REPORTブレス・オブ・ファイアV ドラゴンクォーター
PlayStation2
2002年11月14日発売発売:カプコン  

  「ブレス・オブ・ファイア」といえば、1993年4月に発売されたSFC『ブレス・オブ・ファイア 竜の戦士』から始まり、 SFCで『同2』、PSで3作目、4作目が作られた、カプコンの看板RPGシリーズ。 全くプレイ経験はないんだけど、その評判を聞いていた限りでは、ソツなく丁寧に作られているもののウリに欠けるって感じで、 個人的には“DQ・FFに次ぐRPG群の最後尾”ってな印象のシリーズだったりする。
  その「ブレス・オブ・ファイア」が5作目にして世界観&システム共に大幅に変更され、ほぼ別モノとして生まれ変わった。 なんせ、開発陣自ら、「ブレス・オブ・ファイア」より「ドラゴンクォーター」の方をメインタイトルと考えてると発言してるほど。


  閉鎖された地下世界が舞台となっており、既に人々の間では「空」は伝説的な存在となってるという世界観。 なんとなく漫画「BLAME!」に通ずるものがあるんだけど、向こうが文明レベル的にサイバーパンクだったのに対し、本作はどちらかっていうとスチームパンク。 コンピュータ&ネットワーク等はあまり表に出てこないけど、現代と同レベルの文明レベルはあるし、ロボ系の敵もいたり。
  政府直属のパトロールや警備を任務とするレンジャーである主人公「リュウ」が、 とある任務中に、背中に小さな翼の生えた喋れない少女「ニーナ」と出会うことで、話が回り始める。 さらに、とあるきっかけから、反政府組織「トリニティ」のエージェントである「リン」がパーティーに加わり、 リュウはニーナを救うために、あるかどうかも分からない「空」を求めて、地中世界を上へ上へと進んでいくことになる。
  そんなゲームの流れも、拠点となる街があってフィールドがあってダンジョンがあって・・・というものじゃなく、 そこらへんが比較的シームレスというか、一本道でダンジョンを進んでいくようなタイプになっていて、 自分がイメージ的に一番近いと感じたのはPS『ベイグラントストーリー』あたり。
  そして、このゲームのシステム的な特徴は、「SOL(Scenario OverLay)」によるシナリオと繰り返しプレイも含めたゲームのマクロ的な構造と、 「PETS(Positive Encounter and Tactics System)」「APS(Active Point System)」による戦闘関連にある。

  SOLにも関わってくる重要なパラメータが「D-カウンター」。 主人公リュウは序盤で竜に憑依されてしまい、竜の能力をゲットすることになるんだけど、本来そういう適合力を持たないリュウは、竜の力を使う度に体が蝕まれていく。 それをあらわした数値がD-カウンターということになっている。このD-カウンターが100%に達した瞬間に、強制的にゲームオーバー。 この数値は減らすことが一切できず、竜の力を使わないでも(ホントに徐々にとはいえ)増加していくってのは、 マッタリさを求めるRPG愛好者には受け入れがたいかもしれないけど、SOL自体がちゃんと消化されていれば、個人的には悪くない要素だったと思う。
  中断としてのセーブはいつでもできる反面、このデータは再開時に消えてしまう一時的なもの。 データ保持という意味でのセーブは、セーブポイントで、セーブトークンというアイテムを消費して行うことになり、セーブ箇所は1箇所だけ。
  ゲームオーバー(戦闘での全滅orD-カウンター100%)やギブアップ時には、スキル、所持金、パーティー経験値(自由に配分することができる経験値)、 装備品などを維持したまま、そのセーブポイントから再開できるという仕様。 ただし、ゲームオーバー時には所持金&パーティー経験値は半分になってしまうし、 保管所に預けていない装備してない装備品やアイテムは消えてしまうので、できれば、ギブアップする準備をちゃんとしてギブアップした方が良いことになっている。
  フィールドの敵は一度倒すと復活せず、数が限られているんだけど、このギブアップを繰り返すことで、一応、延々とキャラを鍛えることも可。 といっても、パーティー経験値はオマケみたいなもんだし、スキルや装備品に鍛えるという要素はないんで、 それほどゲームオーバーを繰り返す作りのゲームというわけでもない。 確かに、ピンチになったら竜の力を解放して強引に突破したり、 その反面、話の先が見えないだけにD-カウンターの上昇には気を使ったりという駆け引きには、ゲーム的な面白さがあったと思う。 それでも、繰り返しプレイがゲーム的に消化されていたかというと、非常に疑問。

  ここらへんの作り自体もSOLとしているようだけど、その名前の由来となってるのは、 繰り返しプレイすることによって、イベントシーンが追加されていくという部分にあるんだろう。 という話を聞いた時には、(『バロック』などのように)繰り返しプレイすることがシナリオ的にも消化されているタイプのものを期待してたんだけど、 残念ながらそうではなく、繰り返しプレイすること自体のシナリオ的な説明は皆無、 シナリオ自体は一本道で、一度会ったキャラの(主人公たちが直接関わってない)エピソードが追加されるだけというものだった。 これは結局のところ、2度目以降で物語が膨らんでくるというより、初回プレイの時点で語られてなさすぎなだけ。 初回プレイ時にしても、必ずしも主人公の視点だけから語られてるわけじゃないし、 主人公の関わってないイベントシーンが語られるというのも特別な話じゃないわけで(2度目のプレイで「なるほど」なんてのは、そういう手法でも十分に感じられるはず)、 シナリオ的にはプラスになった部分よりマイナスになってる部分が圧倒的に大きく感じられたな。
  何より、こういう作りにするにしては、通してのプレイ時間が長すぎると思う。 自分は、10時間ほどプレイしてまた最初からやり直し、それ以降は戦力強化という意味でギブアップする機会はなく、そこからクリアするまで約30時間かかった。 どう考えても、繰り返しプレイを前提としたプレイ時間とは思えない。
  本来なら、繰り返しプレイすることで、それがキャラ強化に繋がる作りにして、それによって道が開ける(というか選択肢が増える)作り、 話が分岐によって膨らんでいく作りが求められたんじゃないだろうか。 残念ながら、現状ではそれがゲーム的にもシナリオ的にも消化しきれてない印象。 だったら、素直な一本道RPGにすべきだったろう。
  セーブトークンが必要だったのかという疑問もある。 拠点に戻ってはダンジョンに潜り・・・というゲームじゃないわけで、セーブ機会は限られているわけで、さらにセーブ回数を限る必要があったのかどうか。 セーブトークンはギブアップ時に引き継げず、SOLを使って再開したときは必ずセーブトークンを1つ持った状態で始まるので、 実は終盤になって、セーブトークンを得るためだけにムダにギブアップしたことが2回ほどあったんだよな・・・。

  PETSとAPSを軸とした戦闘にも工夫の跡は見られる。
  PETSは敵との遭遇に関するシステム。 敵はフィールド上で見える形で徘徊しており、肉を使っておびき出したり、毒エサを食べさせたり、爆弾を投げて遭遇前にダメージを与えたりなんてことができる。 で、こちらの攻撃をヒットさせたり、敵から攻撃を喰らうと戦闘開始。 必ずしも見える敵が全て戦闘に参加するわけじゃなく、その敵の近くにいた敵が戦闘に参加する。 攻撃を仕掛けた側に最初にオマケの「EXターン」という攻撃ターンが用意されるのも大きな特徴で、 単発の攻撃力が大きいこのゲームでは、敵に先手を取られることはなるたけ避けたい。 さらに、大抵のRPGがそうであるように、敵が1体だとラクで、敵が複数になるにつれ2次曲線的に辛い状況になるので、 これを使って、各個撃破の状況を作り、先手で攻撃を仕掛けることが重要になってくるというわけ。 いかに遭遇するかってとこだけに気をとられすぎてしまう面はあるけど、それ以上に問題なのは、通常時の視点操作にやや難アリなこと。 右スティックで視点を動かせるんだけど、結構背景に引っかかるところがあって、 通常のRPGならまだしも、こういうアクティブなゲームにとってはツラいものがある。 背景に引っかかった時もキャラとの間が開いてしまうよりは、むしろキャラに寄ってキャラに近い視点で見せるべきだったと思うし、 そもそもは、オブジェを多少省略しても、壁を半透明化させてキャラが見えるようにするなどの工夫がほしかったところだ。
  APSは戦闘そのもののシステム。 各キャラクターには「AP(Active Point)」というステータスがあって、そのポイントを自分で分配して、戦闘時の行動を行うことになる。 そのインターフェースの発想はDC『サクラ大戦3』に似ていて、 自由に自キャラを動かし、その場所によってAPが減り、敵がいるところで攻撃ボタンを押して攻撃、続いて攻撃ボタンを押すとAPのある限りコンボ攻撃になる。 各武器には3段階のレベルそれぞれに最大3つ(武器によって変化)のスキルを装備することができ、そのそれぞれが□、△、○ボタンに相当。 同レベルの他のスキルや同じボタンの上位レベルのスキルに繋げた時にはコンボとなり、 10%ずつダメージが向上するという仕掛け(同じ技を続けても、ダメージは増えないけどコンボは途切れない)。 面白いのは、戦闘中のAPの最大値は、通常時の2倍となっていて、そのターンで使わなかったAPが次のターンに引き継がれるという仕様。 コンボを繋げた方がダメージが大きくなるので、APを溜めて一気に攻撃した方が、ダメージ効率的には良くなる。

  この戦闘は結構面白くて楽しい。 近接攻撃のリュウ、遠距離攻撃のリン、属性攻撃である魔法を使うニーナという性能差も良いし、演出も悪くなく、テンポもそんなに悪くない。 バランス的にもヌルすぎず、かといって、竜の能力に頼らないと絶対勝てないようなものもない(はず)。
  ただ残念ながら、絶賛に値するようなものでもなかったりする。
  一番マズいのは体力回復の仕様だろう。 このゲームでは、アイテム以外に体力回復手段が存在せず、 そのアイテムの使用には制限がなさすぎた(遠くの味方に対しても使えるし、アイテムの数以外には消費する要素もない)。 つまり、どんなにダメージを受けたり、状態変化をしたり、気絶状態になったりしても、 あるパーティキャラのターンになって、アイテムの数がある限り、一気に通常状態まで回復ができてしまう。
  その上、敵からのダメージを避ける手段が欠けてるのがイタい。 このゲームには防御行動がない。 さらに、いわゆるZOC的なものも存在せず、よっぽど地形的にハマらない限り、ほとんど自由に攻撃されてしまう感じがある。 実際できることと言えば、広範囲攻撃を避けるようなフォーメーションを取るくらいのことしかできない。 全体的に単発攻撃のダメージが大きめに設定されていて、 特にボス戦では、集中攻撃を受けたらほとんど即死になってしまうことがほとんどなんだけど、 それを察してか、一気にひとりを集中攻撃することはなく、なぜか攻撃をバラかしてきてくれる。 手加減なのか、ただのアホなのか。
  よってボス戦(特に、持てるアイテム数に余裕がでてくる終盤)では、とにかく回復薬を十分に持ってるかだけに集約され気味。 それ以外にも、状態&ステータス変化攻撃はほとんどボスには通用しなかったり、 自身のステータス変化はどうも解消できないっぽかったり、沢山あるスキルも実際に使えるものは少なかったり・・・。 第一印象に比べると、意外にその戦略性は低め
  敵の動向が情報不足なのも痛い。 こういう戦闘であるなら、最低限、敵のAPとその使い方は明示するべきだった。 実際プレイして覚えろっていう姿勢も嫌いじゃなかったけど、 敵の移動力、攻撃範囲、使える魔法なんかも、基本的にはプレイヤーに提示しちゃった方が良かったんじゃないかな。
  また、難点というほどではないにしろ、細かいプレイアビリティ面には改善の余地アリ。 基本的な攻撃時のテンポは、最悪という程ではないにしろ、 良いとは言いがたいところがあって(とりあえず、似た感じの『サクラ3』にはかなり劣る)、 特に同じ魔法の重ねがけが多くなるニーナはテンポが悪い。 もっと先行入力が利くようにしてしまっても良かったかもしれない。で、重ねがけはビジュアルを変えて一括処理してしまうとか。 APが足りなくて行けない場所まで動けてしまう仕様も謎。しかも、そういう場所では動きが遅くなってしまう。 んなの、最初から行けなくすりゃよかったろうに・・・。 そうすりゃ、(その必要性はどうあれ)AP0ギリギリまで移動なんてのもラクにできたはず。 一部、地形が見辛い場面も。ここらへんも、できれば半透明処理をしてほしかったところだったりする。

  ゲーム全体の流れという意味では、一応、街的な場所はあるものの、そこに戻ってはダンジョンに潜って・・・という形ではないし、 回復アイテムが重要な上に、持てるアイテム数、装備品数共に制限があるので、道中にある、お店というか販売員の配置に左右されすぎな感がある。 その店が、鑑定&保管庫、アイテムショップ、装備品ショップと分かれてて、必ずしも全部が揃って配置されてるわけじゃないのも疑問。 また、この販売員が世界観を壊し気味なのも気になる。 鑑定&装備品ショップはあまり必要とは思えなかったし、保管庫はアイテムボックス的に、 ショップは自動販売機的なものにすれば良かったんじゃないかな。
  背景が結構描き込まれているんで、 個人的には、オブジェクトを調べてそれに対してキャラがコメントするような要素があると、もっと世界観が上手く表現できたんじゃないかと思う。

  ストーリーは、世界を陰で支配する存在、 運命に定められた主人公の動きなどなど、一昔前なら“エヴァンゲリオン風”とでも言われそうなタイプか。 主人公の必死さ・懸命さ、パーティの悲壮感の表現に物足りなさはあったし、SOLを前提にしてることによってわかり辛い部分もあるんだけど、 かつて主人公の同僚だったエリートレンジャー「ボッシュ」の絡みであるとか、 全体の構造・シチュエーション設定の上手さなど、概ね面白かったと言える。 音声がない割に、イベントシーンも淡々としたものだけではなく、 時には淡々としたところを逆に利用しながらも、盛り上げる時にはシッカリと盛り上げる。 見難くならない程度にかかっている、画面全体をザラつかせたようなエフェクトもゲームにマッチしてた。
  ただし、個人的には最後のオチには不満大アリ。 あの最後によって、全てが軽くなってしまった。 まぁ、その好き好きはどうあれ、本来ならああいうことにしても、分岐で変わるような作りがベターだったんじゃないかな。 また、最後にきて全てがムービーになってしまったのも非常に残念。 いきなり音声がついたり、キャラの等身が変わったりと、これまでのプレイとのギャップを感じざるを得なかった。 地上の描写とかでムービーの方が有効と思える部分もあったけど、全体的に考えればプラスとは思えない。
  そのことにも通ずる、ストーリーというかイベントシーンで気になった点は、キャラクターの異常な等身の小ささ。いわゆるデフォルメ。 表情の演技がそこまで多彩なわけでもない(つまり、デカい顔が効果的ではない)し、 体のセンの細さと顔の大きさにギャップがあって、一般的な印象も芳しくないようだし、 だったら、ヘンにデフォルメする必要はなかったと思うんだけどな。 イベントシーンのモーションや、背景の描き込みはシッカリしてるわけで、 せめてキャライラスト程度の等身、できれば現実に近い等身でも、普通に通用したんじゃないだろうか。 エンディングムービー程度のキャラで良かったじゃんか、と。 ちなみに、虚ろな表情自体は、独特のテイストということでむしろ評価したい部分。
  リンのコスチュームもなぁ・・・。 ネコ耳型(というか、シルエットがネコ耳)な帽子といい、足と同じくらいの長さがある尻尾の(多分)飾りといい・・・。 話によると、これまでのシリーズから引き継いだ部分らしいんだけど、非常に場違いだと思う。 新しいことをやろうとしたんだから、つまんないところで従来のファンに媚びてもしょうがないだろうに。
  音楽はどうなんかな・・・。 悪くはなかったんだけど、ゲーム全体の印象と比べると、ちょっと従来のRPG的すぎな感じも。 音楽にも、もっと尖がったものがほしかった。

  細かい部分では、右スティックでの視点操作の左右が、 自分の感覚と(っていうか、ちょっと前にプレイした『ガレリアンズ:アッシュ』『ダーククラウド』と)逆だったのも、 やってるうちに慣れたとはいえ、やはりツラかったところ。 視点上下のリバースだけじゃなく、この操作のリバースも基本的な仕様にしてもらいたいんだよなぁ。
  そして、ホントに極々細かいところなんだけど、最後のスタッフロールにコダワリが感じられなかったのも残念。 鬼束ちひろの曲をバックにして良い雰囲気があったのに、 テキストだけで構成され、しかもそのフォントの選択&使い方にセンスが感じられず、微妙に萎え気味だった。


  とにかく惜しい。まさに名作になり損ねた一本。 設定に特色があって、システム的にも面白かったのに、各所に詰めの甘さが目立つ。 それでも、3D化の価値は十分に感じられたし、 評価したくなる魅力を持ったゲームなのも確かなわけで、それだけに、やはり惜しい。 世界観は共通でも、こういう設定ではもう作れないだろうしなぁ・・・。

2002年11月30日記載