REVIEW-ECHO NIGHT-
PS2
2004年1月22日発売発売:フロムソフトウェア  

  初代『エコーナイト』は1998年8月にPSでリリースされた主観視点のホラーADV。 翌年8月には続編『エコーナイト#2 眠りの支配者』も発売され、独特の恐怖演出、一昔前のヨーロッパを舞台にした独特の雰囲気、 物悲しいシナリオなどで、地味めなセールスながらも固定ファンを生み出していた。 で、超久々にその「エコーナイト」シリーズに新作が登場。
  一応過去の2作をプレイしているというのもあるし、それ以上にSFホラーADVってとこひ惹かれて興味を持ってたんだけど、 あまり情報を得られないままスッカリ忘れてしまい、その後、店頭でセール品になってるのを発見し、購入してプレイすることに。


  というわけで、最も分かり易い本作の特徴は、近未来の月面基地を舞台にしたSFホラーというところだろう。
  主人公「リチャード」は婚約者「クラウディア」と宇宙で挙式するために宇宙旅行に飛び立ったのだが、 その旅客機にトラブルが発生し、月面へ不時着、月面上のとある基地に激突してしまう。 目を覚ましたリチャードの周りに他の乗客の姿は無く、彼はクラウディアを探しに基地へと向かうのだった・・・というのが話の導入。 基地内の状況が不自然なこともあって、フェイクを含んだ導入であることは自体はすぐにわかるんだけど、 それがどういうものかを解き明かして楽しむゲームということになる。

  ゲームの当然のように主観視点で進行していく。 そんな中、4つのLRボタンを左右平行移動&視点の上下移動に割り当てるフロム伝統的な操作系だけでなく、 2つのスティックを前身後退&左右平行移動と旋回を含めた視点操作に割り当てるというFPS的な操作も可能になってるのが嬉しいところ。 まぁ、嬉しいっていうよりプレイするに当たっての最低条件でもあったんだけども・・・。 ちなみに、フロムの最新作PS2『アーマードコア ネクサス』でも採用されてるとのこと。 これも嬉しいというより、「やっとですか・・・」って感じだわなぁ。 ただし、デフォルトの操作が伝統的な操作となってることからもわかる通り、“右スティックは視点操作”という考え方の元で作られたわけじゃないのも確か。 例えば、左右旋回中にも足音がしたり、ジャンプ中に左右を向けなかったり。視点操作の上下反転が用意されてないのも×。
  また、フロムの主観視点ゲームお決まりの基本的な操作感の重さも相変わらず。 歩くスピードの遅さはまだしも、旋回(視点移動)の遅さは我慢ならないものがある。 霊から逃げるというシチュエーションが生まれる以上、 180°ターンのような操作がほしかったという意見があるかもしれないけど、それ以前にもっとクイックな操作感にしてほしかったところだ。
  その上、月面上に出る一部の場所での「1/6G移動」というシーンでは、 これが重力が1/6になるというより、移動スピードが1/6になってるようなもんで、鬱陶しいことこの上ない。 ダッシュの代わりにジャンプできるようになるのは、(ゲーム的な消化度は別にしても)雰囲気作りとして悪くなかったが。
  操作に難点があるのは移動だけではない。 このゲームで何かを調べる場合にはボタンは必要なく、画面中央に対象を捉えると勝手に調べるという仕様になってる。 ・・・しかし、これが、どうも慣れない。 ついボタンを押してしまい、調べたテキストが流れてしまったので、また別方向を向いて対象を見直すなんてことがしばしば。 この“ついボタンを押してしまい”ってのはその操作だけによるわけではなく、 結局アイテムを取ったり、オブジェクトに対してアクションを起こしたりという時には、ボタンを押さなければならないからでもある。 例えば、ボタンを押せばアクションを起こせるような場合には、 そのオブジェクトを強調表示するといったフォローがあれば、また変わってきたんじゃないだろうか。 より細かいところでは、□ボタンによってアイテムを使うとき、 使う場面がない文書系アイテムまで一覧に表示されてしまい、 特に終盤は結構面倒臭い感じを受けた(その割に、文書系アイテムを読むためにはポーズメニューを開かなくちゃならない)。 ある程度アイテムをジャンル別に分けるといった工夫をしてほしかったところ。

  ゲームシステム的には、前2作のキモであった霊が光に弱いという設定はなくなってしまい、 本作では、怪しげな霧によって霊が凶暴化してるという設定になったのが最大の変更点。 よって、基本的な流れとしては、その部屋(の付近)にある換気マシンのスイッチを入れ霧を晴らし、落ち着いた霊に接触して話を聞き、 彼らが気がかりに思ってる点を解消して、彼らを昇天させていくというものになっている。
  今回のキモとなる要素は「監視カメラ」だろう。 これは、各所にある「モニタールーム」という部屋の端末を操作することによって、その区域に幾つか設置されている監視カメラを覗くことができるというもの。 実際、ほとんどの場所でまずモニタールームが見つかるような構造になっており、これで先の場所の作りや霊の存在を察知してから、先に進むという流れになっている。 つまり、安全な場所から先に霊の存在を察知することになるので、恐怖感という意味では大きくマイナスになっていしまっている反面、 このカメラを謎解き的に使う要素はなかなか考えられており、好感が持てた。 また、時たま見かけることになる緑色のシミにズームしていくと、そのカメラが見た過去のエピソードを流してくれる。 断片的な過去の物語の説明としても、ゲーム中の謎解きのヒントとしても、重要度は高い。 例のごとくというか、この監視カメラの動きも超モッサリとしており (いくらそれで緊張感が高まってる部分が皆無ではないとはいえ)ストレスが溜まるんだが。
  このゲームのいわゆる謎解き部分は、基本的に“わらしべ長者”的なものなんだけど、この監視カメラの使い方も含め、それなりに工夫されていると思う。
  しかし、それ以外のゲームシステムは練り込み不足な感じが否めない。
  最もマズかったのが、実際に悪霊と対峙したときの状況だろう。 このゲームでは「心拍数」が体力的な要素となっており、霧が発生してるところで霊(つまり悪霊)に近づかれたり、 霧がなくても未知の霊が近くにいるとこの心拍数が上がっていき、一定数を超えると死亡してしまう。 心拍数が上がると画面がブラックアウトしていくのはまだいいとしよう。 問題は、心拍数が上がるとコントローラーが接触不良を起こしたような感じで操作感が悪くなる(というか、操作不能状態に近くなる)こと。 これにより、不意に悪霊と遭遇した場合は問答無用でゲームオーバーになることがほとんど極々単純な操作を強いられる場面でも、悪霊が絡むとかなり理不尽にゲームオーバーになってしまう。 そもそも追いかけっこをするゲームではないとはいえ、もうちょっと何とかならなかったものか・・・。
  もうひとつのステータスである「電力」も極めて未消化気味。 △ボタンを押すことでライトを切・弱・強の3段階で切り替えることができ、 当然、弱より強の方が消費電力が高く、電力の残量が少なくなるとライトの照度が低下してしまうという要素なんだけども、 ゲームを左右することはなく、ほぼ飾りのようなものになってしまっていた。 電力回復も、所々に落ちてるバッテリーを拾った時点でそれを補充してしまうというもので、 予備の電力を持ち運べないし、そんな仕様でも(だから?)電力に困るような場面があるわけでもなく。 他にこれといった要素もないんだから、ところどころに充電所を置くような形にして、このライトも謎解きに絡めてほしかったところだ。
  移動の遅さで誤魔化されてるけども、マップ自体もやや狭いめに感じられる。 ここらへん、移動が遅いからこれだけの規模にしたのか、 これだけの規模しか作れなかったから操作感をよりクイックにできなかったのか、ちょっと判断しかねるが。
  細かいところでは、ポーズメニュー内に用意されてるマップの使い勝手の悪さも気になった。 まず、自分がいる場所(区域)のマップしか表示させることができないので、全体的な構造が分かりにくい。 そして、その場のマップにしても、回転させることができない(ズームイン・アウトのみ)のでその場の構造が分かりにくい (まぁこれは、基本的な操作感が重いために、自力で状況を把握する前に、マップで全体像を知りたくなってしまうからでもある)。

  肝心のストーリーは、予想以上に(良くも悪くも)「エコーナイト」らしいもの。 つまりは、自分の死を受け入れられない霊たちの湿っぽい(もうちょっと好意的に捉えれば“物悲しい”)エピソードの集合体、と。 予想通り、序盤はその舞台との間にギャップを感じてしまったけども、この点に限ればそう悪くはなかったんじゃないかな。 ベタながらも切ない話が多く、SF的な要素も意外と上手く消化されていたと思う。 ただし、肝心であるはずのこの物語の本筋の部分(特にクラウディアに関して)が言葉足らず気味。 示唆する内容自体は想像が付くものの、ちょっとそれがわかり難く、説明不足な点が目に付き、ラストのインパクトを弱めてしまってる。 ここはもうちょっと直接的に明示していってもよかったんじゃないだろうか。
  グラフィックは概ねよく描けてる。 さすがにアップになるとテクスチャの雑さが目立つ場面もあるものの、 基本的に無機質な背景がほとんどということもあってか、その質はかなり高いし、テカりや映り込みなどのエフェクトも効いてる。 ゲーム的には消化不足気味だった2段階のライトに関しても、グラフィック的には悪くなく、明暗のメリハリも上手く付けられていたと思う。 また、霊のボンヤリとした感じも秀逸で、CGにも関わらずちゃんと霊っぽくなってるのが素晴らしい。 フレームレートはやや不安定だけど、それがさほど問題になるようなゲームでもないだろう。
  オープニングムービーは確かにハイレベルで、 基本的なグラフィックの質の高さと人間の動きの自然さによって、かなりのものに仕上がってる。 が、結局ゲームに関わらない(一応、過去の状況の解説ではあるのだが)イメージ的なものなわけで、 こんなとこにかける労力があるのなら、それをもうちょっと他の部分にまわしてほしかったところだなぁ。
  元からあまり期待はしてなかったけど、恐怖感もイマイチ。 グラフィック&音による雰囲気作りには成功してたものの、 監視カメラをメインに据えたゲーム進行、あからさまに自分以外に生存者ゼロなシチュエーション、 存在感がありすぎる霊たちの存在などの(少なくとも恐怖感、緊張感という意味での)難点を覆い隠すまでには至らず。 ゲーム中の演出も凡庸だったし。 せっかくの主観視点なんだから、(分量は多くないとはいえ)客観視点のイベントシーンを挿入したり、 (キャラクターとの会話時に象徴されるように)プレイヤーから操作を奪ったりゲームの進行を止めて話を進めたりする前に、 もうちょっと主観の演出にこだわって、リアルタイムな演出を考えてほしかったな。
  音声が日本語であることの良し悪しは難しいところ。 設定が設定、舞台が舞台なもんで、個人的には英語音声の方が相応しかったと思うんだけども、 情緒に訴えるという方向性のシナリオ(セリフ)が大部分なだけに、下手げに英語音声を選ぶよりかは、無難な選択でもあったろう。

  自分のクリア時間は9時間弱。 その数字だけから考えれば「まぁそんなとこかな〜」って感じだけども、その大部分がタルい移動で浪費させられてたと思うと、物足りなさが残る。 一応、全員を救出する・しない&最後の選択で変化する4つのエンディングにしても、ベストエンド以外はほとんど変わらないらしい。 普通にプレイすれば全員を救済できるはずだし、要するに、リプレイ要素はゼロに近い。 ゲームにどうやってボリュームを持たせるかは、特に最近大きな課題となってきてるはずで、 こういう形式では(商品としての)ゲームとして成り立ちにくくなってきてる現状がうかがえる。
  タイムアタック的な要素であるとか、アイテム散策的な要素が相応しい題材とは思えないし、 ゲーム性的に幅を持たせてリプレイ要素を設けるのも難しい (デベロッパも作れそうにないし、ユーザーもそれに対応できなそう)ので、 そうすると、やっぱり(もうちょっとマシな)ストーリーの分岐が正道なのかな、と。 もちろん、それも基本的な操作性を向上させた上での話となってくるわけだけども。


  「エコーナイト」はあの時代だったからこそ成り立ったゲームだったんだなというのがよく分かる一本だし、 逆に言えば、今の時代に見合うような(ゲーム的な)工夫が全然足りなかったということでもある。 それでも、プレイヤーの想像に委ねるという形で逃げずに、 ストーリーをキッチリとまとめてくれば、 もうちょっとは楽しめるものになったんじゃないだろうか。

2004年4月20日記載