REPORTNever7 〜the end of infinity〜
Dreamcast
2000年12月21日発売発売:キッド  

  SS時代のキッドといえば、『放課後恋愛クラブ』『Piaキャロットへようこそ』『バーチャコールS』等、 PCエロゲを家庭用機向けに移植してるメーカーだったのに、気が付けば、家庭用オリジナルのギャル系ADVメーカーとして確固とした地位を確立。 そのキッカケとなったのは、PSで1999年9月30日に発売された『メモリーズオフ』と、翌年3月23日に発売されたPS『インフィニティ』なんだろう。
  そして本作『Never7 〜the end of infinity〜』は、その『インフィニティ』に残された謎を解き明かすシナリオを追加した移植作で、 元のPS版を差し置いて、今のキッドを代表するゲームの一本となっている模様。 かなり評判が良かったんで、前々からちょいちょいと探してたんだけど見つからず、 諦めかけてた時にタイミング良くドリコレ版が発表、そして5/23に発売された。
  ちなみに、この夏にはPS2&DCでその続編『Ever 17 -the out of infinity-』の発売が予定されている。


  まず、タイトル画面からナチュラルに移行するムービーデモにニヤリ。芸が細かい。
  定評のあるシステム周りは、なるほど丁寧によく作られていると思う。 スタートボタンでのスキップはただの文章スキップではなく、既読文章をスキップする機能だし、 オプションで、既読文章とそうでない文章を色分けする機能もアリで、ウィンドウのデザイン&配色も多数用意されている (ただし、既読文章の色分けがわかり易いパターンが少ないのは不満)。 Aボタン押しっぱなしで、ボタンを押すことなく(もちろん選択肢は選択する必要があるけど)ゲームが進行するモードになるのもグッド。 選択肢が出る時にはチャイムが鳴るし、メニューや読み返し画面から戻ったときには、 選択肢が選択されてない状態になってるので、ボタン連打で間違った選択をしてしまうなんてこともない。 Yボタンで移行する読み返し画面でのスクロール操作がちゃんとアナログ入力に対応してたりするのも、地味ながらもポイント高し。 セーブ&ロード画面では、データをセーブしたときの画面がフラッシュバックのように表示されたり、 かなり細かく場面場面にタイトルが付いてたりと、芸が細かいし実用性もある。
  グラフィックはやや古いゲームということもあってか、ちょっと雑な印象。 水彩画風のタッチで描かれてる背景は若干ムラがあるし、バストアップ(このゲームでは膝上だけど)のキャラの絵も、やや雑なところが。 一方で、フルスクリーンの一枚絵は、アニメっぽいディフォルメがキツくなってはいるものの、基本的に良く描けてると思う。 エロゲの移植モノと違って、無駄なお色気カットが無いのもいい
  場面転換やエフェクトなどで、なんとか画面に動きを持たせようとしている努力も感じられる。
  音はいい意味で無難。 音声に関しても、特に違和感を感じることはなかった。

  主人公は、大学のゼミの合宿で避暑地である孤島を訪れた「誠」。 ヒロインは、その合宿仲間である「優夏」「遥」、別荘に休暇に来ていたお嬢様「沙紀」、島にある喫茶店でバイトをしている「いづみ」、その妹の「くるみ」の5人。 それ以外の主な登場人物として、合宿仲間の「億彦」(♂)がいる。
  繰り返される6日間、来ることのない7日目、そんな話は聞いてたので、てっきり同じ6日間をずっと繰り返すタイプのADVかと思いきや、 最初の6日間でヒロインが選ばれ、また1日目に戻って、2周目の6日間でヒロインと結ばれ、7日目のエンディングに、そういう流れだったのがちょっと意外だった。
  ゲームは誠が悪夢を見ているシーンから始まる。 漠然とした描写の中、鈴を握った誰かの手の光景と、4/6という日付、そして絶望感だけを残して目が覚める。 前述の通り、ゲームの進め方によってヒロインが決定されるんだけど、 実はこのシーンはそのヒロインの死の瞬間を示していて、6日には選択されたヒロインが鈴を握ったまま死んでいくことになる。 誠はそこで絶望のドン底に叩き落され意識がブラックアウト。すると、1日目の朝に戻る。 そして、6日間の体験を元に、なんとかヒロインを死から救おうと頑張ることになる。 ・・・というのが大まかな概要。
  シナリオは「優夏」「遥」「沙紀」「くるみ」「いづみ」というヒロイン5人分と、『Never7』で追加されたらしい「いづみキュア」。 特にヒロインを選ばない場合は自動的に優夏シナリオになるらしく、また、「いづみキュア」は“真いづみシナリオ”とも言える内容で、 最後の全容を語るものなので、他の4人をクリアしてからじゃないと進めず、 元のいづみシナリオは、いづみキュアをクリアしてからじゃないと進めなくなっている(ある意味、オマケ的な存在なのかも)。 さらに、いづみシナリオをクリアしてから(つまり全てのシナリオをクリアしてから)いづみキュアのエンディングを見ると、グランドフィナーレというエンディングに。 ここらへん、理屈での分岐じゃないだけに、ムダに入り組みすぎな気も。 正直、攻略サイトがなかったら自分は途中で面倒になってやめちゃってたかもしんない。

  ゲーム的なポイントは、1周目でのヒロイン選択と、2周目終盤のバッドエンド回避。
  後者に関しては、肝心なところで選択肢の内容で結果を類推することが難しく、 とりあえず選んで結果を見てみるしかないという色が強いものの、そこまで複雑な分岐があるわけでもなく、 そもそもセーブ&ロードの仕様が親切で繰り返しプレイがさほど苦ではないので、それほど問題ではない。
  若干問題なのは前者で、選択肢による分岐だけでなく、好感度というパラメーターが中途半端に絡んでくるのが厄介なところ。 文章からは好感度の上昇具合が案外わかり辛く、それがどういう影響を与えてるのかもわかり難い。 まぁこれもVMに好感度を示すことができるDC版ならさほどプレイに問題があるわけじゃないものの、 分かり難い割には分岐そのものは単純だし、結局、ヒロインが決まってしまった後は全くゲームに絡んでこないしと、 こういう要素を加えるのであれば、もうちょっと生かしようがあったようには思う。 もちろん、こういうパラメータ的な要素は無しにして、その場その場の選択肢の選択だけで分岐させていくというのもあり得る手法だけど。

  では、肝心のシナリオそのものについて。
  必ず選択されたヒロインが死んでしまって、それを救わなきゃ!となる構成はなかなか良くできてるし、 主人公が死ぬというシチュエーションは目新しくて上手に描けてるとは思うものの、いづみ以外の4人に関しては、とりたてて優れているというところはない。 優夏以外の3人はそれぞれ悩みを抱えてて、優香の場合はタイムスリップ自体が問題となってくるんだけど、その事実究明、悩み解決以前に、 「君のことが好きだ!」「私もよ!」ってな展開になってしまうのがいただけない。 そういう意味で違和感が少なかったのは、悩み解決から恋愛という流れがわかり易いくるみシナリオか。
  個人的に致命的だったのが、どーもこの主人公誠が好きになれなかったという点。というか、嫌い。 理屈で考えようとする割には理屈で考えられず、肝心なところで思考停止、勝手に妄想を膨らませてパニクるし、思い込みが激しい。 行動力がありそうでそうでもない(というか、ヘンなとこだけで行動力を発揮)し、 キザな億彦を毛嫌いする割には、こいつにも誠実とは言いがたいところがあるのに、本人はそのことに気付いていない。 古臭い言葉で言わせてもらえば、“女の腐ったようなヤツ”という表現がピッタリ。 そんな人間による唐突で自己陶酔的な詩的表現にグッタリ。 どのシナリオにおいても、2周目冒頭からヒロインに感情移入すぎで、ついていけんものがあった。 ヒロインが決まるまでは話の流れに大きな変化を与えられないという、そして、 恋愛的なハッピーエンドが大前提というゲーム形式で犠牲になった部分があるにしても、ちょっとなぁ・・・。 まぁこれは、“このゲームの致命的なところ”というよりも、“自分がこのゲームを楽しむということにおいて致命的なところ”、そういう部分なんだろう。
  意外に、最後に全ての要素がスッポリと納まるようなところもなく、散漫としたところがあって、首を傾げたくなるような部分も少なくない。
  ただし、いづみキュア編は別格。 根拠付けには苦しいところもあるんだけど、“現実or夢”“タイムスリップor超能力”的なゆらぎが非常に面白く、 タイムスリップにまつわる仕掛けが遥かに上手く作りこまれている。 それまでのシナリオでつっこみたくなったとこが明らかにされるのも良い(つっこまれた部分を取り繕っただけという感じを受けないわけでもないが)。 ここは素直に感心させられた。 その後にプレイする元のいづみ編があんなんだけに、元の『インフィニティ』ではなくこのDC版『Never7』が傑作扱いというのも頷けすぎる。
  他、シナリオの割と細かい部分で気になった点が2つほど。 まず、「クローン」「シュレディンガーの猫」という2つの科学用語が(意図的にかどうかはわからないけど)誤用というか拡大解釈というか、 誤魔化しの手段として用いられてるとしか思えなかったこと。 これはゲームに限らず日常的に気になってることだけに、非常にマイナス印象となってしまった。 そして、主人公以外ではほぼ唯一の男キャラである億彦の位置付け。 一応、ライバルというか悪モノというか、そんなキャラに仕立て上げようという意図は感じるし、とにかく誠はこいつを毛嫌いするんだけど、どうもそこまで悪いヤツには思えないんだよな・・・。 というか、むしろいいヤツっぽい。 登場シーンで語られるような、あそこまでの派手な設定が必要だったのかも疑問。
  ちなみに、孤島が舞台ということで途中まで気付かないが(って、そういう作りもどーかと思うんだが)、実はちょっと未来のお話。 しかし、未来であることが意味を持つのはある一点についてだけなんで、そもそもそういう設定にするべきだったかというと疑問が残る。 まぁ、これはキュアシナリオを前提にしての話であって、元(『インフィニティ』)が元だから仕方がないか。


  最後までプレイして納得という部分はあったんだけど、それまでがキツすぎた。 やっぱり嫌悪感を憶えるような主人公だと、こういう主人公=プレイヤーなADVはツラいわ。 あらためて、物語の表現手段としてのゲームの特徴を、思い知らされる形となった。
  移植モノということが足を引っ張ってる部分もあると思われるんで、次の『Ever7』で真価が問われることになるんじゃないかな。

2002年6月30日記載