REPORTThe Operative: No One Lives Forever 日本語版
PC
2000年11月9日発売
日本語版 翌年12/14発売
日本販売:サイバーフロント  発売:Fox Interactive  開発:Monolith  

  ここ何年かのFPSの中では最上級の評価を受けているタイトルの1つで、PCでは結構前に続編が発売されており、こちらも好評な模様。 ちなみに、家庭用機ではPS2に移植されたものの、発売時期がかなり遅くなった(PCの1年以上も後)上に、 いろいろと問題があるらしく、こちらはイマイチな評価になっている。


  いわゆるストリートチルドレンとして、盗みを生業としてひとりで生きていた少女「ケイト・アーチャー」は、 彼女が16歳だった1958年、国際諜報組織「UNITY」の諜報員である「ブルーノ・ラウリー」と運命的な出会いを果たす。 ラウリーはケイトのスパイとしての才能に惚れ込み、彼女を訓練、その9年後にケイトはUNITYの諜報員となった。 それからというもの、高い能力を持つケイトだったが、男社会のUNITYでは能力を認めてもらえず、危険のない、たわいのない任務にあてられていた。 自分の能力に自身を持ち、危険なスリルを求めるケイトは悶々とした日々を送っていたが、 ある日突然、悪名高き犯罪者「ドミトリ・ヴォルコフ」と謎の犯罪組織「H.A.R.M.」によって、 世界中のスパイが大量に暗殺され、人手不足となったUNITYで、やっとケイトにチャンスが舞い込んだのだった・・・というのが話の導入。 プレイヤーは、知的で、優秀、そして美しいケイト・アーチャーとなり、 UNITYの任務を遂行し、H.A.R.M.の企む計画を探り、それを阻止することになる。
  スパイが主人公のFPSということで、ゲームの路線としても007シリーズに近いものがある。 舞台も1960年代〜70年代なので、設定も007チック・・・というか、サイケでポップなファッションセンスからしても、 “初期の007”というより“下品さを削ったオースティンパワーズ”といった方が近いかもしれない。

  基本操作以外はジャンプ、しゃがみ、歩く・走るの切り替えなどなど、極めてオーソドックスで特に変わったところはない。 射撃に関しては、移動中は照準が大きくなってしまい命中率が下がるという、 『Deus Ex』みたいなタイプなんだけど、“普通に狙うには立ち止まってジックリ狙う必要がある”という感じだったそれに対し、 このゲームでは“正確に狙いたいときは立ち止まらなくちゃダメ”程度の軽めのバランスになっている。
  一応、007チックなスパイメカも登場。 キーピック機能と毒針が付いてるヘアバンド、やはり特定の鍵を壊せる機能付きのライター、ズーム機能とカメラ機能などが付いたサングラス、 死体を消しちゃう謎の薬などなど、結構多彩なんだけど、あまりそういうものを使いまくりという感じでもなく、ゲーム的な存在感はそれほどでも無いか。

  一応、ややステルス寄りのゲーム内容になってて、そこが若干消化不良気味なのが、このゲームの難点と言えるんだろう。
  概ね“ステルスを推奨するけど強行突破も可能”そんな作りになっていて、それが、大抵は強行突破の銃撃戦になっちゃったり、 あるいは発見即ミッション失敗のステージはシビアすぎだったりという結果になってしまったようだ。
  そもそも、監視カメラ&サーチライトは破壊不可(というか、破壊した時点でアラームがなって敵に気付かれてしまう)、 監視カメラは死体に気付いてしまうにも関わらず、死体を動かすことはできないので、むやみに敵を殺すこともできない。 監視カメラは、こちらを発見してから通報までにやや時間がかかって、近い場所ならその焦点をあわせる動作音などで理解できるものの、 カメラから離れてるとその音も聞こえず、知らぬ内に発見されてたりする。 また、覗き込み動作が用意されておらず、その代わり、ちょっとだけ体を見せても敵からは見つからないという、ちょっと変わったシステムになってる。 つまり、角からちょっと出てその先を確認してまた引っ込む、みたいなことになるわけで、想像するほど不自然じゃなかったし悪くないシステムだったんだけど、 基本的に敵がこちらに気付く度合いがわかり難くなっていて、「なんで見つかったんだ?」ってことが割と多いのが難点。 で、一度警戒されてしまうと、 (もちろん、結構な数ある発見=ミッション失敗というステージを除けば)そのステージ中はほぼ警戒されっぱなしなので、そこから銃撃戦モードに突入ということに。

  敵AIはまあ普通かな。 音に敏感で、例えばコインを投げてその落ちる音で敵を誘導できたりするのは良いんだけど、 怪しいと思ったら次々と部屋に突入してきて易々とこちらの餌食になってしまったり、 遠くから狙撃したのに、狙撃失敗したら一発で(周囲にいる敵にも)こちらの位置がバレてしまったりと、 少なくとも、素晴らしいとまでは言い難いものがある。
  ステージは序盤こそ予想以上に一本道気味で期待ハズレだったけど、 中盤以降はあまりそういう感じもせず、とにかく舞台が質・量共に多彩で、展開も面白いので満足度は高い。 この、FPSでもっとも重要な部分が充実してるというのが、このゲームを評価できるポイントだろう。
  ボス戦は全体的に淡白で、特にラスボス的な敵との戦いには捻りがないが、FPSというゲーム形式ではある程度やむを得ないところか。 2回ほどある乗り物シーンも、あくまでもオマケ的というか雰囲気的な要素が強く、いかんせん乗り物に乗ったままでは戦えないので(一応轢き殺せるが)、 乗り物から降りては戦って、また乗って・・・となり、若干テンポが悪くなっちゃってる。
  また、ミッション開始時にそのステージでの目標が表示され、それがステージ内で更新されていくんだけど、 ストーリー的には必ずしもそれを達成しない(つまり、目標の道半ばで敵の手に陥ってしまって次のステージへ、とか)というのも、 意外にこういうゲームではなかったことだと思う。
  各ステージ内には、手紙、ファイル、ブリーフケース、フィルムなどの 「情報アイテム」というものが散らばっており、それを集めた数によってステージクリア時の評価が高まる。 後に手に入れるアイテムを使わないといけないところに情報アイテムがあったりと、 リプレイ性を(えもすれば強引に)高める工夫は、FPSではあまり見られなかった試みだろう。 そういう場所はそんなに多くなく、クリアした頃には忘れてた上に、集めてどうなるってもんでもないんで、 実際にリプレイ性を高められてたかは疑問だけど、情報アイテムの内容(テキスト)が、ニヤリとさせられるものが多く、これも面白い要素だったな。
  ・・・というわけで、ゲーム的には、バラエティの豊かさは評価できるものの基本的には佳作、そんな感じ。

  このゲームが際立ってるのは、それを装飾する部分じゃないだろうか。
  3Dグラフィックエンジンは、Quakeエンジン、Unrealエンジンに続く第3の3Dグラフィックエンジンという位置付けで (もちろんバージョンアップされているが)今も続いているらしい、Monolith社独自のLithTechエンジン(確か、LithTech社はMonolithの系列会社だったはず)。 特に、てかるテクスチャ、半透明処理、光源処理などのエフェクトが強力で、 ほぼ同じ時期にリリースされた『Hitman』なんかより、ひと回り、ふた回り高い表現力が感じられる。 光源処理が効果的なのか、テクスチャが上手いのか、モデリングが上手いのか、 リアルとはまた違うんだけど背景には確実に存在感があって、非常に好印象。
  その代わりというか、やや重ためになってるのも事実らしい。 自分の環境では、フルエフェクト、1024×768、32bitカラーだとちょっとフレームレートが粗すぎる感じになってしまったので、結局800×600でプレイ。 それでもマウスの動きが若干ぎこちなかったのは、ソフト的な仕様なんだろうか?
  キャラクターに関しては、モデリング自体はそんなに詳細じゃないんだけど、 上手く特徴を捉えたメリハリのあるモデリングが上手く、やはり好印象。 ただ、リアルタイムポリゴンの主人公ケイトは、パッケージの絵とは違い、エラ張り系の典型的な外人的美女でやや萎え・・・。
  BGMの使い方も非常に上手いところだろう。 まさに007のような感じで、テーマミュージックがココという時に流れ出し、雰囲気を盛り上げてくれる。

  そして、何よりこのゲームの素晴らしいところは、そのキャラクター、及びイベントシーンの作りにあると思う。
  まず、主人公ケイト・アーチャーがイイ。 知的でありながら野性的な一面を持ち、無鉄砲で挑戦的な一面を持ちながらも正義感があり、 男に媚びる姿勢を見せないんだけど、女性としての美しさも捨ててはいない、そんな非常に魅力的なキャラクターに仕上がっている。 洋ゲーというといまだにララ・クロフトをイメージする人が多いと思うんだけど、彼女よりずっと奥深く、魅力的だろう。 その他の登場人物も、“いかにも○○国人”っていうデフォルメが笑えるし、それぞれの個性付けが非常に面白い。 んでもって、イベントシーンでのキャラクター同士のセリフのやりとりが素晴らしくよくできてる。 洋ゲーにしてはかなりのイベントシーンのボリュームなんだけど、ストレートな笑いあり、ウィットのきいたやりとりありで、それがムダに思えることは全くなかった。 そういうセリフ作りのお陰なのか、あり得ないような濃いキャラ満載でも、 ある意味でのリアリティを兼ね備えていて、独自の世界観を形成している(ここらへん、そのグラフィックにも通ずるものがある)。
  また、ステージ内の会話、特に敵同士の会話が非常にバリエーション豊かかつ凝ってて、犯罪組織H.A.R.M.の組員でありながらも、 素晴らしくマヌケだったり、現実的なことに思い悩んだりしてるザコキャラ同士の会話が実に秀逸。 思わず、倒すのが可哀想になってきてしまう。
  さらに、このゲームのストーリー的な面白さは、個性的なキャラクターによるドラマ的な要素だけじゃなく、 そのいかにもスパイ映画チックな派手な展開にもある(つまり、必ずしもイベントシーンだけに依存したものではない)。 最後のドンデン返しは、蛇足かつ、ちょっとやりすぎにも感じられたが、そこまで理不尽な話でもないんで、アレはアレでありかな。
  そういう意味でも、丁寧な日本語ローカライズは非常に嬉しいポイントだった。 英語版から丸一年遅れてのリリースも、これならこれで納得というものじゃないだろうか。 ステージ内のテクスチャの文字までローカライズされてるのは、あんまり意味がなかったような(というか、むしろ場違いな)気もするけど。

  最後に、自分の環境では、PCゲームならではの不安定さもチラホラ。 章が変わるときにかなり高い確率で落ちてしまい、 またプレイし直してもダメ、なぜかオプション設定を変えて試すと先がプレイできる(で、また次の章で落ちる)という、ミョーな不具合が発生。 基本的に頻繁にセーブをしていくことが多いゲームなのでそれほど苦にはならなかったけど、やはり面倒。 また、なぜかマウスのホイール(ホイールボタンも込み)が使い物にならなかったし、 時折字幕が消えてしまうという、意外にこのゲームではイタい不具合も発生した。 ここらへんのゴタゴタでやや印象が悪くなってしまったのも事実。


  思ったよりも普通のゲームで、傑作かっていうと結構疑問なんだけど、キャラ描写の秀逸さで最後まで楽しむことができた。 そういう意味では、PCゲームっぽくない面白さを持ったゲームだと思う。
  しかし、続編はどうすっかな・・・。 というのも、ローカライズ時に、2バイト文字を表示すると致命的なエラーが発生することが発覚したらしく、 結局、日本語版はリリースされてない(可能性もない)状況。 スクリーンショットを見る限り非常に良さげだし、ゲーム中の英語を完全に日本語訳したというガイド本も添付されてるんだけど、 セリフの面白みが大きなウェイトを占める(であろう)ゲームなだけに、やっぱり字幕じゃないと寂しいような・・・。

2003年7月9日記載