REPORT天誅 参
PlayStation2
2003年4月24日発売発売:フロムソフトウェア  開発:K2  

  この『天誅参』開発に関するゴタゴタは記憶に新しいところで、要するに『天誅』『天誅弐』と開発したアクワイアの知らぬ間に、 北米でこのシリーズの(そして国内でも『天誅弐』の)パブリッシャーとなっていたACTIVISIONに開発権が譲渡されてしまったという話だったはず。 んで、この開発メーカーK2は、この『天誅参』を開発するために立ち上げられたデベロッパーということになり、 前々から「そんなトコに開発任せて大丈夫?」みたいな言われ方を随分されていたタイトルでもある。
  ちなみに、なぜか国内販売はフロムソフトウェアが行ってるんだけど、ここらへんの経緯は謎。


  敵に気付かれないように背後から近づき一撃で仕留める「忍殺」を狙ってステージをプレイしていく、 第三者視点のステルスアクションという点は、当然のように変わらない。
  “とりあえず前作は無かったことにして”的な立場がかなりハッキリと現れた形になっており、 前作で変更されたり追加された要素は、概ね元に戻された。 前作では足場の淵にしか掛けられなかった鉤縄は、どこにでも掛けられる初代のような形に戻ったし、 刀をしまえたり、敵の死体を動かせたり、敵の死体から忍具をゲットできたり、水中を泳げたりといった前作からの新要素はゴッソリと削られた。 彩女のコスチュームも初代っぽくなったし(まぁこれは、時系列的には『天誅弐』→『天誅』→『天誅参』となってるからなんだろうが)。 といっても、今回の鉤縄はより上を見ないと使用できないようで、 横方向の移動に使える場面はあまり記憶に無く、実際に壁に対して鉤縄を使う場面もあまり見受けられないし、 見える範囲が広くなったことからすると、その使える距離もやや短めに感じるので、結局、それほどの自由度は感じられない。 また、敵の死体を動かせなくなったり(それでも敵は死体を発見して警戒してしまう)、 水中が無くなったりという点に関しては、「そこまで無くさんでも・・・」という印象。 まぁ、実際にゲームに組み込むとなると手間がかかりそうな要素ではあるけど。
  前作からの影響となると、○ボタンでの防御、 力丸、彩女それぞれでクリアするともう一人のキャラでプレイ可能になるというゲーム形式、そして、ストーリー面での龍丸の存在くらいだろう。

  そんな中、操作面で大幅な改良が加えられたのが一番のポイントと言えるんだろう。 最大の変化は、十字キー左右で旋回、上下で前進後退という基本操作が、 左アナログスティックを使ったスティックを入れた方向にキャラが進む形に変更となったことだろう。 それに合わせて、R2ボタンが向きを固定したまま移動できる平行移動兼、敵のロックオンということになった。 ちなみに、R2による平行移動時とR1によるしゃがみ時は、右スティック左右での旋回と、FPSのような操作系になっている。 平行移動時に、時折なぜかちょっとだけ旋回してしまうことがあったり、 狭い場所をくぐる時の主観視点時はなぜか左スティック左右が旋回(右スティック左右も旋回)だったりと、ちょっとした難点もチラホラ。
  当然、それに伴って視点操作にも変更があったわけだが・・・。 とりあえず、R2と押しっぱなしで主観視点に移行するL1が、いわゆるカメラリセットに相当するというのは、アリガチな仕様。
  問題は、右スティックによる視点操作に集中している。
  最初にまず不自由に感じたのは、自前で視点を上下に動かせないこと。 直前に同じような仕様のPS2『怪盗スライクーパー』をプレイし、 「ありえないよなぁ・・・」と思ってたのに、まさか2連荘でそんなゲームに遭遇するとは。 一応、足場の端に行くと自動的に下を向いたりという自動調整はあるものの、 このゲームの方向性からして、コンピュータの自動調整に全てを任せられるようなゲームになり得ないだろうし、するべきではないと思うんだけど・・・。 壁に張り付いたときの右スティックは、キャラを左から、正面から、左から見るという3段階の視点切り替えになってるというのも謎な仕様。 結局、通常時にしても壁張り付き時にしても、L1による主観視点(この時は上下左右自由に見回せる)に切り替え切り替えという、 これまでの「天誅」同様のプレイスタイルの戻る、というか戻されるわけだ。
  左右視点回転の初速が遅いのも右スティックの使いづらさに繋がってる。 あんまりクイックに視点を動かすとユーザーが戸惑うに違いない!とか、いらん親切心を発揮したんだろうけど、 アナログスティックなんだから、ゆっくり動かしたいときはちょっとだけスティックを入れるって。 アナログ操作に完全対応をうたったゲームにしては、壁張り付き時の視点切り替え共々、実に中途半端。お粗末。
  そんな難点の上を行く一番の謎仕様は、 通常時としゃがみ時・平行移動時の右スティックの視点回転方向が逆になってるという点。 どういうことかというと、例えば、しゃがみながら右スティックを右に入れると、 視点が右の方に回転していくんだけど、スティックそのままに立ち上がると、視点の回転方向が逆転してしまう。 ・・・意味がわかんねぇよ。 しゃがみ時や平行移動時は右スティックで旋回させてるんだから、通常時もそれに合わせるのが当然だろうに。 ここは最後まで全く慣れなかった。
  操作系での最大の改良点は忍殺の発動判定の向上だろう。 今回は、敵と自分が多少上下にズレていても忍殺が発動するようになった、というか、 さらに自分が空中にいる時にも忍殺が発動することになったのが嬉しいポイント。 つまり、空中から敵に襲い掛かって一撃必殺ってなわけで、その為に用意された忍殺もカッコよく、非常に楽しい要素だった。 ただ、その発動条件はあくまでも敵との高さがズレてるということらしく、 なぜか自分が敵より低い位置にいるときも発動してしまうのが、雰囲気的にマイナスなんだけど・・・。 忍殺モーションが前作よりサッパリしてテンポ良くなったのも、当然の改善点ながら好印象だ。
  地味ながらも、レバー前×2+ジャンプボタンで行ってた大ジャンプの代わりに、 2段ジャンプができるようになったのも良い変更点だったと思う。

  戦闘は、動きが軽くなった分、前作よりはマシ、そんな程度のもの。 敵のガードが意外に固く、テンポが悪いというのは前作同様だし、 そのガードを崩すために本作から用意された投げは間合いが狭く使いづらい(逆に、敵には割とサクッと投げられて腹立たしいが)。 敵の攻撃の隙がわかり辛いのもマイナスで、見た感じはあからさまに隙があるのにアッサリとガードたなんてことが多い。 真後ろから見る敵ロックオン時の視点はどうにも敵との間合いが測りづらいのもイタいところで、 操作上、そういう視点にせざるを得なかったのであれば、リーチが意外に短く、(特に力丸は)出も遅いというこちらの攻撃をどうにかしてほしかったところだ。 奥義として身につける弾き(敵の攻撃がヒットする直前に防御で、敵に一定時間隙を作る)も、 そのお陰で作った隙に攻撃を当てることが意外に難しくミョーに使いづらくなってるし。 逆に、敵の攻撃は意外に出が早いので、ザコとの真っ向勝負は、 体力を除けばボス戦と大差ない感じで、意外に苦労させられる。 逆に、こちらも防御が利くようになってる分、ボス戦は前作よりラクになっており、 あれほどの理不尽さはなかったわけだけども、あからさまに間合いの外なのに近接攻撃を繰り出したりと、そのアホさにはやや萎える。 複数の敵との攻防もゲームになりきれてない感じを受けるものの、 そもそもそういうシチュエーションをなるたけ作らないように進めるべきゲームなだけに、これはまぁOKってところ。
  このゲームからの新要素、新仕様となると、新しい忍具と、「九字ゲージ」の存在くらいか。 敵を忍殺で倒す毎に「臨兵闘者皆陣列在前」という九字ゲージが一文字ずつ溜まっていき、 それが全て溜まると、特殊アクションである「奥義」がゲットできるというもの。 普通に天誅らしいプレイをしている分には、まず九字ゲージは溜まっていくので、奥義ゲットそのものは全く難しくない。 そういう意味では、シリーズ初体験者に対する忍殺推奨要素と言えるのかもしれない。
  各ステージの作りはそこそこ。 比較的立体的な作りにはなっており、ルートの分岐を設けたのは評価したいけど、 期待していたほど移動に自由度がないこともあって、その構成に「こんな進め方があったのか」みたいな驚きはナシ。 背景の見た目と実際の当たり判定にギャップを感じる(透明な壁を感じる)ことがあるのも×。
  事実上、制限時間が設けられたステージは、“待ち”が基本の「天誅」とあっては、それほどの旨みは感じられず。 できれば、ステージ内の一部に制限時間がある場所を設けるとか、 (忍殺以外でも)タイミングを計る場面を用意するとかして、ステージ内にメリハリをつける工夫をしてほしかったな。

  ・・・ということで、このゲームの位置付けは“『天誅』のシステムを発展させた新作”というよりも、 “初代『天誅』の改良版”と言って間違いないだろう。
  そうなっちゃった一番の要因は、敵AIの進歩・変化の無さにある。 敵AIの強化はむしろ本作のウリになるはずだった部分で、 確かに、足場を乗り越えて追ってきたりはするんだけど、その基本は変わってないように感じられる。 相変わらず、何に対して、どこを意識して警備してるんだか分からないような敵だし、上下に動くとすぐにこちらを見失うし、 足場を乗り越えるといっても、あくまでも目の前の足場を乗り越えるというだけであって、付近の地形を全く把握できてないのがアリアリ。 ひとことで言えば、あまりにも“敵キャラとしてマップ上に配置されてる”っていう感じが強すぎるし、 敵を倒す方法論っていうことでは、これまでのシリーズと全く変わり映えしない。 細かい点でも、月が見えないところで「綺麗な月じゃ」はねーだろとか、殺された味方を発見した後で「気のせいだったか」はねーだろとか。
  また、なぜか忍具の多彩さで楽しませようとしてる気配もあるんだけど、忍具には使用回数制限があり、 所持数にも限界があり、ステージ開始前に持っていく忍具を選ぶという形式となると、それには限界があるだろう。 自分の場合、体力回復薬と野犬・忍犬なら一撃で殺せ、実はボス戦でも有効な手裏剣、 人間タイプの敵を一撃で殺せる毒矢を除けば、必要性を感じる忍具は無かったし、実際に使う機会もなかった。
  ひとつのキッカケとして良かったのが奥義だ。 忍具同様、その活躍の場は皆無に等しかったんだけど、主観視点時にズームイン・アウトができる「百鬼眼」も良かったし、 何より天井に一定時間だけ張り付ける「蜘蛛居」はいかにも忍者らしくてカッコいいアクションだった。 ここらへんを充実させ、例えば奥義を使わないといけない(あるいは進みづらい)ルートを設けるなどして、ゲームに組み込んでほしかったものだが。
  また、ステージ内にもうちょっとプレイヤーが操作できる仕掛けを加えるなどして、 単なる“達磨さんがころんだ”ゲームからの脱却を目指して欲しかったな。

  また、このゲームの分かりやすい難点は、ローティングの長さ。 ステージ開始前のローディングも確かに長めだし、何より、その前の忍具選択シーンの前のローディング時間が鬱陶しく感じる。 ゲームオーバー後にも、すぐにリトライはできず、忍具選択シーンからになるのがまた鬱陶しい。 その長さそのものより、ローディングが長くなるなら長くなるでの工夫ができてないように思う。

  ストーリーに関しては、特に力丸編はなかなか。 ストーリーの流れも(特に序盤は)面白かったし、見栄えのよいイベントシーンもなかなか見ごたえがある。 それに比べると、彩女編はややイマイチ。 そもそも、1本のストーリーを力丸・彩女二人の別の視点から見るというザッピング的な作りには中途半端なとこがあって、 二人のストーリーは必ずしも100%かみ合ってるわけじゃない。 ステージ自体は全く共通(で、出発地点・ゴール・敵配置などが違う)ということで、 まず力丸編ありきで、そこに彩女編を付け足すように作られたような印象を受ける。 イベントシーンも結構重要なとこが一枚絵+ナレーションで済まされてたりするし。
  で、力丸、彩女をクリアするとプレイ可になるのが、始末屋「鉄舟」編。 始末屋ってのは、要するに“必殺仕事人”で、どこかで見たようなものばかりの忍殺シーンは結構笑える。 ステージ内や敵を倒したときにお金が出現、それをゲットしていき、 ステージ開始前の忍具選択場面では、そのお金を使って忍具を買うというのが変わってるといえば変わってる作り。 といっても、実際のところそのお金がゲームを左右することはないし、 鉤縄等の基本アクションには全く変化がないので、そこまで新鮮なプレイ感ってわけでもなかったりする。 ストーリーは本編との関係はほとんどなく、番外編的なもので、 これまでの天誅にはなかったそのノリ(って、繰り返すが要するに必殺仕事人なんだけど)はミョーに楽しい。 鉄舟編クリア後にプレイできるようになるオマケステージは、現代(近未来?)が舞台になってて、 1ステージだけじゃ勿体無いくらい背景などは描き込まれており、なかなか新鮮で楽しい(やっぱり、やってることは変わらんのだけど)。
  本編の2人はそれぞれ10ステージ、鉄舟編は6ステージ、各キャラの各ステージには3種類の敵配置が用意されているとなると、 かなりボリュームがありそうに聞こえるだろうけど、結局、ステージそのものは共通で、 出発地点とかが変わっても、やることは変わらなかったりするので、彩女編の最後の方で既に若干飽き気味なところがあった。 キャラ毎にもうちょっと意味のある(攻略法が変わるような)差別化をしてほしかったところ。 敵に見つからずに倒すのが基本だし、ボス戦はつまらないしで、3段階の難易度調整にもあまり意味が無いし (というか、難易度「難」にすると、敵のガードがひたすら固くなるだけで全く面白くない)。
  自分は未プレイながらも、ステージコンストラクションの機能を削って、対戦、協力プレイを加えたのも、好判断というか当然といったところだろう。 このレベルの(質だけでなく“広さ”を含めての)グラフィックで ステージのコンストラクションを行えるようにするのは、ちと現実的ではない(できてもロクなもんにはならない)と思う。 そんな中、対戦だけじゃなく協力プレイも考えたというのは評価できる(というか、逆に対戦モードの作り・存在には疑問が残るんだが)。

  グラフィックは、PSの中でも下の方だった前作に対し、PS2の中でも良い方っていうくらいの印象までレベルアップ。 当然ハードなりに見える範囲が広くなったのが嬉しいポイントだし、背景は良く描き込まれており、エフェクトも綺麗。 キャラクターのモデリングも上々で、体型のバランスも良くできてると思うし、光源処理もそれなりに効いてて、 それぞれに個性があるキャラクターの顔のモデリングもかなり良くできてる。 ただし、全体的に小奇麗でまとまってるんだけど、イマイチ印象に残らない感じも。 このゲーム内容を考えると、もうちょっと光と影(明と暗)の演出で頑張って欲しかったところではある。 また、キャラの表情の変化が硬すぎたのも残念。 あくまでもアクションゲームということで、大きな欠点ではないにしても、イベントシーンそのものが良く出来てただけに、ちと勿体無い。
  いわゆる残虐表現は、日本版だからなのかちょっと中途半端な感じ。 洋ゲーっぽい雰囲気のブラッディな背景があったりする反面、忍殺時の血の噴出し方が不自然かつ地味なのが気になる。 彩女による首を180°ヒネって殺しちゃう忍殺(首が180°回った状態で座り込んでる死体が出来上がる)なんて、血以上にショッキングだと思うぞ。
  音関係は無難なところか。 声優は基本的にシリーズ通して変わってない模様で、“○○警察24時”系などのナレーションでお馴染み小林清志氏 (声優としてはルパン三世の次元役で有名)のナレーションはばっちりハマってるし、 鷹揚に欠ける彩女の音声も、逆にそのシブい感が役にあってて好印象。 殿様の声は(その勇ましい顔に比べると)いまいちハクが無いが。
  ハデにセリフと口の動きがズレてるのは、 PS2『Shinobi』同様、英語音声に合わせているからか(英語にしても確信が持てるほどリップシンクしてるわけじゃないんだけど)。 事情はワカランでもないけど、やっぱり日本人による日本人が主人公のゲームでそりゃねぇべよ・・・。

  シリーズ通してプレイしてる自分としてはダレ気味だったし、不満も大きいんだけど、 このシリーズ未プレイで、こういうステルス系アクションをあまりプレイしてない人には、十分に薦めることができる内容だろう。 とりあえず、総合的なクオリティってことでは、十分に“タイトルに恥じない作品”だと思う。 というか、アイデア良しの習作的だった初代、新要素が未消化すぎだった2作目ということで、 やっとクオリティ面で他のゲームに比べて恥ずかしくないレベルまで上がったって感じなんだが。
  K2の真価は次回作で問われることになるだろう。 その時に根本的な(つまり、敵AIとそこから生まれる基本的なゲームの流れに)変化がないようなら、 このシリーズは終わりということになるに違いない。

2003年5月13日記載