Rikti

当面の間リクティの侵略を退けたという事実は、この異世界からの侵略者達が、世界から一掃されたということを意味しているわけではない。
いや、実際のところ事実は全く逆なのだ。
果たしてどれほどのリクティの残存兵力がまだParagon Cityやローマあるいはクアラルンプールのような大きな都市の地下に潜伏しているのか、未だ正確に知るものはいない。
ある者はその数は数千と見積もり、またある者は少なくともその10倍〜20倍の数が地球を脅かしているはずだ、と主張している。
確かに人類がこの異世界の住人の奴隷となる危険は当面過ぎ去ったように見えるが、依然としてリクティの脅威は日々拡大し続けているのだ。

しかしリクティとの遭遇は完全に否定的なことばかりでなかったのも又事実だ。
実際のところ彼らの科学技術は我々よりはるかに進んでいた。
そして彼らとの戦争、更に残存兵力の掃討戦を通じて、ヒーロー達は文字どおりに何千トンものリクティのハイテク技術の固まりを捕獲したのだ。
その結果、ピストルから宇宙船に至るまで、リクティの膨大な兵器からさまざまな驚くべきテクノロジーが人類にもたらされたのだった。

最初のリクティのエネルギーライフル銃が人間の科学者の手に落ちて以来、人類は彼らのハイテク技術を着々と学んでいった。
例えば、現在Paragon Cityを分断しているエネルギーフィールド、すなわち戦争障壁(War wall)は、正にRiktiのテクノロジーに基づいたものだ。
あるいは戦争中ヴァンガードがRiktiのテクノロジーを元にその原型を使い始めたテレポーターは現在、Paragon Cityのヒーローにとってなくてはならないシステムになっている。
このテレポーター、非常事態テレポーテーションシステムはヒーローの生命反応が極めて重要なレベルに達すると、彼らをダイレクトに病院にテレポートするもので、リクティのポータル技術を元に設計されたものなのだ。
そして傷ついたヒーローがいったんそこに着けば、リクティが使用していたシステムを人間に合わせて再設計した細胞のレベルでの被害を修復する医療カプセルによって治療される。
このように、リクティのテクノロジーから得た利益が現われ始めて、わずか数年で世界全体を変えたことは間違いない事実なのだ。

しかし、リクティのハイテク技術がもたらしたものは、利益だけではなかった。同時にそれと同様の問題も引き起こしていたのだった。
リクティのハイテク技術の全てが政府の手に渡り、正義の為だけにつかわれたわけではなかった。
Paragon Cityに巣喰う犯罪者達は、様々な抜け道を使ってこの技術を手に入れ、彼らの犯罪に用いようと血眼になっていたのだ。
実際のところ闇市場では今や単なる彼らの通信装置さえ、何万ドルもの値段で売買されているのである。
それどころかつい先日、eBayのネットオークションにリクティのヘルメットが出品された時は、政府はあわてて出品者を逮捕した上で、会社に罰金を科して、ようやく$35,320で落札されたこの売買を止める始末だった。
だが笑い話ばかりではない。ある田舎のチンピラが秘蔵されていたリクティの殺人兵器を見つけたときは、危うく深刻な事態を招く直前だった。
幸運にもこのチンピラは兵器の潜在的な危険性を理解しておらず、近くの酒屋を襲おうとして若いヒーローグループに取り押さえられたのだった。

こうした危険性から、現在の国際法ではどんな製品であっても異質なテクノロジーは直ちに地元自治体を通じてリクティ戦争で活躍した国連のスーパーグループ”ヴァンガード”に引き渡さなければならないと定めている。
今やヴァンガードは本来の役割に加えて、こうした異質なテクノロジーの情報センターとしての役割を担っている。そしてヴァンガードを通じて様々な研究施設に委託されて、新たな技術の研究が行われているのだ。
更に科学者達の研究成果を全世界で安全かつに共有する体制をつくるため、各研究所にはヴァンガードのヒーロー達がその警備についている。
そして多くの民間の研究開発会社が、政府との契約の下、リクティの科学技術の可能性の鍵を開けるべく、日夜努力をつづけているのだ。

Paragon City有数の大企業クレイ・インダストリー(Crey Industries)はその研究の中で最も重要な地位を占める企業の一つだった。クレイの研究チームはリクティのハイテク技術の調査研究の中で最も早いスピードでその解明を進めていたのだ。
そしてそのうちの一つには、毎日悪と戦う多くのヒーローが使用している非常事態テレポーテーションシステムの特許をも含まれているという。

しかし、最近になってヴァンガードの調査によってクレイが契約に違反し多数のリクティの兵器とバトルアーマーを隠匿している事実は明らかになった。直ちにクレイとの契約は打ち切られ、クレイが今後リクティ技術の調査研究をするのを禁じる決定が下されたのだった。
クレイのオーナであるクレイ伯爵夫人は、これは単なる事務的なミスが招いたことであり、既にヴァンガードにエイリアンの製品の全て返還したと主張した。 その上で夫人は今後クレイ社としては恭順の意を表して国連に対しエイリアン技術のプロジェクトから撤退する旨を保証したのだった。

Official Background Story