Carnival of Shadow

影のカーニバルの始まりは17世紀の終わりの小さいベネチアの村で花開いた。
もともとジョバンナ・スカルディ(Giovanna ・Scaldi)はパドゥアの農家で生まれ育った少女だった。
かわいらしく、聡明だったがどこにでもいるような少女である彼女は、しかし15歳の時、自身が特別な存在であることを知ってしまったのだ。

彼女の幼年時代、ジョバンナの家族、友達、及び隣人たちは彼女の気まぐれに振り回されてはいたが、誰も文句は言わず甘やかされて彼女は育ってきた。そう、あの飢饉の年、兵士たちが未払いの税金を取り立てに来るときまでは。
兵士たちが彼女の父親を脅しつけたとき、ジョバンナは兵士のそばに走りよって、ここから立ち去るようにと怒鳴りつけた。そして驚いたことに兵士たちはそれに従ったのだ。

彼女とその家族の運命の転換はその数日後不意に訪れた。兵士たちのパトロール隊がこの魔女を火あぶりにするために村を襲ったのだ。
兵士たちは夜中に農家に放火したため、彼女の家族が煙や火から逃れることは困難であった。
その時ジョバンナは兵士たちに向かって、彼女の家でなく、兵士たちが死に至るまでお互いを焼きあうようにと命じた。そして彼女の家族は、兵士たちがその命令に正確にしたがって焼け死んでいくのを見て強い衝撃を受けたのだった。
そしてその力を使い果たしたジョバンナは、突然倒れてしまった。

彼女が回復した時、ジョバンナは真にその力に開眼していた。
彼女は生まれつき強力なサイキック能力を持っていたのだ。彼女は常にぼんやりとは周囲の人間の心に影響を与えることができた。だが今、意識的に対象の考えと意思をそして坑道を操ることができることを知ったのだった。
ジョバンナは深い洞察力と、そして個人的な満足に貪欲な欲望をもつ少女だった。
そして彼女の欲望を満たす場所はひとつしかなかった。ベネチアである。

6ヵ月後、ベネチアに着いた若き“公爵夫人”は、燃え盛る農家から逃亡した15歳の少女とは完全に別人だった。彼女はセレニッシマ(La Serinissima“いとも晴朗なる”という意味のベネチアの別称 訳者注)の社会的な混乱に付け込んで、容易にベネチア上流階級のお気に入りとなっ たのだった。
しばらくの間、ジョバンナはあたかも童話の本の王女のように、大勢の求婚者とともに華やかで幸福な生活を楽しんだ。だが、やがてこうした暮らしにも退屈になった彼女は、その貪欲な欲望を満たす、他の何かを捜しはじめたのだった。

人を動かすパワーをもった彼女の前には、すぐにベネチアの暗黒街の中の稀有な贅沢と禁じられた喜び、そしてオカルスティックな謎がその扉を開いた。
ジョバンナは、自身を地獄の大天使ウリエル(Uriel di Inferno)と呼ぶ魔術師に魅了された。そして彼は彼女が彼女のパワーの深さを探るのを手伝い、そして彼女にどのようにその限界を広げるかを教えたのだった。
彼らは一緒にベネチアにその力を振るい、その罪深い秘密結社は深く一般大衆へ、もしかしたらドージェ(ベネチア総督)の宮殿の中にさえ浸透した。その堕落に身をささげることは彼女のパワーを増大させるために大いに役立ったのだった。
だが行きすぎたこれらの行為によって、彼らのバッカス祭(堕落した馬鹿騒ぎ)の噂はすぐにローマ教皇庁に伝わることになった。そして秘密の調査員が所謂ジョバンナ・スカルディ公爵夫人の正体と、噂されている事件を調査するためにベネチアに派遣されたのだった。

アベラード・ベルナックス(Abelard Vernoux)はジョバンナのように特別な人間として生まれた。今日、我々は彼らを“ミュータント”と呼んでいるが、なにせ当時のことである、ブラザー・アベラードはこれを神の祝福であると信じていた。
彼は、周囲の感情を読み、そして人々、動物、あるいは物体の特性でさえ吸収することのできる能力を持っていた。
彼がベネチアに到着したとき、ベネチアは一ヶ月もの長きに渡るカーニバルが最頂点に達していた。
サンマルコ広場を横切り大聖堂の中にまで、馬鹿騒ぎの群衆があふれかえっていた。彼は群集が明るく飲み騒ぐ中で、ジョバンナの姿を探し求めた。

彼はドージェの宮殿で気高いコートを羽織った公爵夫人を発見した。
その対決は、今までお互いに一度も同じ力をもった人間にあったことがない二人を驚かせた。しかし実に30年にものぼるこの僧とジョバンナの叙事詩的スケールの戦いは、最終的にジョバンナの裏をかいたアベラートに軍配が上がったのだった。
疲れきって、恐れおののいたジョバンナのベネチア支配は、こうして終焉を迎えた。
後悔し、悔い改めた指導者達は、ブラザー・アベラードが彼女を探索するのを手伝った。

そんな中、必死の計画を立案したのが、ウリエルであった。
彼は数年前、魂を物体に憑依させることのできる儀式を発見していた。この儀式は伝統的に悪魔と精霊に命令するために使われていたものだった。だが彼はこの儀式がジョバンナの本質をこの僧侶から隠すことで、ジョバンナの役にたつものと信じていたのだった。
ブラザー・アベラードの探索範囲から逃れるべく町から逃亡したウリエルは、ジョバンナのホストの役割を果たす女性を発見した。
そしてウリエルは恐るべき儀式のために磁器でできた仮面を準備したのだった。
すべての準備が整うと、ジョバンナはそのすべてを仮面に投射した。そして彼女の体は死に、世界は暗くなった。

だが、ジョバンナにとって残念なことに、ウリエルの計画は結局結実しなかった。
彼は町からの逃走中に逮捕されてしまったのだ。こうして、光がジョバンナの世界に入るのは、長い長い時間が必要になることになったのだった。
そのときとは・・・“親戚が仮面を拾ったとき?” “遠く海をわたった場所で?” “そして扉が開かれたときに?”

この事件から、300年後の2000年7月。一人のかわいらしい女性が、Paragon Cityからイタリアを訪れた。
彼女、バネッサ・ド・ボアは、フィレンツェで美術史を学ぶ大学院生だった。彼女はベネチアへの週末旅行の途中、埃っぽいふるい骨董品店を訪れたのだった。
そこで彼女は一部が欠けて変色した磁器製の仮面が入った、美しい木箱に心引かれた。そしてかけた破片や潜在的な美しさに対する審美眼をもっていた彼女は、たちまちそれを買い求めたのだった。

仮面に取り付かれた彼女は、仮面をきれいに修理するや、その夜滞在したホテルで、ちょっとだけ仮面を身につけてみた。
すると・・・・・仮面に潜む意識がジョバンナの心をかき乱したのだ。もう少しで仮面の意識によって少女は打ちのめされるところだった。
2つの記憶、感情、及び人格の衝撃が、バネッサの体を追い込んだ。そして一晩中体を支配するための精神的な戦いが続いたのだった。
2つの意識の対立は、彼女がうつぶせになっているのを心配したルームキーパーが仮面をはずしたことで、ようやく終わりを迎えたのであった。
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動揺したバネッサはマスクを片付け、ヨーロッパでの研究を終えることにした。
彼女は卒業論文を片付けるや、Paragon Cityに帰り、すべての時間をこの仮面と、彼女の遠い親戚であるジョバンナ・スカルディを研究することに費やしたのだった。
先祖の話は魅力的ではあったが、おびえた彼女は再び仮面に触れるようなことはしなかった・・・・リクティが襲来するまでは。

リクティによる恐怖と破壊、そして多くのヒーローたちが斃れるのを見たバネッサは、もはや仮面を着用するしか道がないと悟った。
バネッサはジョバンナの魂に立ち向かう準備ができていたのか、あるいはその力を共有して一緒に戦い、あるいは死ぬことにしたのだろうか、いずれにせよバネッサとジョバンナは、リクティと戦うという目的のために、共闘し、その役割を果たすことになったのだった。

彼女はダイレクトにエイリアンたちの精神を支配することができたわけではなかったが、彼女の心的影響によって、死を恐れない兵士の大軍を作り出すことができた。
彼女は崩壊寸前までそして魂が引き抜かれる直前まで、その力を戦いのために消費したのだった。
そしてバネッサとジョバンナは、その力をアルファ攻撃チームのためにささげた。アルファ攻撃チームがリクティのポータルを破壊した時、彼女の操り人形たちはすべて殺され、そして彼女自身も力の源を失って倒れたのだった。

仮面を脱いだ状態で目覚めたバネッサは、失われた愛のごとくジョバンナを熱望し、すぐに仮面を回収した。
今や二人は共有された歴史と、緊密な友情で結ばれており、ジョバンナはバネッサにさらに素晴らしい行為のためには報酬が必要だと納得させたのだった。
ジョバンナは若者を誘惑し、支配することでバネッサがParagon Cityで多少裕福なパラダイスを作るのを手伝った。彼女は贅沢を喜んだが、すぐに不安に襲われるようになった。

新しい遊び仲間の一人、レイチェル・モリスがMuertos8番街で襲われたとき、バネッサは彼女の心がレイチェルを襲撃するのが分かった。
暴漢がレイチェルを殺す前に、バネッサがこの貧しい少女に接触して、その魂を奪ったのだ。元気付いたバネッサは、Muertos8番街で魂の狩りをすべく、市民にお互いに殺しあうよう強いたのだった。

やがてバネッサとジョバンナは新しい彼女たちの目的に同意した。
バネッサはこの危険な町の中に、彼女たちと彼女の限られた仲間たちが安全にすごすことのできる楽園を造ることを意図した。
彼女は警備が常に彼女についていることはないことを知っていたので、10人の若い美しい女性のお気に入りを選んで、レイチェルの死のビジョンを彼女たちを共有することにした。
そして恐れおののいた彼女たちは、彼女の計画通り、バネッサの目標を手伝うことを誓った。かくて、ここに影のカーニバルが誕生したのだった。

バネッサのテレパシー能力によって、女性たちはいかなる敵の攻撃からもその心を引き出すことのできる、サイキック戦士に変身した。
この最初の成功に勇気付けられたバネッサとジョバンナは、スーパーパワーを与える権限を彼女たちに与えて、本格的なリクルーティング活動に乗り出したのだった。

影のカーニバルは、バネッサ・ド・ボアとジョバンナ・スカルディ公爵夫人の願望を満たすために存在する。
バネッサは、彼女の僕のために、彼女たちが望む喜びはすべて楽しむことのできる退廃的で隔絶された環境を築きあげた。
そして彼女が求めるリターンは、現在進行中の敵に対する戦いでの絶対的な忠誠なのである。
もちろんバネッサが彼女達の心の中を操り続けているため、彼女達は彼女が何を求めようとも常に幸福なのだ。

しかしながら、彼女のエネルギーを高く保つためには、バネッサは一定の魂を必要としている。もし彼女の力が弱まれば、すべてはあたかもトランプの家のように崩れ落ちてしまうのだ。
彼女の僕たちは、皆美しく、若い裕福な名士から成り立っている。だが、もっとも魅力的な才能のある女性たちだけが、もっとも高い階級に達する価値があるとみなされる。
彼女達は最高位のリング・ミストレス(Ring Mistresses)から最下層のアテンダント(Attendants)にいたるまで、すべてがバネッサ・ド・ボアの幸せを保つために奉仕しているのだ ろう。そして彼女の一定の食欲を満たすことで、影のカーニバルはその影響力を拡大し続けているのだ。

Official Background Story