REVIEWバテン カイトス 終わらない翼と失われた海
GAME CUBE
2003年12月5日発売発売:ナムコ  開発:モノリスソフト/トライクレッシェンド  

  気が付けば、結構レアな存在となってしまった完全オリジナルで新規のRPG。   
モノリスソフトと言えば、PS2「ゼノサーガ」シリーズを開発してるとこなんだけども、 今回の『バテン カイトス』は、トライクレッシェンドがサウンドのみならず全プログラム、バトルシステムも担当ということで、 実質的な開発はトライクレッシェンドと言えるのかもしれない。 そのトライクレッシェンドは、SFC『テイルズ オブ ファンタジア』以降、ずっとトライエースの音楽を担当していた部署が、 PS『ヴァルキリープロファイル』から独立したところ。 その後もPS2『スターオーシャン3』の音楽にも携わったので、 (会社の名前も名前だし)てっきりトライエースの子会社かと思いきや、 別にそうではないらしく(そして、音楽専門の会社でもないらしく)、今回、このような形でゲーム開発を担当することになった。


  人々は空高く浮かぶ「大陸」で生活を送り、遥かな昔に失われた海と大地はもはや伝説となっている世界が舞台。 育ての親と弟の仇を探して旅をしてた主人公「カラス」は、 「帝国」の邪悪な企みに気づいた少女「シェラ」との出会いをキッカケに、徐々に世界の崩壊に繋がる大きな事件に巻き込まれていく。 しかし、カラスにとって、それはまさに運命だったのだ・・・というのが話の流れ。

  大まかなゲーム形式としては、移動のみのワールドマップに街とダンジョンが点在しているというもので、 ワールドマップは動きの少ない2D、街やダンジョンは、ポリゴンキャラに2D背景、戦闘はフルポリゴンという表現方法を採用している。
  グラフィックの中で特筆すべきは、ポリゴンキャラ&2D背景という場面での背景。 「バイオハザード」のように寄った視点ではなく、かなり引いた視点なんだけども、さすがにこれには驚いてしまった。 幻想的なデザインとその描き込みもさることながら、奥の草木がアニメーションしてたり、 雲が流れるように動いてたりと、動きの工夫も素晴らしく、幻想的な雰囲気を盛り上げてくれる。 この手法ならではの、動きのダイナミックさがなくなってしまう、存在感が軽く感じられてしまうといった難点はあるものの、 それを補って余りある表現力を持っていると思うし、このゲームならではの幻想的な雰囲気とも合致した表現方法なんじゃないだろうか。
  ただ、キャラクターと背景とのマッチングはイマイチ。 一応、キャラクターにも光源の影響があったりはしてるんだけども背景の描き込み具合がスゴいだけに、やっぱり浮いてしまう。 棒立ち状態の通常時の姿勢、ショボいモーションもいただけない。
  プリレンダCGムービーを前面に押し出したTVCMとは裏腹に、それはゲーム開始前のオープニングに使われているだけで、 ゲーム本編(エンディングを含む)には(おそらく)全く存在しない。

  実は、ストーリー表現という意味では、GC『テイルズ オブ シンフォニア』などと同じようなレベルの難点を抱えてる。 インベントシーンでもポリゴンキャラはマトモな演技をせず、“驚き”や“やれやれ・・・”と言ったブツ切れの仕草を組み合わせただけ。 セリフもボタンで送らなければならないので、ボイスのテンポは崩れがち。 さらにこのゲームの場合は、カメラワークという概念も存在せず、かなり引いた固定視点でダラダラと見せ続ける。
  ただ、そういうのがあまり気にならないのは、プレイヤーが「精霊」という形で物語に関わっていくことによって、 そういう仕様に対し説得力を持たせていたからだろう。 プレイヤーは主人公「カラス」に憑いている精霊という存在で、目に見えず、カラスとだけは直接会話できる。 つまり、傍観者的でありながら直接物語に関わっていくことになるわけだ。
  また、セリフと共に表示されるフェイスウィンドウはかなり大きく、 表情も結構多彩で、ここの表現力でカバーされている部分もかなり大きい。 そのキャラクターイラストは、山田章博氏(漫画家。イラストレーター。ゲーム系だとSS『テラ・ファンタスティカ』のキャラデザが有名?)と 荒木飛呂彦氏(言わずと知れた「ジョジョの奇妙な冒険」の著者)を足して割ったようなテイストで、なかなか個性的で華があり、かなり好印象だった。
  声優のチョイスも無難で、音声の表現力も確実にプラス。全体的にややシブめで、必要以上にアニメっぽくなってないのが良い。 さらに、(イベントシーンに限らずだけど)音楽が素晴らしい。自分としては珍しく、音楽に感動してしまった。
  ストーリー自体も、基本的に事件関係と世界観設定が上手く作られており、 それを元にした話の展開も多様で、最後までダレることなく楽しめる。 世界の崩壊と再生という大きなネタを、幻想的な雰囲気で上手く消化していたと思う。 勢い任せになっちゃてる部分にしても、概ね、感情に振り回されてるようなところではなく、 あくまでもスケールのデカい物事(お伽噺的な)の進行に対してのもの。 逆に言えば、感情の起伏に関しては全体的に説得力があったと思うし、ここらへんも好印象の原因だろう。 一緒に冒険するキャラクターたちもそれぞれ魅力的だし、えてして弱くなりがちな敵側キャラクターの描写もなかなか。 かといってクドすぎることなくという、バランスの良さがうかがえる。
  ただ、このゲームならではの、物質を「マグナス」というカードにして持ち運ぶことができるという設定 (カードで戦闘を行うことはもちろん、街やダンジョンなどで「クエストマグナス」という形でアイテムを持ち運び、使って、イベントをこなしていく)や、 緊張したり集中したりすると背中に「こころの翼」という翼が出現してちょっとだけ飛べるという設定が世界観描写に全く寄与してないのはかなり気になった。 つまり、街の住人は、まるでこころの翼など持ってないかのように、 マグナスという存在を知らないかのように振舞い、生活している。 特に気になったのはこころの翼の方で、 もうちょっとコレを上手く生かして、独自性を打ち出してほしかったところだ。 主人公のカラスという名前からも分かる通り、このゲームを印象付けるポイントにしたかったんだろうし、 カラス個人に限ればドラマ的な要素ではあったんだけど、 逆に言えば、この程度の使い方であれば、正直、必要なかった(もっと強く言えば、無い方がよかった)設定だと思う。 ここに限らず、空中に浮かぶ大陸での生活であるとかの、 このゲームならではの設定は、ゲーム中の社会生活的な部分では生かしきれなかった印象だ。
  また、キャラ同士の会話が少なかったのも残念。 街の住人との会話では、キャラクターが会話に参加してくることもあるけど、 かなり機会は少なく、ゲームを支える仕様とまでは至ってない。 基本的に、そのキャラクターのイベントはあくまでも個人の話という感じで、キャラがお互いに関わり合うようなイベントは少なめ。 個々のキャラクターは魅力的だっただけに、もうちょっとそのミックスアップを期待したかったところ。
  また、全体的に迫力という意味では弱く、特に話のスケールがデカくなる終盤では、結構気になるところだったし、 状況が深刻になっていく終盤では各街の描写に工夫がなく、追い詰められた感じが全くしなかったのも残念。最後のオチもちょっとね。
  ゲームの流れという意味では、最後のセーブポイントの後が長すぎて、 最後の最後の戦闘がただのイベント戦と化しちゃってる(割に、結構時間はかかる)のが勿体無かったな。もうワンクッション欲しかった。

  敵、味方それぞれ最大で3体ずつが相対する戦闘は、ちゃんと「デッキ」という概念もあるカードゲーム形式。 その基本的な流れは、キャラクターが素早さのステータスの順に行動するという、一般的なターン制のRPGの戦闘と同じようなもの。 で、自キャラのターン時には攻撃、回復でカードを使い、敵が攻撃したときは、それに合わせて防御カードを使うという内容になっており、 そのテンポは心配していたほど悪くない(というか、カードを出せる制限時間があるので、プレイ感覚としては結構忙しめ)。 ちなみに、キャラクターには、一般的なRPG同様の「レベル」の他に、カード関係の強さを示す「クラス」というステータスがある。 物語の進行によって段階的にこのクラスが上昇していくにつれ、デッキに組み込めるカードの枚数、表示される手札の枚数、 攻撃時に出せるカードの枚数の上限が増えていき、逆に、カードを出す制限時間が短くなっていく。
  ダメージは攻撃を出したときに発生するのではなく、攻撃側がカードを出し切った時点で、 そこから防御側の防御力を引いて、属性ごとのキャラクター固有のボーナス(抵抗力)を掛け、 そこで出てきた数字に、「プライス」というボーナスを掛けて算出される。 このプライスが、このゲームの戦闘のキモと言えるだろう。 カードには最大4つの(カードの強さには直接関係のない)「精霊数」という数字が付いており、 同じ数字を揃えると(というより、1枚で孤立するカードが無ければ)「cards系プライズ」が、 数字が順番に並んでいれば「straight系プライズ」が付加されることになる。 特に、使えるカードの枚数が増えてくる中盤以降は、これによってダメージの2割、3割増は当たり前になってくるし、 終盤は、上手く繋がることができればダメージが2倍以上になったりと、 基本的にはこのプライスを狙ってカードを出していくことになるわけだ(恩恵は攻撃ほど大きくないけど、回復や防御時にもプライスは存在する)。 制限された時間の中で、何とか上手く数字を繋げるようにカードを出していかなければならないので、 このゲームの戦闘には常に心地よい緊張感が存在し、全くダレることがない。 デッキ、山札、手札といったカードゲームっぽい面白さは、結構上手くRPGの戦闘として消化できていたと思う。
  ただし、小さな緊張感はあるものの、大きな(つまり、死亡であるとかゲームオーバーであるとかの)緊張感には欠けるのも事実。 (死亡も含めた)状態変化に対処しづらい、ステータスアップ・ダウンの効果がビミョー、 攻撃の対象は常に単体といった事によって、個vs個を単純に重ね合わせただけの、単調な戦闘になってしまった感じは否めない。
  そこらへんはデッキ構築という部分でカバーか。 デッキ構築時の中心となるのが「属性」で、 「火」と「水」、「光」と「闇」、「時」と「空」がそれぞれ相反する関係になっている。 例えば、相手からの火属性のダメージに対しては、水要素で防御しないと防ぐことができないし、 逆に水属性と火属性で同時に攻撃してしまうと、打ち消しあってしまってダメージが減ってしまう。 まぁ、実際の戦闘中では流れに身を任すしかない感じではあるんだけど、 デッキ構築&キャラクターの段階でちゃんと面白みになっているのだから、 大いに価値のある要素と言えるだろう。 三つ巴であるとかの循環的な構造ではなく、単純な相反関係だけに留めたのも良かったと思う。 カードを湯水のように手に入れられるゲームではないので、自然と所持する武器の属性には偏りが出てくる。 そこで、武器の属性、必殺技の属性などを考えつつ、デッキ内容とキャラクターの組み合わせを考えていくことになるわけだ。
  ただこの属性によって、防御がイマイチ機能しづらくなってしまったのが残念。 回復アイテムの回復量が大きいし、敵からの単発の攻撃力もタカがしれてるし、あえて防具カードを組み込むメリットが、他のカードほどには高く感じられないのだ。 体力吸収系の攻撃が結構あるので、そういう場面では意味がないわけじゃないんだけど、結局、その位置付けも中途半端だったし・・・。 このままの形であるなら、せめて幾つかの属性を選べる防御系カードがあれば、 もうちょっと防御しやすくなったろうし、理想で言えば、敵のカードの内容も表示するようにし、 それに対応して防御を考えなくちゃならないような戦闘にしてほしかったところ。
  また、細かい部分では、防具カードが溜まった状態になると、 敵が攻撃してきてくれないと、どうにもならなくなり(攻撃時には1枚ずつしかカードを捨てられないので)、 敵の攻撃待ちになってしまうのが鬱陶しかった。 自分のターンでもある程度自由にカードを捨てられるようなフォローがほしかったな。
  このゲームの戦闘とお金の関係はちょっと変わっていて、戦闘後に得られるお金はナシ、一般的なマグナスは売っても二束三文。 その代わり、戦闘中に「カメラ」のカードを使うことでそのモンスターの写真を撮ることができ、その写真のマグナスが高く売れるという仕掛けになっている。
  また、戦闘でもう1つ重要なのが、特定のカードを特定の順番で出すことで新たなマグナスが発生する「SPコンボ」の存在。 例えば、生肉(回復力ゼロ)の後に炎の魔法「ファイアバースト」を使うと、 「ビーフジャーキー」という回復マグナスが生成され、戦闘終了後にこれを入手することができる。
  実時間と共に変化するカードが存在するというのも、このゲームの特徴で、 特に、体力回復に使う食べ物系は、時間が経つと腐ってしまうものがほとんどなので、ある程度は補充していかなければならない。 また、直接手に入る回復マグナスでは回復力が心もとないので、やっぱりある程度は自前で回復マグナスを生成していく必要性が出てくる。
  この時間に応じて変化していくカードと、カードの生成はなかなか面白い要素だったと思う。
  ただし、戦闘後に手に入れることができるマグナスは1枚だけなので、 1回の戦闘では、お金を得るために写真のマグナスを得るか、効果の高い回復系マグナスを得るか、 時たま敵が落としてくれる武器・防具マグナスを得るかのどれかになってしまう。
  また、店でマグナスを買うときも、大抵、各マグナスは1枚ずつしか置いてなく、一定時間待たないとそのマグナスが入荷されない。
  つまり、根本的に武器、防具カードを手に入れる機会が少ないのだ。 攻撃・防御の効用を考えてデッキを組むというより、常に自分の持ってるカードの中でのやりくりだったし、 防具に至っては、戦闘に参加するキャラのデッキに組み込むのがメインで、自分の場合、実は6人のデッキが満タンという状態は皆無だったりする (時間と共に変化してしまうカードがあるというのも大きい)。 もうちょっとレアなカードとそうでないカードの差を明確にして、レアじゃないカードに限れば、サクサクと店頭で買えるような形にしてほしかったな。

  ローティングに関しては全体的に優秀なゲームだったし、 アナログスティック(十字キー)とCスティックを併用させるメニュー関係の操作性も良かったんだけど、インターフェース的な難点はチラホラと。 特に問題だったのは、デッキ編成。 まず、とにかくソートが使い難い。 攻撃力、属性、防御力、種類などいろいろなソートの種類が用意されてるのは結構なんだけど、同じカードを集めるという基本的な性能が欠けてるのは論外だろう。 んなのは、ソートをしないでも自動で行ってほしいところだ。 また、ゲーム中で“十字キーにはアナログスティックにはない有用性があるんだよ”と説いておきながら、 選択肢の選択で十字キーが使えないのも気になった。というか、意味がワカラン。

  特にやり込んだわけではなく、かといってあからさまに目の前にあるイベントはスルーせずにプレイした自分のプレイ時間は70時間強。 ストレートにプレイすれば、あるいは50時間ちょっとくらいでクリアできるのかも。 また、カードゲーム的な要素があるわけで、デッキ構築に取られてる部分もあるに違いない。 プレイ感覚的には、超ボリュームって感じではないし、逆に言うと、ダレてしまうこともほとんどなかった
  しかし、いろんなやり込み要素があるゲームなだけに、 ゲームクリア後は、またラストステージの前に戻れるような形にしてほしかったし、 クリアできる状態からでもいくらでも強くなる余地がありそうなんで、 もっと強力な敵がいるオマケダンジョンなんかも用意してほしかったところ。


  物語の規模とそのプレイ時間とは裏腹に、実のところ、その作りとしては“ゴージャスな超大作”っていう感じではない。 それでも、その独特の幻想的な雰囲気と、スケールのデカいおとぎ話的なストーリーには十分な魅力があり、 完成度っていう意味ではやや疑問が残る戦闘も、プレイしているときは結構楽しかったし、カードゲームっぽい楽しさもちゃんとあった。 ゲーム史に残る傑作ではないにしろ、佳作であるのは間違いないし、個人的には予想以上にツボにハマった一本だった。

2004年1月22日記載