REVIEW桜坂消防隊
PlayStation2
2004年6月10日発売販売:アイレム  開発:ラクジン  

  消防士をネタにしたゲームと言えば、SFC『ザ・ファイヤーメン』が隠れた良作として名高いし、 個人的にはSS『バーニングレンジャー』も忘れられない一本。 他にもセガのアーケードゲーム『消防士』であるとか、映画では「バックドラフト」、漫画では「め組の大吾」など、 数が多くない割には印象に残る作品が生まれるネタな気がする。
  これもそんな消防士をネタにしたゲームで、紹介記事等を見る限りでは非常に面白そうに見えたし、 個人的には地味に侮れないゲームを出してくるイメージを持ってるアイレムなだけに、結構期待してた一本。
  評判がよくないPS2『絶体絶命都市』(これもいずれプレイしてみたいが)の直系かと思いきや、 ゲームを起動するとアイレムのロゴ表示の後に、ラクジンのロゴが。 つまり、開発ラクジン、販売アイレムという、PS2『-U- アンダーウォーターユニット』と同じ組み合わせだったのだ。 パッケージはおろか公式ページにもその言及がないし、なんか開発元を意図的に伏せてるような・・・。


  ゲームは当然のようにステージクリア形式で、プレイヤーは消防士「本条 大地」を操って消防活動を行うことになる。
  基本操作は、左スティックでキャラを動かし、□で放水、 視点操作は右スティックによる回転と、右スティッククリックによるいわゆるカメラリセット。 また、×ボタンで一定時間ダッシュするうことができ、ダメージは受けるけど炎に怯むことなく進むことができる。
  放水に使う装備には「ホース」と「インパルス」の2種類があって、これはステージごとに予め決められている。 ホースは「ストレート放水」と「噴霧放水」をR1で切り替えるいわゆる普通の消火ホースで、 インパルスは溜め撃ちで放水する威力の高い放水装備。 とりあえず、放水距離が短く、威力が弱い反面、広範囲に放水できて飛び火の防御にも使えるというはずだった、 噴霧放水に存在感がないのが問題で、もっとも基本的なところのメリハリ付けに失敗してるのが頂けない。
  ちなみに放水中は基本的に向いている方向が固定で、旋回をするためにはR2+左スティックで行わなければならない。 また、放水の対象はある程度勝手にロックオンしてくれる。 予想通り、この仕様のお陰で消火そのものは極めて大味。 そういうフォローなしに完全に手動で炎を狙う形であれば、消火の優先度を工夫できたろうし、 それに伴ってもうちょっとは消火そのものに攻略性を持たせるような炎のパターンを加えられたはずなんだが。
  視点は背景にやや引っかかってしまう感じ。 まぁ、題材上どうしても狭い場所が多くなってしまうし、ある程度やむを得ないが。 視点の自動調整はそれほど酷くないし、右スティックの視点操作も結構クイック。 ただ、放水しっぱなし(つまり□ボタンを押しっぱなし)にするシチュエーションが多いわけで、 右スティックでの視点操作(特にカメラリセット)は使いづらく感じられた。 これは視点操作を他のボタンに割り当てるというより、放水をLR系ボタンに割り当てることで対処してほしかったところ。
  で、このゲームのゲームプレイ上の特色は、プレイヤーキャラを操作しつつ、最大3人のNPC消防士に指示を出して消火を進めることにある。 他のキャラへの指示は基本的に、場所を指定して移動させるか、他のキャラに追従させるかのみで、消火などは自動判断で行ってくれる。 このゲームでは消火すべき各部屋ごとに「延焼率」があって、 それが100%を超えると「ロスト」となり、その部屋に入れなくなってしまう (その部屋にいた要救助者は救出できないし、遺留品(後述)も焼失)。 つまり、各キャラクターをイロイロな場所に割り振って効率的に消火活動を進めなくてはならないという、 ややリアイタイムストラテジー(RTS)的な側面を持っているというわけ。 例えば、あるキャラが落ちてきた瓦礫に埋まってしまったので別のキャラを救出に向かわせるとか、 一人では動かせない障害物があったので仲間を呼ぶとか、そんな要素もアリ。
  ここらへんのゲームプレイに関しては、酷くつまらないということはない。 炎のグラフィックにはそれなりに躍動感があり、雰囲気は上々だし、 消火そのものが大味になってしまったことを、このチーム的な要素が上手くフォローしており、 消火に勤しみつつ、刻々と変化する状況を見極め、各キャラに指示を与えるのも結構楽しい。 これは、画面左上のサブウィンドウに常に別キャラの行動が表示されるというのも大きい。
  が、公式サイトを見れば分かる通り、元々がRTS的な発想から生まれたゲームではないだけに、その限界、不甲斐なさもアリアリと感じられる。 各部屋への割り振りはまだしも、共同作業的なことは上手く機能しないし、 NPCキャラは単純で融通が利かない上に、消火はまだしも、遺留品に関してはかなりザルなのが困りもの。 結局、消火を終えたのに遺留品を探しに自キャラで散策することになる。 せっかくサブウィンドウがあるのに、 要救助者の救出であるとかで一々プレイヤーの操作を奪うイベントシーンが(短いとはいえ)表示されるのも煩わしいし、 キャラクターのセリフもバリエーション不足。 そもそもマップ自体が狭めなだけに、やること、やれることの少なさはかなり致命的なものがあり、RTS的な要素を上手く生かせたとは言いがたい。
  このレベルであれば、もうちょっと消火そのものをエキサイティングなものに仕上げてほしかったし、 消火がこの程度なのであれば、もっと規模を大きくし、仕掛けを増やし、RTS的な要素をもうちょっと練りこんでほしかった。
  アクセントのつもりであろう、ハシゴ車からの放水ステージなどはタルいだけだし、ゲーム中の謎解き要素も非常に浮いてる上にウソ臭い。
  細かいところでは、消火中のイベントシーンで音声がない部分が意外とあったのも残念。 臨場感っていう意味じゃ、結構大事な部分だと思うんだけども。

  一方、ストーリー面にも特徴があって、単なる消防、消火の話ではなく、 そこにサスペンス的な要素が絡んでくるという内容になっている。
  主人公「本条 大地」は、兄で桜坂消防隊のエース消防士だった「本条 雄一郎」を、消火中の事故で失う。 その悲劇から立ち直った大地だったが、とある連続放火事件を対処していくごとに、 その背後にある一連の怪しい動きが見えてきて、雄一郎の死との関連も徐々に明らかになってくる・・・と。
  ゲーム的な仕掛けとしては、各ステージには5つの遺留品が隠されており、 見つけた遺留品の中から3つを、ステージクリア後に鑑定に出すことができる。 で、次のステージ開始前にその鑑定結果が出て、それが的を射たものであれば、徐々に謎が明らかにされていくというもの。 それによってエンディングが4段階に変化する(らしい)。 まぁ非常に単純な作りで、普通にプレイすれば不完全だが悪くないエンディングBを向かえ、 2周目をクリアすれば普通にベストエンドであるエンディングAを迎えられるはず。 逆に言えば、1周目からエンディングAってのは結構ムリがあるし、 1周目クリア時の強引なヒントによって、2周目でエンディングAに行けるという、 ゲーム的な要素というより、プレイ時間稼ぎ的な要素といった方が妥当だろう。 それはそれで悪くないと思うが、だったら、2周目ではゲームプレイ部分にも手を加え、 繰り返しプレイを前提としたゲームデザインをしてほしかったところだ。 ステージクリア後に遺留品を鑑定に出してからじゃないとセーブできないという、 安易なリセットプレイを抑制する仕様も、そこらへんをちゃんと作った上じゃないと説得力がないだろ。
  まぁそれ以前に、シナリオ自体が酷いんだよなぁ・・・。 いかんせん、肝心のサスペンス部分が、犯人の動向にしても、主人公の行動にしても説得力がなさすぎる。 主人公が爆弾解体なんてのは単発のネタとしてならまだしも、それが恒例になっちゃあねぇ・・・。 最後の黒幕なんて、彼であることの必然性が全く無いし・・・。
  それでも、消防士としての物語がメインとしてちゃんと立っていれば、まだ我慢できたはず。 が、サスペンス要素に気をとられたのか、ここらへんが非常にずさん。 消防士なんだぞ?  ベタだが、やはり描くべきは、 炎に対する勇気であり、放火に対する怒りであり、命の尊さであり、チームワークじゃないのか?   そこらへんが微塵も感じられなかった。 いや、冒頭で雄一郎が死んだ後、主人公の悲しみだけが描かれて、 頼りになるチームメイトを失った隊員たちの悲しみをマトモに描けてない時点で、 「あれ、ちょっとヤバいかも・・・」とは思ったんだが。 シナリオそのものだけの問題ではないとはいえ、基本的にセリフ回しがヘタっていうのもある。 全体的に印象に残らないし、最後に急に詩人になってしまう主人公に萎え。 冒頭みたいな独白調の部分ならまだしも、口に出して言うセリフじゃないって。最悪。

  ボリュームのなさもかなり致命的。 それぞれが3つのパートに分かれた全7ステージ、 と聞くと結構ボリュームがありそうだけど、なんせその個々が非常に小ぶりなもんで、 初回のクリア時間は3時間弱、2周目クリアまででもプレイ時間は5時間弱。 んで、これ以上のプレイ要素もこれといって見つからない。 クリアしたステージを自由に選んでプレイできる「フリーモード」は、 説明書に「仲間隊員や進入場所を変更することができ、自由度が高く、 火災もリアルタイムに進行し、よりリアルなゲームが楽しめます。」とあるが、 実際に試してみたところでは本編との差はほとんど感じられなかった。看板に偽りありすぎ。 ストーリーモードの作りを考えれば、そういう自由度というか分岐は、 むしろそっちに(盛り込めるのなら)盛り込むべきものだったろうし、それにしてもステージ数自体が少なすぎる。 ゲームクリア後に出現する「コンビ」「サバイバル」という2つのモードは、それぞれ協力プレイと対戦プレイな模様。 実際に試せなくても共に面白そうとは思えないが、まぁ何も無いよりはマシか。

  キャラクターイラストは非常にいい感じ。最初に受けた好印象は、実はここによる部分も大きい。 漫画的だけど手塗り風彩色(つまりセル画っぽくない彩色)のお陰で必要以上にアニメっぽくなることはなく、 かといってそれが安っぽくもなってないという、個人的には理想に近いもの。
  前述の通り、消火ステージ内のグラフィックはそこそこ。 取り立てて素晴らしいわけでもないけど、炎という主役がハッキリしており、煙や水の描写もそこそこで、 画面が暗めにならざるを得ないことが背景のチープさを上手く誤魔化してる。 サブウィンドウがあることも考えれば、十分に及第点だと思う。 が、消防署内などでの会話シーンはかなりショボい。 表情に全く変化がなく、単純な口パクだけってのは今時どうかと思うんだけど、 そうならそうで、そういった表現力不足を補うべく、感じのいいキャラクターイラストを生かしてほしかったところ。 なのに、テキストウィンドウに付いてるキャライラストも、各キャラ1パターンだけだし、その表示は小さいし・・・。
  ムービーを一方的に見せるだけの「チュートリアル」も、無いよりかはマシとはいえ、やっぱり頂けない。 日本のゲームメーカーってユーザーフレンドリーがウリであるはずなのに、 意外とチュートリアル(をゲームに組み込むこと)を作るのは下手っていう印象なんだよなぁ。


  不満はあるけど、ゲーム部分に限ればそこそこ楽しめたのも事実。 ただ、このボリュームではさすがにお話にならないだろう。 \7000の商品として売るものを作るってことに、もうちょっと自覚を持ってほしい。 シナリオの方はねぇ・・・いやはや・・・。 ゲームである以上、せめて当たり障りのないものを目指してほしいもんだ。 いきなり話の骨子に凝ろうとせず、まずはキャラクターを(ゲーム内でも)立たせることから考えてほしい。

2004年6月28日記載