REPORT怪盗スライ・クーパー
PlayStation2
2003年3月6日発売発売:SCE  開発:Sucker Punch  

  北米では昨年9月に発売済みのタイトル(原題は『Sly Cooper and the Thievius Raccoonus』)で、 残念ながら国内ではかなり埋もれてるっぽい海外メーカー製作の3Dアクションゲーム。 ちなみに、日本版ではテーマ曲に東京スカパラダイスオーケストラを起用したり、デザイン的にも海外版と変わってるところが若干あるらしい。 とりあえずパッケージは、スライ・クーパーのシンボルマークを前面に出した海外版の方が、圧倒的にイカしてるが。
  開発を担当したSucker Punckは、この『スライ・クーパー』が2作目という比較的新しいゲームメーカーだ。


  ゲーム内容は比較的オーソドックスな3Dジャンプアクション。 左スティックでキャラの操作、×でジャンプ、□で杖を使った攻撃というのが基本。 ○はオールマイティな感じのアクションボタンという設定で、状況に応じて、細い棒にしがみついたり、 杖をフックのようにワッカに引っ掛けたり(で、プランプランと振り子のようにしてジャンプ)、物陰に隠れたりなどの、自称「怪盗アクション」を行うことになる。
  このゲームでは「ルート」と称されているいわゆるステージは、 5つのワールドに分かれていて、変則的な最終ワールドを除いて7つの通常ルート+ボスステージという作り。 各ルートは箱庭タイプではなく、『クラッシュバンディグー』シリーズのような一本道スタイルで、 ゴールに辿り着くとそのワールドのボスステージへ行くのに必要な「カギ」がゲットできる。 それ以外の要素としては、各ステージには数十個の「ボトル」が用意されていて、 それを全て壊し、ステージ内にある金庫のところに行くと、「スペシャルアクション」がゲットできたりという要素も。
  このスペシャルアクションはちょっと変わってて、各ボスを倒したときにゲットできるスペシャルアクションを除けば、 ゲームクリアに必須というものではなく、突進攻撃だったり、転がって移動できたり、スローモーションになったりという内容で、L2、R2で選択、△で発動するというもの。 必ずしもゲームクリアに必須じゃないお助け能力っていうアイデアは悪くなかったんだけど、数がある割には咄嗟に選びにくい操作性に加えて、 そのほとんどがビミョーすぎる能力ということで、使う機会はほとんどなかったのが実情。
  ただし、機能してないスペシャルアクションを除けば、なかなか面白いアイデアが盛り込まれたアクションゲームになってると思う。 意外にもこのゲーム、“怪盗”ってのはあくまでもアクションゲームへのエッセンスであって、 “怪盗”ありきのゲームにはなってないんだけど、それはそれで上手く消化できてるんじゃないだろうか。 ジャンプ中にアクションボタンを押すことで狭い足場に自動的に着地してくれる(で、その後は細い足場を踏み外すことなく歩ける)能力や、 前述の振り子ジャンプや細い棒をよじ登るアクションなどによって、スリリングに見せたり、 敵の見張りをかいくぐっていかせるように見せたりというステージ構成は、なかなか工夫されて作られている。 進み方としては一本道なんだけど、作りとしては箱庭っぽくなってるステージデザインも上々。 雑誌レビューでちょいちょい見かけた「新鮮味が無く、最近このテのアクションゲームは食傷気味なこともあってイマイチ」的な評は、 ちょっと可哀想に思えるな(つか、食傷気味になる程良作のアクションゲームなんてそんなにあったか?)。
  それぞれ一工夫あるボス戦も悪くない。 特に、DC『スペースチャンネル5』を思い出させるとあるボス戦にはややウケ。 ゲーム形式もそうだし、何より(意外に独特な)テンポも“まさに”って感じで、結構楽しめた。

  ・・・かといって、このゲームが“オーソドックスに丁寧に作られてるアクションゲーム”なのかっていうと、 ちょっとそういうイメージとはズレてしまうんだな、これが。
  操作感での一番の問題は視点操作だろう。 毎度毎度のことながら、視点ってのは難しい要素なんだけども、このゲームは特に酷い。 最大の難点は、右スティックの視点操作が左右にしか動かせないこと。 つまり、自前ではカメラを上下に動かせないわけで、 周りを自由に見渡すには、L1(orR1)で移行するビジョンゴーグルモードを使わなくちゃならない。 ある程度自動で視点を調整しようという意向は汲み取れるものの、それで全てをまかなえるようなゲーム内容ではないし、これが実に不自由だった。 さらに右スティックによる左右のカメラの動きも重たく使いづらい上に、R3ボタンに割り当てられているいわゆるカメラリセットは、 瞬間的にキャラの背後にカメラが移るタイプではなく、右スティックで行う操作を代わりにコンピュータが行ってくれるというだけのもので、 動きはモッサリとしてるは、カメラは背景に引っかかるわで、ほとんど使い物にならない。
  クセがある2段ジャンプ(高さはほとんど変わらず、距離が伸びるだけ)も意外に厄介で、慣れが必要だし、 個々のアクション、ステージのギミックのアイデアは面白かったんだけど、それが上手く組み合わさってたかっていうと、不満も残る。 例えば、ボス戦後にゲットできるスペシャルアクションでは、それによって以前のステージの行動範囲が広がるような仕掛けが欲しかったし。
  さらに、このゲームのシステムで最も不細工だと思うのが、バリア&残機の仕様。 こういうゲームでは結構珍しく、ゲーム開始直後すぐにゲットできるバリア的な要素はなく、ミス=即死という形になってる。 初期の『クラッシュ・バンディクー』のようなデジタルテイストならまだしも、そういうゲームじゃないと思うんだがなぁ・・・。 んで、ステージ中にある金貨を100枚集めると、オメガシールドという1回だけミスに耐える(設定的な説明が全くない謎の)バリアが付き、 その状態でさらに金貨100枚集めると、ゴールドオメガシールドというミスに2回耐えるバリアに、その状態でさらに金貨100枚集めると、残機が1UPする。 面倒臭っ!と思わせといて、実は最初のワールドの開始直後に、オメガシールドと1UPをゲットすることができるので、 特に残機はここに出たり入ったりするとラクに増やすことができる。 金貨関係のシステムが全く浮いちゃってるじゃないか・・・。 ただ、ステージ中に死んで再開すると当然シールドがないわけで、思わずまたミス=即死を繰り返し、一気に残機が減ってしまうことも。 その状態でミスを繰り返すと再開時にシールドが付いてくれるというフォローも、 全く説明が無い上に、かなり取ってつけたような感じだ(もしかしたら日本語版の独自仕様か?)。 んでも、ステージ自体はそんなに難しいわけじゃないんで、結構死ぬ割に、“アッサリ、簡単”そんな印象が残る。 細かい芸が光るミニゲーム的なステージはいずれもゲーム的にもうひとひねり足りなく、どれもアッサリすぎるし。
  淡白な戦闘は良し悪しかなぁ。 結果として、そのお陰でヘンに戦闘重視にならなかったのは良かったんだけど、 “最初の攻撃を避けて攻撃”っていうあまりにもなワンパターンさはさすがに問題に思える。
  その反面、ボトルを全て集めて金庫を開けた後にプレイできるようになるタイムアタックモードは、 ノーミスで普通にノンストップに進んでいっても時間切れになってしまうという異常な難しさ。 アッサリとしたゲーム本編をフォローしようとしたのはわかるが・・・。 そもそも、スピード感に乏しく、ショートカットできるような自由度が無いこのゲームは、果たしてこういうタイムアタックに相応しいゲームだったのか、と。 せめて、スペシャルアクションにタイムアタックを手助けするようなものがあれば、全体的なゲームの作り方として理解ができたんだけども。
  総合的に言えることは、難易度バランスの味付けが下手っぴということに尽きる。 難易度を上げるべきじゃないとこで難易度を上げ、簡単にすべきじゃないとこを簡単にしてるという。

  丁寧なローカライズ自体には好感が持て、日本語音声のチョイス、セリフ内容も概ね悪くないが、 主人公スライを追いかける女刑事「マルガリータ」 (要するにルパン三世の銭形警部に相当)の音声に、元宝塚の真琴つばさ(声優初挑戦)というワケワカラン起用をしたことには疑問極大。 おそらく男役の人なんだろう、その太目の声は男勝りのマルガリータにうってつけ!とか思っちゃったことは容易に想像が付くが、 これがカートゥーンキャラには全く見合わない可愛げの無さ。 ゲームを魅力的に仕上げる重要なパーツだっただけに、かなりダメージは大きい。
  ステージ内のグラフィックはかなり丁寧に描き込まれている。動きのあるオブジェが多いのもグッド。 ただし、ジャギー&チラツキが目立たない反面、その為に全体的に残像処理をしてるようで、 それが逆に鬱陶しく感じられてしまうこともあるし、フレームレートも安定感に欠ける。
  各キャラクターには枠線が付いてるけど、いわゆるトゥーンシェイディング処理はナシ。 ゲーム中はボチボチって感じだけど、イベントシーンになると表情がイマイチなのが気になるところ。 スライがイマイチ魅力的じゃないのは特に目の演技が弱いからってのが大きいと思うし、 カルマリータの音声がイマイチに感じられたのも、その動きに魅力が無いから余計ってのもあるんだろう。 敵キャラ、特にラスボスは魅力薄&迫力無し。
  一方で、ムービーのアニメは良く出来てて、海外アニメっぽい独特のテンポが実に楽しい。 エキストラムービーってことで日本アニメ調バージョンも一部収録されており、こちらは日本語音声しか用意されていないので、 もしかしたら最初は日本向けにはコレを使うつもりだったのかもしれないけど、これをボツにしたのは好判断と言えるだろう。 各ワールド開始前に出るサブタイトルの画面も凝っててナイス。 ここらへんのテイストが、ゲーム本編のグラフィックにも反映されてればなぁ。


  人に薦められるような内容ではないけど、ヘンに戦闘などの色が強くなっちゃってた他のPS2のアクションゲームに比べると、 アクションゲームらしいアクションゲームとして、個人的に好感は持てた。 もうひと工夫、もうひと手間、そういう期待を持って次回作を待つことにする。

2003年4月28日記載