犯罪には銃とドラッグがつきものだ。だがギャング共は数あれど、フリークショーほどこの事実を実証したギャング団はなかったに違いない。
フリークショーとてほんの10年ほど前は一介の街のチンピラに過ぎなかった。しかし今やParagon Cityのギャング団の中では最も恐れられる一味の一つとなっている。それは彼らが持つ他のギャング団にないスーパーパワーの為なのだ!
運命の夜。彼らはクレイインダストリーの武装トラックを襲ってその積み荷を奪った。しかし奪った積荷は高価なお宝であろうと目論んだ彼らの思惑をはずれ、
何らかの実験に使われる化学薬品に過ぎなかった。
普通ならなんの薬品かわからない、もしかすると劇薬がもしれないようなものを試そうとする者などいないは ずだが、彼らは違った。好奇心に駆られた何人かが、なんとこの未知のドラッグを自らに投与することを試みたのだ。そしてこの瞬間、気まぐれな運命の女神は
彼らに微笑みかけたのだった。
実は問題のドラッグはクレイインダストリーが、軍の依頼で極秘に実験を行っていた、肉体ブースター薬「エクセルシオ(Excelsior)」だったのだ!
まもなくその効果ははっきりした。
このドラッグはわずか数時間で彼らの肉体的能力を拡張し、彼らに超人的な物理的特性と信じられないほどの苦痛に対する耐性を与えた。更にこのドラッグの作
用は肉体的な能力の拡張にとどまらなかった。わずかなメンバーだけだったが、このドラッグは人工物に対する脳神経の能力をも拡張し、金属のような人工的な代用物をあたかも自分の手足のごとく扱う能力を与えたのだ。
エクセルシオの驚くべき苦痛耐性は、彼らに相対的に気楽に体や自身の手足をも金属製の武器に置き換えることを許したのだった。そしていったんそれが実現された後、フリークショーが自身に金属の武器を移植することを躊躇う理由はなにもなかった。
この晩の出来事は単なるチンピラ組織だったフリークショーをParagon City屈指のギャング団に変貌させただけでなく、フリークショーの真のリーダーの登場をも意味していた。
彼の名はダニエル・ワトソン。自らを「ドレック(Dreck クズ野郎の意)」と呼ぶこの男は、最初にボディを金属武器に置き換える耐性を得た元軍人ラルフ・フランセスコ(通称Bile
癇癪持ち)と5th Columnにいたこともあるクレイマー(Clamor)ことイヴ・ヴァンドーンと共に2ダースにもの上るライバルを打ち倒し、遂に組織のトップに立ったのだった。
実際ともすれば独立性の高いフリークショーの構成員をまとめているのは、ドレックの暴力への絶対的な欲望に対する絶大な支持と尊敬に他ならないのだ。
組織を牛耳ったドレックとフリークショーは、いい仕事を持ちながら夢も希望も見いだせない無力感を抱いている20代の男達に、彼らのあらゆる束縛から解放
された人生を喧伝し始めた。自分達の意味を見失い世間への反発を感じていた多くの若者がドレックに共感し、フリークショーはいっそう勢力を拡大することになった。
今や強大なギャング団にのし上がったフリークショーは、ドレックの悪の哲学とエクセルシオの常習と更なる人体の改造によって、着々とその勢力を伸ばしつつあるのだ