Malta Group

1945年、第二次世界大戦は最後まで戦い続けていた大日本帝国の降伏によって、6年にも及ぶ惨禍の幕を閉じた。だが戦争の終わりは決して平和の始まりとイコールではなかった。
ソ連によるベルリン封鎖に端を発した東西の軍事衝突の危機は、翌49年には東西ドイツの分裂、そしてアメリカを中心とすする自由主義陣営諸国による北大西 洋条約機構(NATO)の結成へと歴史を導いた。一方ソ連を中心とする社会主義陣営諸国は、1955年ワルシャワ条約機構を設立し、世界は東西両陣営の代理戦争とつばぜり合いが続く冷戦の時代に突入したのである。

こうした世界情勢の変化はスーパーヒーロー達にも決して無縁なことではなかった。
各国は競って冷戦にスーパーヒーロー達を投入しようと目論み、スーパーヒーロー達は強力な能力をもつ諜報員として、第三世界への介入や極秘の諜報活動に投入されるようになったのだ。

アメリカ政府は冷戦開始とともに市民犯罪対決法(Citizen Crime Fighiting)を改正し、ヒーローに対して身分登録を義務づけると共に、1956年には自由主義の為の力法(the Might for Right 法)を成立させヒーローたちを、アメリカの所有する貴重な人的資源として強制的に徴用するようになった。
これ以後CIA、FBI、国防総省などはヒーロー たちを積極的に諜報活動に投入するようになり、1956年から1966年にかけて、あるヒーローは南アメリカのジャングルで、また別のヒーローは東南アジ アの紛争地帯でいうように、ソ連(とその同盟諸国)との知られざる紛争の最前線にかり出されるようになったのだった。

だが、こうした人権を無視した諜報活動にも関わらず、第三国への浸透工作と諜報戦はソ連優勢のまま進んでいた、ソ連は国中のヒーローたちを強制的にかき集め、更に強力な薬品を用いて彼らを更に強化して、アメリカとの戦いを続けていたのだ。

そして1967年に3人のアフリカ系アメリカ人のヒーローが、その後のヒーロー達の行方を決定づけることになる決定的な裁判を起こした。この裁判で諜報活 動における非白人ヒーローの差別的な扱いと人権侵害が問題となり、自由主義の為の力法は違憲であるという判決が下りたのだ。これに伴いこの法律の下で行わ れていた作戦は直ちに停止され、徴兵されたヒーローたちの即時解放が命じられたのだった。

この事はヒーロー達の人権を確立することに大きな力となったが、劣勢を強いられていた西側同盟諸国の諜報機関には別の大きな衝撃を与えることになった。
この危機に対応するためCIAをはじめとする西側同盟の諜報機関のトップクラスのメンバーによる秘密の会議が、地中海に浮かぶ孤島マルタ島で開催された。 彼らは共産主義陣営を破り自由主義陣営を守ることこそが、人権に勝る最大の目的であると信じ、新たなスーパーパワーを持つ工作員をリクルートし養成する極秘機関の設立に合意したのだった。
そしてこの新たなスーパーヒーローによる極秘工作機関は、会談の行われた場所の名前をとって“マルタ機関(Malta Group)と呼ばれるようになったのだった。

1976年、ソ連上空で米軍の偵察機が撃墜された事件をきっかけに世界は全面核戦争の危機に直面した。この事件はヒーローワンをはじめとする東西両陣営の スーパーヒーロー達の活躍によって終結を向かえたものの、この時期に冷戦は頂点に達し、各国から数十年に渡って何百万ドルもの秘密予算がマルタ機関に投入されたのだった。
そして西側各国の秘密裏の援助を受けた彼らは合衆国の内外の非合法的な活動によってソ連のスパイ網摘発に大きな実績を上げたのだ。

だが1989年、ベルリンの壁の崩壊と冷戦の終結はこうした努力を全て無に変えてしまった。
社会主義陣営自体が崩壊し戦うべき敵を失った元スパイ達は、その存在価値自体を失ってしまったのだった。そしてそれはマルタ機関といえども例外ではなかった。
存在意義を失った彼らは、自らの新たな存在意義を確立する為に新たな脅威を喧伝し、遂には自ら脅威自体を作り出すという本末転倒な方向に動き始めたのだった。
かくてマルタ機関は自らの存在のために、ありもしない脅威を作り出す政治的テロリストへとその姿を変貌したのだった。

次にマルタ機関の戦力だが、Paragon Cityに存在する多くのVillainと異なり、マルタ機関は秘密組織とはいえ、元々政府に後押しされた国際組織だった。そのため他のVillain組織に類を見ない恐るべき資金とバックグラウンドを持ち、その政治テロを実行するために4つの大きな戦力を有している。

一つはかつてスパイとして第一線で活躍し、現在も強力なマシンガンと手榴弾その他の近代兵器で武装した戦術工作員(Tactical Operative)による部隊である。彼らは作戦指揮官(Operation Officer)のもといくつかの 工作エンジニア(Operation Engineer)に支援された実行部隊に分けられ、各国から選抜されただけあって生半可なヒーローを遙かに凌ぐ実力をもつエリート部隊だ。

第二に破壊工作員(Sapper)と呼ばれる特殊兵装を持つ工作員とガンスリンガー(拳銃使い Gunslinger)の異名をもつ対スーパーパワー特殊狙撃兵があげられる。
彼らはマルタ機関の開発したスーパーヒーローにとって致命的な能力を持つ特殊兵器で武装したヒーローキラーであり、特に破壊工作員 (Sapper)は一般工作員にもかかわらず、強力な生命エネルギー吸収兵器を装備している。この新兵器はターゲットとなったヒーローのスーパーパワーを 吸収して一瞬にしてヒーローを無力化する恐るべき威力を持っているのだ。このことから破壊工作員はマルタ機関の工作員の中でももっとも警戒すべき敵として知られている。

そして三番目の脅威は、特殊訓練を受けた女性工作員からなる現在のくのいち、通称“アルテミスのナイフ(Knife of Artemise)である。彼女たちは非力な分相手の動きを封じる兵装と工作に長けており、ヒーロー達には通常のマルタの戦術工作員よりやっかいな相手として認 知されているようだ。

そして最後にして最大の脅威が西側同盟諸国が大量の資金を投入した巨大兵器開発プロジェクトの果実であるタイタン・ロボットである。
ヘラクレス級(Hercules class Titans)といわれる彼らの大型ロボットは、しばしばマルタ機関の作戦行動に姿を現し、強力な火炎放射器、破砕アームを装備し、時 にヒーローを危機に陥れる強敵である。だが更に恐ろしいのは、ヘラクレス級2機が合体することで、ゼウス級(Zeus class Titans)と呼ばれる大型ロボットに変形することだ。タイタンロボットは変形合体することで更に強力なツインエネルギー砲と神経ガスミサイルを使用することが可能になるのだ。

そしてタイタン計画の究極の到達点といわれているのが、クロノス級( Kronos class Titans)と言われる超大型ロボットである。クロノス級はあまりにも製造コストが高く、現在までに確認されているのは2機にすぎないが、コストに見合った性能が認められ量産化されるようなことになれば、たちまち世界を恐怖のどん底にたたき落とすことだろう。

時代の変化によって有効だと思われていた組織や人間が存在意義を失うことは決して珍しいことではない。
だが彼らの力を侮ってはならない。彼らは旧世代の既得権益者の代表であり、最も広範囲な支持をうけた強力な保守主義者であるのだ。
そして時代に取り残されたマルタ機関とその支持者達の理想は、冷戦の復活に他ならない。この馬鹿げた狂気を阻止し新しい時代を開くことができるかどうかは、ひとえにヒーローの手にかかっているのだ。

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