REPORT探偵 神宮寺三郎 Innocent Black
PlayStation2
2002年10月24日発売発売:ワークジャム  

  FC時代の4作、PS(&SS)時代の5作目『未完のルポ』、6作目『夢の終わりに』、7作目『灯火が消えぬ間に』に続く、探偵神宮寺三郎シリーズの8作目。 データイーストが倒産し、その継続が絶望視されていた探偵神宮寺三郎シリーズなんだけど、『クロス探偵物語』のワークジャムの手によって復活ということになった。 一応、昔のスタッフが集まって作ったらしい。


  ・・・なるほど、大した進歩がなかったわけだ。 形式的には、オーソドックスと言われたDC『ミッシングパーツ』なんかより、さらにオーソドックスというか古典的なコマンド選択式ADV。
  前作にあった時間の要素もなくなっちゃたし、前々作まであったザッピング要素もなし。 例えば推理シーンで間違った選択をしても「いや、そうじゃないな・・・」と勝手に自省して思いとどまってくれるという、 ゲームオーバーすらない極めて一本道な内容。 さすがに基本的なコマンドは「見る」「話す」「タバコを吸う」程度に簡略化されたけど、 どうでもいいところまで見れたり(調べたり)するというのは、いかにも古臭いADVといった感じ。
  主に、手描き風のバストアップのキャラ絵&実際の風景を写真で取り込んで若干平面的にしたような背景画で進行し、 こういうシーンでは基本的に音声はなく、テキストメインでゲームが進んでいくものの、それらの使い方は極めて平凡。 また、部屋を探索するシーンでは、今となってはほとんど見られなくなった、一枚絵をムービーで繋ぐという『Dの食卓』みたいな形になるし、 重要な場面では、そのバストアップキャラと同じ絵柄の手描き風キャラがアニメーションするムービーシーン (要するに前作、前々作のオープニングムービーみたいな感じ)が挿入される。 このイベントシーンは結構量が多く音声付なので、これまでのシリーズに比べると、かなり音声の比重が高い印象は受ける。
  キャラクターのグラフィックは、パッと見のスクリーンショットからすると、 そういう意味では一番評判が良かったであろう6作目『夢の終わりに』に近い感じを受けるんだけど、実際に見るとかなり別物。 筆っぽい質感ではなく、線自体は細く、単調で、硬い。 デッサン的に「んー・・・」というとこも若干目に付き、一言でいえば“表現力不足”だと思う。 自分が言うのもなんだけど、「これは下手ってことなのでは・・・」と思うことがちょいちょいと。 今回はそのままの絵柄が動くムービーのシーンも結構あったりするので、 このキャラグラフィックの基本的な表現力不足は、実はかなり痛恨だったりする。 ただし、フォントも含めたインターフェースなどのデザインは良くまとまっててグッドだった。
  テキストは平凡。 テンポに緩急を付けるような仕掛けもないし、セリフなどに上手さを感じさせる場面もこれといってなかった。
  ジャズ調のBGMは、まぁ題材なりに無難なところだろう。悪くない。
  ゲーム的な分かり易い難点は、探索シーンの作り。 前述の通り、いわゆる『Dの食卓』形式で、フルポリゴンで自由に見回れるとかであればまだマシだったんだろうけど、 横を向くのにも(ワンテンポ置いてから)ムービーが流される仕様なだけに、 これが思いっきりゲームのテンポを崩しているし、動ける場所とそこから調べられるものが若干把握し難く、融通が利かない。 その上、その探索が単純でつまらないとあっては・・・。
  表現の手法という意味で気になったのは、ボイス重視なのかテキスト重視なのか、そこらへんをハッキリさせてほしかったということ。 というか、これだけ音声を使うのであれば、(ムービーなんぞに容量を費やすんじゃなく)通常の場面でも音声付、つまりフルボイスを目指してほしかったな。 ギャルゲではそれを実現してるゲームが多いわけで。 労力以上にゲームのテンポが崩れることを心配してるのかもしれないが、大丈夫、今回の探索シーンほどはテンポを崩さないはずだ。 本作のような形だと、どうしてもムービーシーンでプレイヤー置いてきぼりな感じが際立ってしまうと思うし、 そこらへんをゲームに馴染ませるような工夫の余地はいくらでもあるんじゃないだろうか。 また、神宮寺の声に比べると、洋子の声は若干軽すぎる感じも。
  まぁこういうゲームの作りに関しては、 (良くも悪くも平凡の一言で片付けて良いと思う。

  んで、肝心のシナリオについて。
  事件の構図自体は、やはり平凡といってよいだろう。 事件そのものに関しては、プレイヤーの虚を突くような驚きの展開は皆無といっていいはずで、かなり早い段階でその全容が想像できてしまう。 それはそれとして、それを彩るドラマ的な部分が充実してれば良かったんだろうけど、 その人物描写が極めてずさんなのが、かなり致命的。 犯罪を犯す側の大部分は全くドラマのないただのワルモノだったし、ドラマをもっと描くべき重要人物も、その描き方が非常に淡白。 人が安易に殺される割には、そこまでのその人物の描写が淡白なので、全く心に響かず。 人を殺せばドラマチックになるだろうという、逆に最近なかった安直さを感じる。
  とにかく、クリアしても話の軸が全く見えてこなかったんだよなぁ。 本来なら殺人鬼がドラマの中心になってくるべきだと思うんだけど、特にその周囲の描写が淡白で、 軸にはなり得てないし、ラストからすると軸にしたかったんであろう、神宮寺と洋子の関係も、 そもそも今回の事件への洋子の関わりがそんなに大きくないだけに、どうにも浮いてる感じ。 明らかに“to be continued”なそのラストも、このシリーズの次の展開が見えない現状ではいただけない。 つか、“この売上げ如何でこの先の展開を考える”程度の意気込みだったのなら、こういうラストにするべきではなかったと思うが・・・。

  逆に言うと、ドラマ部分に自信がないのなら(まぁ、自信はあったんだろうけど・・・)、 もうちょっと事件の構図をヒネってほしかったし、インタラクティブな作りにしてほしかった。 ワークジャムが手がけるということで、多くの人が期待したのはそういう部分だったんじゃないかな。
  自分のプレイ時間は7時間弱。 プレイにそう幅があるゲームでもないんで、誰がプレイしても多かれ少なかれ近い時間になるんじゃないだろうか。 その上、探索シーンでムダに時間を取られた印象があるので、さすがにこれはボリューム不足に感じられた。 同じプロットでも、人物描写を増やすだけで随分マシになったと思うんだけどな・・・。
  最後に、L1・L2が決定・キャンセルに割り当てられていて、片手で操作可能なのは、こういうADVでは嬉しいところだった。


  開発時には「神宮寺の人間的な弱さを描く」「神宮寺と洋子の関係をつっこんで描く」と言われていて、 「オイオイ・・・」と思ってたんだけど、終わってみればなんてこたない内容だった。 ある意味、神宮寺らしい凡作。 “神宮寺らしい(神宮寺を生かした)佳作にすらなり得てないのが残念なところで、 自分のイメージでは、 『灯火が消えぬ間に』≧『夢の終わりに』>>『Innocent Black』>『未完のルポ』 って感じだ。せっかくの復活がこれではなぁ・・・。

2003年5月28日記載