“力が正義ではない。正義こそが力なのだ”
正義と悪を語るとき、よく言われる言葉の一つである。この言葉に代表されるように力あるものが正義とは必ずしも限らない。いやむしろ過分な力におぼれ生来もっていた正義の心さえ見失ってしなうことが現実にはなんと多いことだろうか。
歴史を振り返ると世を騒がせたViliianの多くは堕落したヒーロー達の成れの果てだった。第二次世界大戦で活躍したヒーローたち、カラミティ・ジェー
ン(Clamity Jane)、フェザード・サーペント(Feathered
Serpent)、ハックスター(Huckster)、ジェード・メイデン(Jade
Maiden)などが戦後悪に転じたことや、ミュータントヒーローの一人レオナルド・コルホーンがあまりのヒーローの待遇の悪さに見切りを付けアウトキャ
ストの頭目に収まったことなど、その例は上げればきりがない。
だが悪あるところに必ず正義の光がある。少なくとも今ままでのParagon Cityにおいては常に正義の光が悪の影を一掃してきたのだった。
しかしもしもその最強のヒーロー達が、正義の心を失って悪に転じたとしたら、この世界は一体どうなってしまうのだろうか。それは決して想像したくない恐ろしい風景に違いない。
数あるパラレルワールドのうちの一つUpsilon Beta 9-6。
そこはその恐怖の可能性がまさに現実になった世界だった。この世界においても恐らく偉大なヒーロー達は世界を救い、そして悪のVillaisn組 織を打ち負かしたに違いない。だが悪を打ち負かしたはずの彼らはこともあろうにその力に酔いしれ、自ら悪の首領として君臨したばかりか、さらにそれにも飽
き足らず他の世界への侵攻を開始したのだった。
そして次元の扉を潜り抜け、遂に我々の前にその姿を現した最強の敵・・・我々は彼ら、異世界の支配者にして侵略者を今“プラトリアンズ(Praetorians 執政官達)と呼ぶのだ。
初めて我々の前に姿を現したプラトリアン、アンチマター(Anti-Matter)は、まさに我々の世界のポジトロンが悪に転じた姿である。彼はプラトリ
アンズのリーダー(それは我々の世界のステーツマンにほかならない)タイラント(Tyrant)の側近の科学者であり、友人のニューロンとともにタイラン
トのためにクロックワーク軍団を製造しその権力の中枢に位置していた。だがまもなくタイラントの信頼がニューロンに移ると、あせった彼はタイラントの寵愛
を取り戻すべく、ポータル技術を完成させ我々の世界への侵攻を先導したのだった。彼は今自ら創造した放射能ビームを放つクロックワークBaryonと
Mesonそしてかつての盟友ニューロンとの合作であるNuonを率いて、我々の世界に乗り込もうとしているのだ。
アンチマターの友人だったニューロンは我々の世界のシナプスにあたる。だが彼は現実のシナプスよりはるかに狡猾でうまく立ち回った。彼はクロックワークを
タイラントに提供したばかりでなく、タイラントのDNAを模した強力なアンドロイド、シージ(Siege =シィタデル=バスション)を製造してタイラン
トに取り入ったのだ。アンチマターが同じ技術で恋人のドミナトリックス(Dominatrix)のためにナイトスター(Nightstar =トレーナー
のルミナLumina)をつくったことと比べれば、彼の権力欲と狡猾さがよくわかろうというものだ。
ニューロンのロボットはアンチマターと同じくクロックワークだが彼は放射能ビームではなく電撃を装備したクロックワークCircuit及びElectrodeを使用している。これらは元々彼の実験をアシストするために作られたものに武装を施したしたものらしい。
そのニューロンの忠実な部下が、人間の女性と猫科動物の科学的な混成生物(キメラ)、ボブキャットである。彼女は主人であるニューロンにしか従わず、その
出生から狂暴で、野性的でさえある。彼女はニューロンにサイドキックしているのだと言われており、我々の世界のアウトキャストに似た猫人間Ocelot、
Alley及び Lynxを率いている。
こうしたプラトリアンの中でも異色なのが、シャドーハンター(Shadowhunter =ウッズマン)であろう。野生での狩りを何より愛する彼は人間を
ひどく嫌っており、タイラントとのつながりも限定的なものだ。こうしている今も彼は深い森の中で狼男達(Alpha Wolf Beta
Wolf)に囲まれて、ハンティングの獲物が来るのを今や遅しと待ち構えているのだ。
プラトリアンズの幹部は必ずしも男性ばかりとは限らない。プレトリアンズの主要な幹部の一人が、我々の世界で同様にフリーダムファランクスの中心人物の一人であるシスターサイキの異世界版、マザーマイヘム
(Mother Mayhem)である。彼女はタイラントのもっとも親密なアドバイザーの一人であり、そして彼女のサイキック能力によって狂気に追い込んだ多くの手下たち
(Child of Rage、Child of Anger)に囲まれているという、まさに悪の母ともいうべき存在である。
彼女が狂気に追い込んだ人間のうち、もっとも著名なのは我々の世界ではシスターサイキに改心させられヒーロー達のトレーナーとなった悪党マライス
(Malaise)であろう。彼はこの世界では逆にマザーマイヘムによって悪に突き落とされた挙句、自らも他人を狂気に陥れる技を身につけ、たちまちのう
ちにマザーの側近にのし上がったのである。
そして今なお彼は自身が狂気に陥れたギャング団(Maniac Slammer、Lunatic Slugger、 Crazy Chopper/Slicer =ヘリオンズもどき)を率いてマザーに忠誠を誓っているのだ。
マザーマイヘムにかかわらずプレトリアンの女性は男性以上に恐るべき存在だといえる。そうした一人がタミー=アルカナス、すなわち我々の世界のヌミナにあたるディアボリック(Diabolique)である。
世界の平和のために恐るべき悪と戦ってその体を失ったヌミナと違って、この世界の彼女が身体を失ったのはもっぱらその未熟さのためだった。彼女の父トミー=アルカナスは彼女の体と精神を救おうとしたが、このことを逆恨みした彼女は、あろうことか彼女を救おうとした父を逆に殺害した上、おぞましいことにその精神を捕らえて自らの手下に変えてしまったのだった。
こうして恐るべき霊的パワーを手に入れたディアボリックは、現在その力をつかって周囲の幽霊―Wraith、Poltergeis、Wightの精神を縛りつけ強制的に自らの配下として使役しているのだ。
ドミナトリックス(Dominatrix)は我々の世界ではミズ・リバティ(Ms Liberty)として知られるトレーナーの娘である。
だが有名で人々に愛されているスーパーヒロインの娘であることをドミナトリックスは決してよくは思っていなかった。逆に幼いころから偉大な母に反発してい
た彼女は、思春期にいたってその力が開花するや、遂に実母であるミズ・ リバティを殺害し、悪のヒロインとしてタイラントの下に走ったのだった。
以来彼女はLady、Trainer、Servantといったこの小悪魔の配下を率いてタイラントに絶大な信頼を寄せる理解者の一人としてしたがっているのだ。
一方アンチマターは彼女への愛の証として彼女のDNAから強力なアンドロイドをつくりだし、彼女に贈った。これがナイトスター(Nightstar)であ
る。これはニューロンがタイラントのDNAを使った最も強力で最も忠実なアンドロイドの最高傑作、シージ(Siege)を完成させタイラントに贈ったのに
ならったものだ。なおニューロンは同時にRAMシリーズ( I・II・III)と呼ばれるロボット軍団も製造したが、その能力は到底シージには及ばなかった。まさしくシージこそ彼が製造した最高のアンドロイドの一
体だった。
こうしたことからニューロンはアンチマターの作ったナイトスターを見下しているが、アンチマター自身はナイトスターがより優れたアンドロイドであると考えているようだ。
いずれにせよこの一件でタイラントの信頼を勝ち得たニューロンと寵愛を失ったアンチマターとの不仲は決定的なものとなったのだった。
いずれにせよ圧倒的な力を奉じる異次元の悪のヒーロープラトリアン達がタイラントの下に集ったのには各人各様の理由がある。
地獄の悪魔達(Demon)の主人であるインフェーナル(Infernal)の場合より多くの悪魔達をコントロールする能力を得ることが目的だった。ディ
アボリックはその霊的パワーにより彼に彼の鎧の中に悪魔の闇の力を注ぎこむことを教え、その秘儀によってインフェーナルは彼の望みどおりより強力なパワー
を得て、更なる数の悪魔をその支配下におくことを可能になったのだった。そして彼はその力を満たすためより多くの悪魔がいるであろう我々の世界を手中に収
め自らの鎧の下にさらにパワーを蓄えようとしているのだ。
バトル・メイデン(Battle
Maiden)はまさしく戦いの申し子である。我々の世界のヴァルキリー(Valkyre)にあたるであろう彼女は同様に中世の武器に似てはいるが実はハ
イテクノロジーがつぎ込まれた強力な兵器で武装している。戦争の世界の住人である彼女は、我々の世界のウォーリアに似た配下のChampion of
War、Champion of Battle、Champion of
Mourningというただ戦いのみを生きがいとする闘士達を率いて、新たな戦いの場を求めプラトリアンに加わったのだった。
一方同じく戦いのために生まれた存在ながら、戦いそのものを好むバトル・メイデンと異なり破壊と略奪をなにより愛するのがマローダー(Marauder)
だ。このたちの悪い狂犬は、ただ虐殺の楽しみのために、タイラントに従い、Destroyerなる無法者達を野に放って今日も殺戮に明け暮れているのだ。
このように戦いという行為自身を楽しんでいるのが多くのプラトリアンの特徴ではあるが、中にはある種の悲しい定めとしてその道を選ばざるを得なかったものもいる。
悪党ドッペルゲンガー(Doppleganger)の弟子として知られるプラトリアン、キメラ(Chimera)は実は両親がそのドッペルゲンガーに殺害された生き残りの少年だった。
だが何を考えたのかドッペルゲンガーはこの少年を連れ去り、訓練の末冷徹な殺戮者へと教育を施したのだ。長じて恐るべき暗殺者となった彼は Basilisk、Cockatrice、Gorgonという東洋の暗殺技術をもつ殺し屋集団(それは我々の世界のTsooに非常に似ている)を率い、プラトリアンズの敵対者を排除しようとしているのである。
一方ブラック・スワンの場合は多少特殊な存在だろう。彼女はその名のとおり我々の世界のトレーナー、スワンの影のような存在であるとともに、影の世界のそ
のものの支配者なのだ。彼女は哀れな犠牲者の“影”から暗黒のエネルギーを取り出し、“影”を自らの僕として使役するという恐るべき力を持っている。
彼女がその力によって自らの下僕とした虚ろなるものこそMaster Shadow、Shadow 、Champion of Mourningの名で呼ばれる生命体なのだといわれている。
そして彼ら全てをすべるもの。最大にして最強の悪の帝王、それがプラトリアンズのリーダーであり、我々の世界のステーツマンにあたるタイラントである。
プラトリアンの世界を征服した彼はニューロンが彼のために作ったアンドロイドとアンチマターが作成したSPECTRA Seriesと呼ばれるロボット兵団による力を背景に圧制をひき、さらに我々の世界をも征服しようと、今まさにその侵略の矢を放ちつつあるのだ。
悪の帝王タイラントとその配下のプラトリアンズはヒーローにとってまさに最強、最悪の敵に違いない。なぜならば彼らは異世界の存在とはいえ、我々の世界の最強のスーパーヒーローそのものなのだから。
もしも、彼ら恐るべき悪のヒーロー達を倒し、その侵略を退けることができたなら、そのヒーローは永遠にその偉業をたたえられるに違いない。