REPORTDeus Ex 日本語版
PC
2000年6月26日発売
日本語版 翌年2月9日発売
発売:Eidos Interactive  開発:Ion Storm  

  時折RPGにジャンル分けされることもある主観視点ゲームで、かなり前から名作という噂は耳にしてたんだけど、 後になって、かつて自分がAT互換機でPCゲームをプレイしていた時期のPCゲームマイベスト3の中のひとつである 『System Shock』(ちなみに、他の2本は『Myst』と『Doom』)に大きく関わったゲームデザイナーWarren Spectorが開発の中心となったという話を聞き、 いよいよ興味が募っていた一本。
  英語版なら\2000もしないで手に入ったんだけど、会話や文章量が多いゲームという話だったので、 定価近くで日本語版を購入してのプレイとなった(でも、その直後、日本語版が約\2000でセールになってるのを発見・・・)。


  舞台はテロの猛威が吹き荒れる近未来。
  プレイヤーは国際対テロ組織「UNATCO(国連反テロリスト連合)」の最新鋭のサイバネティック強化エージェント「J.C.Denton」となり、 対テロミッションに次々と携わっていくんだけど、物語は意外な方向に展開していき・・・。

  ゲームの概要を一言でいえば、近未来を舞台にしたサイバーパンクFPSとなる。 ただし、FPSと言ってもそのゲーム内容は一般的なFPSとはかなり異なり、自キャラに成長要素があり、一本道に敵を撃破していくような内容でもない (ストーリーの流れ的に、全く戦闘がない場面が続くこともある)ので、前述の通り、RPGと言われることもあると。 主観視点で進行するSFRPG(あるいは戦闘があるADV)ということで、まさに『System Shock』の後継的ゲームとも言える。
  基本的な操作は一般的なFPSとほぼ同じと考えてよいだろう。 概ね操作性に問題はないんだけど、覗きこみが使い難い(実際に体の位置も動く仕様なので、ミョーに壁に引っかかったりする上に、 敵からもバレバレ気味なのでイマイチ使えない)のと、 ハシゴを上りきった時の操作性(本当に上りきるまで上を向いている必要がある感じで、 勢いよく上ってる時はまだしも慎重に行動したいときは、なかなかスッキリとハシゴから上りきってくれなくて困る)にはやや難アリ

  このゲームの特徴である成長要素は、主に「Skill」「Augmentation(Aug)」の2つからなる。 好きなときに「スキルポイント」を消費して4段階にレベルアップ可能な全11種類のSkillは、常に効力を発揮する恒久的なパワーアップ。 スキルポイントは戦闘などで得られるものではなく、ゲームの進行的にある地点を通過したときにもらえたり、 隠し(的な)部屋、隠し(的な)ルートなどを通ったときにもらえたりというもの。 つまりゲームを通して得られる量には限界があり、その量も多くないので、最終段階でもレベル4のSkillとなると1、2つといったところ。 Augは「Augmentation Canister」というアイテムを「MedBot」という医療用ロボがある場所で使うことによって習得する能力で、 各Augの能力を各ファンクションキーでON・OFFの切り替えて使い、使用中はBioelectric Energyを消費していくという一時的なパワーアップ能力。 体の9箇所にAug用のスロットがあって、そのそれぞれにAugを組み込むときに2種類の能力のどちらかを選ぶというのが変わってる点で、 つまり、全18種のAug能力があり、実際には最終的に9種類のAugを使うことになるわけだ。 このAug能力がバラエティ豊かなのはいいんだけど、 全体的に使えるAugと使えないAugがハッキリ分かれる(というか、特定のAugが便利すぎる)感じがあるのが残念な点。 もうちょっと選択を迷わせるようなAugを増やして欲しかったな。 また、Augは大体決められた順番でゲットしていくことになるので、 それによってもAugの使える・使えないが出てきてしまうのも勿体なかった(確かに、じゃないと収拾がつかなくなってたろうけど)。 さらに、この能力もかなり希少な「Upgrade Canister」というアイテムを使ってやはり4段階のレベルアップ(アップグレード)が可能なので、 さらに取り付けたAugの中でもある程度の取捨選択が必要になってくるわけだ。 このSkillとAugmentationの選択によっては、ゲームのプレイスタイルと難易度が大きく変化することになる。
  往々にして、成長要素が加えられたことにより、そのゲーム本来の面白みが削ってしまったなんてことがあるんだけども、 このゲームの場合、“成長要素=ゲームをラクに進むための手段”というより、 “成長要素=プレイの幅”という側面が極めて強いのが特徴になっているので、そこらへんの心配は無用。 この作りが、このゲーム最大の特徴と言えるだろう。
  目的に達するまでの大まかな道のりにしても、 目の前の仕掛けをクリアする方法(レベルデザイン、戦闘)にしても、かなり幅がある作りになっている。 特に後者は、理想とされながらもなかなか実現が難しい点だけに、かなりポイントが高い。 例えば、発見されるとアラームがなる監視カメラがあるとする。 そこで、どこかでパスワードを入手してセキュリティコンピュータをハッキングするも良し、 監視カメラに直接細工をするもよし、別ルートを探すもよし、それを無視して突き進むもよし、と。 全編にわたってそういう作りが散りばめられている。 で、それらをより際立たせるための成長要素とも言えるだろう。
  そのお陰で、このテのゲームにしては珍しく、1度クリアしても2度目、3度目と楽しめるゲームに仕上がっている。
  ちなみに今回の自分のプレイスタイルは、スナイパーライフルによる狙撃をメインにしたもので、 優先して上げていったSkillは「Computer」と「Weapon: Rifle」、特に重宝したAugは「Spy Drone」「Speed Enhancement」「Regeneration」というものだった。

  このゲームの戦闘は、個々の戦闘のバランス、大局的なバランス、共に一般的なFPSとはかなり異なっている。
  Skill、Augによってプレイスタイルが全く変わるというのが、もちろんまずひとつ。 さらに、持てるアイテム数には30個という制限があり、普通にプレイするとその半分以上を銃器以外のツールや薬、手榴弾などで占めることになるので、 小型銃器などはまだしも、アイテム4つ分のスペースが必要なショットガン・ライフル等の中型銃器、 8つ分のスペースを取るロケットランチャー等の大型銃器などは、自然と持ち運べる数に限界が出てくるし。
  また、発射即着弾な攻撃が多い上に、自分の動きが若干重ためなこともあって、 ロケットランチャーのようなものでも、真っ向から避けるのは難しく、見てから避けられるような攻撃はほとんどない。
  その上、無限に回復できる医療用ロボや、体力回復用のAugが用意されている反面、回復薬は全体的に少なめに設定されている。 Armor、Healthという2段構えではない(時間制限があるArmorは存在するけど、一般的なFPSのArmorとは全く位置付けが違う)上に、 体力は部位制になっており、ダメージを受けるたびに移動が遅くなる、狙いが付けづらくなるなどのマイナスを受けるどころか、 頭部、胴体の体力がゼロになるとその場で死亡。 真っ向勝負でラクに戦える相手はほとんどいないし、 (特にAug:Regenerationを手に入れるまでは)真っ向勝負を続けていてはとても体力回復薬が持たない。
  その代わりというか、ボス的な存在はそんなに強くなく(Aug:Cloakで姿を消して後ろから斬りつけたら終了とか、遠くから狙撃で処理とかも可)、 ゲーム的なボスキャラというよりも、あくまでもストーリー上の重要人物って感じの作りになっているし、 戦闘の難易度も、ゲームの進行と共に上がっていくという感じをあまり受けない。
  一点、残念だったのは、こういう路線のゲームにしては敵AIが若干雑に感じられるところ。 戦い方に工夫はないし、警戒モードと通常モードの切り替えもちょっと不自然だし、 銃声に対する反応が正確すぎるし(遠くから狙撃しても撃った瞬間に位置がバレちゃうっぽい)、と。 敵の種類(&個性)もそんなにバリエーションがあるゲームではないんで、戦闘そのものに関しては、若干淡白な印象も残る。
  戦闘以外の難易度という面でも、やや鷹揚に欠けるところがあり、SkillやAugが充実してくる後半の方がむしろラクなような・・・。 ただ、ここらへんは難しいところで、 例えば、自分が重宝したSkill、Augで全く違った選択していたら・・・と考えると、かなり苦労するのは目に見えているんだけども。 個人的に「ちょっと便利すぎるかな〜」と思ったのが、パスワードなどが必要なくコンピュータにハッキングできちゃうSkill:Computer、 (ドアなども含めて)かなりのものを叩き壊せちゃうレーザーソード、メカ系の敵をほぼ無効化できてしまうAug:Spy Droneなど。 特にコンピュータへのハッキングは、コンピュータごとの個性がない上に楽すぎる感じ。

  グラフィックは、広い空間の描画が得意と言われるUnrealエンジンが採用されている。 一昔前のゲームということで、当時は割と重い部類だったらしいこのゲームも、かなりサクサクと動いてくれる。 それでも自分が解像度800×600でプレイしたのは、処理が重くなるとか以前に、1024×768では文字が小さくなりすぎて困るからだったりするので、 高解像度への対応にもう一工夫ほしかったところではある。 で、確かに、リアルなスケール感で構築されたマップの構造は広い上に立体的と、極めてよくできており、遊んでて楽しいわけなんだけど、 グラフィックの質そのものは、「古い割には綺麗だ」そんな印象が残った『Half-Life』とは違い、あくまでも古いゲームなりという印象。 オブジェの数(&テクスチャのバリエーション)が少なく感じられ、閑散としてるというか間延びした空間が目立つのは、 構造物のスケールがリアルなため空間が広くなってる結果として、やむを得ないところだろう。 暗めの似たような色調の場面が続くことも、そこらへんの印象を強めてるはず。 ただ、色調に関しては統一感・個性ということでむしろ好印象だし、いかにもアメリカンなバタ臭さが全く感じられないメカ系デザインも良好なので、全体的な印象は悪くない。
  激シブな主人公J.C Dentonの声は実に印象的で、自分がプレイしてきた中で最もシブい主人公のひとりと言える。 しかも、“シブくてウィットに富んでクール”っていうキャラではなく、“シブくて知的で謙虚”というのが実に良かった。 そんなDentonが、テロ組織、反テロ組織共に一筋縄ではいかない、巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく。 政治、思想、テクノロジーなどを絡めたストーリーは、いかにも海外SFらしい理屈っぽいところがあるものの、 基本的に上々で面白く、特に終盤は大いに盛り上がる。 あえて言うなら、Denton以外のエージェント(同系サイバネィックエージェントである兄ポールや、 ライバルっぽい存在になる旧型でメカ丸出しのサイバネティックエージェントなど)にも、もうちょっと話に絡んできてほしかったところではある。

  最後に英語について。
  今回プレイしたのは日本語版ということで、セリフには日本語字幕がついてるし、ポーズメニュー内の情報や、ゲーム中のEメールも当然日本語化されている。 文章量自体はかなり多めな反面、字幕がついている(であろう)し、リアルタイムでヒアリング能力が試されるような場面はほとんどないので、 「これだったら英語版でもよかったかな・・・」と思ったりもした。 また、世界観&ストーリーの補完的な役割の(つまりゲームプレイそのものを左右しない)テキストが多い(実在の小説の一説が読める本とかがかなり散りばめてある)上に、 重要な会話・文章はポーズメニュー内に記録されていくし、今の目標、目的もチェックできるので、 英語力のなさによって詰まるようなこともないはず(もちろん、限度はある)。
  まぁ、売っていれば日本語版も安く売っている可能性があるので、ムリに英語版をプレイする必要はないだろうけど。


  『Half-Life』とはまた違った路線の傑作なのは間違いない。 最近のゲームに対して自由度が云々という文句はよく耳にするわけだけども、 自由度とゲーム性がこれだけ高いレベルで融合したゲームというのは、ちょっと他に思い当たらない。
  ただし、自分の場合は作品の世界観にシビれた部分も大きい。 物語は理屈っぽいし、『Half-Life』と比べると分かりやすい劇的な面白さという面では弱いので、 万人に対して激しく薦められるゲームかっていうと疑問ではあるんだけど、それでも、ゲーマーには是非オススメしたい一本だ。 っていうか、日本のゲーム製作者にプレイしといてもらいたい一本だなぁ。

2003年5月18日記載