REPORTゴーストヴァイブレーション
PlayStation2
2002年7月4日発売発売:アイドス  開発:アートゥーン  

  アイドスにしては珍しい(というか、初めての?)海外からの移植ではないタイトル。
  開発のアートゥーン(Artoon)は、かつてセガにいた人たちが立ち上げたゲームメーカーなんだけど、 今のところの実績は、25本という前代未聞の数が揃ったGBA本体同時発売タイトルの中で 思いっきり埋もれることになってしまった『ピノビィーの大冒険』(発売元はハドソン)と、 悪名高きGBA『ザ・キング・オブ・ファイターズEX』(発売元はマーベラス・エンターテイメント)だけと、 実績なしというよりも、むしろ心配になってくる実績を持っている。


  ゴーストの研究をしている主人公「ジョージ」の元に、幼馴染の「アリシア」から連絡があって、 ジョージはそのアリシアを守るために幽霊の棲み付く呪われた屋敷に乗り込み、 一見すると映画「ゴーストバスターズ」のアレみたいな機械を使って、その悪魔を退治していくことに、というのがゲームの導入。

  このゲームの特色は、主人公の操作がスティックを上に倒して前に進ませるだけというところ。 この「ウォークモード」で主人公は勝手に館を探索し、主人公は画面を見るだけ。 で、絵的、音的にゴーストがいる気配を感じたら△ボタンで主観視点の「スコープモード」に移行し、ゴーストを発見してそれを駆除するというのがゲームの流れ。
  スコープモードでは、左スティックで視点(&照準)を操作、ほぼ上下左右360°自由に見ることができる。 メインウェポンとなるのが、その名の通り先端には槍が付いていて、その槍と銃本体がワイヤーで繋がっているという「スピアガン」。 ○ボタンでこの槍を射出、ゴーストに突き刺し、その状態で○ボタンを押すことでゴーストの力を吸収する。 照準に近ければ近いほどゴーストの力を多く吸収でき、ゴーストが画面の外に出てしまうとワイヤーが外れてしまうので、 動き回るゴーストを画面中央に捉え続けることが重要になってくるわけだ。 ただし、この武器によってゴーストの動きやプレイヤーの動きが左右されることはないので、 GC『ルイージマンション』にあったような魚釣り的な感触は皆無といってもいい。単純に敵を照準に合わせるだけ。 さらに、パワー吸引を続けると「アスピレータメーター」というものが溜まっていき、 3秒以上○ボタンを押しっぱなしにするとオーバーヒートとなり、ワイヤーが外れ一定時間スピアガンが使用不可となる。 オーバーヒート近くの方が吸引力が強いので、“ある程度ボタンを押しっぱなしにして離して、また押しっぱなしにして離して・・・”という流れが基本に。 また、×ボタンで任意にワイヤーを開放することも可能。 ゴーストを吸引していくとエネルギーが溜まっていき、それが一定以上溜まった状態で△ボタンを押すとそれを解放、 画面全体の敵にダメージを与えるというシューティングでのボム的なサブウェポンもアリ。
  敵は大きく分けると「ゴースト」と「ソウルゲート」の2種類。 通常のゴーストは一定時間内にゴーストを捕獲できないと、ゴーストが突進してきてダメージを受け、捕獲失敗となる。 ワイヤーが刺さっている状態でも、問答無用で突撃と、こうなったら回避不能。 問題は、その猶予時間ともいえる時間が明示されていないことだろう。 それ以外で体力を減らされる要素はないので、そのゲーム性は『バーチャコップ』系のガンシューティングに近いものがあるのに、 肝心の敵が攻撃してくるタイミングがわからんので、正直、ゲームになってないという印象。 というか、こういう形にするのであれば、最低限、そういう猶予時間を明示しなくちゃならなかったろう。 そもそも、敵が1体の時はゲーム全編を通してほとんど苦労することはなく、 問題となってくるのは2体以上の敵を相手にするときなのに、どの敵を優先的に攻撃すればいいのかわからんのではなぁ。 よって、多数の敵を相手にするときは、サブウェポンに頼りがちになる。 一方のソウルゲートは、一定間隔で「エビルスピリット」という弾を発射してくる、砲台のような敵。 こちらの対処法はわかり易く、敵が弾を撃ったらワイヤーを解放し、まずその弾を撃って排除してから本体を攻撃することになる。 ボス戦の対処法も、基本的にはこのソウルゲートと同様。 敵弾を的確に排除し、その隙に敵から体力を吸収する。 雑誌レビュー等では、「ザコ戦がつまらん。ボス戦は面白いのに。」みたいに書かれてるのを見かけたけど、 単純作業の繰り返しになって割と長期戦になるボス戦の方が、むしろつまらなく感じたな。 って、要するに戦闘そのものが面白くないということになるんだが。

  やはり、あまりにもゲーム的な要素が少なすぎたように思う。 基本的な要素がシンプルすぎな上に、ゴーストも(体力や動きの激しさに差はあるものの)同じようなのばっかだし、 ソウルゲートの撃つ弾の動きにしても、バリエーション不足というか変化にメリハリがない。 スピアガンの操作に面白みがないだけに、メリハリがなくて間延びしてる上にパッドでプレイする (非撃ちまくり系の)ガンシューティング、そんな感じになってしまった。 スピアガンの操作にこれ以上工夫できないのなら、それこそ従来のガンシューティングを研究するべきだったろうし、 サブウェポンをボム的なものじゃなく、エネルギーを徐々に消費するようなものにしてそのバリエーションを増やすとか、 一度にもっと多くの敵を相手にできるようなゲームに調整しなおすとか、アイテムはその場で使うんじゃなくてストック制にするとか、 現状では回復系以外はほとんど意味の無いアイテムの効果を違うものにするとか、 ボスの弾を撃ち消した時に出現するアイテムはランダムじゃなくするとか、ある程度やりようはあったと思うんだけどな・・・。

  ただ、戦闘に入るまでのアプローチはなかなか面白みがある。 発売前の各ゲーム雑誌のレビューでは、このウォークモードが「やらされてる感を増長している」など非難の的になっていたんだけど、 基本的に、このアイデア自体はむしろ評価できる部分だろう。
  その凝ったカメラワークは演出的な効果はもちろんのこと、 プレイヤーが自由に操作できない分、ゲーム的にもより効果的な使われ方をしていて、 画面を見て、音を聴いて、怪しい部分を見つけるというところには、十分にゲーム性も感じられる。 ただし、そのゲーム性を十分に膨らませきれてないのも事実。 もうちょっとゴーストの出方にバリエーションがほしかったし、ゲーム的にももう一味、何かがほしかった。 ルートが分岐するとか、現状では移動スピードの変化の幅が小さいので、例えば走るボタンを追加するなどして、 キャラの移動スピード(タイミング)でイベントが変化するとか。 また、ジョージの探索に目的性が感じられないというのが、“やらされてる感”をムダに増長してるのも確か。 もうちょっと独り言を増やすとかして、ジョージは何を考えてそこをそのルートで探索してるのか、ってのを、プレイヤーに提示するべきだったろう。
  もっとも、自分がこのウォークモードでより問題だと思うのは、演出的に生かしきれなかったこと。 演出がウリのゲームにするのであれば、もっと恐怖に特化した作りにしてほしかった。 確かに、それなりに描き込まれた背景と、凝ったカメラワークによって、なかなか緊張感はあるんだけど、それが恐怖感には至っていない。
  ある意味、なんでそうなったかってのが分かり易いのが、モデリングにクセのあるキャラクターの顔。 基本的にクセの強いCGモデルは評価したいし、特にアリシアの方はなかなか魅力的だと思うんだけど、やっぱり恐怖を狙うなら避けるべきだったんじゃないだろうか。 何より、メリハリの効いた目鼻立ちをしてるので視線の演技は効いてたんだけど、それ以外の表情に変化が乏しいのが×。 セリフと口の動きも全く同調しておらず、ただの口パクだしと、思ってたよりキャラの顔に躍動感がないのが勿体無い。 ちょっとズレるが、声のキャスティングでは、意外とオトナっぽいアリシアの声は悪くないものの、 ヤンチャっぽい顔をしてるのに、非常に落ち着いたというか、抑揚に欠けすぎなジョージの声は完全にミスキャストだろう。 ちなみに、デモシーンはゲーム中と同じモデリングのキャラによるムービーで、そのこと自体は悪くないものの、全体的に画質が良くないのがちょっと気になった。
  ミョーに軽いタイトルロゴといい、 オバケ屋敷のように意味不明にケバいところがある色調といい、どうも雰囲気が安っぽくなっちゃってる。 オープニングムービーの雰囲気で本編もやってほしかったなぁ。
  また、陰影の演出が弱いのも、密かに相当イタい。 なんせ、主人公ジェームスには影が全く無いくらいで、他にも、光源が動くとか、キャラクターの陰影が光源に反映されるとか、そういうのが皆無。 動きがある光と影の演出は、恐怖という意味ではかなり重要な要素だと思うので、これは非常に残念だった。
  そして、意外に不甲斐なかったのが音に関して。 主観と客観を使い分けるゲームということで、立体音響的な作りにし難いというのはわかるんだけど (ちなみに、ゲーム中では一応主人公の位置に合わせてるっぽいし、向きによって左右の音量が変わることもない)、 にしても、音の使い方(特にその大小)にメリハリが感じられなかった。 デローンとかのあからさまなビックリSE以外の環境音的なSEはもっと凝ってほしかったところ。 ただ、スピアガンの射出音だとか、ゴーストパワーの吸引音とか、そういうゲーム的なSEは悪くない。 それによって得られる爽快感で、なんとか持ってる感じのするゲームでもある。

  意外と面白かったのがストーリー関係。 各ステージはそれぞれ、過去にこの館で起きた惨劇が当てはめられていて、そのステージに登場するゴーストはその惨劇の犠牲者という設定になっている。 ゴーストを捕獲すると、クリア時に見ることができる「ゴーストレポート」に、 その人物の断末魔的な叫びが追加され、惨劇が断片的に語られていき、全てのゴーストを捕獲すると、その事件の真相が明らかになる。 文章の量自体はそんなに多くないものの、事件の構成も各ゴーストの断末魔の語り口もなかなか良くできていて、予想以上に面白かった。 ちなみに、「長い腕」で横溝正志ミステリー大賞を受賞した作家(というか、元々セガ社員で今はアートゥーンの社員である)川崎草志氏がシナリオを担当してるとのこと。 この部分をより生かすのであれば、事件の概要についてはステージ開始前に提示するようにして、 ステージ中でもっと過去の事件を匂わせれば、面白かったんじゃないかな。
  初回のプレイでそのステージの全てのゴーストを捕獲することはまずムリと言っていいので、 クリア後に出現するステージセレクトで繰り返しステージをプレイして、ゴーストを収集していく。 ちなみに、通常ステージは9つ、クリア後にボス戦のないステージが3つ追加で、計12ステージ。 全てのゴーストを捕獲して全ての事件の真相を明らかにすると、エンディングムービーが流れてゲーム終了。
  自分としては「どこにゴーストがいるんだ?」っていう緊張感が面白いゲームだったので、 この繰り返しプレイそのものはそんなに苦痛じゃなかった。 ただ、システム的にやや難アリで、故意にステージから抜けられないのがイタい。 例えば、お目当てのゴーストの捕獲を失敗して、またステージの最初からやり直したいなんてときには、 そのステージをクリアするか、わざと自滅するか、本体をリセットするしかない。 せめて1度クリアしたステージでは、ポーズメニューにリトライ、あるいはステージから抜けるを追加してほしかったところ。 また、ゲームそのものがシビアじゃないから目立たないものの、サブウェポンのエネルギーゲージと、 「ライフカプセル」という体力がゼロになった時に自動的に体力を全快してくれるアイテムが、 ステージ間で継承されるというのは、地味ながらも雑な作りと言わざるを得ない。 特にライフカプセルはゲームを通してゲットできる場所が限られてるので、 ライフカプセルをゲットするために既にゴーストを集め終わったステージをプレイする、なんてことが。 上の方でもちょっと書いたけど、アイテム関係は(入手法、効果、使い方など)根本から考え直すべきだったと思う。
  スコープモードでは割と頻繁に処理落ちするものの、個人的には元々あまり気にしない方だし、 むしろ敵を捕捉し易くなったりと2Dシューティングの処理落ちみたいな感覚で、そんなに問題とは感じなかった。


  アイデアをゲームに昇華させることができなかった典型的な一例。 良いところもあって、全くつまらないわけではないが、ゲームにはなってないと思う。 で、それで押し切れるような演出・雰囲気作りもできなかった。
  アートゥーンも、そろそろビシッとしたゲームを出さないとマズいんじゃないか?   過去の名声なんぞ、何の意味もなくなるぞ、と。

2002年7月12日記載