The Lost

ヒーローの力は悪を倒すためばかりではない。恵まれない多くの人々の為にも、そのパワーは使われているのだ。
リクティ戦争の後、ヒーロー達はそのトレーニングホールを避難民達に解放し、食事を与えると共にがれきを取り除き、多くの新しい住宅を造る手伝いをしてきた。それはヒーローが悪に対してその正義の鉄拳を振るうのと同じように価値のあることだった。こうしたヒーローの努力のおかげで、空腹の夜を公園ベンチで 費やしただろう何万人もの市民が救われ、新しい仕事を見つけて社会へと復帰していったのだ。
しかしヒーローやParagon City当局の懸命な努力を持ってしても、すべての貧しい人々を救うのは不可能だった。フリークショーや5th Columnの様な犯罪組織はこうした状況を利用し、そのメンバーを増やしていったのだ。

やがてPagragon Cityの地下に縦横に張り巡らされた地下鉄網と下水道ネットワークは外界から隔絶された絶好のすみかとして多くの貧しいホームレス達のたまり場となるようになった。
しかしそこはかつて非常に危険な場所だった。リクティ戦争の時、この異世界からの侵略者はParagon City征服の為、この地下トンネルと下水道ネットワークを活用し、その前線基地を置いていたのだ。
実際この戦争中多くの戦いがこの地下トンネルで繰り広げられ、今でも地下深くにはRiktiの残存部隊が待ち受けていると噂されされているのだ。
しかし地上での希望を失った多くのホームレス達が、この危険で閉鎖された地下鉄と下水道のトンネルへと向かっていったのだった。

この隔絶された地下世界で起こっている事件について、人々が知ったのはシャノン・プライスという勇敢な独身のソーシャルワーカーの報道からだった。
彼女はRikti戦争中はスターライト(Starlight)として知られるヒーローだったが、平和が戻ってからはヒーローのタイツを脱ぎ、貧しい人々の救済の為ボランティア活動を行っていたのだ。
ある日彼女はボランティア活動の中、奇妙な噂を耳にした。最近ホームレス達が相次いで失踪し、その後以前とは異なった姿で戻ってくる事件が頻発していると いうのだ。そして戻ってきた元ホームレス達は以前の仲間とも不自然な事務的な口調でしか話さないばかりか、武装強盗や様々な犯罪を行う強固な組織を築いて いるという。

彼女はこの事件について更に調査することを決心し、ヒーロー組織「ダウンパトロール(Dowon Patrol)」の旧友に助けを求めた。彼女たちは捕らえたこの「モグラ人」(地下にすむホームレス達は彼らをそう呼んだ)の一人を尋問したが、彼は自身 を「ロスト(The Lost)」のメンバーだと言うのみで、後は魔法の靄がどうとか緑の神がどうとかと支離滅裂なことを言うばかりだった。
しかし、彼の血液を検査したところ驚くべき事実が明らかになった。彼の血液から、突然変異を引き起こす特殊な化学物質が検出されたのだ!

翌朝、シャノンは更なる手がかりを得るため再びヒーロースーツを身に纏とった。そしてダウンパトロール時代の旧友だったThe Fist(拳)ことベラスケス(Quint Verasquez 5つ子のベラスケス)と共に、地下下水道の深部の探索に向かい、そのまま行方不明になってしまったのだった。
ダウンパトロールは探索のため急遽数個のチームを派遣した。しかし彼女たちの行方はようとして知れなかった・・・。

ほどなくして行方不明だったシャノンがラッシュアワーの道路のマンホールからはい出たところを発見された。
彼女は多くの責め苦を受けてひどく衰弱しており、そのまま病院へと運ばれたのだった。
しかしシャノンと共に下水道ネットワークへ向かったはずのベラスケスの姿は、そこにはなかった。

ラボテストの結果、彼女の血液からもロスト(The Lost)と称するホームレスと同じ突然変異体が発見された。
これはこの突然変異体がこの事件を引き起こした元凶であることを示していた。
シャノンは精神的に錯乱していたが、ダウンパトロールのメンバーは不明瞭なシャノンの言葉からいくつかのこの事件に対する確証を得つつあった。
まずこのロスト(The Lost)と称する集団は、世間に絶望した人々や精神的弱者などが拉致されて特殊な化学薬品による突然変異体の作用によってミュータント化させられた集ま りであること、そしてこのグループのリーダー達は自らのことを「ロスト(The Lost)」と呼んでおり、グループおよび彼らの名前はそこからきていることなどである。
しかし肝心のグループのリーダー達の話となるとシャノンはひどく錯乱し、「神」だとか「悪魔」などと繰り返すばかりでほとんどその手がかりをつかめなかったのだった。

この事件以後、ロストはParagon Cityにとって恐るべき脅威であることが明らかになった。
地下をでて都市部にあふれ出した彼らは、街中で強盗や殺人などの犯罪行為を繰り広げる一方、市民を拉致し新たな仲間を増やしていった。どうやら彼らは市民を拉致し新たな怪物を増やすことで組織内の地位があがっていくらしいのだ。
彼らがヒーローによって捕らえられると、その行動はいつも決まって同じだった。彼らは自らをロストだと主張し、支離滅裂なことを話したあげく、衰弱してしまうのだ。

ある日ダウンパトロールは他のロストよりも恐れられているヒューマノイドタイプのロストを捕獲しようと試みた。この特別なロストは他のロストと共にダウンパトロール本部を攻撃したが、最後はヒーロー達によって倒されたのだった。
しかしその後に行われた検視の結果は恐るべきものだった。
DNA、歯のパターン、指紋のすべてがこのロストこそあの行方不明のヒーローベラスケス、その人であることを示していたのだ!
彼は、精神を失っただけのシャノンほど「幸運」ではなかった。彼は既に突然変異体によって身も心も怪物と化していたのだった。

この惨劇を引き起こし、ホームレスに対して突然変異をおこしている者達の正体は未だ明らかにはなっていない。しかし物的な証拠はある。彼らロストが使用している武器は、明らかリクティのテクノロジーが使用されているのだ!
またリクティにロストと同様のHeadman(あのテレビを被った奴だ)の部隊がいたというヒーローの証言もある。

しかし彼らの真の正体とその目的は未だ霧の彼方のままなのだ。

Official Background Story