REVIEWThief: The Dark Project
PC
1998年11月30日発売発売:Eidos Interactive  開発:Looking Glass Studios  

  今のFPS全般において、ステルス(あるいはスニーク)的な要素というのは結構重要となっているわけだけども、 そのステルスを大々的にフィーチャーした恐らく初のFPSとして、非常に有名なタイトル。 ステルスゲームということでは、1998年2月にPS『天誅』、1998年9月にPS『メタルギアソリッド』が発売されているわけで、時代精神的なものが窺えたりもする。 ちなみに、FPSとしてはPC『Half-Life』などとほぼ同期。
  1992年にリリースしたリアルタイム3DRPG『Ultima Underworld』で世間をアッと言わせた開発のLooking Glass Studiosは、 このステルスFPS「Thief」シリーズの他にも、当時としては別格のグラフィックで話題となったフライトシム「Flight Unlimited」シリーズや、 SFホラーアクションアドベンチャーの傑作「System Shock」シリーズと、技術力と企画力を兼ね備えた強力なデベロッパだったんだけども、 基本的にその評判ほどはセールスが振るわないことが多かったようで、2000年5月に倒産してしまった。 その後、この「Thief」シリーズの版権はEidos Interactiveが買い取り、Ion Stormによって新作『Thief: Deadly Shadows』(PC&Xbox)が開発中となっている。


  当然のように主観視点で進行するゲームで、操作関係は、ジャンプ、しゃがみ、走り・歩きの切り替え、覗き込み動作とひと通り揃っている。 ちょっと変わってるのが障害物を乗り越える動作で、 足場の淵に掴まって「うんしょっ」と足場の上に登るようなアクションが主観視点にも関わらず用意されているんだけど、 その基準がやや曖昧で、見た目に分かり難いのはちょっと頂けなかった。 あくまでも目の前の足場に登るというだけで、ジャンプから淵に掴まったりはできないし、 目の前の足場に関しては、結構高いのも登れてしまう反面、その足場の造形が複雑だと全然登ってくれなかったりもする。
  世界観は中世ヨーロッパ風(実際は、近世的に機械化されてる部分もあるけど、銃などは一切登場しない)で、 タイトルの通り盗賊である主人公の武器は主に弓と剣。 最初にステルスFPSと書いたけど、主観視点で進行し、その移動法がFPSと同じというだけであって、 シューティング色はかなり薄く、FPSはFPSでも、First Person Shootingではなく、First Person Sneakingと言われることがあるほど。
  剣による攻撃は、ボタンをクリックするとなぎ払い攻撃で、 ボタンを押しっぱなしにして溜めると強力な打ち下ろし攻撃を繰り出すことができる。また、ホイールクリックで剣による防御。 とはいえ、主人公は盗賊なわけで、剣による戦闘の比重が大きいゲームではない。 むしろ、敵の背後から気付かれずに攻撃することで一撃で人を失神させることができる「Black Jack」という棍棒の方が重要かも。
  一方の弓は非常に重要。 これも一定時間ボタンを押しっぱなしで溜める必要があり、さらにボタンを押しっぱなしにすると画面がズーム、 さらにボタンを押しっぱなしにすると画面がブレだし、溜めが解除されるという凝りよう。 その上、一部の弓を除いて、弓なりに飛んでいくようになっており、近くの的にはやや下目を、遠くの的を狙うには上の方を狙う必要がある。 とりあえず、映画「ロビンフッド」のように敵をスパンスパン撃ち抜いていけるような内容ではなく、弓の重要性は性能が違う7種の矢の使い分けによっている。 「Broadhead Arrows」は普通の矢で、こちらに気付かない敵や反撃できない場所にいる敵をプチプチと攻撃する。 一応、人の首にヒットさせると一撃で倒せるものの、狙ってやるのはかなり難しい。 「Fire Arrows」は直線的に飛ぶ炎の矢。ダメージが大きく、通常の矢では倒せないゾンビを一撃で破壊することもできる。 「Gas Arrows」はヒットさせれば非アンデッドの敵なら一撃で眠らせることができるというもの。 この2種は共に強力なんだけども、本数が限られてるし、ステージ前に購入する時のコストも大きい。 他の弓はダメージを与えないステルス補助的なもの。 「Water Arrows」は松明などの灯りを消すことができ、これがステルス行動では結構重要になってくる(後述)。 「Moss Arrows」は、ヒットさせたところに苔を撒き散らし、そこを通る時に足音が響かないようになるというステルスの聴覚的なフォロー。 「Noisemaker Arrows」はヒットさせたところで音がなるというもので、 一応、敵を誘導させることができるらしいんだけど、個人的には有効に使えた場面はなかったりする。 面白いのが「Rope Arrows」で、木製の天井にヒットさせるとそこから真下にロープを垂れ下げることができ、そのロープに登ることができるというもの。 使える場所は限られてるけど、移動に自由度を持たせるナイスアイテムだった。
  このゲームの革新的だったところは、“自分が見える度”を明示したところだろう。 画面中央下にあるゲージには、その場の明るさに加えて自分の見えている度が赤、黄、黒の3段階で表示され、 黒であれば(そして、敵が警戒状態じゃなければ)それこそ体に触れられない限り敵は素通りしていく。 つまり、闇に潜むことがこのゲームの基本となるわけだ。 松明などの光源にWater Arrowsを当てて光を消し、そうして出来た闇に潜んで・・・なんてことも出てくる。 ここらへんは最近『スプリンターセル』でほぼまんまのシステムが使われてたのが記憶に新しいところ。 まぁ、映像的にやや説得力に欠ける部分があり、 “明らかに暗いのに見えているらしい”とか“結構明るいっぽいのに敵からは見えないらしい”という場面が出てきてしまうのは、 時代的にやむを得ないだろう。 ちなみに、モデリングの大雑把さもさることながら、 背景のテクスチャが単調で(さらにマップ自体が広く、広いスペースも多めなことがそれを強めてしまい)、 全体的にもかなり単調なイメージを受けてしまった。 自分が最近になってプレイしたPCゲームの中では、最も絵的な古臭さを感じてしまった一本だったりする。
  ただ、個人的にはそういったシステムよりも、 ステージの広さ&バリエーションと、そこを(ある程度)自律的に動いてるキャラクターに驚かされたな。
  もちろん、聴覚的な部分もステルスには重要で、 走り、歩き、しゃがみ走り、しゃがみ歩きの順に移動速度が遅くなり、足音が小さくなるし、 床の材質によっても足音の大きさが変わってくる。それに対する敵の反応も自然。 また、敵が死体を発見すると警戒してしまうので、死体を見つからないところまで運んだりしなければならない。 そこらへんの流れもリアルで楽しめる。
  全体的に立体的に作られているレベルデザインは、プレイしてて非常に楽しいし、 シチュエーション的にも予想以上に多彩で、 中には「トゥームレイダー」を思わせる遺跡探索ステージがあったりもする。 そのステージの目的(object)はステージ開始前に提示されるものの、 場合によっては、それがステージ内で変更され、未達成のまま放棄されたりもするのも良い。
  難易度設定はNormal、Hard、Expertという3段階で、単に敵が強くなるだけではなく、目標の内容が変わってくる (というか、難易度が上がるとミッションが増えていく)。 実は、最初は難易度Normalでプレイしたんだけど、予想以上にアッサリと進めてしまったので、 早々に難易度をHardにしてプレイし直すことにしてたりする。 ちなみに、Expertでは人を殺してはいけなくなるので、これはこれでゲーム性が変わってくるんじゃないかな。 個人的には、NormalとExpertは極端すぎるように思うけど、メリハリが付いた難易度設定とも言えるだろう。

  で、それもあってかはどうかは知らないけど、ゲームの難易度はかなり高い部類に入ると思う。
  ステルス推奨なげームなだけに、いざ戦闘となると非常に苦労することになる。 全体的に敵からのダメージは大きめに設定されていて、ガチンコ勝負でラクに勝てる相手はほとんどないし、 2体以上の敵を捌くのは、いよいよ難しいことになる。 しかも、敵を攻撃してその敵が死にそうになると、こちらが追いつけないほどのスピードで逃げ出してしまい、 敵を呼んだり、警報を鳴らしてしまったりする(しかも、一度警報が鳴ってしまうと解除不能)。 さらに、単体でも対処に困ってしまう敵も多い。 とにかく剣が当たりにくいクモ、通常のダメージでは何度倒しても直に復活してしまうゾンビがツラいところだし、 終盤では、見つかった時点でほぼアウトという敵がいたりもする。
  特に人間以外の敵が多いステージは、どうしても戦闘せざるを得なくなってしまい、 「この題材的にどうなんかな〜」とか思いつつも、 逆に言うと、ステルス一辺倒ではないメリハリが付いてたということでもあるのかもしれない。 ただ、そうならそうで、もうちょっと何かギミックを使って敵を倒せるような仕掛けがほしかったところなんだけども。
  また、一応用意されているマップも、大抵の場合は抽象的すぎて使い物にならなかったりするので、 結局は地道な探索を余儀なくされ、ステージの作りを理解するまで(敵から隠れながら)ステージ内をうろつき回ることになる。
  基本的にいつでもセーブできるというPCゲーでは当然の仕様が前提となってる感があり、 それが緊張感を奪ってしまう傾向があるのも、PCのシングルプレイゲームでは割と恒例か。
  それに拍車をかけるのが英語のキビしさ。 リアルタイムで英語力を試される機会こそほとんどないものの、 物語の導入とそのステージの目的くらいは把握できないと、まともなプレイは不可能だろう。 また、ゲーム中に出現する文書系のアイテムもかなり多く、 その中にヒッソリとヒントが隠されてたりもするので気が抜けないし、 見慣れない単語も多く、その内容を把握するのも意外とホネが折れる。

  実はストーリー的にも結構面白いゲームだったりする。
  スリの常連だったストリートチルドレン「Garrett」は、ある日、いつものように街の市場でサイフをすろうとするが、それがバレてしまう。 彼がすろうとした相手は「Keeper」という謎の存在で、気配を消していた自分の存在に気付くことができたGarrett少年に才能を見出し、 彼をKeeperとして育てようと、様々なKeeperの技術を教え込む(ちなみに、この部分が最初のチュートリアルステージになってたりする)。 しかし、GarrettはKeeperの元から逃げ出してしまい、その技術を生かして、腕利きの泥棒となっていた。 で、泥棒として依頼をこなしていくうちに、怪しげな事件に巻き込まれていくことになる・・・というのが話の大筋なんだけども、 終盤に物語は大きく転換し、これがなかなか楽しい。
  ただ、これを把握するのがまた英語的にキビしいものがある。 ゲーム中のテキストを理解する必要があるし、結構な分量のステージ間のムービーではヒアリング能力も必要。 実は自分も、ゲームプレイ中は肝心なところがわかってなかったりして・・・ (クリア後に海外攻略記事を見てなんとか理解)。


  いや〜、なるほど、面白いゲームだった。 絵的には弱いし、キビしいゲーム内容だったけども、ステルスの緊張感満点でやり応えも十分だった。 先に『スプリンターセル』をプレイしてなかったら、もっと衝撃を受けてたかもしれない。 全編通してのシブい雰囲気もかなりツボ。
  しかし、このゲームがローカライズされないのは勿体なかったよなぁ・・・。 続編も手元にあるのでそう遠くないうちにプレイしたいし、 題材的に客観視点でより生きそうな感じも受けるので、新作への期待も高まる。

2004年2月28日記載