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場所


風が運んでくるものは 優しい花の香り
その香りに導かれ、記憶の糸をたどりはじめる。
目に浮かぶのは、一面の蓮華畑・・・。

柔らかな、蓮華の上に腰を下ろして・・・花冠を編む。
はるか向こうまで、紫と白の花びらをつけた花は
風が吹くと・・・優しくたなびく。

「綺麗だね。蓮華草とても綺麗  私、春って大好き!桜も咲くし、一面の蓮華草の絨毯を歩くのはとても幸せだもん」
そういって、微笑んでいた僕の幼馴染の言葉が浮かぶ

年々、少なくなっていく蓮華草の絨毯・・・。
一つ一つ、消えていくその風景に・・・君は傷ついていたね。
自分の思い出が消えていくようだって。

悲しむ君の隣で、僕は正直・・・彼女の感情が理解できないでいた。
場所がなくなっても、思い出は消えないだろうに・・・。
何を、悲しむひつようがあるんだろう・・・と

今ならわかる、君が僕の隣からいなくなって
君を思い出すのは・・・花の香りだったり・・・。
君と遊んだ場所だったり・・・。

きっと、特別な場所は記憶を紐解く鍵
薄れていく、思い出を鮮やかな色に変える魔法
大切なものほど・・・風化していくのが怖い気持ち
痛いほど・・・わかるよ。

うつろいゆく時に、流されるだけの僕・・・。
時間をとめた君・・・。


”キミニアイタイ”