際的な監視を気にしすぎている」と批判し、「合憲」とする意見を提出した。知的障害者の死刑を禁止する州は一九八九年には二州だったが、現在は十八州に増えている。
 
▼六月二十二日
解放出版社(部落解放同盟の関連出版社)は、大阪精神障害者連絡会から、同社が二〇〇〇年十月に発行した写真誌「Hunet(ヒューネット)に掲載された特集「差別社会と少年」について、神戸市須磨区の小学生連続刺傷事件、西鉄バスハイジャック事件などを取り上げた際に、「精神障害者への差別や偏見を助長する記述がある」と指摘されたため、在庫約一万三千七百部を破棄して、同誌を休刊していることが分かった。同社は今年二月に、事件の容疑者、被害者の実名を記載したり、事件との関係が不明なのに、精神科への入通院歴を記載したことなどを問題点としてまとめ同連絡会に謝罪した。

 

▼六月二十七日
政府は、二〇〇〇年六月時点で精神病院に措置入院(精神保健福祉法に基づく強制入院)している患者が全国に三二四七人いると、社会民主党の議員の質問注意書に答えた。入院期間では、二十年以上が最多で八三九人(二五・八%)を占め、十年から二十年で三〇五人、五年から十年が二五五人、一年から五年が五百五十人、六カ月から一年が二一二人。地域別では、二十年以上の患者の割合は福井(六八・四%)など五県で五十%を超えた。千葉、京都、奈良の三県と、横浜市など五政令指定都市では〇%。大阪市は措置入院患者がいなかったなど、地域別で大差があることが分かった。
 
◎六月二十九日
大阪平野署は、平野区内の回転すし店で、客のテーブルのすしをつまみ食いしながら店内をうろついていた知的障害のある無職の男性(三六歳)に店員が注意、男性が逃げようとしたため、店の事務所に連れていき、警察に通報したが、署員の到着を待つ間、男性が店員にかみつくなど暴れたため、六人がかりで床にうつぶせにして取り抑えたところ、ぐったりして意識を失ったため病院に運んだが、間もなくして死亡したと発表した。店側の行為について過失致死の疑いもあるとして、男性の死因を調べるとともに、関係者からの事情聴取を始めた。
 
▼七月四日〜十日
政府は、「心身喪失者医療観察法案」の成立を目指しているが、熊本地裁のハンセン病国家賠償訴訟弁護団の代表弁護士が呼びかけ人となり、同法案に反対する声明を、弁護士ら計三百二人と連名で作成し、法務、厚生労働両省に提出した。政府案が、強制隔離の要件とする「再犯のおそれ」は、「精神障害者は危険」との誤った社会認識に基づくもので、正確な判定も不可能であり、「伝染のおそれ」を要件とした「らい予防法」と同様、幸福追及権の尊重を定めた憲法十三条に違反するもので、重大な人権侵害を強いるものなどとして、法案撤回と、現行の強制隔離政策による患者の人権侵害への謝罪を求めた。九日、政府・与党は、野党が慎重審議を求め、会期中の成立が困難となったため、継続審議とする方針を固め、十日、同法案の今国会成立を断念した。
 
◎七月十五日
警視庁日野署は、JR中央線日野駅のホームから、手動式車いすの女性が線路に転落し、軽いけがをした事件で転落の原因を調べている。駅員がホームまで上げたが、駅員が目を話した間に、車いすがホーム上を移動した。ホームは中央部から線路に向かって緩い傾斜になっている。駅員はブレーキがかかっているかどうか確認していなかったという。
 
◎七月二十二日
千葉県弁護士会の人権擁護委員会は、昨年、八千代市の知的障害者更生施設「小池更生園」の保護者の要請を受け、昨年の保護者総会で、「園の居住区域内に保護者の立ち入り禁止を一方的に通告したのは、自己のおかれた環境を自力で認識し、処理できない障害者にとって、健康上、危険もしくは好ましくない状況を放置し、保護者を通じて施設側に適切なサービスを求めることを困難にする」として、人権侵害にあたる恐れがあると結論づけ、同園の理事長に対し、禁止の撤回を求める要望書を出した。理事長は「保護者が入ったときにトラブルがあったので、職員と一緒に入るという条件をつけただけで、保護者会と相談して決めたこと。要望は一部の保護者の言い分を受け、事実認定を間違っている」と反論し、「禁止の実態はなく、要望書への回答は考えていない」としている。
 
▼七月二十三日
日本精神神経学会は、厚生労働省に対し、精神保健福祉法にある「精神分裂病」という言葉を「統合失調症」に改正するよう申し入れた。同省は、同学会が呼称変更したことを受け、公文書で使用することを認める方針で、精神障害者手帳の申請や医療保護入院届などに添付される診断書に「統合失調症」が使われていても受理する方針を明らかにした。近く都道府県に通知する。しかし、法改正については明確な返事をしなかった。
 
▼七月二十四日
熊本県議会は、ホームページで(HP)で水俣病の同義語として「つまずき病」「ツッコケ病」「よいよい病」などの表記を掲載していたが、水俣市の水俣病互助会など三団体が、「県も県議会も水俣病への認識が著しく欠落している」「被害者への侮蔑以外の何物でもない」として、県議会議長あてに表記の取り消しと被害者への謝罪に加え、HP作成の経緯や同義語とする根拠を示すよう要求する抗議文を郵送した。県議会事務局は「同義語は検索ソフトの開発メーカーが設定している。指摘された同義語は把握していなかったが議事録には載っていないようだ」として削除する方向で検討することになった。
 
▼七月二十七日〜八月二日
厚生労働相は、「無年金障害者」のうち、当面、学生だった人に限り障害基礎年金の給付水準の半額程度を税を財源に支給し、救済する意向を固めた。学生は他の人と比べ、働いて収入を得る能力が乏しく、保険料を支払うことが困難だったと判断した。八月二日、同相は、学生だった人を特例的に救済する考えを方針転換し、「未加入の理由を区別するのは難しい。法制上はまとめて対応する以外にない」として、「無年金障害者」を対象にした新たな福祉手当制度を早急に創設する方針を示し、「無年金障害者」の実態調査に着手するよう、事務方に指示した。施設入所者は生活全般が補償されているとして対象外とし、一級と二級の重度障害者に対象を限定することにしている。
 
◎八月五日
大津地裁は、五個荘町の肩パツト製造会社の元社長が従業員の障害基礎年金を横領し、虐待した「サン・グループ事件」で、知的障害の元従業員や死亡した男性従業員の両親ら計十八人が、元社長と国、県を相手取り、年金の返還や賃金の未払い分などの損害賠償を求めた訴訟の第三十四回口頭弁論を開いた。原告側が最終弁論を行い、元社長の虐待行為や、国と県の「不作為」についての責任を追及し、事件発覚後、国会や県議会で謝罪したのに、法廷では原告らの被害を無視するような主張をしていると批判。「提訴から六年を迎え、いかに虐待が行われ、行政が見過ごしたかが明らかになった。障害者の未来を押し開く判決を望む」と主張し、結審した。国は「作為義務はなく、原告の被害との因果関係はない」、県は「就職に際して調査義務はない」、元社長は「訴えの内容は誘導による偽造とねつ造」とする最終準備書面をすでに提出している。判決は二〇〇三年三月二十四日。
 
◎八月二十一日
大阪府警豊能署は、町立吉川中学校で今年二月、当時三年生だった男子生徒が体育の授業中に突然死した事件で、小学生のころから「肥大型心筋症」と診断され、大阪府教育委員会が配布している心臓病管理指導表にも激しい運動を禁じることになっていたにもかかわらず、注意義務を怠り、入学当初から体育の授業に参加させていたとして、同中学校校長と体育教諭、養護教諭、担任教諭ら五人を、業務上過失致死の疑いで大阪地検に書類送検した。
 
▼八月二十四日〜二十六日
世界精神医学会は、横浜市内で第十二回世界大会を開催し、一一九の国と地域から約八千人が参加した。日本の医療現場が「精神分裂病」の呼称を「統合失調症」に変更した問題が、各国参加者の注目を集め、二十五日、シンポジウムでは、新たな病名が当事者や家族自身の「内なる偏見」を減らしていると成果が報告された。漢字で「精神分裂病」を使用している韓国や中国、欧米の研究者からも「世界的に名称を見直す時期だ」などの意見が相次いだ。二十六日、日本精神神経学会は、総会を開き、「精神分裂病」の呼称を「統合失調症」に替えることを正式に決めた。
 
◎八月二十八日
水戸地裁は、旧アカス紙器の元社長が知的障害のある従業員に暴力を振い、性的虐待をしたなどとして、元業従員の女性三人が損害賠償をもとめた民事訴訟の第二三回口頭弁論を開いた。この日、原告になった知的障害のある従業員の本人尋問が行われ、元社長の暴力の実態を証言した。報廷は非公開で、ラウンドテーブル方式で行われた。次回の本人尋問は、弁護側から付添い人の要求があり、付添い人が同席して行われることになった。
 
◎九月三日
千葉地検は、東京都杉並区の「宝喜クリニック」の院長を、同クリニックに通院していた女性患者を、クリニックの職員二人に自宅から千葉県にある精神病院に車で搬送する際に、自傷行為を防ぐためとして、口のなかにティッシュ約十枚を丸めたものやタオルを押し込んだうえ、粘着テープで口をふさぎ、呼吸を抑制する静脈注射を打ったため、呼吸困難で死亡させたとして、千葉地裁に在宅起訴していたことを明らかにした。患者は両手と両足もビニールひもと粘着テープでしばり、毛布でくるんで用意した車に仰向けに横たわらせていた。院長は患者を車に乗せる際に呼吸促進剤を注射したため、窒息の恐れはないとして車に同乗せず、医師としての注意義務を怠った疑いがもたれている。
 
◎九月七日
徳島県教育委員会は、県立養護学校の男性教諭を、知的障害を持つ十歳代の男子生徒を卒業までの数年間、自宅に連れ込むなどしてわいせつ行為を繰り返していたとして、懲戒免職処分としていたことがわかった。小遣いを与えたり、食事に連れて行くなどもしていた。同教育委員会は、被害者が特定されることなどを理由に公表していなかった。
 
◎九月九日
埼玉県警久喜署は、重度の知的障害者の三女(四六歳)の首を締めて殺そうとしたとして、母親(七二歳)を殺人未遂容疑で逮捕した。母親は三女を三十年以上介護していたが、「看病に疲れてやってしまった」と供述している。三女は死亡した。
 
◎九月九日
さいたま地裁は、一九九八年十二月に経済的理由で、男児を同児童相談所を通じて所沢の夫婦に里子に出したが、一九九九年四月、当時二歳だった男児が頭に傷を負って、大学病院で緊急手術をしたが、言語障害や知的障害の後遺症が残ったのは、「食べ物を詰まらせた際に里親が頭をたたくなどの誤った措置を施したことが原因」として、男児の代理人の両親が里親と県を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こしたことを受理していた。けがをした当時、男児は栄養不良状態で、額や背中にも傷があった。県に対しては、被告夫婦を里親に認定しながら、必要な研修や指導を怠ったとして責任を追及している。
 
▼九月九日
在日本大韓民国民団中央本部は、国民年金への未加入が理由で障害礎年金を受けられない「無年金障害者」の問題(一九八二年に撤廃された国民年金法の国籍条項で、その時点で二十歳を超えていた外国人障害者は年金を受けられないままでいる)で、国籍要件で加入できなかった在日外国人の障害者や高齢者も救済対象に含めるよう、厚生労働相に要望書を提出した。
 
◎九月十三日〜二十四日
最高裁第三小法廷は、作家柳美里さんの小説「石に泳ぐ魚」にモデルとして無断で登場させられ、名誉を傷つけられたとして、障害を持つ知人の女性が柳さんと発売元の新潮社などを相手に出版差し止めと損害賠償を求めた訴訟で、判決期日を二十四日に指定した。書面審査中心の最高裁が、原告、被告双方の主張を聴く弁論を開かないまま判決を出すことで、柳さん側の敗訴の判決が確定する見通しとなった。二十四日、最高裁第三小法廷は、柳さんと発売元の新潮社の上告を棄却した。出版差し止めと計一三〇万円の支払いを命じた一審、二審判決が確定した。最高裁が、プライバシーや名誉権などの人格権に基づいて、小説の出版差し止めを認めたのは初めてで、「小説の公表により、公的立場にないモデル女性の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害されており、出版されれば重大で回復困難な損害を被る恐れがある」とし、「人格権に基づいて出版差し止めを命じたことは、表現の自由を保障した憲法に違反しない」と判断した。
 
▼九月十四日
全国の障害のある弁護士ら五十人は、「障害と人権全国弁護士ネツト」を結成し、設立集会を開いた。障害を理由とした差別や人権侵害に立ち向かうためで、事務局に相談窓口を設け、具体的事件で被害者の救済に当たるとともに、米国の「障害を持つアメリカ人法」(ADA)を踏まえて、日本の障害者差別禁止法の制定に取り組む。弁護士のうち八人が、車いすを利用したり、聴覚・視覚に障害がある。年一回の実務研究会の開催や会報発行などで交流深めていく方針。
 
◎九月二十日
山口地裁下関支部は、一九九九年にJR下関駅で十五人が死傷した事件で、殺人罪などに問われた被告の男性に対し、求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は、責任能力が限定された心身耗弱か、責任能力がまったくない心身喪失にあたるとして、刑の軽減か無罪を求めていた。被告の精神状態については最大の争点になり、「妄想性障害であり、心身耗弱にあたる」とする鑑定と、「物事の善悪を判断する能力に著しい障害はなかった」として刑事責任能力を認める鑑定が証拠として採用されたが、「被告の妄想は対人恐怖症として理解できる程度にすぎない」として、心身耗弱とする鑑定は「対人恐怖などの症状が妄想に発展していったとする鑑定には十分な根拠がない」として採用せず、責任能力があるとする鑑定を「対人恐怖などの治療経過や両親との心理的な関係、揺れ動く心情などを十分に検討、分析しており、診療録や主治医の法廷供述に照らしても十分に理解、納得できる」と評価し、当時の精神状態を「強い性格的な偏りを持った人格障害か神経症にとどまる」と判断し、心身喪失でも心身耗弱でもなかったとした。
 
▼九月二十日
厚生労働省は、病院の情報公開促進の一環として、精神保健福祉法に基づいて同省が実施する精神病院への立ち入り検査結果を、原則として公表することを決めた。公表にあたっては、病院名、改善を命じた事項なども明らかにする。都道府県には、立ち入り検査のほかに、すべての精神病院に年一回実施している任意の実地指導でも問題点が改善されない場合は、その内容も公表することを求める通知を出す方針。患者の違法拘束や職員不足などマイナス情報も明らかにして、精神病院の透明性を高め、患者や家族の病院選びに生かせるようにする。同省が立ち入り検査に入るのは、大半が都道府県の検査なども改善が見られない場合で、年に数件ある。検査結果についてはこれまで問い合わせがあれば答える程度で、積極的に公表していなかった。
 
◎九月二十六日
岐阜地裁は、一九九九年三月に、知人の連帯保証人として金融機関への借金支払いの民事事件の判決(知人が一部返済したのみで行方不明になったため、金融機関が男性に貸金請求訴訟を起こしたが、第一回口頭弁論期日に欠席したため、請求原因事実を認めたとして、男性に借金支払いを命じた)が確定した岐阜市の六一歳の男性が、兄を後見人として、「知的能力の問題で連帯保証人になることも、裁判所の呼び出しを理解して出廷することも不可能だった」として、金融機関を相手に、確定判決の取り消しと連帯保証契約の無効を求めた再審の判決で、「当時男性は連帯保証の意味を理解できないまま、承諾する意思表示をしたと推測され、契約は無効」とする判決を出した。兄は、代理人を通して同地裁に、実印が違うこと、数回にわたって印鑑証明書に登録してある印鑑の改印を繰り返していること、契約に不振な点が多いことなどをあげ、男性に責任能力がないことを証明する病院の診断書を提出していた。
 
◎十月二日
山口地裁は、知的障害の女性(二五歳)に十四年間にわたって性的虐待を続けていたとして準婦女暴行罪に問われていた、女性の職親だった製縄所経営者(七十歳)に対し、「女性を性欲の対象として身近に置くため職親制度を悪用」「福祉関係機関が有効な打開策を取れなかった」として、懲役三年六カ月の判決を出した。暴行には経営者の妻も関わり、同地裁で傷害罪で懲役一年六カ月執行猶予三年の判決を受けている。経営者は女性が小学校五年生の時に預かり、女性が逃げ出した二〇〇一年十一月頃まで、暴力や性的虐待を続けていたが、職親の登録をした二〇〇〇年以降、女性を住み込みにさせて早朝から深夜まで働かせたうえ、給料は全額、原料の購入などに回していた。経営者は職親登録前にも、別の知的障害者を実習生として受け入れていたなどから、一九八九年には社会福祉協議会長賞を受賞している。県の担当職員は女性を委託後、毎月女性と面接していたが、女性からの暴力を受けているとの訴えはなかったため気がつかず、一九九四年には福祉施設職員が経営者を問い詰めたことがあったが、逆上されそのままになり、施設ではその後も二〇〇〇年間で、別の知的障害者を通わせていた。同日、山口県は、各社会福祉事務所に、職親への緊急面接を指示した。また。職親と障害者を別々に面接することや、委託更新時の調査をさらに強化することにした。
 
▼十月三日
日本人類遺伝学会など四学会は、先天性の病気を持つ子どもが簡易保険などへの加入を拒否された問題を受け、国や保険会社などに対し、遺伝子研究の進展で将来、生活習慣病などの遺伝子診断が進めば、保険加入や雇用、結婚などでの差別が広がりかねないとして、保険契約で遺伝的な病気の情報を使用することを一時保留し、遺伝情報の保護、利用についての検討会議の設置を求める提言を発表した。社会的なルール作りを求めている。
 
◎十月七日
東京都は、補助金の不正受給の疑いが指摘されている医療法人「東京足立病院」の立ち入り調査結果を発表した。東京都がアルコール精神疾患専門病棟に対して運営費を補助する制度を利用し、一九九六年度から昨年度まで約三六〇〇万円の補助金を受けていたが、要綱では同疾患以外の患者の入院は認められていないにもかかわらず、同疾患以外の患者を年平均百人入院させていた。また、入院患者は「都内に住所を有する者」と規定していたにもかかわらず、都外の患者の入院も同三八人に上っていた。しかし、同疾患以外の患者の入院は短期の場合が多いこと、専門病棟としての運営をしていたこと、都内に住む患者も入れていたことなどから、要綱違反は軽微なことから、補助金の返還は求めず、要綱を守るよう文書で指導するに止めた。
 
◎十月九日
福島地検は、一九九八年に福島県いわき市の病院で、統合失調症(精神分裂病)で通院中の男性に、医師が切られて死亡し、別の医師に二カ月の重傷を負わせた事件で、「通院歴があり、責任能力に問題があった」として、一度は不起訴処分にしていた容疑者の男性について、遺族から不服申し立てを受けたいわき地検審査会が、昨年六月に「刃物を準備し、事件後も逃亡するなど計画性が認められ、統合失調症による行動と断定するのは困難」として不起訴不当を議決したことを受け、精神鑑定を行うなど再捜査した結果、「刑事責任を問える」として、再逮捕し、殺人と殺人未遂の罪で福島地裁に起訴した。
 
▼十月十一日
アジア太平洋障害者の十年・最終年記念フォーラムは、自治体の「欠格条項」についての全国調査結果を発表。市町村教育委員会の傍聴制限では、一割以上で「精神障害者」などに傍聴を認めない排除規定が残っていることがわかった。「精神異常者」という表現の排除規程がある市町村が二〇一(一三%)、「精神障害者」は市町村が四六(三%)、今でも「精神薄弱」や「白痴」を使用しているところが四町村あった。議会についての傍聴制限は、「精神異常者」という表現の排除規程がある市町村が六一(四%)あった。公設施設では、市民会館などが「精神異常者」と規定して使用制限しているのが十四市町村、スポーツ施設が十施設あった。
 
▼十月十一日〜二十五日
新潮社は、最高裁が九月にプライバシー侵害などの理由で出版差し止めの判決を出した、柳美里さんのデビュー小説「石に泳ぐ魚」の改訂版を出版する方針を決めた。十二日、国立国会図書館は、最高裁が出版差し止めを命じたことを受け、文芸誌「新潮」に掲載されている同小説の閲覧を、「人権侵害に当たると裁判で確定しており、閲覧は社会的影響が大きい」などの理由で閲覧禁止を決めた。同小説の部分に袋上のものをかぶせるマスキング法によって中身を読めないようにし、国会議員や研究者なども含め、閲覧禁止には例外を設けない。十七日、原告側弁護団は、新潮社に対し、出版を差し控えるよう求める質問申入れ書を送った。十八日、日本図書館協会の「図書館の自由委員会」は、国立国会図書館に対し、「図書館の自由に関する宣言」(同協会の一九七九年総会決議)の精神に反するとして、閲覧を認める方向で再検討を求める質問書を送った。二十五日、柳さんと新潮社は、記者会見し、改訂版を三十一日に発売すると発表した。改訂版は、オリジナル版が文芸誌「新潮」に掲載された後、女性が申請した出版差し止め仮処分の審理中に柳さんが訂正を加えた作品。女性側弁護士は「出版は自制すべきだ」と訴えている。
 
◎十月十五日
警視庁板橋署は、東京学芸大学付属竹早中学校の男子生徒が十一日に板橋区内のマンションから飛び降り自殺したことを公表した。生徒は、アトピー症状を同級生にからかわれていたことを悩んでいたということから、学校関係者らから事情を聴いている。同校は、生徒の家族から今年、数回にわたり「同級生から『きもい(気持ち悪い)』と、いじめられ、学校を休みがちになっている」と相談があったことを公表したが、「生徒らに確認したが、いじめの事実は確認できなかった」と説明していた。
 
▼十月十五日
札幌地裁は、元東京都日野市の住民で現在は札幌市内に住む男性が、日野市が実態調査しないまま入所させた知的障害者更生施設で、年金を無断流用されるなどしたのは監督義務を怠ったためだとして、日野市に二五〇〇万円の損害賠償を求める訴えを受けた。男性は同市で自立生活をしていたが施設入所を希望し、一九九五年二月に同市の措置で、社会福祉法人「札幌育成園」が運営する「寿都浄恩学園」に入所したが、約六年間(昨年五月退所)の入所中に支給された障害基礎年金計約五〇〇万円について、同法人が無断で開設した口座に年金を振り込ませ、互助会への寄付名目で全額払い戻し、施設の修繕費などに流用し、また、除雪作業などの賃金計約九七〇万円の未払いがあるとして訴訟に踏み切った。
 
◎十月十八日〜二十四日
東京地裁は、小学一年生の長男を体罰死させたとして傷害致死罪に問われた母親に対して、「授業中に騒ぐなどの長男の問題行動に一人で悩みを募らせた末の犯行で、同情の余地がある」として、懲役三年六月の判決を出した。
 
◎十月二十一日〜二十五日
警視庁武蔵野署は、市内のJR中央線「天文台」踏切で、目が不自由な五五歳の男性が遮断機をくぐって踏切内で快速電車にはねられて、全身打撲で死亡したと発表した。二十五日、長野県警高速隊は、車いすに乗っていた男性が大型トレーラーに車いすごとはねられ、死亡したと発表した。
 
◎十月二十五日
富山県福光町選挙管理委員会は、福光町長選の不在者投票で、視覚障害の男性から町役場で点字投票の申し出があったが、「本来点字投票は認められるべきもの」としながら、「町の視覚障害者数が三、四人と少なく、点字で投票すれば、支持候補が分かってしまう可能性が高く、プライバシーの保護が困難」として、点字投票を断り代理投票を勧めた。男性は「視覚障害者にも自分で一票を投じる権利がある。自分の投票行為で、一票を投じたい」として棄権した。町選挙管理委員会は、点字投票の採用を再検討している。
 
◎十月三十一日
静岡地裁は、静岡県伊東市の障害を持つ中学一年生の女子生徒の母親が、市の個人情報保護条例に基づいて、同市教育委員会に対し女子生徒の小学校一年から三年生当時(車いすで普通学級に通っていた)の学習指導要録(学校教育法施行規則に定められた記録)と就学指導調査個票(各市町村教育委員会が独自に作成)の開示を求めた訴訟で、原告の訴えを一部認め、個票の知能指数欄と検査日、指導要録の備考欄の開示を命じる判決を出した。知能指数欄の開示を認めた理由としては、「客観的事実に関する情報なので、開示しても指導などに著しい支障が生じる恐れがあるとは認められない」とした。授業中の態度や性格・能力の評価など大半は「事実と評価・判定が混在して記載されており、支障の恐れがある」「児童、保護者が見た場合、表現によっては児童の自尊心を傷つけ、保護者の無用な反発や学校との信頼関係を損ねる」と指摘して非開示が妥当とした。指導要録については、出欠記録など一部を除き非開示とした。
 
◎十一月一日
川崎市は、市が運営する知的障害施設の男性職員が、今年の五月と六月に施設内で十代の女性入所者に性的ないたずらをして停職六カ月の懲戒処分にしたが、職員は依願退職していことがわかった。市は被害者の意向ということで、公表と警察への通報はしないことにしていた。
 
◎十一月八日〜九日
沖縄県警沖縄署は、今春高等養護学校を卒業した老人福祉施設アルバイトの十九歳の男性が、暴行を受けて殺害された可能性が高いとして捜査をしていたが、九日、男性の知人の十七歳の少年三人(高校二年生二人、給油所従業員一人)を逮捕した。三人は車を買う代金として男性に借金を持ちかけたが、男性が金を工面できないことから街路樹の枝で二時間にわたり暴行に及んだとみられている。
 
◎十一月十日
徳島県警捜査一課と徳島東署は、住み込みで働いていた知的障害者の男性を虐待、衰弱死させたとして、車検代行業の四五歳になる男性を殺人容疑で逮捕した。男性は一九九八年十二月初旬から、当時二三歳になる男性に殴るなどの暴行を加え、下着姿のまま車のトランクに閉じ込めたり、一九九九年一月頃の約一カ月間、食事を十分に与えず衰弱死させた疑いが持たれている。
 
◎十一月十二日
栃木県教育委員会は、県内の養護学校小学部で昨年一月、六年生の男児が担任の二十代の男性講師に投げ技で床に抑えつけられるなど、指導の中で暴力を受け、腰の打撲や足首に捻挫するなど約一カ月のけがをしていたことを明らかにした。学校は保護者に謝罪し、県教育委員会は講師に口頭で厳重注意した上で、単年度契約であるため既に採用を打ち切った。学校は三月に別の保護者の求めに応じて説明会を開き、PTAは学校側に、再発防止のための記録として残すことを提案し、PTA役員と学校管理職などで委員会を設置し、問題の経過、保護者の意見、反省点などを冊子にまとめ、今年七月、教職員、保護者に配布した。
 
▼十一月十三日
名古屋・昭和税務署は、社会福祉法人AIU自立の家が運営する社会就労センター(授産施設)わだちコンピューターハウスの障害者に対し、八月の監査で「工賃は所得税法上の給与所得で課税対象。徴収漏れを一九九九年までさかのぼって徴収する」と通知していたが、利用者から「授産施設利用者は失業保険などに入れず労働基本法が保障されていないのに、納税の義務だけ発生するのはおかしい」とする反論も聞き入れなかったため、利用者らは「授産施設で働いて工賃を得ることは労働法上の雇用契約とは異なる。労働者としての権利を守られないなかで工賃に課税されるのは納得いかない。身体障害者福祉法第四条(この法律により支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課をすることができない)に違反する」として、同税務署に異議申し立てをした。わだちコンピューターハウスは名古屋市からデータ入力などの業務委託を受けているほか、ユニバーサルデザイン計画などのコンサルタント業務を行っているが、現在一人当り平均十万円の工賃を得ている。
 
◎十一月十八日
群馬県警高崎署は、「子どもが暴れているので病院に連れて行ってほしい」と母親から通報があったため、駆けつけて母親の三三歳になる二男を保護するため手錠をかけたり腰縄などで縛るなどして押さえつけたところ、二男は意識がなくなり、病院に運ばれたが死亡したため、司法解剖して死因を調べたが、死因は外傷などによらない「内因死」だったと発表した。同署は、「警察官の行為が直接死亡にむすびついたと考えていない。適切な職務行為だった」としている。二男は母親と二人暮らしで、精神科に通院していた。
 
◎十一月十八日
東京地裁は、一九九九年七月に全日空機ハイジャク事件で、殺人罪などに問われた被告の公判が、弁護側が求めた精神鑑定の実施のため中断していたが、約一年半ぶりに再開した。鑑定結果は、裁判長の職権で証拠採用された。鑑定結果は「アスペルガー障害(自閉症の一種)のため、最もふさわしい自殺方法をとろうとしていた」としたが、責任能力については言及していない。検察側は証拠採用には同意したが、完全責任能力があるとして、信用性を争うことになった。
 
◎十一月二十一日
東京都調布市の社会福祉法人「調布市社会福祉事業団」は、運営している知的障害者社更生施設「なごみ」で、入所している四十代の男性が、男性職員から暴行を受けたと訴えたため、職員を厳重注意処分にしていたことを明らかにした。施設は、運営主体の法人に報告書を提出した。今年十月二日に、男性の左足付け根にあざがあるのを別の職員が見つけたが、男性がこの男性職員の名を挙げ、「けられた」と話し、同五日にも下着に血がついているのが見つかり、この際もこの男性職員の名を挙げた。職員は否定しているが、「入所者にとって怖い存在になっている」として、厳重注意処分にした。
 
◎十一月二十二日
名古屋地裁は、執行官を公団牛巻団地の無職女性方に、部屋明け渡しの強制執行に向かわせたが、女性(三四歳)と、女性と同居していた無職の男性(四五歳)の変死体を見つけた。愛知県警瑞穂署が司法解剖した結果、衰弱死との見方を強めている。女性は再三にわたり、都市基盤整備公団に電話で「お金がない」と訴え、公団は職員を女性宅に訪問させていたが、面会できず、二十二日に執行官が強制的に鍵を開けて遺体を発見した。二人は一九九五年に入居、障害年金やパート収入などで生活していたが、今年三月から家賃と共益費を滞納、同地裁が九月十日に明け渡し命令を出していた。判決日に女性から「団地を出されたら、行く所がない」との書面が地裁に届いたが、公団側は相談のために連絡を求める書面や、職員が訪問したが、不在のため会うことができていなかったという。
 
▼十一月二十八日
東京地裁は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で全身まひとなり、在宅介護を受ける患者三人(一人は死亡)が、公職選挙法では重度の障害者には、不在者投票の一種の郵便投票を認めているが、代筆を禁じていることに対し、「現行制度では、選挙権が侵害されている」として、国家賠償などを求めた訴訟で、原告患者らの症状について「字が書けないため郵便投票が利用できず、外出することも不可能なので、現行制度下では選挙権行使が不可能」として、国側の「投票所に行くことが困難だとしても、不可能ではない」とする主張を退けた。また、代筆を認めないことに対しては、「選挙の機会を奪う場合は、やむを得ない理由が必要」と指摘し、自書に限定しなくても不正投票を妨げる、巡回投票制度の導入も可能などの理由から「やむを得ない理由」に当たらないとして、「憲法十五条(普通選挙権)、憲法十四条(法の下の平等)などに反する状態」と初めて認定した。しかし、国家賠償法上の責任については、「現行制度となった一九七四年の公職選挙法改正時には、ALS患者は入院を続けるのが通常だった」として、病院など指定された施設での代理投票は可能な状態だったと判断。「在宅介護で投票の機会が奪われた有権者がいたかどうかは明らかとは言えず、国会議員が立法措置を取らなかったことも職務上の法的義務違反があったとも認められない」と否定し、選挙権が行使できないことへの国家賠償の請求については棄却した。官房長官は制度見直しを検討する考えを示した。
 
▼十二月二日
東京都は、町田市の「上妻病院」が医療保護入院(精神保健指定医が必要とした場合、保護者の同意があれば患者を入院させることができる)について、精神保健法で定められた手続きを取っていなかったとして、適正な手続きを取るよう命令した。同病院は六月、保護者以外が同意書に記入したのを知りながら、三十代の女性を入院させた。七月にいったん、本人の同意による任意入院に切り替えたが、その後、病院の判断で医療保護に戻す際、指定医の診察を行っていなかった。九月に患者本人から退院請求が出されたため、都精神医療審査会が審査し、手続き違反が分かった。行政処分した十一月二十九日、都職員が立ち会って指定医が診察し、保護者の同意を得て医療保護入院に切り替えた。
 
▼十二月二日〜十一日
与党三党と民主党は、「心神喪失者医療観察法案」について一部修正のうえ五日に衆院を通過させ、今国会では参院で継続審議することで合意した。政府・与党側が、「再犯のおそれ」を削除し、文言を変更する、法案全体を五年後に見直す、付則に通常の精神医療の充実を明記するなどの修正案を野党側に提示し、民主党は審議に応じる姿勢を示していた。しかし、与党から出されていた修正案について、「人権侵害を招く政府案の根本的な問題点を解消していない」として、反対する方針を決めた。四日、与党側は衆院法務委員会理事会で、六日に採決するよう提案したが、野党側は「慎重審議が必要」として拒否した。六日、衆院法務委員会は、審議を打ち切り「心神喪失者医療観察法案」を与党三党と自由党の賛成で可決した。政府案の入院要件などを与党が一部修正した案で、民主、共産、社民は政府案・修正案のいずれにも反対した。傍聴していた精神障害者団体などからも抗議が相次いだ。十日、衆院本会議は、与党三党と自由党などの賛成多数で可決、参院へ送られた。十一日、参院本会議で政府・与党の修正案と、再提出された民主党の対案の趣旨説明が行われ法務委員会に付託、来年の通常国会で継続審議扱いと決定した。
 
▼十二月四日
神戸家裁は、神戸市で一九九七年に起きた連続児童殺傷事件で、容疑者として十四歳で逮捕され、中等少年院に収容されていた男性(二十歳)に対し、十一月に仮退院後の保護観察機関と併せて二〇〇四年十二月末までの収容継続を決定しているが、関東医療少年院に移送されていることが分かった。職業訓練など社会復帰に向けた訓練を終えたためで、今後は仮退院に向けた処遇が行われる予定。少年院法は収容期間を原則として二十歳までとしているが、必要と判断されると中等少年院で二三歳、医療少年院で二六歳まで延長できることになっている。
 
◎十二月四日〜二十七日
神奈川県警は、川崎協同病院の入院患者が筋弛緩剤を投与され死亡した事件で、元主治医を殺人容疑で逮捕し、同病院を捜索した。主治医は一九九八年十一月十六日に、気管支ぜんそくの発作で入院し、意識がなかった公害病患者の男性から呼吸を助ける気管内チューブを抜き、二種類の鎮静剤を投与し、さらに筋弛緩剤を投与して呼吸筋弛緩で窒息死させた「患者を意図的に死に至らせる行為をした」疑い。二十七日、横浜地検は、入院患者に筋弛緩剤を投与するなどして窒息死させたとして、同病院の元呼吸器内科部長を「安楽死」に当たらないとして殺人罪で起訴した。「得意な死生観、終末医療に対する考えに基づく行為で、通常の医師であればしない行為なのに、責任を問われないと考えた」と指摘したが、元医師は一連の行為は認めたが、「違法な行為ではない」と殺意を否認している。同日、横浜地裁は、元医師を保釈した。
 
◎十二月五日
大阪府警淀川署は、脳梗塞で入院し、手足がマヒし、言葉も不自由になり、最近退院して自宅療養していた夫(五三歳)を、玄関先の照明灯の金属柱に鎖でくくりつけ放置し死亡させた殺人容疑で妻(五二歳)を逮捕した。妻は「言うことをきかなかったため、鎖でくくりつけ放置した。死ぬかもしれないと思った」と供述しているという。夫婦は二人暮らしで、妻が介護をしていた。夫の首には鎖の後があり、窒息死の可能性があるとして、死因や動機などを調べている。
 
▼十二月九日
厚生労働省社会保障審議会精神障害分会は、今後の精神障害者の医療・福祉施策の基本となる報告書案をまとめた。地域社会に受け皿が整備されれば退院が可能な「社会的入院」の早期解消になるとして、精神病床の減少を掲げるなど数値目標を初めて示し、「今後十年のうちに、精神病院入院者三三万人のうち約七万二千人の退院・社会復帰を目指す」とした。病院以外で生活する際に必要な支援を進めること、在宅患者が地域で生活しながら医療を受けられる体制を充実することなどを挙げている。同省は、厚生労働相を本部長とする対策推進本部を設置し、精神障害者の地域生活の促進のための支援や社会復帰施設の充実などを図る方針。精神病院の病床数削減については日本精神科病院協会や日本医師会は「国が社会復帰施設を増やし、その結果患者が減るのはいいが、初めに病床数削減ありきの計画は本末転倒だ」として、同省を批判している。
 
◎十二月十日
青森県は、シンポジウム「障害者人権啓発フォーラム」を開催したが、知的障害者団体「ピープルファースト北海道」会長の発言内容を事前にまとめたレジュメ(要約)の一部(同団体と国との交渉経緯や障害者施設の在り方など行政への批判や要望を語る部分)を削除した。県側は「レジュメはテーマとずれており削ったが、発言を抑圧する意図はない。意思疎通が不十分だった」と説明している。しかし、発言を予定していた障害者三人中二人が「人権侵害そのものだ」として、シンポジウム出席を拒否した。
 
◎十二月十五日〜二十四日
埼玉県警は、母親(七三歳)と隣に住む女性(六六歳)が刺されて死亡し、隣に住む男性(六九歳)も重傷を負った事件で、統合失調症の二男(四十歳)が包丁を持って自宅内から出てきて容疑を認めたため、殺人未遂の現行犯で逮捕した。今後、容疑を殺人に切り替え、刑事責任能力の有無などを調べる。
 
▼十二月二十四日
オランダ最高裁は、「生きる目的をなくした」との理由で「安楽死」を求めた患者を死亡させた医師に対し、「耐えがたい苦痛に当たる医学的理由は認めがたい」として有罪判決を出した。「安楽死」の対象は「精神的苦痛にまで及ばない」との判断を示した。一審は無罪だったが、二審は「医学的理由は認めがたい」と有罪とした。最高裁は二審を支持した。同国が今年四月に世界で初めて条件つきで「安楽死」を合法化した。
 
◎十二月二十四日〜二十五日
岩手県は、知的障害者更生施設を運営する社会福祉法人カナンの園の前理事長が、施設利用者の障害基礎年金を不正流用し二億円以上の損失を出した問題で、同法人の対応が不十分として是正改善通知を出した。また、二十五日、年金を管理する年金組合は、前理事長を業務上横領容疑で二戸署に告訴した。
 
◎十二月二十六日
社会福祉法人「高知県知的障害者育成会」は、運営しているグループホームで、世話人の女性が利用者四人の預金約百六十万円を横領していたとして、「知的障害者につけ込む悪質な犯罪」として、南国に業務上横領罪で刑事告訴した。横領が発覚した九月に懲戒解雇にし、女性は全額を返済している。グループホームのバックアップをしている知的障害者通勤寮「大津寮」が通帳の金額の付き合わせや、領収書の確認、利用者本人の管理が可能かどうかの検討など、基本的な作業を怠っていたため横領が長期化、保護者が不明金の調査を求めるまで、気付いていなかった。同会では二〇〇〇年にも同様な事件が起きている。

  

<<  2001年へ

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

2003年へ >>

 

『Wave』目次へ戻る