ひとり



「最初でね、最後なの」
そういって笑う彼女。
「なにが、最初で最後なの?」
僕は、彼女に聞いてみる
「ん・・ん・・人を好きになるのが最初で最後」
「・・・それは、僕だけってこと?」
僕の問いかけの答えは、彼女の顔見ればわかる。
それでも、彼女は言葉に出して僕に伝える

「そうだよ。貴方が最初で最後・・」
「じゃぁ、僕がいなくなったらどうするの?」
ふっと、頭によぎった疑問をストレートに彼女にぶつける
今まで笑っていた彼女の笑顔が少し曇る。

「いなくなったら・・・?」
「うん」
「いなくなっちゃうの・・?」
「もしもってことだよ」
長いような、短いような沈黙の後に彼女が話し出す

「どうもしないかな」
彼女の悲しそうな表情を見ていられなくて
冗談交じりに僕が言う
「あれ?そこは 何処までも貴方についていくからって言うんじゃないの?」
「ん・・ついていかないかな」
この返事に少し戸惑う。
そして、考えながら・・・ゆっくりと彼女が話し出す。

「貴方が、居なくなったら、私は貴方を想いながら生きていくわ
貴方を想って、悲しいときも、切ないときも、寂しいときも・・
この感情と一緒に、生きていくわ」

「その感情だけが・・貴方と私をつないでいたものなんですもの
貴方と一緒に居た時間を証明する唯一つのものだから・・
私は、涙流しながらでも・・生きているわ」

彼女の想いの深さを知った僕・・。
いつかこの想いを受け取れなくなる日が来るかもしれない
すると、僕の心を読んだかのように・・。
「大丈夫、私は貴方の進む道を邪魔しない。貴方は貴方の信じる道を歩けばいい」

そういって、微笑む彼女はとても儚く見えた・・・。