REPORTスプリンターセル
Xbox
2003年11月27日発売発売:Ubi Soft  

  2002年11月にアメリカで発売されたXB『Tom Clancy's Splinter Cell』は、 『Halo』以来のハードの牽引役と呼べるほどのスマッシュヒット作となり、その後、PC、PS2、GCへ移植され、累計150万本を超えるヒット作となった。 日本のユーザーからもローカライズを望む声は多かったはずなんだけど、何の音沙汰もなく、半ば諦めていた今頃になってようやくリリースされることに。 自分の場合、PC版のプレイアブルデモはプレイ済みだったんだけど、マウスのホイールで移動速度を変化させるという操作に全く馴染めずスルー、 海外GC版をプレイしようかとも思ったけど、PS2版同様、かなり劣化が目立つらしいのでスルー。 そうして今に至ってた自分としては、嬉しい移植ではあったんだけども・・・。
  この『スプリンターセル』で一躍有名になったUbi Soft内の開発チーム「Montreal Studios」は、 その後にリリースした『Prince of Persia: The Sand of Time』も好評なようで、 客観視点のアクションゲームが作れる海外メーカーとして確固たる地位を築いたと言ってもよさそうだ。 次回作はこの『スプリンターセル』の続編『Splinter Cell: Pandora Tomorrow』が予定されている。
  シナリオを担当してるのは、 「レッド・オクトーバーを追え」「トータル・フィアーズ」といったジャック・ライアンを主役にした映画原作よりも、 最近は「Rainbow Six」シリーズや「Ghost Recon」シリーズといったゲームの原作の仕事の方がなんだか目立つような気がしないでもない、ベストセラー作家トム・クランシー。


  時折、“トム・クランシー版(あるいはリアル路線の)「メタルギア ソリッド」”という評され方をするゲームだけども、 まぁ、そういうものだと考えても、そう間違いではないだろう。 客観視点で進行する、銃撃戦もないわけじゃないけども、ステルスな行動が最重要視されるアクションゲーム、と。

  左スティックで移動、右スティックで視点移動、右スティッククリックでカメラリセットというのが基本操作。 肝心の右スティックによる視点操作はかなりクイックで、ヘンなクセもなく、非常に使いやすい部類だ。 カメラが地形にひっかかるような時は、自然にズームインして、操作に違和感を感じるさせることはない。 右スティッククリックによるカメラリセットが、ややモッサリしてるというか、右スティックを使って視点を旋回させるスピードと変わらないので、 使い物にならないけども、右スティックの操作性が良いので全く気にならなかった。
  他の移動関係の操作は、YのジャンプとBのしゃがみ。 壁に向かってジャンプして、壁に当たるときにYを押すとより高く跳べる壁蹴りジャンプになったり、 左右が狭い場所で壁蹴りジャンプの後にもう一度Yを押すと、左右に足を開いて壁の間で自分の体を保持するという、 (出番自体はそう多くないものの)このゲームを象徴するアクションである「スプリットジャンプ」ができたりする。 移動時にたてる音が小さくなるしゃがみ移動は非常に重要な行動になるし、着地時にBを押すことで音をたてずに着地したりもする。 それ以外にも、足場の淵にぶら下がるお馴染みのアクションは当然あるし、パイプやフェンスをよじ登ったり、パイプにぶら下がってウンテイのように移動したりと、そのアクションはかなり多彩。 ぶら下がれるのかどうかが若干分かりにくかったりはするし、壁蹴りで跳んでく方向がよくわからなかったりはするんだけど、全体的に操作性は良好だ。
  攻撃は、Xで銃を構えてRトリガで撃つというのが基本。 また、序盤を過ぎるとスコープ付きのSC-20Kという銃を携帯することになり、構え時にYボタンを押すことでスコープから覗いた絵になる「スナイパーモード」に移行できるようになる。 このスナイパーモード時は、かなり派手に手振れが起きてるんだけども、Lトリガで一定時間息を止め、手振れを止めることができるという、 緊張感がありながらもここ一番ではちゃんと正確な狙撃ができるという面白い仕様になっている。 敵に気づかれないように背後から忍び寄ってアクションボタンを押せば、敵に掴みかかることができ、 その時にRトリガを押せば音をたてずに敵を殴り倒すことができたり、その敵を盾にして銃撃戦をしたりもできる。 といっても、気づかれないためにはしゃがみ状態でゆっくり近づく必要があるので、 動いてる敵に対してはまずムリだし、そうむやみやたらに行えるというわけではない。 このゲームの戦闘はヘンに偏ることがなく、狙撃、銃撃戦、殴り倒しが非常にバランス良く組み合わさってると思うな。
  ちなみに、しゃがみにしても構えにしてもスナイパーモードにしても、 それぞれのボタンを押しっぱなしにする必要のない切り替えタイプなので、複数のボタンを同時に押すような場面はまず無い。 当然と言えば当然だけど、やはり工夫されてる部分と言えるだろう。

  このゲームは発売当時、そのグラフィックで大きな注目を集めた。 確かに多彩な場面の背景の描き込み具合もかなり素晴らしいんだけど、何より際立ってるのは、光と影の描写。 丁度PS2『ICO』なんかに通ずるものがあって、差し込む光、キャラクターにも自然に投影されるリアルな影など、動的な光と影の表現は素晴らしいの一言。 光源がシッカリと設定されていて、(保護された電灯とかを除けば)それらを破壊することができ、それに応じて暗くなったりもする。 さらに、そういう要素がゲーム的にも非常に重要になってるのがイイ。 このゲームのステルスの特徴は、敵の視界から消えることより、闇に隠れる点にある。 画面には「ステルスメーター」というゲージが常に表示されており、暗ければ暗いだけこのゲージが下がり、 このゲージが最小の時は、ホントに目の前にまで近づかれない限り、敵から気づかれることはなくなるという仕掛け。 自分には暗闇でも問題なく視認できるナイトビジョンという装備があるので、暗ければ暗いほど、自分にとっては有利になってくる。 で、蛍光灯や電球を壊すことで、そういうシチュエーションを作り出すことができる、と。
  ちなみに、ナイトビジョンの他に表面温度を表示するサーマルビジョンという装備もあり、 十字キー左でナイトビジョンのオン・オフ、十字キーの右でサーマルビジョンのオン・オフという操作。 このナイトビジョン時はサーマルビジョン時のエフェクトが効いたリアルなグラフィックも、 このゲームのビジュアルのウリと言えるだろう。 炎の表現などのエフェクト部分もかなり強力

  ゲームの進行はかなり一本道。 基本的にはその場での解法を探すというタイプで、個々の(特に敵を絡めた)シチュエーションの対処法にはバリエーションがあったりという作り。 全てのゲームに自由度、(ゲームの構造的な)箱庭さを求める必要はないわけで、個人的にはこれはこれで良かったと思う。
  攻撃やアクション自体はシンプルだし、ボス敵がいるわけじゃなく、敵のバリエーションが豊富なわけでもないのに、 とにかくシチュエーションが多彩で、最後まで全く飽きさせない。 トム・クランシー原作ということで、それぞれの舞台にリアリティがあるのも楽しいポイント。 敵の視界や、音に対する反応も、なかなかリアルで説得力があるし、完全にステルスなミッションと、戦闘OKなミッションのバランス、組み合わせも良い。
  ただ、もうちょっとその一本道さを上手く誤魔化せたんじゃないかとも。 特に気になったのは一部のミッションで用意されてるマップ。 これが相当に大雑把で実用度が無いにも関わらず、訪れるポイントにその順番で番号が振ってあるというもので、もはや一本道さのアピールにしかなってない。 また、全体的に(そのマップの使えなさもあって)プレイヤーの誘導が下手なとこがあり、 “目の前に行ける場所(アクションを使って進める場所)があるからこっちに行けばいいんだな”というシチュエーションが多すぎる感アリ。 もっとプレイヤー自身が“○○に向かうためにこのルートを取ろう”と考えられるような作りにしてほしかった
  さらに欲を言えば、それぞれの舞台に応じたインタラクティブな仕掛けを、もっと設けてほしかったな。 仕掛け自体は結構ワンパターンだったりするので。

  難易度はかなり高め。リトライを繰り返しての試行錯誤が求められることになる。 ただ、本当に難しい場面では大抵その直前にセーブポイントがあるし、一部の銃撃戦を除けば、理不尽なところはほとんど無かったと思う。 ステージの流れがほぼ一本道なのも、この点では救いになってるだろう。心地よい難しさだった。
  チュートリアル的な最初のステージも含めると、ミッションは全部で10個。 それぞれは幾つかのパートに別れており結構長めだし、何よりプレイし甲斐がある歯応えなので、ボリューム的な不満はなし。 ただ、『ヒットマン』などとは違って、ステージクリア後にランク付けがされるわけでもないし、ゲームの性質からしても、どうしてもリプレイ性は低めになってしまう。 ただ、Xbox Liveによって新たなミッションをダウンロードできるというのが、このゲームの強みとなっている。 キー配信型、あるいはステージの使いまわしかと思ったら、(音声なども含めて)全く別モノで、ちょっと驚いてしまった。 若干小ぶりではあるけど、なかなか楽しめる(もっとも、それゆえにバンバンと新ミッションが配信されるということはなさそうだが)。

  シナリオは、グルジアでの政変を発端として、テロが発生したり、中国が絡んできたりという、いかにもトム・クランシーなグローバル軍事サスペンス。 ベースがしっかりしており、物事の相関関係が第一で、安易に感情論に逃げないところが良かった。 ミッションの間のムービーシーンでは、主人公「サム・フィッシャー」が出てくるものもないわけじゃないけど、 主にニュースの報道番組を断片的に見せるという形で進行。ここらへんにも工夫の跡が窺える。ムービーの画質がイマイチなのは、ちょっと気になったが。
  当然のようにかなり丁寧にローカライズされており、音声もフル日本語化されている。 敵の声も重要なゲームなだけに、選択としては正解だったろう。主人公のシブい声も、ベタっちゃベタなんだけど、良かった。 気になったのは、白黒の液晶画面という設定のポーズメニューでは、文字の線が細すぎて、ちょっと読み難くかったこと。 まぁ、元が元なんだろうし、難しいところではあったんだろうけど・・・。


  なるほど、噂に違わぬステルスアクションの良作だった。 要素自体にそこまでオリジナリティがあるわけじゃないんだけど、実際にプレイしてみれば、技術力に裏打ちされた新鮮なプレイ感を得ることができるはず。 『ヒットマン』とは違って、最初に家庭用ゲーム機、しかもXboxで作られたというのも、この総合的なクオリティの高さ、まとまりの良さを生んだ要因だろう。
  それだけに、ここまでリリースが遅れてしまったことが残念でならないなぁ。

2003年12月23日記載