Paragon Cityに暮らす普通の市民であってもフォーチューン500の常連企業クレイ・インダストリーの名は聞いたことがあるだろう。
又多少なりとも経済に関心のあるものなら、クレイグループの総帥、クレイ伯爵夫人の名を耳にしたことがあるに違いない。
Paragon Cityに生まれ幼少期を過ごした彼女は、高校と大学をヨーロッパのプライベートスクールで過ごし、そこで世界的な大富豪アルフォンズ・クレイ伯爵に見そめられ結婚した幸運な女性であった。
この現代のシンデレラストーリーは当時世間の大きな注目と羨望を集めたという。
まもなく彼女は夫と共に新たな製薬会社クレイ・バイオテックの設立に参加し、スイスに移り住んだが、そこで彼女の運命を決定づける悲劇が彼女を襲った。夫アルフォンズが結婚わずか1年で謎の病気に倒れ、昏睡状態となったのだった。
現代のシンデレラを襲った悲劇の日から、14年たった今でも伯爵は依然として昏睡状態のまま眠り続けているのである。
グループの相続人となった彼女は会社の経営資源の総力をあげて謎の病に倒れた夫の治療法を探すことを公に誓った。しかしまもなく彼女は自身の恐るべき商才を発揮していったのだ。
クレイ・バイオテックに加えグループ全ての継承者となった彼女は、グループの中核企業であるクレイ・インダストリーの本社を生まれ故郷のParagon
Cityに移転させたのを皮切りに、豊富な資金にものをいわせて株の買い占めやライバル企業のキーマンの引き抜き、そして敵対的なM&Aを繰り返した。
そして瞬く間にクレイ・インダストリーをParagon Cityにおいて圧倒的な経済力を持つ一大コンツェルンへと仕立て上げていったのだ。
こうしたサクセスストーリーの一方で、クレイインダストリーには常に悪い噂がたえないのも事実である。まずクレイの製薬試験に関し度々非合法的な試験が行われているという疑惑がもたれている。
しかし幾度となく政府の調査が行われたが、結果的にはその証拠は発見されず違法行為についての告訴は未だに行われてはいない。
又90年代の初めにクレイインダストリーが行った乗っ取りや株の買い占めについて、恐喝行為や法的な違反行為が合ったのではないかという噂はかねてよりささやかれてきた。
もっと恐るべき噂もある。クレイインダストリーは非常に高度な、しかし完全に不法なクローンに関する遺伝子技術を用いて、スーパーパワーを持つ秘密軍隊を組織しているというのである!
Rikti戦争の後、更に嫌悪すべき行為についての噂がクレイ社にささやかれはじめた。
クレイバイオテックがリクティの侵略に立ち向かって倒れたヒーローを実験用の検体として隠匿しているのではないかというのである。そして確かに100人以上のヒーローが行方不明であり、リクティかクレイ社が遺体を隠し持っている疑惑がもたれているのだ。
証言によれば戦争の終わりごろ、制服を着てヘルメットをかぶったクレイ社のスーパーソルジャーがリクティの攻撃からクレイ社の設備を守っていたという。
そして現地に居合わせたフリーダムファランクスのヒーローによれば、それはかつて戦争で倒れた彼女の同僚であることを示す特徴があったというのだ!
しかしそのことにしても、未だに悪事を示す明白な証拠は見つかっていない。
5ヶ月前、遂にダウンパトロールのヒーローがクレイ社の悪事の一端を暴くことに成功した。
ヒーロー達はクレイインダストリー製のパワーアーマーを装備するガードに守られた秘密研究所急襲し、リクティ戦争で亡くなったと思われる2人のヒーローが保存されているのを発見したのだ!
この決定的な証拠に直面したクレイ伯爵夫人は自ら公に姿を現した。そしてクレイ社の元従業員が自分の知らない間に設備を使用し、極秘の研究を行っていたのだと説明し、それを証明する多数の証拠を提出したのだ!
多くの疑惑は残ったが、誰もこの犯罪行為がクレイ社上層部の指示に基づいていたことを証明することは出来なかった。かくてクレイ社は現在に至るまでParagon
Cityでも最も巨大で、最も尊敬される企業の一つとして君臨し続けているのである。
クレイ社にはこのほかにも多くの疑惑がささやかれている。クレイ社の研究所の近くで失踪した市民が、なんからの実験に使われているのではないかという噂や
、リクティ戦争後人類が共有すべきリクティの超ハイテク技術を、隠蔽し独占しようと図った疑惑・・・。
この狡猾で善意と尊敬の仮面に隠された巨大企業が、一連の疑惑の中で、本当は一体何を企んでいるのか、知るものは1人もいない。
その隠された陰謀の全てが白日の下に曝される日は、果たしてやってくるのであろうか?