REPORTチュウリップ
Playstation2
2002年10月3日発売発売:ビクター・インタラクティブ  開発:スタジオパンチライン

  開発のスタジオパンチラインは、てっきりバンプールのように旧ラブデリックからの独立組かと思いきや、 単に、ラブデリック(現スキップ)のいち開発チームの名称らしい。
  そんなわけでこの『チュウリップ』も、 DC『L.O.L.』、PS2『エンドネシア』同様、 PS『moon』から派生した感じのゲーム内容になっている。 というか、3本の中では一番『moon』に近いテイストを保ってるゲームと言えるかも。


  昭和の香り漂う鶴亀町に引っ越してきた貧乏親子、そこの息子(主人公)がその町で出会った女の子に一目ボレ。 ココロを成長させて町での評判を上げ、彼女に認めてもらうのだ!というのがこのゲームの大まかな流れ。
  世界観、キャラ、ストーリーなどには、例の如く、風刺的な要素をかなり持ち合わせているんだけど、 『UFO』『エンドネシア』に比べると、 よりシュール色が強く、そのポップなナンセンスさはまさに『moon』に通ずるものがある。 特にテキストが洗練されていて、語りすぎることがないので、 語りすぎでどこか俗っぽくなっていた『エンドネシア』などに比べると、その雰囲気は格段に好みといえる。

  で、ココロの成長には住人たちと「チュウ」をすることが必要ということで、 そのチュウが『moon』におけるラブに相当すると思ってもらって間違いない。
  チュウの対象には住人と地中人という2種類がある。 住人の場合は、その住人の抱えた問題を解決してあげるとチュウしてもらえるというもの。 一方、地中人の場合は、地面に穴が空いている場所があって、そこから決まった時間に地上に現われ、 決まったタイミング、条件で「ビバ」状態になるので、その隙にチュウをするというもの。 こちらは地中人の姿形、穴をのぞいたときのコメントなどから、その条件を探っていく。 共に“発想を試す”という、ある意味ではゲームらしいゲーム性にウェイトが置かれているという点では、 これでのラブデリック系ゲームと全く同じ方向性と言える。
  移動スピードは遅めだし、セーブも自由にできないし、持ち運べるアイテム数にも制限があるしと、 意図的にプレイアビリティを下げてると思われる部分があるのも、これまでのラブデリック系ゲーム同様。
  そんな中、このゲームの何より良かったところは、ゲーム的にかなりシンプルなものになっていること。 主人公のステータスは、ココロ(体力に相当)とお金だけで、 時間が遅くなっても眠くなったり、お腹をすかせたりということがないし、曜日の概念もなく、同じ一日が繰り返されていくだけ。 基本的に行動範囲はココロとは関係なく、イベントの進行度によって増えるだけ(というか、割とすぐにどこでも行けるようになる)。 『エンドネシア』を反面教師にしたのかどうかは知らないけど、面倒臭さが苦痛になる場面は比較にならないくらい少なくなっている。
  ちなみに、その舞台の性質上、世界もあまり広くない。 鶴亀町の住人は10人前後でこじんまりとしているし、そこから電車で行ける地点が3箇所のマップも比較的スンナリ把握できる程度のもの。
  ダメージを受けて体力がゼロになるとゲームオーバーなんだけど、ダメージ量は実際にダメージを受けてみないとわからないし(ヘタすりゃ即死)、 予想外のところでダメージを受けたりもするので、結構そういう形でゲームオーバーになることがあるゲームでもある。 まぁこれは“常々体力には気を付けておけよ”ってことだろうし、これはこれでアリだろう。
  で、ゲームの性質上、ヘンな思い込み (「ここで何かが起きるはず」「ここでこのアイテムは無意味なはず」「次にゲットすべきはこのチュウなはず」等)によって詰まることがある。 あまり「このチュウをゲットしてやる!」と意気込まず、 「とりあえずこれは置いといて、他のを試してみるか」と思えることが、このゲームを楽しむ条件と言えるんじゃないだろうか。

  ただ、このゲームの場合、個々のチュウのゲットよりも、 例えばそのチュウをゲットするための必須イベントは何かっていうゲームの流れであるとか、 チュウゲットの発端となるイベントに遭遇できるかってとこに突拍子もないところがあって、そこで詰まってしまう可能性があるのが残念。
  あまりにも“気付くか気付かないか”っていう要素が強すぎるのも気になるところ。 もうちょっと、プレイヤーに試行錯誤させる(試行錯誤が面白い)、あるいはプレイヤーの失敗がヒントになる、そんな内容を目指してほしいんだけどな。
  また、コダワリのつもりなんだろうけど、 セリフ、イベントシーンがキャンセル不可ってのが気になることも。 そもそもセリフのバリエーションが豊富なゲームではないし、ゲームオーバーが起こりうるので、繰り返しプレイ時にはゲンナリさせられることが多々あった。 キャラのセリフと仕草が完全に連動してるシーンは見受けられないし、テキストが自動的に流れていくようなシーンはほとんどナシ。 さらに、会話中に時間が進むわけじゃないし、100%主人公の視点で進行するわけじゃないし、時間的にハショっているシーンがないわけじゃないしと、 必ずしも“主人公の視点=プレイヤーの視点”という点にコダワリきれてるわけではないので、このキャンセル不可仕様が意味のあるコダワリとは思えず。
  特に、シュールな展開自体は面白かったラストの展開では、 発想力というよりただの情報集めな上に、失敗する(情報が足りない)とゲームオーバー、 キャンセル不可の長めのイベントシーンを毎度毎度見せられるという流れに心底ゲンナリ。 ためらうことなく攻略サイトのお世話になってしまった。
  その最後のオチは若干パンチ不足か。 シュールなだけで説明不足なとこが目立つし、特に驚きの展開があるわけじゃない(1点だけ驚いたけど、結局「で?」ってとこだしなぁ)。 “シュールな世界観の裏には緻密な設定が・・・”みたいなのを期待しちゃダメ。 とはいえ、チュウの積み重ねによるものなのか、ジンワリとした感慨はあったんで、これはこれで悪くないんじゃないかな。
  ラブデリックといえば常に音楽へのコダワリを見せていたわけだけども、 本作でも人の声を多用したBGMは印象的で、雰囲気にも上手くマッチングしてる。


  とりあえず、ラストの(ゲーム的な部分での)マイナスイメージ込みでも、『エンドネシア』よりは遥かに好印象。 ただ、詰まったらそれまでって部分は『moon』よりタチが悪いと思うし、 最後の(“話的な”ではなく“ゲーム的な”)展開もかなりマイナス印象で、やや間口の狭さを感じてしまうのも確か。 よって、『moon』が全くダメだったという人にまで薦められるゲームではないけど、 『moon』を楽しめた人には比較的薦め易いゲーム、そんなところか。 ラブデリック系は合わなかったら全くダメだろうから、「とりあえずやってみ?」としか言えないところがあるんだよなぁ・・・。

2002年10月24日記載